農業研究本部

Q.20簡略分級式,生産力可能性等級

Q.20)

地力保全土壌図や調査報告書の中に、ⅡanfとかⅢtplⅡsiと言った記号が必ず載っていますね。 これは簡略分級式とか生産力可能性等級などと言うそうですが、その内容について教えて下さ い。

A.20)

 これは、その土壌の作物生産力を示すもので、土壌(土地)評価の表現法の1種といえます。
簡略分級式とは、以下に示す14の項目のそれぞれについて、断面調査や土壌分析値をもとにして4階級にランク付けしたものを並べたものです。評価する際の基準の数値は土地利用(水田か畑か)や栽培作物によって異なりますが、良い評価から悪い評価の順に、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳと付けます。生産力可能性等級とは、決定された簡略分級式のうちの最も低いランクのことを言い、その土壌の生産力がⅠからⅣの4段階のどれかにランク付けされます。上の例で言えば、前者はⅡ等級、後者はⅢ等級となります。なお、”示性分級式”とは簡略分級式を出すために作る最も詳しい内容の評価式のことで、調査報告書の中や土壌図の裏に載っています。図4にその例を示します。

<簡略分級式(その土壌の作物生産力の評価式)>
以下の14の項目についてランク付けをします。
t:作土(耕起の対象となる表土)の厚さ
d:有効土層(根が伸びて養分や水分を吸収することができる土層)の深さ
g:表土の礫の混ざり具合
p:耕起や砕土の容易さ
l:水持ちと水はけの程度(水田の場合)
r:土壌の還元(いわゆる、”わく”状態)の程度(水田の場合)
w:過湿の恐れ(畑の場合)
(w):過干(干ばつ)の恐れ(畑の場合)
f:自然肥沃度(保肥力やりん酸固定力など、その土壌の基本的な化学性)
n:養分の豊否(石灰、カリ、りん酸等一般の土壌養分)
i:障害性(イオウやカドミウム等の有害物質、物理的に根が伸びない障害など)
a:災害性(河川の氾濫による冠水や地滑りの危険性)
s:傾斜(畑や草地の場合のみ。傾斜の方向やその角度を考慮して判断)
e:侵食(畑や草地の場合のみ。水食や風食の起こり得る度合い)

具体的な例で説明すると以下のようになります。
ある水田ほ場の土壌調査や分析の結果、水害の恐れが極めて高いため、a(災害性)についてはランクⅣ、石灰やりん酸などの土壌養分もやや不足しているためn(養分の豊否)はランクⅢ、表土の粘性が強いためp(耕起や砕土の容易さ)もランクⅢ、作土の厚さは15cmで適度なためt(作土の厚さ)はランクⅡ、土壌の還元程度も水田としては普通のためr(土壌の還元程度)もランクⅡ、とすると、簡略分級式(その土壌の作物生産力の評価式)はⅣaⅢpnⅡtrとなり、その他の項目は全てランクⅠ、つまり全く問題がないか、あるいは、極めて良好な状態であると評価されます。
<生産力可能性等級(土壌の生産力の最終評価)>
簡略分級式のうち最低等級をその土壌の生産力可能性等級としています。上の場合、最低のランクを取ってⅣ等級となります。各等級の基準は一応、以下の通りです。
Ⅰ等級:生産力が高く、特に改良を要しない
Ⅱ等級:生産力は高いが、多少の改良を要する
Ⅲ等級:生産力は余り高くなく、改良する余地は大きい
Ⅳ等級:生産力は低く、改良するのも困難であり、耕地としての利用は極めて困難
しかし、実際の調査結果ではⅣ等級、Ⅰ等級とも非常に少なく、大部分の土壌区がⅡ~Ⅲ等級となっているのが実情です。さらに、現在ではかなり土地改良が進み、また、評価基準も昔とは異なるものと考えられます。今後は、新しい評価基準や評価法を検討する必要があります。
表10,11に簡略分級式の主な項目についてランク別に集計した一覧表を示します。ただし、これには古い年代の調査データも含まれているため、必ずしも現状を表しているとは限りません。

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