【普及奨励事項】
ばれいしょ「北海41号」に関する試験
北海道農業試験場作物部・北海道立中央農業試験場・十勝農業試験場・根釧農業試験場
北見農業試験場・天北農業試験場・上川農業試験場

Ⅰ来歴
 交配 昭和31年
 交配組合せ 2070-ab(31)×島系290号
 2070-ab(31)はScotlandより輸入した疫病抵抗性遺伝子R2R4をもつ晩生系統で白いも、澱粉価は農林1号程度、いも数が10以上と多いのが特徴である。
来歴は不明だが野生種S、demissumが使われていると思われる。
 島系290号は農林1号×Ginekeより育成された比較的高澱の赤いも、黄肉種である。
 系統番号  56039-8    昭和34年
 島系番号  島系455号  昭和36年
 北海番号  北海41号   昭和37年

Ⅱ特性概要
 地上部 枯凋期は農林1号より5~10日遅い極晩生種。
 萌芽はやや不揃い、萌芽時の嫩葉は黒紫色を呈す。少播数は多いが、小さく葉脈は淡紫色で葉の着生は全体として粗。茎は紫乃至褐色で細く硬い。花は淡赤紫色だが開花は稀で落蕾する。蕾は長く特徴がある。自然結果はない。
 地下部 いも着はやや密で、いも数が10以上と多い。大きさは1農よりやや小さく中粒が多い。外貌は普通だが粒揃いは中又はやや悪い場合がある。形は長紡すい型で、2次生長及び奇形を生ずることあり。皮色は赤褐色で芽は多いがやや浅い。肉色は淡黄色で澱子価は18%以上で高い。食味もよい。貯蔵性は中。萌芽は普通。
 耐病性 疫病にはrace2.4が発生しない限り罹病しない。
 又raceが発生しても防除効果が高いようである。バイラス病には中位の抵抗性を示し、農林1号、エニワ等と大差ないが、Streakが大部分をしめ識別は容易である。ただし中央馬鈴薯原々種農場での検定で斑点性Xバイラスの病徴がみられたので、採種に注意を要する。
 青枯病には弱い。軟腐病には強い方に属しよう。

Ⅲ試験成績
1.育成過程における成績(大1表)
 黄変期 疫病を完全に防除すると茎葉黄変期は9月下旬乃至は10月に入る極晩生であり、農1は5~10日位早く、エニワはさらに2~3日早い。
 上いも重 北海41号は疫病防除、無防除を問わず、農1よりすぐれており、特に無防除区では6年平均で18%の増収となっている。エニワは農1を下廻る傾向を示す。
 澱粉価 疫病防除区で農1より2%無防除区で3%多くほぼ18%であるが最高20%になっている年もある。エニワと比較すると、疫病防除区で北海41号がやや下廻り、無防除区で上廻るという結果である。
 澱粉重 農1と比べて防除区で21%無防除区で42%の増収となり、エニワより遙かに多収を示し、とくに無防除区の増収率の高いことに特徴がある。

 第1表 育成過程における成績(北海道農試)
系統名 系          統  (1958)
黄変期(月日) 株当上薯重(g) 澱粉価(%) 1ケ重(g) 澱粉重(g)
北海41号 防
       無
9.4
-
1,133 145 19.0 61 204 143
農林1号  防
       無
8.31 974 00 16.7 101 143 100
エニワ   防
       無
-
           

系統名 予          備  (1959)
黄変期(月日) Virus 10a当上薯重(㎏) 澱粉価(%) 1ケ重(g) 澱粉重(㎏)
北海41号 防
       無
2.
-
             
農林1号  防
       無
9.5
-
0
2,537
100
16.3
97
409
100
エニワ   防
       無
-
-
             

系統名 生          検  (1960)
黄変期(月日) Virus 10a当上薯重(㎏) 澱粉価(%) 1ケ重(g) 澱粉重(㎏)
北海41号 防
       無
9.9
9.3
0 3,005
2,552
95
84
19.9
19.1
75
76
567
463
109
97
農林1号  防
       無
9.10
9.7
0 3,159
3,040
100
100
17.5
16.7
121
109
521
477
100
100
エニワ   防
       無
9.2
9.1
4 2,989
2,721
95
90
19.0
18.6
111
99
540
478
104
100

系統名 予          備  (1961)
黄変期(月日) LB Virus 10a当上薯重(㎏) 澱粉価(%) 1ケ重(g) 澱粉重(㎏)
北海41号 防
       無
9.12
9.7
-
-
2 3,595
3,155
116
125
17.9
17.5
89
80
608
521
137
149
農林1号  防
       無
9.8
9.1
4
6
2 3,104
2,539
100
100
15.3
14.8
107
96
444
349
100
100
エニワ   防
       無
9.6
8.28
4.5
4 3,386
2,605
109
103
18.3
16.6
116
91
508
406
114
116

系統名 生          検  (1962)
黄変期(月日) LB Virus 10a当上薯重(㎏) 澱粉価(%) 1ケ重(g) 澱粉重(㎏)
北海41号 防
       無
9.14
9.15
-
-
7 3,474
3,820
121
132
15.9
16.5
75
88
518
593
130
157
農林1号  防
       無
9.9
9.11
5.5
5.5
2 2,924
2,896
100
100
14.0
14.0
92
102
397
377
100
100
エニワ   防
       無
9.3
9.4
-
-
2 2,592
2,704
89
93
17.6
17.2
86
84
430
466
108
117

系統名 生          検  (1963)
黄変期(月日) LB Virus 10a当上薯重(㎏) 澱粉価(%) 1ケ重(g) 澱粉重(㎏)
北海41号 防
       無
9.29
9.20
-
1
10 3,611
3,400
104
122
18.2
18.1
95
82
623
584
118
157
農林1号  防
       無
9.20
9.8
4
5
11 3,469
2,784
100
100
16.2
14.4
120
101
528
372
100
100
エニワ   防
       無
9.17
9.3
3
6
9 2,980
2,536
86
91
19.4
17.3
109
94
548
413
104
111

系統名 生          検  (1964)
黄変期(月日) LB Virus 10a当上薯重(㎏) 澱粉価(%) 1ケ重(g) 澱粉重(㎏)
北海41号 防
       無
B
9.5
-
2.5
6 2,541
1,941
104
142
19.8
17.1
91
76
478
312
116
184
農林1号  防
       無
C
8.30
2.5
5
5 2,447
1,368
100
100
17.8
13.4
134
87
413
170
100
100
エニワ   防
       無
9.21
8.30
1
4.5
6 2,312
1,631
94
119
19.5
15.9
125
84
428
244
104
144

系統名 生検平均(計)
黄変期(月日) LB Virus 10a当上薯重(㎏) 澱粉価(%) 1ケ重(g) 澱粉重(㎏)
北海41号 防
       無
(9.16)
9.10
  6.5 3,245
2,974
107
118
18.3
17.7
85
80
559
495
121
142
農林1号  防
       無
(9.12)
9.5
  4.6 3,021
2,525
100
100
16.2
14.7
115
99
461
349
100
100
エニワ   防
       無
9.10
9.1
  5.4 2,852
2,439
94
97
18.8
17.1
109
90
491
401
106
115
  Virusは発生株 %
  黄変期 B、Cは霜害で枯れたもので、CはBより遅いと判定。

2.道内試験期間における成績(第2表)
 道内8ヶ所で地域適応性を検討してかなり幅広く適応することを認めた。
 枯凋期 標準の農1が地域により大巾な変異をしめし、9月上旬から下旬に迄わたっているが、北海41号の場合、岩字を除いて9月25日以降となっている。地域的にみると、十勝ではやや早めであるが道東、北では遅く10月に入っている。北見と島松はほぼ同じで、中間位である。エニワについては島松、岩字だけ農1より早く、他地域では同じかむしろ、遅く、逆転がみられるが、この原因については目下検討中である。
 疫病 8月下旬頃の罹病調査では農1、エニワ、北海41号の順に強くなり、とくに、北海41号は著しく罹病が少ない。
 上いも重 標準の農1が枯凋期と同じく、地域間変異が大で、とくに道東、北での低収が目立つ。北海41号は島松、十勝、北見、天塩では農1とほぼ同様だが、根釧、上川、天北では、20%以上の増収である。エニワと比較すると、島松、十勝、天北、上川で北海41号が多収となり、根釧、天塩でほぼ同様、北見だけがやや低収の傾向をしめた。
 澱粉価 全道的に18~9%以上となり、根釧、上川で21%にも達して、エニワを明らかに上廻っている。島松、十勝では両者はほぼ同様で差はない。
 澱粉重 (第1図参照)各条とも農1より多収であるが、北見、岩字が稍少なく、10%程度の増収である。ついで島松、十勝、の20%増収となり、根釧、天塩、天北、上川は50%前後の驚くべき増収となっている。農1の地域間変異が大なのに対して北海41号は10a当り約500kg以上とれており安定した適応性をもっているように思われる。とくに根釧、天塩、天北のように農1が極端に低収の地域でも、他地域並の収量をえている。エニワはちょうど北海41号と農林1号の中間に位している。北見だけが北海41号とエニワ同収量となっている。

 第2表 道内試験期間における成績
場名 年次 北海41号 農林1号 エニワ
枯凋期
(月日)
LB 上いも
収量(比)
澱粉価
(%)
澱粉重
(比)
枯凋期
(月日)
LB 上いも
収量
澱粉価
(%)
澱粉重
(比)
枯凋期
(月日)
LB 上いも
収量(比)
澱粉価
(%)
澱粉重
(比)
中央
(岩字)
37 9.18 2 99 16.7 112 9.8 5 (4,236)
100
14.8 (625
100)
9.4 3 88 16.7 99
38 9.1 5 97 18.4 107 8.30 5 (4,048)
100
16.7 (675)
100
8.28 6 85 17.8 91
平均 9.10 3.5 97 17.6 (713)
110
9.4 5 4,142 15.8 650 8.31 4.5 83 17.3 (617)
95
島松 37 9.14 0 121 15.2 124 9.9 4 (2,924)
100
14.0 (397)
100
9.3 0 89 17.6 110
38 9.29 0 104 18.2 118 9.25 4 (3,469)
100
16.2 (528)
100
9.23 3 86 19.4 104
39 0 104 19.8 116 2.5 (2,447)
100
17.8 (413)
100
9.27 1 94 19.5 102
平均   0 110 17.7 (540)
121
  3.5 2,947 16.0 446 9.18 1.3 89 18.8 (469)
105
十勝 37 8.29 3 95 16.7 118 8.25 5 (3,133)
100
13.5 (422)
100
8.28 4 92 16.1 110
38 9.22 2 112 19.1 127 9.13 5.5 (3,192)
100
16.9 (539)
100
9.13 4.5 83 19.1 94
39 9.19 0.3 101 20.4 117 9.11 4.7 (2,974)
100
17.5 8521)
100
9.11 3.7 99 18.9 107
平均 9.13 1.4 103 18.7 (598)
121
9.6 5.1 3,100 16.0 494 9.7 4.1 91 18.0 (508)
103
根釧 37 9.23 139 19.4 193 9.9 (2,166)
100
14.3 (287)
100
9.14 やや
118 16.8 140
38 10.5 117 20.9 147 9.20 やや
(2,473)
100
16.8 8389)
100
9.29 123 19.3 143
39 10.15 0 103 20.8 129 10.1 1.8 (1,939)
100
16.8 (306)
100
9.29 1.2 114 18.2 123
平均 10.4   120 20.4 (505)
154
9.20   2,193 16.0 327 9.24   118 18.1 (445)
136
北見 37 9.2 2.5 96 19.6 124 8.29 3.8 (2,900)
100
15.5 (4219
100
9.6 1.0 106 18.6 129
38 9.28 0.5 92 19.0 106 9.22 0.5 (4,157)
100
16.5 (649)
100
9.26 0.5 99 18.9 135
39 9.30 0 98 19.7 114 9.23 5 (3,507)
100
17.0 (561)
100
9.25 4 105 18.3 114
平均 9.20 1.0 94 19.4 (617)
113
9.14 3.1 3,551 16.4 544 9.19 1.5 102 18.6 (638)
117
天北 37 9.24 0.5 112 19.7 154 9.5 5.7 (2,312)
100
15.5 (421)
100
9.6 1.0 106 18.6 129
38 10.2 0.3 165 19.7 212 9.7 5.6 (2,135)
100
15.3 (305)
100
9.11 4.7 122 18.1 146
39 10.10 0 121 18.8 157 9.7 5.6 (2,772)
100
14.6 (380)
100
9.9 4.0 111 16.2 123
平均 10.2 2.7 169 19.4 (575)
151
9.6 5.6 2,406 15.1 339 9.8 4.8 108 17.4 (424)
125
天塩 37 9.6 0.2 109 17.8 168 8.22 5.2 (2,583)
100
11.9 (281)
100
8.30 2.0 101 14.0 120
38 9.27 0 114 20.2 154 9.5 3.2 (2,975)
100
15.3 (425)
100
9.10 0.5 123 16.9 138
39 9.24   112 17.2 162 8.31   (2,869)
100
12.2 (321)
100
9.3   112 14.7 155
平均 9.19   109 18.4 (550)
161
8.30   2,809 13.1 342 9.4   112 15.2 (470)
138
上川
(士別)
37 9.23 2 121 12.1 156 9.22 4 (3,401)
100
16.6 (531)
100
9.23 3 102 19.6 121
38 10.2 2 118 20.7 137 9.23 4 (3,635)
100
17.9 (618)
100
9.24 3 110 19.9 123
39 1 116 20.9 143 9.15 3 (3,080)
100
17.1 (567)
100
9.16 2 102 19.0 114
平均   1.7 123 20.9 (829)
145
9.20 3.7 3,379 17.2 572 9.21 2.7 109 19.5 (684)
120



 第1図 道内各農試における澱粉重の変異   (昭37~39年3年平均)


3.道内町村における現地試験成績(第3表)
 羊蹄山麓 京極、留寿都、狩太の3ヶ所とも、上いも重は農1よりまさり、澱粉価も5%前後高く、従って、澱粉重も著しく多い、エニワよりよいことも明らかである。
 十勝 士幌、大樹の2ヶ所ではエニワが予期に反し、のび悩んでいるが、北海41号はよい成績を示し、澱粉価は20%をこえ、とくに大樹ではすぐれている。
 北見 網走、斜里、上渚滑、佐呂間の4ヶ所で行ったが、澱粉価はエニワより、ややよいようであるが、澱粉重は上渚滑、佐呂間の39年を除いてエニワがやや上廻っている。
 根釧 釧路、鶴居の2ヶ所で行い、釧路では両年ともエニワよりすぐれ、鶴居では、一定の傾向はみられなかった。
 天北 歌登、苫前、勇知の3ヶ所で行い、全部エニワよりすぐれている。とくにこの地域では、エニワの成績がよくない。

 第3表 道内町村における現地試験の成績
町村名
北  海  41  号 農  林  1  号 エ   ニ   ワ
枯凋期
(月日)
LB 上いも
収量(比)
澱粉価
(%)
澱粉重
(比)
枯凋期
(月日)
LB 上いも
収量(㎏)
澱粉価
(%)
澱粉重
(㎏)
枯凋期
(月日)
LB 上いも
収量(比)
澱粉価
(%)
澱粉重
(比)
備考
京 極 38     123 20.1 152     2,883 16.3 471     105 17.9 114  
38     141 20.6 200     2,626 14.1 370     104 18.6 137 多収穫
試験
39     145 17.7 199     2,506 12.9 324     108 16.4 139  
39     151 17.7 193     2,706 13.8 375     113 15.7 128 多収穫
試験
留寿都 38     105 17.1 122     2,512 14.8 432     103 16.8 109  
39     111 18.1 131     3,479 15.3 534     104 18.6 126  
狩 太 38     134 18.3 170     2,312 14.4 333     129 16.8 150  
39     125 17.4 175     3,027 12.4 376     98 15.7 126  
南富良野 38     94 18.8 113     4,030 15.6 629     97 17.7 111  
士 幌 38 9.18 2.5 98 19.3 119 9.3 3.5 3,205 15.9 510 9.7 3.5 91 17.5 101  
39 8.24   113 21.8 141 8.23   2,054 17.4 357 8.24   127 19.5 142  
大 樹 38   2 127 20.0 160 9.14 5 2,327 15.9 370 9.15 4 105 16.6 109  
38   1.5 167 20.1 245 9.6 4.5 3,165 13.7 433 9.8 3.5 111 16.7 134 多収穫
試験
39 9.258   110 20.8 141 9.15   2,960 16.1 529 9.17   108 17.5 116  
上渚滑 38 9.29 3% 115 18.9 135 9.21   3,833 16.2 583 9.23   117 20.5 150  
39   118 20.0 162 9.15 62% 2,810 15.0 390 9.18 12% 121 18.2 151  
斜 里 38 9.16   108 16.2 123 9.8   2,823 14.2 401 9.20   116 16.7 136  
39 9.16 なし 78 18.2 93 9.12 3,500 15.5 507 9.14 なし 87 17.0 96  
紋別
(小向)
38 9.5   113 20.8 141 8.24   2,722 16.7 455 9.4    117 19.3 135  
39 9.13   103 19.2 142 8.26   2,505 13.9 348 8.26   71 15.9 81  
佐呂間 39 9.10 5 97 20.6 109 8.26 6 4,370 17.4 760 9.2 5 94 18.5 100  
網 走 38 9.15   104 17.9 133 8.16   3,510 14.0 491 8.20   114 15.7 135  
39 9.13   100 17.4 126 9.5 32% 3,651 14.0 475 9.9 60% 115 16.9 142  
釧 路 38 10.7 177 22.4 235 9.15 2,150 17.1 346 9.28 141 21.2 177  
39 10.6   102 20.3 123 9.16   2,300 17.1 370 9.30   96 19.1 108  
鶴 居 38 9.19 111 19.9 136 9.6 2,093 16.5 325 9.10 やや強 98 17.2 103  
39 9.25   99 18.1 104 9.15   1,752 14.8 242 9.20   100 17.5 119  
勇 知 39 9.28 1.0 120 19.1 155 9.14 4.0 2,312 15.1 326 9.18 4.5 94 16.1 100  
歌 登 38 10.10 0 122 19.2 144 9.27 5.0 2,839 16.4 437 10.1 0.5 97 17.9 106  
38 - 1.0 104 18.5 134 - 5.0 3,015 14.6 410 - 1.0 109 16.3 122 多収穫
試験 
39 9.28 0 102 20.8 120 9.18 4.0 2,982 17.7 498 9.20 3.0 97 17.6 97  
39 10.1 0 133 17.1 169 9.20 5.0 3,563 13.7 453 9.25 3.0 98 17.9 130 多収穫
試験
苫 前 38 9.15 1.7 98 18.4 120 9.1 4,237 15.3 605 9.7 3.8 103 17.6 120  
39     109 19.4 141     3,245 15.2 461       106 17.5 123  
  比は農林1号に対する数値。


4.特性に関する試験成績
 (1)生育相に関する試験
 有望系統の生育追跡試験のうち北海41号、農林1号エニワの3品種の数値をぬき出して検討してみた。茎葉重の増加は北海41号が3品種中最も少なく経過しているが、減少が9月下旬と最も遅く始まる。これには疫病罹病程度の違いも大きく関係していると思われる。いも重の増加は7~8月は農林1号がやや多く経過しているが、北海41号はエニワと殆ど同じに増加する。しかし9月に入ると北海41号が農1、エニワを抜く様相がみられる。茎葉黄変が遅いのにいもの肥大は農1、エニワと変わりない程度に進むことがわかる。澱粉価は北海41号が最初から高く経過し、エニワがついで農1が初めから最も低かった。澱粉重の増加は9月上旬迄は農1、エニワと全く同様に進行し、その後農1、エニワの鈍化するのに反して、北海41号は9月下旬迄増加が続く。すなわち茎葉枯凋がおそくとも、掘取は或程度早くてもいいようである。
 第4表の幾つかの数値、とくに出葉停止期をみると、エニワが8月25日と最も早く、ついで北海41号が9月4日、農林1号が9月14日と最もおそい。これから判断すると茎葉の熟期は性格には上の順序であり、いわゆる枯凋期は別の要因、例えば疫病罹病度、葉の脱落の難易等によって早まったり遅くなったりするものと考えてもよい。
 さらに第5表に数年の早堀り試験の結果をあげたが、いも重についてはやや劣るがエニワとほぼ同じであり、澱粉価は問題なく、農1より2.5%、エニワより1%高い。したがって8月上旬においてすでに澱粉重は農林1号、エニワに劣らない程度になっている。このことは北海41号の澱粉蓄積が見かけより早く進行していることを示すものである。


 第4表 熟期を推察するための観察数値
系統名 開花期 黄変期 枯凋期 出葉
停止期
最高に達した期日 澱粉価 澱粉量
地上部中 いも数 いも重
農林1号 7.11 B - 9.14 8.25 7.6 10.4 9.24 9.24
えにわ 7.15 9.18 9.21 8.25 8.15 7.16 9.24 9.14 9.24
HK-41 - 9.28 - 9.4 8.25 7.16 9.24 9.24 9.24
  註 (1)Bは推定値で略々10.5~10.10
     (2)開花期-は開花しないもの、枯凋期の-は降霜により不明のもの。
     (3)地上部重量の最高に達した日は疫病の罹病程度に左右され不正確。


 第5表 早堀収量及澱粉収量
品 種 1960 1961 1962
上いも重
kg/10a
澱粉価
%
澱粉重
kg/10a
上いも重
kg/10a
澱粉価
%
澱粉重
kg/10a
上いも重
kg/10a
澱粉価
%
澱粉重
kg/10a
農林1号 1,902
(100)
13.1 230
(100)
1,708
(100)
12.9 203
(100)
2,037
(100)
13.2 249
(100)
エニワ 1,366
(72)
41.1 179
(78)
1,747
(102)
13.7 222
(109)
2,064
(101)
16.0 310
(124)
北海41号 1,176
(62)
14.6 160(70) 1,756
(103)
16.0 263
(128)
2,205
(108)
16.8 348
(139)
品 種 1963 1964 平均
上いも重
kg/10a
澱粉価
%
澱粉重
kg/10a
上いも重
kg/10a
澱粉価
%
澱粉重
kg/10a
上いも重
kg/10a
澱粉価
%
澱粉重
kg/10a
農林1号 1,256
(100)
10.3 117
(100)
749
(100)
12.3 85
(100)
1,530
(100)
12.4 174
(100)
エニワ 985
(78)
12.0 108
(92)
1,004
(133)
13.2 122
(144)
1,433
(94)
13.8 185
(94)
北海41号 928
(74)
12.4 106
(91)
840
(112)
14.9 117
(138)
1,381
(90)
14.9 192
(110)
  島松における生産力検定試験より抽出
  調査は8月上旬


 
 第2図 茎葉重増加曲線(昭39)



 第3図 いも重増加曲線



 第4図 澱粉価増加曲線



 第5図 澱粉収量増加曲線


 (2)栽植密度及び施肥量に関する試験
 第6、7表から密植増秀澱粉重が26%増加しているのが認められ、第8表~増日効果は天北で高く他場所ではとくによいという結果ではない。又減肥で天北では減収がみられないのは注目すべきである。


 第6表 栽植密度及び施肥量反応試験成績(昭和38年度)
系統名 試験区   10a当り上いも 〃中以上いも  
変黄期 茎長 茎数 重量 重量 1ヶ重 澱粉価 澱粉重
北海41号 A 10.1 92 3.0 4,269 3,583 106 2,959 95 84 17.6 595 109
B 9.26 83 3.3 5,351 3,840 102 2,898 86 72 17.5 634 106
C 10.2 121 3.5 3,923 4,104 102 3,674 95 105 18.0 698 118
D 10.5 106 3.8 5,152 4,609 108 3,943 101 89 17.3 751 119
農林1号 A 9.28 76 3.4 2,885 3,368 100 3,117 100 117 17.2 546 100
B 9.22 72 3.4 3,787 3,754 100 3,364 100 99 16.9 597 100
C 9.23 91 3.9 2,774 4,014 100 3,850 100 145 15.8 594 100
D 9.28 98 3.5 3,622 4,248 100 3,894 100 117 15.8 629 100
エニワ A 9.15 89 2.3 2,364 2,878 85 2,717 87 122 18.7 509 93
B 9.9 81 2.6 3,325 3,313 88 2,903 87 100 17.9 560 94
C 9.13 99 2.3 2,257 3,286 81 3,172 82 146 18.3 568 96
D 9.19 109 2.4 3,255 3,446 81 3,194 82 106 18.2 593 94
  ※・・・・・3区平均値

 第7表 増減収率表
系統名 上いも重 澱粉収量
B

A
C

A
D

A
C+D

A+B
B+D

A+C
B

A
C

A
D

A
C+D

A+B
B+D

A+C
北海41号 107 115 129 117 110 106 117 126 118 107
農林1号 111 119 126 116 108 109 109 115 107 108
エニワ 115 114 120 109 110 110 112 116 109 107
  A 標準区
B 密度倍、標肥区
B B+D

及び
(増肥) 密植効果
A A+C
C 密度標準、倍肥区
C C+D

及び
(密植) 施肥効果
A A+B
D 密度、肥料共倍量区
D

相乗効果
A


 第8表 施肥量に関する試験
場所 品種 5割増肥 標肥 5割減肥
上いも重 澱粉重 澱粉価 上いも重 澱粉重 澱粉価 上いも重 澱粉重 澱粉価
天北 北41 128 135 19.2 2,427 425 18.5 104 106 18.6
農1 104 96 13.9 3,568 500 15.0 76 79 15.0
十勝 北41 111 105 18.3 3,080 596 19.4 80 82 19.9
農1 102 89 15.8 2,955 535 18.1 89 87 17.9
  エニワ 105 98 17.6 2,962 558 18.8 87 89 19.3
根釧 北41 114 109 20.2 2,143 431 21.1 62 61 20.9
農1 116 113 16.3 1,536 243 16.8 59 60 17.3
エニワ 137 126 17.3 1,939 354 18.8 66 67 19.1
島松 北41 107 107 17.5 3,583 595 17.6      
農1 111 110 16.9 3,368 546 17.2      
エニワ 115 110 17.9 2,878 509 18.7      
  島松は1963年の成績、他は1964年
  5割増減肥は、標比に対する指数


 (3)青枯病(美深町)
系統名 S38地上部萎凋による 塊茎調査の
罹病株率
S  37
株数 罹病株数 同率 株数 罹病株数 同率
北海41号 1 18 1 5.6 72.2 1 20 18 90.0
2 19 8 42.1 94.7 2 20 20 100.0
3 20 10 50.0 95.0 3 20 7 75.0
農林1号 1 20 2 10.0 10.0 1 20 1 5.0
2 20 0 0 10.0 2 20 0 0
3 19 0 0 63.2 3 20 0 0
男爵薯 1 20 20 100.0 100.0 1 20 16 80.0
2 20 20 100.0 100.0 2 20 8 40.0
3 18 18 100.0 100.0 3 20 7 35.0


 (4)軟腐病(福岡)
系統名 昭   37 昭   38
接種試験 貯ぞう試験 圃場試験 判定 接種試験 貯ぞう試験 圃場試験 判定
北海41号 やや強 やや強 やや強 やや強
農林1号 やや強 やや強 やや強
エニワ やや強 やや強 やや強
男爵薯 やや強 やや強
  ※ 北海41号は、自然状態では罹病し難いが、芯部に菌が侵入すれば弱いようである。(S37)


 (5)バイラス病(岩手県)
系統名 病微別発現歩合 %
総株数 H LR ST M群 罹病株率
北海41号 60 41.7 23.3 18.3 0.0 58.3
農林1号 60 5.0 60.0 35.0 21.7 59.0
男爵薯 60 16.7 55.0 1.7 41.7 83.3
  ※ H:健全株、LR:Ieafroll、ST:streak、M群蓮葉、縮葉、微斑モザイク


 罹病株率による分類
罹病株の多少 罹病株率 % 品   種   系   統   名
1.ほとんど罹病しない 0~5 -
2.極めて少ないもの 6~10 -
3.少ないもの 11~20 Essex
4.やや少ないもの 21~40 -
5.中位のもの 41~60 HK-41
6.やや多いもの 61~81 HK-39、41956、HK-40、HK-38、SH-463、SH-464
7.多いもの 81~90 男爵、SH-460、SH-461、HK-37、長系6号
8.極めて多いもの 91~95 農林1号、SH-460、長系50号
9.殆ど全株罹病のもの 96~100 SH-462、シマバラ、西海7号、SH-465、長系49号、長系51号
  HKは北海、SHは島系の略、以下同様。


 罹病度による分類
罹病程度 罹病度 品   種   系   統   名
1.極めて低いもの 0~0.5 Essex
2.低いもの 0.6~1.0 -
3.やや低いもの 1.1~1.5 男爵、HK-40、HK-41、HK-38
4.中位のもの 1.6~2.0 HK-39、41956、SH-463、長系49号、長系50号
5.やや高いもの 2.1~2.5 農林1号、SH-461、SH-464、HK-37、シマバラ、西海7号、
SH-466、長系51号、長系52号
6.高いもの 2.6~3.0 SH-460、SH-462、長系46号
7.極めて高いもの 3.1~4.0 SH-465


 各Virus病発生率(島松生検圃場)
年次 病微 HK-41 HK-41 農1 エニワ 紅丸 ユキジロ ニセコ リシリ オオジロ 男爵

36
L、R 2     4   2        
STREAK 6 2         2 2    
CRINKLE 2   2   2   4   2 2
M、M                    
10 2 2 4 2 2 6 2 2 2
37 L、R         2     2    
ST   5 2   2 2 4      
C   2   2     8      
M、M         2          
0 7 2 2 6 2 12 2 0 0
38 L、R     5 9   3 2 10   2
ST   10 6     3 17 4 4 2
C             3      
M、M         10   3      
0 10 11 9 10 6 25 14 4 4
39 L、R 2   5 5 5 6 5 3 5 2
ST   6   2     4   3  
C         2 2        
M、M         8   14      
2 6 5 6 15 8 23 3 8 2

(平均)
L、R 0.9   2.6 4.8 1.7 3.0 1.7 4.1 1.3 0.9
ST 1.3 6.1 2.2 0.4 0.4 1.3 7.4 1.5 1.9 0.4
C 0.4 0.4 0.4 0.4 0.9 0.4 3.5   0.4 0.4
M、M         5.4   5.0      
2.6 6.5 5.2 5.6 8.4 4.8 17.5 5.6 3.7 1.7
  註 (1)L、R-Ieafroll ST-streak C-crinkle M、M-rugose,midmosaic,xmosaicなどを含む。
     (2)供試株数は、昭和36、37年は99株、昭和38、39年は132株
      この表から平均6.5%で農1、エニワに比しとくに多くはなく内容的にもSTREAKが大部分をしめあつかい易い。


 (6)疫病(長野県管平)
罹病程度(抵抗性) 品   種   及   び   系   統   名
昭   和   37   年 昭   和   38   年
最も弱いもの 男爵、HK-40 男爵
弱いもの HK-37、HK-38、HK-39、SH-467 HK-38、HK-39、HK-40、SH-467、
長系46、49、50、55号
中程度のもの 農林1号、SH-461、-462、長系49、50、51号 農林1号、SH-468、SH-470、
長系-53号、チヂワ
強いもの HK-31、SH-460、SH-464、
SH-465、-466、シマバラ、長系46、52号
HK-31、HK-41、SH-469
最も強いもの HK-34、HK-41、西海7号  


 (7)ネグサレ線虫
品種及び系統名 1960 1961 1962 1963  
HK-41     C C ※A・・・強
  B・・・中
  C・・・弱
農林1号 C C C C
男爵薯 C B C B
pungo A A   A


 (8)塊茎の成分
品種 比重 ライ
マン
% % % % % % % % %
可溶性
無窒素物
澱粉価 水分 澱粉 直糖 デキス
トリン
粗蛋白 粗脂肪 粗繊維 粗灰分
農 林 1 号 1,08797 15.7 78,534 16,893 0.441 0.117 1,697 0.063 0.370 0.786 18,550
エ ニ ワ 1,10577 19.7 75,862 18,852 0.402 0.068 2,050 0.015 0.360 0.926 20,787
北 海 41 号 1,09756 17.8 77,124 18,065 0.305 0.085 1,901 0.030 0.345 0.821 19,779
Hochprozentige 1,12746 24.1 69,713 23,916 0.410 0.253 2,140 0.040 0.424 1.028 26,655
 4品種とも、ほぼライマン価程度の澱粉を含むことがわかるが、その他の成分ではとくに顕著な違いはみられない。


 (9)澱粉の粒度
品   種 粒   度   分   布 μ.μ
粒  数  比 体  積  比 粒度 平均
粒径
平均
粒重計
(GreenFilter)
白度
20μ以下 21~40 41μ以上 20μ以下 21~40 41μ以上
農 林 1 号 37.0 41.5 21.5 3.53 27.62 68.86 96.5 28.2 47.2 86.5
エ ニ ワ 41.0 41.0 18.0 4.44 30.54 65.02 96.5 26.4 45.2 87.0
北 海 41 号 35.0 49.0 16.0 3.65 43.33 53.03 96.4 26.7 41.0 86.8
Hochprozentige 26.0 46.5 27.5 1.46 16.64 81.90 98.5 32.6 56.3 83.8
 粒度は分布からわかるように大きい粒は余り多くなく21~40μの中位のものが大部をしめ、20μ以下の小さいものは多くはなく普通である。


Ⅳ普及奨励上の注意事項
<用途>
 澱粉原料専用であるが食味がよいので一部自家食用に使いうる。
<地域適応性>
 本種は農林1号はもちろんエニワより適応性が大と考えられる。したがって道内の主要澱原地帯にはどこでも推奨しうる。
<栽培>
 栽植密度は倒伏のおそれのない場合、密植(10a当り5,000本以上)で増収が期待でき、矢田やや多肥向のように思われる。収穫にあたっては薯着は密ではあるが長いもなので配慮すること。多肥で2次生長又は奇形が生ずることあり。収穫時及び貯蔵後のいも腐敗は多くない。
<疫病防除>
 疫病抵抗性遺伝子R2・R4をもつものでrace2.4又は1.2.4.が発生しなければ全く罹病しないのであるが、残念ながらこのraceは突然変異して発生し易いようなので薬剤散布を省略しない方がよい。防除効果は大きい。
<収穫>
 本種は茎葉の枯凋はおそく、極晩生に分類されるが、澱粉集積はおそくないので茎葉枯凋をまたずに堀取りしてもよい。
<茎葉処理>
 今後出される品種は、疫病抵抗性が強く附与されるため、この北海41号の様に、熟期は早いが茎葉枯凋は遅いという場合が多くなる。ために茎葉処理を適当に行ってから収穫に入ることが必要となる。このためForage chopperで細片にして畑に還元するか、薬剤を使って枯らすこと等を考えるべきである。
<作付割合>
 紅丸、農林1号の一部さらには普及途上にあるエニワとも転換する。
 本質は別として茎葉枯凋期は遅いので一応極晩生種としてとり扱い、したがって品種の作付割合は出荷及び工場操業の点から計画的に決定すること。