【普及奨励事項】

亜麻輸入品種「Fibra」に関する試験
北海道農業試験場作物部亜麻研究室
北海道立十勝農業試験場
北海道立北見農業試験場

Ⅰ来歴
 昭和37年帝国繊維がオランダから輸入したもので、昭和37~39年の3ヶ年、生産力及び特性検定試験を行ってきた。オランダにおける育成者はP.J.Hylkemaで、交配組合せは〔(Hollamdia×Egyptian)×Concurrent〕×Russianで、1945年(昭和20年)~1961年(昭和35年)に交配育成が行われた。

Ⅱ特性の概要並びに奨励態度
1.フィブラの生育は緩慢で、ウィーラより生育初期~中期の草丈は低いが、開花期前後から伸長が旺盛となり収穫期の草丈はウィーラより高い。
2.開花始はウィーラより約3日遅く、収穫期は1~2日おそい。
3.茎収量はウィーラと同程度乃至多収であるが、粉実収量はやや少ない。施肥量に対する反応はウィーラより鈍い。
4.繊維歩留はウィーラより高く、繊維収量は著しく多い。繊維品質はウィーラよりやや良い。
5.耐倒伏性はウィーラと同程度乃至やや強い。(但し十勝においては挫折減少が見られる。)
6.収病抵抗性は明らかにウィーラより強いが、立枯病に対しては場所間で差異があり、琴似で強く、北見でウィーラ同様弱い。(この点については、菌系によるか、その他環境条件によるか明らかでなく今後検討を要する点である。)
7.花色は白色、葯は青色でウィーラと同じである。千粒重はウィーラより僅かに軽い。
8.収穫期近くに急激に黄熟し色上がりが沃茎品質は良い。
 以上のような特性から、ウィーラに代わって全道一円に奨励する。

Ⅲ栽培上の注意
1.立枯病に抵抗性は(場所間に差あるが)「あおやぎ」のように強くないので輸作年次に注意を要する。
2.施肥に対する反応は、をー裸より鈍いが大差はなく施肥量はウィーラに準じてよい。
3.初期生育が緩慢でかつ熟期がやや晩いのでつとめて早期播種すること。


Ⅳ試験成績

 1.生育調査(3ヶ年平均)

品種名 場 所 開花(月日) 草丈(㎝) 収穫期
(月日)
生育
日数
(日)
倒伏
30日目 45日目 60日目 収穫期
フィブラ 琴 似 6.27 7.12 4.0 12.8 54.8 80.4 7.30 95 無~少
十 勝 6.30 - 4.6 15.5
*
46.5
**
94.9 7.28 94
北 見 7.5 - 5.0 - - 85.6 - - 少~中
平 均 7.1 (7.12) 4.5 (14.2) (50.7) 87.0 (7.29) (95)  
ウィーラ 琴 似 6.24 7.11 4.6 14.3 58.4 76.0 7.29 94
十 勝 6.28 - 5.5 16.2
*
50.3
**
89.7 7.26 92
北 見 7.3 - 5.6 - - 83.5 - - 中~多
平 均 6.28 (7.11) 5.2 (15.3) (54.4) 83.1 (7.28) (93)  
  * 50日目 フィブラ:30.6   ** 開花期 フィブラ:82.4
         ウィーラ:32.4           ウィーラ:84.1


 2.個体調査(3ヶ年平均)

品種名 場 所 全長(㎝) 茎長(㎝) 分枝(本) 蒴数(個) 茎の太さ(mm) 千粒重(g)
フィブラ 琴 似 80.4 69.1 2.9 3.7 1.43 4.82
十 勝 93.2 48.6 2.3 3.0 1.63 -
北 見 89.6 79.2 4.1 3.0 1.88 3.79
平 均 87.7 77.6 3.1 3.2 1.65 (4.30)
ウィーラ 琴 似 76.0 64.0 2.8 3.7 1.44 4.96
十 勝 88.7 76.1 2.4 3.2 1.63 -
北 見 83.5 71.9 3.7 2.9 1.74 4.05
平 均 82.7 70.7 3.0 3.3 1.60 (4.51)


 3.収量及び繊維調査

品種名 場 所 収    量    (10a当) 繊 維

(㎏)
同百分比
(%)
子実重
(㎏)
同百分比
(%)
繊維
(㎏)
同百分比
(%)
歩留
(%)
品 質
フィブラ 琴 似 488.7 102 18.7 95 14.6 128 21.12 L2下
十 勝 532.0 106 48.2 81 96.7 117 18.02 L3
北 見 586.0 123 47.5 107 120.5 140 20.60 F2
平 均 535.6 110 68.1 94 107.3 128 19.91  
ウィーラ 琴 似 480.6 100 114.1 100 81.6 100 16.80 L3上~中
十 勝 502.0 100 59.2 100 82.9 100 16.03 L3
北 見 478.0 100 44.5 100 86.2 100 18.00 F2
平 均 486.9 100 72.6 100 83.6 100 16.94  


 4.耐病性検定
 立枯病罹病率(3ヶ年)

品種名 場所 供試個体(本) 罹病個体(本) 罹病率(%)
フィブラ 琴似 82.8 12.7 15.3
北見 (100) (-) (93.0)
平均      
ウィーラ 琴似 49.1 26.0 53.0
北見 (100) (-) (92.0)
平均      
あおやぎ 琴似 (78.8) (5.3) (6.7)
北見 (100) (-) (23.0)
平均      


 銹病罹病率(3ヶ年)

品種名 場所 供試本数(本) 罹病個体(本) 冬胞子堆数(コ) 罹病率(%)
フィブラ 琴似 44.3 0.8 0.5 1.81
十勝 (95) (3) (3.3) (3.1)
平均        
ウィーラ 琴似 39.8 4.0 1.2 10.01
十勝 (62) (45) (2.8) (72.5)
平均        
あおやぎ 琴似 (40.0) (0.3) (0.3) (0.1)
十勝 (82) (1) (3.0) (1.2)
平均        


 5.参考成績(現地試験)

品種名 場所 収穫期
(月日)
草丈
(㎝)
収    量    (10a当) 繊 維 倒伏 茎品質
(等)
茎(㎏) 百分比(%) 子実重(㎏) 百分比(%) 歩留(%) 品質
フィブラ 琴似 8.5 96.8 579.0 111 73.5 100 23.78 2.31 1 3.6
十勝 8.9 101.7 515.7 102 27.9 102 - - -
北見 - (98.0) 435.0 110 (35.0) 93 - - - 3.8
平均 (8.7) (98.8) 509.9 108 (45.5) 98       (3.7)
ウィーラ 琴似 8.4 93.3 521.8 100 74.5 100 20.90 2.54 2 4.1
十勝 8.8 98.6 504.1 100 27.4 100 - - -
北見 - (92.5) 396.3 100 (37.5) 100 - - - 4.3
平均 (8.6) (94.8) 474.1 100 (46.5) 100         (4.2)
  注 琴似、十勝は昭和39年成績、北見は昭和37~39年3ヶ年平均、琴似は4ヶ所平均、十勝は7ヶ所平均、北見昭和37年は4ヶ所平均、昭和38、39年は6ヶ年平均