【普及奨励事項】
加工用トマトウルバーナー(Urbana)に関する試験成績
道立中央農試園芸部
道立中央岩宇園芸試験地
道立道南農試園芸科
道農試園芸作物第2研究室
北海製缶株式会社缶詰研究所

Ⅰ 来歴と試験経過
 米国イリノイ農試で育成(1950年頃の育成で、その経過は詳かでないが、ルイジアーナピンク、プリッチヤード及びイリノイ育成系統などが交配親として使われたものと考えられている)されたもので、1957年小林泰氏(北海製缶株式会社缶詰研究所主任)により導入され、以来同研究所ほ場で試作の結果、本道における無支柱無整枝栽培用品種として有望を思われたので、1962年以来農試各場において検討し、優良と認められたものである。

Ⅱ 特性概要
 ・熟期-早生の晩に属する
 ・茎葉-稚苗期の生育は旺盛である。芯止り性であるがその程度は弱いので茎葉の発育は土壌の肥沃度や施肥量などにかなり鋭敏に反応する。リーフカバーは普通から良い方である。
 ・果実-果形は扁円球、大きさは中位(平均100g前後)に属し、ひだの発生は稀で花痕は小さい。蒂ばなれば中位、硬さは加工用としては軟かい方である。
 Standard Greenであるが着色性は良い。果色は濃紅色でジュースの色調もよい。
 裂果や日焦けの発生は加工専用種としては多い方に属するが、みのりなどに較べると少ない。裂果では放射状亀裂の発生が多い。
 ブリックス、色調など加工形質や食味もよい。
 ・耐病性-疫病に対しては中位であり、腐敗果の発生もみのり、ファイアボールなどより少ない。
 以上のように本道における無支柱無整枝栽培の加工用特にジュース用品種として適するものである。

Ⅲ 普及上の注意
 1. 芯止まり性が強くないにで肥沃条件下では茎葉が繁茂し、結実を低下し、疫病の発生を促し、減収を招きやすいので施肥に注意し、特にNの過用は慎まねばならない。
 2. 地力中位のほ場の場合、10a当り施肥量はN6~10kg(堆肥の成分は1/2加算)、P2O5、K2Oはそれぞれ15~20kgを一応の基準とする。
 3. 無支柱栽培の場合、排水のよいほ場を選び、畦巾120cm株間45cmを基準とし、播種期は3月末~4月上旬とする。
 4. 適応地域 道中央部(石狩・空知・日高)以南及び上川、留萌管内の富良野盆地に準ずる気象条件の地帯。

Ⅳ 試験成績
 第1表 生育調査
品 種 名 定植時の苗 開花始 開花期 収穫始


(cm)


(cm)


第1節
花位
園芸部 園 研
岩 宇
園芸部
38年
(月日)
39年
(月日)
38年
(月日)
39年
(月日)
38年
(月日)
39年
(月日)
38年
(月日)
39年
(月日)
ファイアボール 30.4 43.9 9.4 6.9 5.24 6. 8 6. 8 6.10 6. 4 6.15 6.16 6.16 8. 5 8.15 8.10
ウルバーナ 24.4 39.6 9.1 7.8 6. 3 6.15 6.15 6.16 6.13 6.21 6.19 6.20 8.10 8.15 8.13
み の り 28.5 40.0 9.0 8.0 6. 6 6.17 6.12 6.14 6.12 6.18 6.18 6.18 8.14 8.20 8.17
ロ ー マ 26.6 39.6 10.0 8.0 6. 2 6.23 6.12 6.16 6.13 6.22 6.20 6.21 8.20 8.20 8.20
レッドトップ 23.2 33.7 9.0 7.0 6. 2 6.20 6.12 6.11 6.11 6.16 6.16 6.16 8.10 8.20 8.15
東北5号 6. 5 6.10 6. 8 6.19 (6.19) 8.15 (8.15)

品 種 名 高  さ 拡  い
姿

リーフカバー 芯止り性 耐病性(疫病)
園芸部
(cm)
岩宇
(cm)
園芸部
(cm)
岩宇
(cm)
園芸部
岩宇
園芸部 園研 岩宇 園芸部
ファイアボール 39 37 115 117 不良 不良 1.03 3
ウルバーナ 73 52 123 97 1.92 2
み の り 46 32 133 75 ヤヤ拡 0.75 1
ロ ー マ 67 52 140 87 1.88 3
レッドトップ 52 38 142 87 2.27 2
東北5号 43 33 112 85 ヤヤ強 0.68
  注) 耐病性疫病指数 3:株の上部に病小葉あり遠くより変色の認められるもの
                2:1株30枚位の病小葉の認められるもの
                1:数枚のみ認められるもの

 第2表 果実特性
品 種 名 38年良果率(個数比率) 同左39年 1  個
平均重
(g)
ブリッ
クス
果実
硬度
へたの
離 脱
ひだの
多少






未熟
果色




裂果率(北岳) 裂果症状別指数(北) 日やけ
果率
(北岳)
園芸部
(%)
園研
(%)
岩宇
(%)
北岳
(%)
園芸部
(%)
園研
(%)
岩宇
(%)
北岳
(%)
道南
38年 39年 平均 C R S
ファイアボール 41.2 30.0 85.5 47.0 47.0 71.4 84.9 61.3 98.8 4.22 8.0 ヤヤ難 扁円 朱赤 UG 19.4 34.5 27.0 0.30 0.88 0.72 13.5
ウルバーナ 67.9 41.0 95.5 59.0 32.0 88.4 92.4 80.5 89.4 92.2 4.75 7.0 濃紅 SG 46.2 54.0 50.0 1.00 0.26 16.6
み の り 57.4 44.0 84.9 43.0 77.0 85.9 75.2 85.6 96.9 4.44 6.3 60.9 54.6 57.8 0.08 1.43 0.48 32.9
ロ ー マ 74.4 52.0 95.2 64.0 29.0 88.3 89.6 82.4 91.5 50.7 4.68 10.0 卵形 朱赤 UG 3.0- 2.7 2.9 0.02 2.0
レッドトップ 75.6 36.0 92.8 55.0 38.0 87.1 92.0 61.0 93.0 37.9 4.66 8.3 3.0 5.0 4.0 0.01 0.06 3.6
東北5号 44.0 74.7 83.8 74.0 86.9 78.8 4.20 8.0 扁平球 濃紅 29.4 (29.4) (0.09) (0.28) (0.46) 17.9
  注) C…同心円状、R…放射状、S…側壁が裂果するもの。
     UG…未熟果の果面が全面淡緑色を呈するもの。
     SG…一般生食用品種のように肩の部分の緑が濃色なもの。

 第3表 加工特性(北岳 9月上旬の原料)
品 種 名 ブリックス指度 PH 酸  度
クエン酸
(%)
パネル
テスト
得点
38年 39年 平均 38年 39年
ファイアボール 4.0 4.0 4.0 4.20 4.47 0.38 93
ウルバーナ 4.8 4.6 4.7 4.20 4.54 0.42 68
み の り 4.6 4.4 4.5 4.33 4.45 0.31
ロ ー マ 5.0 4.6 4.8 4.35 4.43 0.32
レッドトップ 4.6 4.4 4.5 4.33 4.34 0.40
東北5号 4.4 (4.4) 4.31 0.40
大  豊 5.5 (5.5) 4.40 0.35 92
  注) パネルテスト得点は少ない程上位

品 種 名 調
L a b a/b Lb/a
38年 39年 38年 39年 38年 39年 38年 39年 38年 39年
ファイアボール 23.9 26.0 17.70 19.9 10.8 11.1 1.65 1.80 14.5 14.6
ウルバーナ 24.4 26.2 20.85 21.7 10.4 10.9 2.01 2.00 12.1 13.0
み の り 25.7 27.5 21.65 19.5 11.8 11.5 1.84 1.70 14.0 16.2
ロ ー マ 26.2 -  18.9 -  12.1 -  1.60 -  16.8
レッドトップ 27.0 17.9 11.9 1.50 17.8
東北5号 26.5 20.9 12.7 1.70 18.3
大  豊 26.7 21.2 12.1 1.80 15.2
  注) aが高いほど赤が強く、bが高いほど黄が強い。
     a/bが高いほど赤くよい、Lb/aが低いほど色はよい。

 第4表 健全果収量(kg/10株3区の平均値)
 (1) 早期収量(8月31日まで)
品 種 名 38年 39年
園芸部 園研 岩宇 北岳 平均 同左10a
換算1.852株
園芸部 園研 岩宇 北岳 平均 換算
当量
2.083株

道南
ファイアボール 8.66 14.84 15.47 7.06 11.50 2.131 100 9.73 8.97 11.75 1.77 8.05 1.678 100
ウルバーナ 10.22 4.76 8.15 4.79 6.98 1.293 61 7.03 6.12 9.59 1.35 6.02 1.254 (5.21) 75
み の り 4.94 6.06 10.78 2.82 6.15 1.139 53 (3.82) (4.18) (0.65) (6.01) (4.10) 75
ロ ー マ 0.70 1.34 5.74 0.58 2.09 387 18 1.11 2.08 4.09 0.11 1.85 385 (1.97) 23
レッドトップ 2.35 3.26 8.95 0.96 3.88 719 34 1.35 4.15 9.64 0.31 3.86 805 (3.84) 48
東北5号 5.28 7.34 10.01 2.60 6.31 1.314 (6.50) 78
L S D % ××
4.97
××
6.87
×
4.37
××
2.78
××
2.15
××
3.46
××
4.73
××
3.72
××
1.43
××
1.61
××
(2.72)
××
1.61
  注) △道南農試は統計処理に入っていない。

 (2) 全収量
品 種 名 38年 39年
園芸部 園研 岩宇 北岳 平均 10a当
換 算
重 量
園芸部 園研 岩宇 北岳 平均 10a当
換 算
重 量

道南
ファイアボール 18.06 16.33 20.55 16.74 17.91 100 (1.852)
3.319
18.65 18.36 26.10 13.99 19.27 (2.083)
4.015
100
ウルバーナ 29.01 6.84 14.56 25.11 18.87 106 3.497 20.97 25.95 28.59 14.01 22.37 4.662 (16.03) 116
み の り 22.42 8.90 19.62 19.53 17.61 98 3.263 (17.70) (21.12) (9.91) (16.23) 3.405 (16.26) 85
ロ ー マ 17.61 2.54 14.89 15.37 12.60 70 2.334 13.53 19.13 27.94 4.78 16.34 3.519 (14.59) 85
レッドトップ 22.23 4.79 17.87 15.88 15.18 85 2.814 14.20 18.79 28.07 6.52 16.89 3.651 (9.55) 88
東北5号 14.37 18.90 23.38 13.46 17.52     91
L S D % ××
6.55
×
5.17
×
4.10
××
7.88
××
9.76
×
6.60
××
4.46
×2.03

   DF  F
38年早期 38年全期 39年早期 39年全期
品    種 4 ××
40.243.1
×
3.136
××
32.485
××
4.349
場    所 3 ××
29.574.0
××
21.907
××
72.664
××
42.602
ブ ロ ック 2 3.137 2.547 ××
5.537
品種×場所 12 3.466.7 1.886 ××
3.453
1.358
誤    差 38
全    体 59

 第5表 耕種概要
年  次 38年 39年
園芸部 園研 岩宇 北岳 園芸部 園研 岩宇 道南 北岳
播 種 期 3.29 3.29 3.22 3.14 4.1 4.3 4.1 4.1 3.30
育苗日数 60日 65 72 72 68 60 64 61 61
定 植 期 5.29 6.4 6.3 5.25 6.8 6.2 6.5 6.2 5.30
畦巾×株間 120×45 120×45 120×45 120×45 120×40 120×40 120×40 120×45 120×45






銀水銀 0 5 0 0 0 5 0 0
4 0 3 7 7 0 5 8
ダイセン オーソ2.2 2 0 2 1 1 0 1
8 7 3 9 8 6 5 8 9








堆  肥   200.0 225.0 150.0 200.0 187.5
石  灰 消  25.0 1.7 4.0 7.5 消 25.0 炭カル
   10.0
炭カル
   10.0
15.0
魚  粕 6.0 1.125 大豆粕
   2.0
8.0 1.2
エスサン 2.0 油粕2.0
硫  安 4.0 0.4 1.875 1.0 1.0 6.2 1.5
尿  素 0.85 1.0 0.65 1.6 1.0
過  石 4.7 4.45 1.6 ヨーカリン
    8.0
7.3 4.9
熔  燐 4.7 1.5 4.0 8.90 1.2 4.9
硫  加 2.8 1.05 3.0 2.25 1.61 4.0 4.0 1.2






(kg)
N 1.9 1.25 1.1
P 2.4 3.00 2.0
K 1.9 2.00 2.0
土壌条件 埴壌土 埴壌土 砂土 壌土       火山灰土  

 第6表 ジュース加品調査39年(北海製缶KK 缶詰研究所)
品 種 名 原 料
採取期
(月日)
色  調 酸  度
クエン酸
(%)
PH Brix
(20℃)
備 考
L a b a/b Lb/a
ファイアボール 9. 1 25.8 20.7 10.7 1.9 13.4 0.36 4.53 4.2 無   塩
9. 8 26.1 19.1 11.4 1.7 15.7 0.40 4.40 3.8
9.14 27.0 19.0 11.7 1.6 16.7 0.38 4.26 4.0
9.21 25.2 18.8 11.4 1.7 16.7 0.39 4.30 4.1
9.28 27.4 18.5 12.5 1.5 18.6 0.38 4.40 4.5
ウルバーナ 9. 1 25.6 20.8 10.3 2.0 12.5 0.37 4.58 4.3
9. 8 26.7 22.6 11.4 2.0 13.4 0.46 4.50 4.8
9.14 27.8 19.8 13.6 1.5 19.2 0.31 4.40 4.4
9.21 27.5 19.5 13.8 1.4 19.5 0.36 4.30 4.8
9.28 27.9 18.5 12.5 1.5 19.0 0.41 4.39 4.8
市販ジュース
道  内  産
38.8.29 27.8 20.4 12.4 1.6 16.4 0.43 4.32 4.0 原料ジョンベア
38.9.14 29.0 19.6 13.4 1.5 19.8 0.50 4.25 6.2  
39.9.12 28.0 21.1 12.8 1.6 17.0 0.39 4.39 4.7   
39.9.18 28.5 20.9 13.4 1.6 18.3 0.44 4.23 5.4  
市販ジュース
本  州  産
38.8.21 26.5 19.8 11.5 1.7 15.4 0.42 4.28 7.8 原粒大豊
38.8.13 26.7 20.1 10.7 1.9 14.2 0.44 4.30 4.9


○施肥量試験(昭和39年度)園芸部
 1. 試験目的 加工用トマトの肥培に関する資を得る。
 2. 試験方法
   供試品種 ウルバーナ
   区   制 1区6株4.5m2 3反復
   耕種概要 品種試験39年度園芸部の耕種法に準ずる。
   試験区名
区記号 施肥要素量(kg/10a) 使用肥料
N P2O5 K2O
A 1 5.0 10.0 10.0 N:硫安
P:燐酸
  過石
K:硫加
B 1 12.5 10.0 10.0
C 1 20.0 10.0 10.0
A 2 5.0 20.0 20.0
B 2 12.5 20.0 20.0
C 2 20.0 20.0 20.0
O 1 0 10.0 10.0
  注) 堆肥の成分は換えず。O1は1反復のみ。

 3. 試験結果
 生育経過
区記号 7月17日 1区3株3反復平均 8月19日 1区3株1反復 10月1日
高さ
(cm)
拡さ
(cm)
第1花房
果数:花数
第2花房
果数:花数
側枝数
最下位
側枝長
(cm)
高さ
(cm)
拡さ
(cm)
リーフ
カバー
果実数
(ヶ)
側枝数
草丈
(cm)
茎葉重
(g)

A 1 46.5 73.3 5.4 3.3 6.3 3.3 6.2 44.0 56.0 150.3 不良 63.3 134 7.3 95.7 838 135
B 1 44.7 66.9 6.3 3.0 5.4 2.2 6.3 38.6 71.3 130.0 52.0 110 8.0 96.1 922 148
C 1 42.9 68.3 4.9 2.9 5.8 2.7 5.7 39.1 70.0 130.0 52.3 111 5.3 101.1 942 152
A 2 53.5 73.6 6.9 4.7 5.1 2.7 7.9 44.9 61.0 146.6 63.0 133 7.0 102.3 741 120
B 2 48.4 78.4 5.2 3.4 5.4 2.1 6.6 46.7 59.0 130.0 ヤヤ過 56.7 120 9.3 105.8 635 102
C 2 51.5 74.0 5.6 3.9 5.4 2.9 7.1 38.7 54.0 155.0 ヤヤ過 56.0 116 6.0 123.8 1.003 163
O 1 38.9 56.5 4.6 3.9 4.6 2.0 6.0 36.3 62.3 120.3 47.3 100 6.7 94.9 621 100
  注) ※:不良=主枝第1・2花房が露出、過=花房が全く見えない。

 収量
区記号 8月31日まで 全期収量(9月22日まで)
個数
(ヶ)
個 数


全収個
(%)
収量
(kg)

個数
(ヶ)
収量
(kg)
1個
平均重
(kg)
10a当収量
(トン)
A 1 60 30.5 7.21 107 197 23.00 116.7 5.11 140
B 1 61 35.7 7.24 108 171 16.08 94.0 3.57 98
C 1 40 28.8 5.07 76 139 15.83 113.8 3.51 96
A 2 71 34.0 9.37 140 209 24.13 115.4 5.36 147
B 2 67 36.4 8.47 126 184 22.43 121.9 4.98 136
C 2 70 40.5 8.75 130 173 20.67 119.5 4.59 126
O 1 50 36.5 6.71 100 137 16.45 120.1 3.65 100