【普及奨励事項】
二毛作田における水稲の栽培法に関する試験
(そさい跡地における水稲晩植施肥法試験)
北海道立道南農業試験場

(1)目的
 水田前作そさい跡地が水稲の生育に及ぼす影響を調査し、その施肥法を検討する。
 即ち第1図に示すとおり渡島地方に於ける春季並に秋季の天候が比較的良好で特に春季4、5月の日照時数多く雨量も少ない温暖な天候で、この期間を利用して前作にそさいを栽培し、その後作に水稲を栽培する二毛作栽培が可能と思われる。
 前作にそさいを栽培した場合、跡作の水稲の移植期は20~30日の遅れとなり又跡作の土壌は肥料の残効は大きいと思われるのでこれらについて検討してそさい跡地に於ける安定した水稲栽培法を確立しようとする。

(2)試験方法

 ⅰ)試験区別
前作物 後作物 実施年次
作物名 施肥量 残効 基肥N 期肥P 基肥K 追肥N 36年 37年 38年
白菜 N 2.63k   0 0.55 0.4 0
P 2.05   0.9 0.55 0.4 0
K 2.50 0.7 0.5 0.55 0.4 0
堆肥 300   0.7 0.55 0.4 0
    0 0 0 0
    0.3 0 0 0 ×
    0.5 0 0 0 ×
    0.5 0 0.4 0 × ×
    0.5 0.55 0 0 × ×
甘藍 N 1.58   0 0.55 0.4 0
    0.3 0.55 0.4 0
P 2.05   0.5 0.55 0.4 0
K 2.50   0.7 0.55 0.4 0
  0.5 0 0 0 0
    0.3 0 0 0 ×
    0.5 0 0 0 ×
    0.5 0 0.4 0 × ×
    0 0.55 0.4 0 × ×
無作   0 0 0 0 0 × ×
    0.7 0.55 0.4 0
    0.7 0.55 0.4 0.2 × ×
普通植   0 0.7 0.55 0.4 0
    0.9 0.55 0.4 0 ×
  備考 残効についてはE項参照
      ×印は実施せず


 ⅱ)1区面積及区制 12m2 2区制
 ⅲ)供試品種 36、37年 南栄
           38年 南栄・渡育149号・ミチヒカリ


  供試品種の特性
品種名 熱期 草型 耐倒伏 耐冷 耐病
南 栄 中生 偏重 ヤ強 ヤ強
渡度149号 穂数
ミチヒカリ 中生の早 中間 ヤ弱


 ⅳ)耕種法

  イ 苗代
移植時期/項目 播種期
(月日)
苗代日数
(日)
基肥 g/m2 追肥 播種量(L) 様式
堆肥 硫安 過石 硫加 硫安 期日
(月日)
晩   植 5.1 50 1,100 114 171 50 60 5.30 0.16 条播
普 通 植 4.23 30 1,100 114 171 50     0.28 散播



  第1図 渡島地方に於ける気温と二毛作田との関係(大正元年~昭和36年平均)


  第2図 平年堆肥平均気温比較 (平年は明44~36平均)


  第3図 平年対比日照時間数比較 (平年は36年間平均(S1~36))


  第4図 平年対比降水量 (50年間平均)


  ロ 本田
移植時期/項目 移植期(月日) 栽移様式
晩   植 6.20 30㎝×12㎝ 3本植
普 通 植 5.23 30㎝×15㎝ 3本植


(3)試験並に生育経過の概要

  第1表 移植時の苗の素質(南栄)
移植時間/項目 草丈(㎝) 苗令(葉) 茎数(本) 乾重
36 38 36 38 36 38 36 38
晩   植 28.0 24.2 6.9 6.6 2.8 2.8 - 5.70
普 通 植 - 11.8 - 4.1 - 1.0 - 1.55


 三ヶ年共に苗代時の天候は、ほぼ重蝶に経過したので又晩植は普通播熟苗でもあるので苗の生育は良く普通植に比べ大苗が得られた。
  (イ) 36年度 苗代期間本田期間を通じ収支高温に経過したので生育は促進し極めて順調であった。しかし出穂後しばしば降雨があり倒伏の傾向があったが、これを倒伏防止網で防止した。白菜跡区は特にN過多の傾向が強く甘藍跡もN増量により同様の傾向を示した。収穫直前にイモチ病の発生を見たが被害は軽微であった。
  (ロ) 37年度 苗代より7月末までは高温多照であったが、8月以降は天候不順多雨に経過したので、イモチ病が発生、倒伏した区も見られた。
  (ハ) 38年度 南栄の外に熟期の稍早いミチヒカリ、倒伏に強い渡育149号を供試した。
 苗の生育は順調であったが、移植直後、多雨寡照の不順天候となり本田初期生育は不良であった。しかし7月下旬以降の夏型の天候により生育は挽回した登熟期間は降雨が少なかったので倒伏も少なく又病虫害の被害は皆無であった。
 尚、供試圃場の土壌の理化学性は次の通りである。

PH Y
1
C
(%)
N
%
C/N H
%
置換
容量
(ml)
置換性塩基
mg/100g
1/5NHCl
mg/100g
吸収係数
H2O Kcl Cao Mgo P2O5 K2O N P2O5
5.3 4.2 5.25 1.78 0.15 9.3 1.8 25.8 232.40 85.23 15.2 2.3 259 545

乾土 細土百分中 (日本農学会法)
効果 2.0~0.25
mm
0.25~0.05
mm
0.05~0.01
mm
0.01<
mm
6.0 20.81 20.32 38.62 20.25


(4)試験結果
 A そさい跡地に於けるNの施用量
  ①生育時期
   イ)晩植は出穂期で普通植に比べ5~7日の遅れであるが成熟期は9~14日遅延日数が多くなっている。従って晩植の登熟日数は普通植に比べ4~7日多く要する。
   ロ)施肥量間ではNの施用量の増加により遅延が大きくなりNの施用量0.25kg/a増により約1日の遅れである。
   ハ)前作物別では無前作、甘藍、白菜跡地と残効の多い跡地程遅れた。無前作と甘藍とでは0~4日、甘藍と白菜とでは0~1日の差が見られた。
   ニ)品種間ではミチヒカリ早く次で渡育149号南栄が最も遅れた、渡育149号はNの増量により生育は特に遅れる様であった。
   ホ)年次別では、高温年で生育差が少なく不良年では差が大きい。


  第2表 白菜、甘藍跡地に於けるNの施用量別出穂期成熟期
項    目 出穂期  (8月 日) 成熟期  ( 月 日)
品 種 名 南  栄 渡育
149号
ミチヒ
カリ
南  栄 渡育
149号
ミチヒ
カリ
前作/Nの施用量/年次  36   37   38   平均   38   38   36   37   38  平均  38   38 
白さい 0 4 15 12 10.3 12 12 9. 
  25
10. 
   5
10. 
   4
10.  
  1.3
2 9.  
  19
0.3 4 16 13 11.0 13 12 25 6 8 3.0 5 20
0.5 5 17 14 12.0 14 13 26 6 10 4.0 6 21
0.7 5 18 15 12.7 14 13 26 7 10 4.3 7 21
甘らん 0 4 15 13 10.7 12 11 24 3 6 1.0 9.  
  30
18
0.3 5 15 13 11.0 12 12 25 5 6 2.0 10. 
   2
19
0.5 5 15 13 11.0 13 11 25 5 7 2.3 4 19
0.7 6 16 13 11.7 14 12 27 6 7 3.3 5 20
0 0.7   13 13   12 11   3 9. 
  29
  9.  
  29
17
普通植 0.7 4 5 6 5.0 7 4 24 9.  
  25
19 9.   
  22.7
18 10
0.9   8 8    7 4   27 23   20 11


  第3表 白菜、甘藍跡地に於ける施肥量別、結実日数、生育日数
項    目 出穂期  (8月 日) 成熟期  ( 月 日)
品 種 名 南  栄 渡育149号 ミチヒカリ 南  栄 渡育149号 ミチヒカリ
前作/Nの施用量/年次 36 37 38 平均 38 38 36 37 38 平均 38 38
白さい 0
52
51 53 52 51 38 147 157 156 153 154 141
0.3 52 51 56 53 53 39 147 158 160 155 157 142
0.5 52 50 57 53 53 39 148 158 162 156 158 143
0.7 52 50 56 53 54 39 148 159 162 156 159 143
甘らん 0 51 49 54 51 49 38 146 155 158 153 152 140
0.3 51 51 54 52 51 38 147 157 158 154 154 141
0.5 51 51 55 52 52 39 147 157 159 154 156 141
0.7 52 51 55 53 52 39 149 158 159 154 157 142
0 0.7   51 47   48 37    155 151 155 151 139
普通植 0.7 51 51 44 49 42 37 146 157 149   148 140
0.9   52 46   44 38   159 153 151 150 141
  備考 ☆ 欠区法により補正数値


  ②生育量
   (イ) 6月末~7月始めの(晩植)本田初期の生育は普通植に比べると極めて遅れている。普通植は1ヶ月前に移植されたもので生育は旺盛で分蘖も盛に行なわれ草丈高く茎数も極めて多い状態である。
 しかし7月中旬普通植の最高分蘖期を境にして晩植の生育は旺盛となり草丈の伸長、茎数の増加は(7月6半旬)普通植を凌駕する。
   (ロ) 成熟期に於ける草丈、穂蝶、茎数、穂数は(第4表)いずれも晩植の方が大きい。
   (ハ) 施肥量別では本田初期に差は見られないが中期(7月中旬)以降になると差が現われ、Nの増量ほど草丈高く、茎数多い傾向であった。(第5~6図)
   (ニ) 白菜跡のN0.3㎏以上又甘藍跡のN0.3㎏以上の区の草丈が特に長かった。
   (ホ) 穂長は施肥量による影響は明らかでなかった。
   (ヘ) 穂数は普通植に比べ特に多かった。(第5表第8図)
 Nの0.2㎏/a増により1株で1本程度の穂数増が見られた。
   (ト) 前作物別では無前作く甘藍跡く甘藍跡く白菜跡の関係が見られた。
   (チ) 品種別では多N(白菜跡)の渡育149号の穂数増が特に顕著であった。



  第5図 白菜、甘藍跡地に於ける水稲晩植の茎数


  第6図 白菜跡地に於ける水稲晩植の草丈の推移

  第4表 白菜、甘藍跡地に於けるNの施用別成熟期の草丈穂長
項目/品種名/前作
/Nの施用量/年次
草   丈  (㎝) 穂   長  (㎝)
南  栄 渡育
149号
ミチ
ヒカリ
南  栄 渡育
149号
ミチ
ヒカリ
36 37 38 平均 38 38 36 37 38 平均 38 38
白さい 0 103 105 111 106 88 100 18.6 16.5 17.6 17.6 15.9 17.4
0.3 105 105 115 108 93 103 18.7 17.0 18.4 18.0 16.1 17.4
0.5 109 105 115 110 95 106 18.5 17.7 18.8 18.3 16.3 17.7
0.7 113 110 115 113 96 106 18.8
17.7
18.8 18.4 17.0 17.7
甘らん 0 99 98 107 101 83 93 17.0 17.1 18.5 17.5 15.8 17.4
0.3 105 105 110 107 89 99 17.6 16.9 18.3 17.6 16.3 17.3
0.5 106 103 114 108 90 104 18.3 17.1 17.9 17.8 15.8 17.5
0.7 110 105 113 109 91 103 18.5 17.1 17.6 17.7 16.6 17.1
0 0.7   98 103   80 95   17.2 17.9   15.7 17.0
普通植 0.7 96 100 103 100 79 96 15.7 17.6 16.4 16.6 14.3 15.3
0.9   101 106   82 99   16.6 15.7   14.1 15.7
  備考 ☆ 欠区法により補正数値


  第5表 成熟期の茎数、穂数
前作/N/項目 茎   数  (本) 穂   数  (本)
白さい 0 15.7        16.8 16.3 21.5 16.4 16.3 17.2 16.3 16.6 20.4 15.7
0.3 17.1  
18.1
17.6 21.9 18.9 17.8 17.5
17.5
17.6 21.2 18.2
0.5
17.6
  18.5 18.1 25.6 19.6 18.0 17.3 17.3 17.5 23.7 19.1
0.7 20.0   19.7 19.9 26.8
20.6
19.8 17.8 18.8 18.8 24.9
19.3
甘らん 0 14.1   15.1 14.6 20.9
13.7
14.0 13.9 14.7 14.2 20.2
12.9
0.3 15.7   17.0 16.4 22.9 14.2 15.5 17.4 16.4 16.4 22.2 13.0
0.5 15.8   17.7 16.8 21.3 15.2 16.4 17.4 17.2 17.0 20.2 14.0
0.7 16.9   18.4 17.7 22.6 18.8 18.1 18.4 17.8 18.1 21.7 18.2
0 0.7     14.8   15.9 14.3   16.1 14.3   15.2 13.7
普通植 0.7 14.3   11.7 13.0 16.3 13.8 13.6 14.4 10.8 12.7 14.9 12.5
0.9     13.2   15.4 16.4   16.0 12.5   14.6 15.2
  備考 昭和36年度の穂数、茎数の調査個体は異なる。
      ☆ 欠区法により補正数値


  ③収量決定要素

  第6表 白菜、甘藍跡地に於けるNの施用量別玄米1L重千粒重
項目/品種名/前作
/Nの施用量/年次
1 L 重  (g) 千 粒 重  (g)
南  栄 渡育
149号
ミチ
ヒカリ
南  栄 渡育
149号
ミチ
ヒカリ
36 37 38 平均 38 38 36 37 38 平均 38 38
白さい 0 838 821 800 820 820 830 23.4 22.0 21.2 22.2 20.0 19.8
0.3 839 825 835 833 825 822 23.3 22.0 20.1 21.8 19.1 19.6
0.5 837 818 815 823 800 817 23.3 21.8 20.0 21.7 19.1 19.3
0.7 836 824 812 842 815 805 23.1 21.7
19.9
21.6 18.7 19.3
甘らん 0 836 833 825 831 830 810 23.5 22.7 21.6 22.6 20.1 20.1
0.3 835 828 815 826 830 825
23.3
22.2 21.1 22.2 19.8 20.0
0.5 836 833 825 831 825 820 23.3 22.3 20.4 22.0 19.5 19.5
0.7 837 824 795 819 810 820 23.3 22.0 20.4 21.9 19.6 19.6
0 0.7   835 840   830 800   22.6 21.5   20.5 20.2
普通植 0.7 839 835 795 823 793 803 23.3 21.8 23.3 22.8 21.6 20.9
0.9   835 775   795 803   21.5 23.2   21.7 20.6
  備考 ☆ 欠区法により補正数値


  第7表 青米歩合、稔実歩合
前作/N/項目 青米歩合(%) 稔実歩合(%)
白さい 0 10.2 16.4 22.7 16.4 24.7 16.9 94.8 93.5 67.4    79.9 86.9
0.3 9.2 15.0 43.5 22.6 33.2 16.8 93.8 92.5 49.4   85.5 90.9
0.5 10.2 11.6 53.1 25.0 41.9 28.6 94.6 91.4 57.3   82.9 79.1
0.7 11.1 14.2 57.8 27.7 44.4 35.2 92.7 88.6 75.0   55.1 85.5
甘らん 0 5.3 9.5 17.3 10.7 20.1 11.2 94.3 93.0 72.2   91.0 87.5
0.3 8.2 16.7 18.3 14.4 25.0 16.2 94.8 92.6 93.9   93.4 89.4
0.5 8.0 11.8 31.6 17.1 24.8 21.2 93.9 89.3 89.7   75.8 80.3
0.7 11.0 14.7 33.1 19.6 27.6 25.0 94.0 93.6 68.8   83.3 88.5
0 0.7   - 22.8   16.5 15.7     -   95.0 87.6
普通植 0.7 6.3 16.3 13.4 12.0 13.0 2.4 94.3 - 87.4   73.4 72.2
0.9   - 13.3   13.7 2.6     75.0   81.0 72.1


  イ)1L重に及ぼした処理の影響は明らかでなかった。
  ロ)千粒重は普通植に比べ晩植は劣り、又Nの増量より千粒重は低下した。又白菜跡は甘藍跡より軽い。
 品種間では渡育149号は増肥による低下割合が大きいようであった。
  ハ)稔実歩合は36、37年の2ヶ年は増肥により若干低下するようであるが38年は判然としない。傾向としてはNの増肥により稔実歩合は低下するようである。


  ④収量
   (イ)茎稈重量
     Nの施用量を増すと茎稈重量は増加する様であった。特に38年の結果でけんちょに見られ次で36年も増加するが37年では差が少なかった。前作別では甘藍跡より白菜跡の方が重い。
 普通植に比べると晩植の茎稈重は同等かそれ以上である。
   (ロ)玄米重量
     普通植に比べると36年は晩植が優り37年は劣り、38年は処理法(Nの施用量、跡地別)により増収した区も見られた。
   (ハ)白菜跡地ではNの増量により減収しN0.3kg/aを越すとその減収割合は大きくなる。(第9表第11図)
   (ニ)甘藍跡では高温年の36年ではNの増量により増収したが、37、38年ではわずか減収の傾向が見られN0.5kg/aを越すとその割合が大きくなった。
 36年は倒伏防止をしたため倒伏の障害が出なかったものと思われる。
   (ホ)さらに前作物の残効と施したN量とを合わせたN量と玄米収量との関係を第13図に示したが、これによると高温年で倒伏防止をした36年ではN1.2kg/a程度まではN量の多い程増収の傾向であったがそれ以上では増収は見られなかった。37年ではN0.6~12.kg/aの間では収量は横這で1.2kgを越すと減収し、38年では0.8~1.0kgが最高でそれ以上のN量では減収の傾向であった。
   (ヘ)次ぎに前作物別に見ると同一肥料を施した場合は甘藍跡より白菜跡の方がすぐれた。
 無前作の場合はN量の多い程増収した。
   (ト)品種間では渡育149号は施肥条件の少ない、場合の収量は極めて多いがNの増量により減収が極めて大きかった。これは品種の特性に起因するものと思われる。
   (チ)屑米重 普通植に比べると極めて多いが施肥量間ではN0.5kg以上にすると急増した。


  第9図 施肥量前作別散粒重


  第10図 a当茎稈重量


  第11図 白菜、甘藍跡地に於けるNの施用量別玄米重量


  第12図 施肥量、前作別屑米重(昭和38年)

  第8表 Nの施用量別、茎稈重量、籾重量
項目/品種名/前作
/Nの施用量/年次
茎 稈 重 量 (kg/a) 籾 重 量 (kg/a)
南  栄 渡育
149号
ミチ
ヒカリ
南  栄 渡育
149号
ミチ
ヒカリ
36 37 38 平均 38 38 36 37 38 平均 38 38
白さい 0 52.4 53.0 71.1 58.8 58.2 52.8 72.8 50.8 62.0 61.9
64.6
60.2
0.3 51.1 52.5 72.6 58.7 63.5 57.5
72.5
51.8 58.2 60.8 61.7 57.8
0.5 51.6 50.6 73.4 58.5 62.8 58.7 72.9 48.4
60.1
60.8 52.8 55.8
0.7 56.8 53.6 81.7 64.3 59.8 58.7 71.4 40.9 56.1 56.1 49.0 57.5
甘らん 0 40.2 46.4 62.7 49.8 56.0 46.0 59.3 51.7 57.6 56.2 710 55.8
0.3 45.6 50.6 68.8 55.0 56.0 50.2 64.8 51.5 59.2 58.5 66.6 61.6
0.5 47.0 49.4 73.4 56.6 56.7 52.8 65.9 51.4 56.1 57.8 60.2 63.1
0.7 40.3 47.5 67.3 55.0 46.7 54.5 70.5 47.6 54.2 57.4 59.3 59.7
0 0.7   45.3 66.3   41.8 49.0   51.3 62.9   66.1 58.5
普通植 0.7 42.3 52.0 50.1 48.1 43.2 56.2 57.8 60.0 57.3 58.4 57.6 43.6
0.9   56.0 53.9     64.0   57.8 63.3   60.0 46.6
  備考 ☆ 欠区法により補正数値


  第9表 玄米重量、収量割合
前作/N/項目 玄 米 重 量 (kg/a) 収 量 割 合 (%)
南  栄 渡育
149号
ミチ
ヒカリ
南  栄 渡育
149号
ミチ
ヒカリ
36 37 38 平均 38 38 36 37 38 平均 38 38
白さい 0 59.5 41.2 49.3 50.0
50.8
48.5 127 85 105 105 108 124
0.3
59.6
42.7 46.3 49.5 49.9 45.9 127 88 99 104 106 117
0.5 59.2 39.4 45.4 48.0 40.8 44.5 126 81 97 101 87 114
0.7 58.3 33.6 43.8 45.2 38.1 46.1 124 69 94 95 81 118
甘らん 0 48.4 42.4 47.0 45.9 58.0 45.2 103 87 100 97 123 116
0.3 51.9 42.1 47.5 47.2 57.9 49.4 110 87 102 99 123 126
0.5 53.5 42.3
44.7
46.8 49.2 51.3 114 87 96 98 104 131
0.7 56.5 38.8 44.7 46.7 47.5 48.3 120 80 96 98 101 124
0 0.7   41.9 51.0   54.6 47.7   86 109   116 122
普通植 0.7 47.0 48.6 46.8 47.5 47.1 (39.1) 100 100 100 100 100 100
0.9   46.8 51.7   49.4 (39.4)   96 110   105 101
  備考 ( )はネズミの喰害より
      ☆ 欠区法により補正数値


  第13-1図 Nの施用量別玄米重量 36年 南栄


  第13-2図 37年 南栄


  第13-3図 38年 南栄


  第13-4図 38年 ミチヒカリ


  第13-5図 38年 渡育149号

  ⑤品質について
    青米歩合は第7表に示してある通りNの施用量による差は、はっきりあらわれなかったが登熟後半不良天候であった38年はNの増量により青米の割合を多くした。
 品質については(10表)36年はNの施用量による差は青米歩合同様差は見られなかったが38年ではNの増肥により品質を低下させた。


  第10表 白菜、甘藍跡地に於けるNの施用量別品質倒伏
項目/品種名/前作
/Nの施用量/年次
品     質 倒     伏
南  栄 渡育
149号
ミチ
ヒカリ
南  栄 渡育
149号
ミチ
ヒカリ
36 37 38 平均 38 38 36 37 38 平均 38 38
白さい 0  中      中上 上下 倒伏防止  
0.3   上下     ヤ多  
0.5     中上    
0.7     上下    
甘らん 0     中上 上下    
0.3   中下      
0.5     中上    
0.7        
0 0.7          
普通植 0.7     中上 上下    
0.9     中下      


  ⑥倒伏
    36年は倒伏防止をしたのでその程度は不明であるが白菜跡或は甘藍跡のN多量区は極めて危険の様相を示していた。
 37、38年結果では白菜跡でN0.3kg/a甘藍跡で0.5kg/a以上で倒伏した。
 品種間では渡育149号、ミチヒカリは南栄より倒伏が少ない。

 Bそさい跡地におけるP2O5、K2Oの施与の有無に就いて
  第11表(1-6)並に第14図は甘藍、白菜跡地の水田にP2O5、K2Oを施さなかった結果であるが、これによると前作の残効が充分にあるためか水稲の生育、収量には全く差が見られなかった。
 供試水稲品種南栄分析結果、下表に示す通り無前作の約2倍のP、KがありP、Kの必要を認めない。


  そさい跡地の分析結果
前作別/項目 9月20日 1/5N・Hcl
可溶(mg/100g)
T-N P2O5 K2O
無前作  0.16% 15.2 2.1
甘藍跡 0.18 35.2 5.4
白菜跡 0.19 22.4 5.9


  第14図 P2O5、K2Oと玄米重量


  第11表-1 白菜、甘藍跡地に於けるP2O5、K2Oの施肥法と出穂期、成熟期
項目/年次
P・K/N/前作
出穂期(8月 日) 成熟期( 月 日)
36 37 平均 36 37 平均
P・K O・O P・K O・O P・K O・O P・K O・O P・K O・O P・K O・O
白さい 0 4 4 15 15 9.5 9.5 9.5 9. 
25
9. 
24
5 9.  
30.0
9.  
29.5
0.3 4 5 16 17 10.0 10.0 1.00 25 25 6 30.5 30.5
0.5 5 6 17 17 11.0 11.5 11.5 26 26 6 10.  
1.0
10. 
1.0
甘らん 0 4 4 15 14 9.5 9.0 24 24 3 3 9.  
28.5
28.5
0.3 5 5 15 16 10.0 10.5 25 25 5 4 30.0 29.5
0.5 5 5 15 15 10.0 10.0 25 25 5 4 30.0 29.5


  第11表-2 成熟期に於ける草丈、穂長
項目/年次
P・K/N/前作
草     丈 穂     長
36 37 平均 36 37 平均
P・K O・O P・K O・O P・K O・O P・K O・O P・K O・O P・K O・O
白さい 0 103 103 105 104 104 104 18.6 17.4 16.5 17.2 17.6 17.3
0.3 105 109 105 104 105 107 18.7 18.9 17.0 16.2 17.9 17.6
0.5 109 112 105 105 107 109 18.5 19.1 17.7 17.0 18.1 18.1
甘らん 0 99 96 98 100 99 98 17.0 17.8 17.1 17.1 17.1 17.5
0.3 105 103 105 105 105 104 17.6 18.2 16.9 17.0 17.3 17.6
0.5 106 107 103 106 105 107 18.3 17.9 17.1 17.2 17.7 17.6


  第11表-3
  穂    数 (本) 倒     伏
白さい 0 16.3 15.5 17.2 17.1 16.8 16.3 倒伏防止          
0.3 17.8 17.5 17.5 18.1 17.7 17.8      
0.5 18.0 17.2 17.3 18.1 17.7 17.7      
甘らん 0 14.0 14.6 13.9 14.9 14.0 14.8      
0.3 15.5 15.8 17.4 17.8 16.5 16.8      
0.5 16.4 15.4 17.4 16.1 16.9 15.8      


  第11表-4
  茎 稈 重 量 (kg/a) 籾 重 量 (kg/a)
白さい 0 52.4 51.2 53.0 54.4 52.7 52.8 72.8 70.0 50.8 53.1 61.8 62.6
0.3 51.1 49.0 52.5 50.2 51.8 49.6
72.5
70.2 51.8 54.5 62.2 62.4
0.5 51.6 56.3 50.6 54.0 51.1 55.2 72.9 74.7 48.4 51.4 60.7 63.2
甘らん 0 40.2 39.7 46.4 46.7 43.3 43.2 59.3 59.8 51.7 50.7 55.5 55.3
0.3 45.6 43.4 50.6 46.4 48.1 44.9 64.8 62.5 51.5 50.6 58.3 56.6
0.5 47.0 46.4 49.4 44.9 48.2 45.7 65.9 65.1 51.4 50.2 58.7 57.7
  備考 ☆ 欠区法により補正数値


  第11表-5
項目/年次
P・K/N/前作
玄 米 重 量 (kg/a) 収 量 割 合 %
36 37 平均 36 37 平均
P・K O・O P・K O・O P・K O・O P・K O・O P・K O・O P・K O・O
白さい 0 59.5 57.0 41.2 43.8 50.4 50.4 100 96 100 106 100 100
0.3 59.6 56.6 42.7 44.1 51.2 50.4 100 95 100 103 100 99
0.5 59.2 61.0 39.4 42.7 49.3 51.9 100 102 100 109 100 105
甘らん 0 48.4 48.6 42.4 41.4 45.4 45.0 100 100 100 98 100 99
0.3 51.9 50.6 42.1 41.4 47.0 46.0 100 98 100 98 100 98
0.5 53.5 52.7 42.3 41.5 47.9 47.1 100 99 100 98 100 99


  第11表-6
項目/年次
P・K/N/前作
玄 米 千 粒 重  (g) 稔 実 歩 合 (%)
36 37 平均 36 37 平均
P・K O・O P・K O・O P・K O・O P・K O・O P・K O・O P・K O・O
白さい 0 23.4 23.4 22.0 22.0 22.7 22.7 94.8 95.5 93.5 92.6    
0.3 23.3 23.0 22.0 21.9 22.7 22.5 93.8 94.5 92.5 -     
0.5 23.3
23.0
21.8 21.8 22.6 22.4 94.6 94.4 91.4 -    
甘らん 0 23.5 23.3 22.7 22.6 23.1 23.0 94.3 94.6 93.0 92.6    
0.3 23.3 23.2 22.2 22.0 22.8 22.6 94.8 94.0 92.6 95.3    
0.5 23.3 23.3 22.3 22.3 22.8 22.8 93.9 95.7 89.3 -    
  備考 ☆ 欠区法により補正数値


 Cそさい跡地に於けるNの追肥に就いて(昭和38年)
  昭和38年1ヶ年のみの結果であるが、幼穂形成期(7月15日)にN0.3kg/aを施した分施の効の効果は各品種共に千粒重の増加は見られたが、収量は南栄を除いて渡育149号、ミチヒカリには差が見られなかった。
 尚追肥の効果より検討すると基肥が少ない範囲では同等の増収の傾向が認められた。


  第12表-1 白菜、甘藍跡地に於けるNの追肥、分肥の効果
前作、基肥、追肥/項目 出穂期
(8月 日)
成熟期
( 月 日)
結実
日数
(日)
生育
日数
(日)
成熟期に於ける 倒伏
草丈
(㎝)
穂長
(㎝)
茎数
(本)
穂数
(本)
9月1日 成熟期

甘 0  ・P.K 13 10. 6 54 158 107 18.5 15.1 14.7
   0  ・P.K(0.3) 13 5 53 157 108 17.4 16.4 15.5 極微 稍多
   0.3 ・P.K 13 6 54 158 110 18.3 17.0 16.4 ナビク
0  0.7 ・P.K 13 9. 29 47 151 103 17.9 14.8 14.3 ナビク
  0.7 ・P.K(0.2) 12 30 49 152 102 17.3 14.4 13.8


149
甘 0  ・P.K 12 9. 30 49 152 83 15.8 20.9 20.2
   0  ・P.K(0.3) 13 10. 2 50 154 86 16.0 20.1 19.4 ナビク
   0.3 ・P.K 12 2 51 154 89 16.3 22.9 22.2
0  0.7 ・P.K 12 9. 29 48 151 80 15.7 15.9 15.2
  0.7 ・P.K(0.2) 11 30 50 152 82 16.0 17.2 16.5




甘 0  ・P.K 11 18 38 140 93 17.4 13.7 12.9
   0  ・P.K(0.3) 11 19 39 141 93 16.9 15.7 150 極微
   0.3 ・P.K 12 19 39 141 99 17.3 14.2 13.0
0  0.7 ・P.K 11 17 37 139 95 17.0 14.3 13.7
  0.7 ・P.K(0.2) 11 17 37 139 95 16.6 16.8 16.3


  第12表-2 白菜、甘藍跡地に於けるNの追肥、分肥の効果
前作 追肥/項目 a当(kg) 精籾
歩合
(%)
籾摺
歩合
(%)
a当(kg) 収量
歩合
(%)
玄米(g) 稔実
歩合
(%)
青米
歩合
(%)
品質
茎稈重 籾重 玄米重 屑米中 1L重 千粒重

甘 0  ・P.K 63 57.6 45 81.5 47.0 1.5 100 825 21.6 72.2 17.3
   0  ・P.K(0.3) 64 61.1 47 83.3 50.9 1.0 108 840 22.2 78.1 14.5
   0.3 ・P.K 69 59.2 44 80.3 47.5 1.2 101 815 21.1 93.9 18.3 中下
0  0.7 ・P.K 66 62.9 43 81.0 51.0 1.6 100 840 21.5 - 22.8
  0.7 ・P.K(0.2) 61 62.3 48 80.0 49.9 1.0 98 820 21.9 88.5 8.1 中上


149
甘 0  ・P.K 56 71.0 54 81.8 58.0 1.6 100 830 20.1 91.0 20.1 中上
   0  ・P.K(0.3) 58 69.6 53 82.5 57.4 2.1 99 825 20.4 84.1 22.3 中上
   0.3 ・P.K 56 66.6 52 83.0 57.9 1.3 100 830 19.8 93.4 25.0 中上
0  0.7 ・P.K 47 66.1 56 82.5 54.6 1.0 100 830 20.5 95.0 16.5
  0.7 ・P.K(0.2) 53 70.0 55 83.5 58.4 1.8 107 820 20.3 86.5 20.8 中上




甘 0  ・P.K 46 55.8 53 81.0 45.2 1.0 100 810 20.1 87.5 11.2 上下
   0  ・P.K(0.3) 48 58.5 52 81.0 47.5 1.1 105 820 20.2 94.0 11.5 上下
   0.3 ・P.K 50 61.6 52 80.3 49.4 2.2 107 825 20.0 89.4 16.1 上下
0  0.7 ・P.K 49 58.5 52 82.5 47.7 1.5 100 800 20.2 87.6 15.7
  0.7 ・P.K(0.2) 58 67.7 52 82.0 55.6 1.4 117 830 19.9 84.1 13.5 上下


 Dそさい跡地水田に於ける土壌中のNH4-N並に稲体のN含有量の推移
  ①土壌中のT-N
    第15図に示した通り移植前の土壌中のT-Nは白菜跡で0.47~0.48%甘藍跡で0.43%無前作で0.17~0.18%であるが収穫時には前作別の差が少なく0.2%前後となり白菜跡が稍多く、甘藍跡は無前作と大差ない。
 又無前作土壌では移植前と移植後では殆ど土壌中のT-Nの差は見られなかった。
  ②土壌中のNH4-N
    土壌中のNH4-Nの県警は第16図に示した。
 移植時に於けるNH4-Nは無前作或は普通植のものに比べ甘藍・白菜跡地のNH4-Nは多く又Nの施用量を増加すると多くなった。
 併し生育の経過と共に土壌中のNH4-Nは漸次減少し出穂10日前後になると施肥量・前作別の差が少なくなり、又無前作に近い数値を示して来る。
  ③稲体のN含有量
    稲体のN含有量については第13、14表並に第17、18図に示したが、N含有量は生育の全期ほどN含有量高く以後漸次減少して来る。
 又Nの施用量が多い程Nの含有量は高い。
 前作別では白菜跡は甘藍跡地より高い数値を示している。
 品種間では常に渡育149号は南栄よりN含有量が高い傾向が認められた。


  第15図 白菜、甘藍跡地に於ける土壌中のT-N


  第16図-1 白菜、甘藍跡地に於ける土壌中のNH4-N  mg/100g


  第16図-2


  第16図-3


  第13表 稲体のN含有量T-N%(南栄)
季    節 移 植 時 幼 穂 形 成 期   出 穂 期 成 熟 期
年    次 36 37 38 36 37 38 37 37 37 38 37 38
部    位 茎葉 茎葉 茎葉 茎葉 茎葉 茎葉 茎葉 茎葉 茎葉 茎葉 茎葉 茎葉
試験区別/調査期 6.20 6.20 6.20 7.20 7.16 7.13 7.26 8.3 8.6 8.17 9.26 9.26 9.20 9.20
白     0   5.67 3.51   3.71 3.44 2.89 2.32 2.07 1.70 0.88 1.44 0.96 1.44
       0.3   5.67 3.51   3.88 4.00 3.36 2.41 1.88 1.92 0.86 1.45 1.03 1.47
       0.7 5.0 5.67 3.51 3.03 4.64 4.22 4.18 2.93 2.63 2.37 1.32 1.58 1.06 1.48
甘     0   5.67 3.51   3.70 3.24 2.26 2.27 1.51 1.58 0.77 1.56 0.72 1.30
       0.3   5.67 3.51   3.77 3.70 2.91 2.23 1.65 1.89 0.86 1.58 0.92 1.35
       0.7 5.0 5.67 3.51 3.34 4.00 3.82 3.13 2.33 2.05 1.91 1.05 1.54 1.04 1.44
無     0   5.67 3.15     2.68       1.50     0.72 1.32
〃     0.7   5.67 3.51     2.77       1.76     0.92 1.33
普     0.7 5.0   4.53 2.18 3.65 2.35 2.57 2.32 2.05 1.31 0.82 1.40 0.68 1.31


  第14表 稲体のN含有量T-N% (渡育149号昭和38年度)
項目/試験区別 移植時
6.20
幼穂形成期
7.13
出穂期
8.17
成熟期(9月20日)
茎葉
白     0 5.57 4.27 1.71 1.00 1.35
       0.3 5.57 4.45 2.14 1.11 1.51
       0.7 5.57 4.85 2.75 1.53 1.54
甘     0 5.57 3.36 1.59 0.95 1.29
       0.3 5.57 3.85 1.86 1.01 1.40
       0.7 5.57 4.51 2.47 1.01 1.45
無     0 5.57 2.78 1.72 0.85 1.32
       0.7 5.57 3.12 1.95 0.99 1.35


  第17図 白菜跡地に於ける稲体のN含有量の推移


  第18図-1 白菜、甘藍跡地に於ける(幼木形成期)茎葉のN含有量


  第18図-2 出穂期に於ける茎葉のN含有量


  第18図-3 成熟期に於ける茎葉のN含有量


  第18図-4 穂に於けるN含有量

 E稲体のN吸収量
  ①白菜跡地の残効をN量に換算すると第15表の如く0.7kg/aであって無前作0.7kg/aと等しくN肥料はあまり必要としない。
  ②甘藍跡地では残効をN料に換算すると0.5ka/aであって0.7kg/aに比べると明らかにN肥料の不足が認められる。
 従ってa当0.7~1.0kgのNに換算すると白菜跡で最高0.3kg甘藍跡では0.5kg位必要という事になる。
 今Nの残効を計算すると第15表の通りである。


  第15表
前作物 前作施肥量 N%(A) 白菜中のN(B) (A-B)×40% a当N0.7~1.0kg
に対する不足N
白 菜 硫安 12.5 2,625
( 白菜 410kg
 N  0.25%
)
1.025
0.6≒40.7 0~0.3
甘 藍 硫安  7.5 1,575
( 甘藍 115kg
 N  0.25%
)
0.291
0.51≒0.5 0.2~0.5
  備考 硫安のN%(21%)
      残肥の利用率 40%


(5)総括
 以上の結果より見て、さそい跡地に於ける水稲の晩植栽培は普通晩塾苗を密植する事により茎葉多く有効茎歩合が高いので穂数の確保が容易で生育の遅延も比較的少ない。
 又玄米重量は施肥法の如何によっては普通植もものに比べ同等ないし増収も期待出来る、即ち残効の多い白菜跡地ではN0~0.3kg/a甘藍跡地では0.2~0.5kg/aで安定した収量を得ている。
 尚品種面で晩植適品程の究明に検討の余地が残されてはいるが耐倒伏性品質(例えば渡育149或はユーカラ等)の利用によってさらに晩植栽培法は安定するであろう。
 以上、水田前作そさい跡地の水稲の栽培は移植期が遅れる事、水田前作の残効が高い事等より次の実施要領に注意しなければならない。

 実施要領
①供試苗は普通晩熟苗であること。
②品種は早生種は増収を期待出来ないので中生種程度で耐倒伏性品種である事。
③本田栽植密度は90株/3.3m2程度以上の密植にする事。
④前作そさいの残効濃度より見て
 白菜跡では Nは0.3kg/a
 甘藍跡では Nは0.5kg/a
 が限度で白菜跡地では無肥料栽培でも良い。
⑤P2O5、K2Oは特別施用する必要はない。
⑥好天候の場合は幼穂形成期に0.3kg/a以内の追肥の効果は認められる。
⑦普通植に比べ病虫害におかされ易い状態におかれているのでその予防に充分留意する事。
⑧生育期間が短いので雑草の発生が少なく除草管理は簡単である。