【普及奨励事項】
りんご樹枝幹傷害部の癒合組織形成促進に関する試験
道立中央農業試験場園芸部
江部乙りんご試験地

・ 試験目的
 りんご樹枝幹の傷口、剪定枝の切り口の癒合組織を発達させて枝幹の折損、ふらん病菌の侵入による被害を防止する。とくに本道以北においては、剪定による切り口癒合が不完全で枯込む場合が非常に多い。

・ 試験方法
 (1) 昭和38年度
  供試品種  国光 28年生
          中枝の樹皮を長方形(7cm×11cm)に削りとり、各薬剤を塗布してカルスの発達を調査した。
  樹皮削り取り月日  昭和38年5月7日
  薬剤塗布月日       〃  5月10日
  調査月日          〃 11月10日
  供試薬剤  メルタン(ジナフルメタンジスホン酸フエール水銀0.1%、ビニール樹脂ワニス等99.9%)
          石灰硫黄合剤(ボーメ比重33°)
          ボルドウ塗料(亜麻仁油2、十銅製剤1kg)
 (2) 昭和39年度
  供試品種  スターキング、デリシャス 9年生
          中枝剪定の切り口の髄を中心として半分に各薬剤を塗布し他の半分は放任してカルスの発達を調査した。
  中枝剪定月日  昭和39年3月20日
  薬剤塗布月日     〃  5月29日
  調査月日        〃 11月 9日
  供試薬剤  メルタン・ユゴー剤・ビニロウ

・ 成績
 昭和38年度
薬 剤 名 処理数 カルスの幅(cm) カルス形成不完全個所数
横上 横下 縦右 縦左 横上 横下 縦右 縦左
メ ル タ ン 13 0.95 0.73 1.07 1.02 0 0 0 0
石灰硫黄合剤 11 0.32 0.23 0.61 0.38 2 4(3) 0 0
ボルドウ塗料 13 0.39 0.24 0.62 0.30 0 2 0 0
無  処  理 13 0.32 0.06 0.51 0.28 1 8(4) 0 0
  有意水準P-0.001  21.20、29.81、16.18、13.23
  注) 数字は各処理数の平均を示す。( )はふらん病、罹病個所数

 昭和39年度
薬 剤 名 切り口の供試数 切り口のカルスの状態
塗  布 無塗布
++ +++ ++ +++
メルタン 15 1 4 10 7 8
ユゴー剤 18 5 9 4 6 12
ビニロウ 21 6 8 7 9 12
無処理 16 6 10
  注) -  カルスの形成不完全なるもの
     +  全般にわたってカルスの形成は認められるがあまり良好でない
     ++  全般にわたってカルスの形成が認められ良好なもの
     +++ カルスの形成が極めて良好なもの

・ 結果
 りんご樹枝幹の傷口、剪定による枝の切り口に対するカルスの形成には従来用いられておる石灰硫黄合剤、ボルドウ塗料等に比較してメルタンの塗布が極めて効果的であり実用に供しうるものと思われる。
 附-メルタンの所要量及び経費
  傷口100平方メートル当りメルタン約1ccを要し、薬価は30銭である。