【普及奨励事項】

水田のそさい地化に関する土壌肥料的対策(経済性の試算を除く)
北海道立上川農業試験場

Ⅰ緒言
 水田を畑地化して、そ菜や牧草を導入し、収益の増大を図ろうとする動勢は、水稲省力機械化栽培技術の進展にともない、極めて活発になっている。また市街地周辺のそ菜畑は他産業の拡大するにつれて、減少する傾向にあり、且つ、永年連作による収量品質などの低下が甚だしいため、近郊の水田単作地帯が次第にその代替地として変ぼうしつつある。さて水田転換畑は、土壌理化学性、病害虫及び雑草発生状況、立地条件などいろいろな面において普通畑と異なり、それだけに多くの問題点を内包しているものと推考されるところから、本試験は転換畑におけるそ菜栽培上の支障制限要因について、調査研究を行い、水田のそ菜地化にともなう合理的な土壌肥量的対策を明らかにしようとするものである。

Ⅱ試験地の位置並びに概況
A 試験地 上川郡東鷹栖村1線11号 前沢一郎(河成沖積土壌)

B 土壌理化学性
項目/層位
粒径組成 粗 砂    (2~0.2㎜) 16.7 9.8 1.2 3.2 11.2
細 砂   (0.2~0.02㎜) 38.7 36.2 39.5 61.2 78.8
砂     合     計 55.4 46.0 40.7 64.4 90.0
シルト (0.02~0.002㎜) 24.1 29.7 34.1 29.9 8.7
粘 土   (<0.002㎜) 20.5 24.3 25.2 5.8 1.5
土           性 埴壌土(CL) CL 軽埴土(LiC) 壌土(L) 砂土(S)
理学的性質 真     比     重 2.53 2.50 2.52 2.60 2.67
仮     比     重 0.88 0.91 0.92 0.90 1.11
現地容積重 (g/100C.C.) 1.02 100 85 90 100
最大容水量 (重量%) 78.2 80.8 82.4 80.7 56.2
化学的性質 全    炭    素 (%) 2.78 3.38 2.53 2.39 0.33
全    窒    素 (%) 0.31 0.36 0.32 0.18 0.10
炭     素     率 9 9 8 13 3
P   H H2O 5.3 - - - -
N.KCL 4.9 - - - -
置  換  酸  度  (Y1) 7.65 - - - -
置 換 性 塩 基
(me/乾土100g)
Ca 4.47 - - - -
Mg 1.74 - - - -
K 0.31 - - - -
置換容量(me/乾土100g) 17.42 - - - -
塩 基 飽 和 度 (%) 37 - - -
乾  土  効  果
(アンモニア態Nmg/乾土100g)
5.5 7.0 - - -
温 度 上 昇 効 果
(アンモニア態Nmg/乾土100g)
4.2 5.9 - - -
アンモニア化成率(%) 22 28 - - -
養分吸収係数 N 495 510 379 387 239
P2O5 1315 1466 1116 1287 672
遊離酸化鉄(mg/乾土100g) 0.48 0.50 1.04 0.66 0.21

Ⅲ試験設計
A 転換第1年目
 (1)試験区設定のねらい。
  鋤床層の存在は、作物根系の発達を阻害し、また、水移動を不良にして過湿過乾の状態になりやすいものと考えられたので、深耕による、破砕効果を中心とした試験区を設定する。なお、供試そ菜は根圏域の広狭を考慮してトマトとかんらんにする。

 (2)地区面積、連数並びに供試品種
  かんらん:サクセッション系 18m2 2連制
  トマト:マーグロープ系    18m2 2連制

 (3)試験区名とその内容
試   験   区   名 施 用 量   (㎏/a) 備     考
N P2O5 K2O CaO 堆肥
基肥 追肥
かんらん

普通耕区
深耕

対照区
N増施区
1.0-0.5 1.5 1.5 12 120 ○Ca、堆肥は全層
  その他は条肥
○供用肥量:硫安、過石
  増加、消石灰
1.0-0.5 1.5 1.5 12 120
1.5-0.5 1.5 1.5 12 120
トマト

普通耕区
深耕

対照区
N増施区
1.5-1.7 3.0 2.0-1.0 12 120 ○普通耕12㎝、深耕24㎝
1.5-1.7 3.0 2.0-1.0 12 120
2.0-2.1 3.0 2.0-1.0 12 120
  (注)栽培法の概要
  38.4.25 耕起、砕土、整地(石灰、堆肥全層施用)
    5.18 畦立(かんらん:75㎝、トマト:90㎝)
     20 基肥全量を条施し約10㎝覆土する。支柱立を行う。
    6. 1  トマト定植(株間45㎝)
      8  かんらん定植(株間45㎝)
    7.13 トマト台1回目追肥(N-0.9、K2O-0.5、但しN増区はN-1.0)かんらん追肥N-(0.5)
     30 トマト 収穫始
    8.17 トマト台2回目追肥(ン-0.8、K2O-0.5、但しN増区はN-1.1)
    9. 9 かんらん 収穫
     11 トマト収穫終了
  なお、栽培期間中は適宜薬剤撒布を行う。
  使用した薬剤名:トマト マンネブダインセン、シンメルボルドーEPN乳剤
            かんらん D.D.T B.H.C

B 転換第2年目
 (1)試験区設定のねらい
  そ菜類は一般に耐酸性弱く、石灰、加里などの要求度は高いが、その施肥概念からおしてもわかるように、水田土壌の塩基含量は一般に少ない。
  これらの影響が第1年目収量ならびに品質の面において強くあらわれたので、本年は主として加里、石灰、飽和度とトマトの生育収量、品質の関係について検討する。

 (2)地区面積、連数、並びに供試品種
  トマト:ひかり 20m2・2連制 但し1年目区は単連

 (3)試験区名とその内容
試験区名 施肥量(㎏/a) 備考
N P2O5 K2O CaO MgO 堆肥
基肥 追肥 基肥 追肥
1)K置換容量の5%と
  caで塩基飽和度60%区
2.5-1.5 2.0 1.4-0.6 24 1.0 200 ○供用肥料
硫安、過石、塩加、
硫マグ、消石灰


○各区の耕深12㎝
但し深耕区は24㎝
2)K置換容量の10%と
  caで塩基飽和度40%(標準)区
3.5-1.5 10
3)K置換容量の10%と
  caで塩基飽和度60%対照区
24
4)K置換容量の10%と
  caで塩基飽和度60%深耕区
5)K置換容量の10%と
  caで塩基飽和度60%転換1年目
6)K置換容量の10%と
  caで塩基飽和度80%
38
7)K置換容量の10%と
  caで塩基飽和度100%対照区
45
8)K置換容量の10%と
  caで塩基飽和度100%転換1年目
9)K置換容量の15%と
  caで塩基飽和度40%区
2.5-1.5 2.0 5.0-2.0 10 1.0 200
10)K置換容量の15%と
  caで塩基飽和度60%区
24
11)K置換容量の15%と
  caで塩基飽和度80%区
38
12)K置換容量の20%と
  caで塩基飽和度60%区
7.0-3.0 24
  (注)栽培法の概要
  39. 3. 3 播種(電熱ビニールハウス使用)
     25 第1回ハウス内移植
    4.12 第2回   〃
     28 耕起砕土、整地(堆肥全層施用)
    5. 1 石灰施用
      2 畦立(90㎝畦巾)基肥全量条肥、約10㎝覆土
      4 定植(45㎝株間)ビニールトンネルによる栽培
    6. 8 支柱立
      13 ビニールトンネル除去、誘引始
      17 追肥、土寄せ
    7. 2 収穫始
    9. 17 収穫終了
  なお、栽培期間中は適宜、薬剤撒布を行う。
  使用した薬剤名:マンネブダイセン、シンメルボルドー、DDT乳剤

 塩基飽和度100%の場合は土壌コロイドが吸収保持しているイオンは全部塩基イオンであり水素イオンは吸収していない状態であり、80%の場合は吸収しているイオンのうち20%は水素イオンが占めていることを示す。

Ⅳ試験成績
A 生育状況並びに収量調査成績
 水田添加畑について、当初、想定されたような鋤床層存在下の障害が、元来それ程大きなおmのでないのか、或いは立地的、気象的条件によったためかは別として、生育、収量上の深耕効果についてみると、トマトかんらん共に殆ど認められないばかりか、トマトでむしろ減収傾向にある。これは尻腐果などの多いことから考えて心土混入により石灰欠乏の程度が甚だしくなったためかもしれない。
 しかし一般に深耕した場合は、生育後半における下位葉の枯上り程少なく(トマト)、かつ根伸長が深部にまで及んでいる(かんらん)とか、雑草発生量が全期にわたって著しく減少するなどのことがうかがわれる。
 窒素増施の効果は比較的顕著であるが、特にかんらんで大きい。
 なお、初年目は一般的傾向として、トマトにおいては、概して土壌水分が潤沢であったと考えられるにもかかわらず、尻腐れや、生長点枯死症病が多発し、かんらんでは葉の畸形化及び周辺のネクロシスがみうけられた。
 そ菜養分吸収特性や水田の施肥来歴などから考えて、当然配慮されるべき石灰及び加里問題については、昭和39年度トマトを供試作物として実施したが、その結果によると、石灰飽和度の方が収量に影響するところ大で転換第2年目のそ菜畑においては80%、第1年目では100%が最も高収である。一方、加里飽和度のちがいによる収量変動はそれ程明らかでないが、傾向的にみれば10%がよいようである。
 このようにトマト栽培における塩基、特に石灰の最適飽和度は80%以上という高いところにあるが、その程度はそれらの欠乏が甚大で、且つ窒素発現の大きい転換初年目ほど著しく、この場合のCaO施用量は45㎏/aにも及んでいる。
 なお、本試験の範囲内では転換2年目よりも、初年目収量の方が優位にるが、その反面、窒素過多塩基欠乏などにわざわいされてか、腐敗果の発生が多い。

(1)転換第1年目
 a)生育並びに雑草発生状況
項目
/
試験区名
草丈(㎝)
(収穫終了時)
雑草調査   (5/Ⅶ) 根の深さ
(㎝)
発生
程度
草種と本数   (㎝当り)



普通耕区
 
 
深耕

対照区
N増施区
    ヒエ タデ スカシタ
ゴボウ
カヤツリ アカザ スベリ
ヒュウ
 
- 3 6 5 2 2 2 1 13
- 1 3 - - - - - 19
- - - - - - - - -


普通耕区
 
 
 
深耕

対照区
N増施区
    コヌカグサ ヒエ タデ スカシタ
ゴボウ
スギナ カヤツリ  
257.2 4 30 12 10 5 5 3 -
    ヒエ スベリ
ヒュウ
スカシタ
ゴボウ
タデ      
252.3 2 9 6 4 3 - - -
256.9 - - - - - - - -
  (注)雑草発生程度:1・・・極少、2・・・少、3・・・有(被土50%程度)、4・・・多、5・・・極多

 b)収量調査成績(㎏、個/a)

  ⅰ)かんらん
項目
/
試験区名
総重 外葉部重 結球部
健全果 腐敗果
個数 重量 百分比 個数(株率) 重量
普通耕区 1192.8 631.5 286 561.3     11 22.1
1043.8 506.7 296 537.1     0 0
平均 1118.3 569.1 291 549.2 100 - 6(2) 11.1
深耕対照区 1206.6 587.5 296 620.9     0 0
1172.4 573.1 296 599.3     0 0
1095.6 585.5 296 510.1     0 0
1146.6 630.1 286 499.8     11 6.7
平均 1155.3 594.1 294 557.5 102 100 3(1) 1.7
深耕N増施区 1199.5 554.6 296 644.9     0 0
1314.5 607.4 296 707.1     0 0
平均 1257.0 581.0 296 676.0 123 121 0 0

  ⅱ)トマト
試験区名/項目 健全果 腐敗果 未熟果
合計 百分比
普通耕区 452.4 77.5 259.9 100 - 36.2 191.3
深耕 対照区 421.0 75.7 496.7 94 100 70.2 155.7
N増施区 452.6 64.2 516.8 98 104 52.9 178.2
  (注)数値はいずれも2区平均
     上・・・110g以上  下・・・110g未満

(2)転換第2年目

 a)生育並びに収量調査成績(㎏、個/a)
試験区名/項目 生育状況(23/X) 健  全  果 腐敗果 未熟果 個数
草丈㎝ 茎葉重㎏ 合計 百分比 腐敗果
1)K5%:Ca60%区 268.6 72.6 883.7 73.0 956.7    8.0 42.4 5509 1104 112
290.4 79.9 866.6 70.6 937.2   7.1 57.3 5396 1073 102
M 279.5 76.3 875.2 71.8 947.0 102 7.6 49.9 5453 1089 107
2)K10%:Ca40%区 270.9 69.7 809.7 81.0 890.7   11.7 43.6 4957 1186 143
293.4 82.8 888.9 71.1 960.0   8.0 66.9 5846 910 133
M 282.2 76.3 849.3 76.1 925.4 100 9.9 55.3 5432 1048 138
3)K10%:Ca60%区 279.9 77.7 817.8 81.2 899.0   9.9 78.2 4998 1104 123
300.1 95.0 966.4 72.6 1039.0   12.5 85.8 5866 940 153
M 290.0 86.4 892.1 76.9 969.0 105 11.2 82.0 5432 1022 138
4)同上、深耕区 271.3 71.0 734.8 76.1 810.9   13.0 54.7 4691 1022 133
296.0 78.9 887.0 42.9 929.9   6.9 67.5 5580 552 102
M 283.7 75.0 810.9 59.5 870.4 94 10.0 61.1 5136 787 118
5)K10%:Ca60%
 転換1年目区
273.3 74.1 946.5 62.0 1008.5 109 22.6 38.4 5693 848 317
6)K10%:Ca80%区 285.5 85.3 935.8 104.1 1039.9   23.2 73.1 5917 910 194
298.0 130.1 947.8 68.1 1015.9   44.9 84.7 6234 920 31
M 291.8 107.7 941.8 86.1 1027.9 111 14.1 78.9 6076 915 113
7)K10%:Ca100%区 294.5 95.8 960.0 54.7 1014.7   11.7 82.8 5958 746 123
290.6 109.4 824.1 82.9 907.0   3.3 142.2 5396 1094 31
M 292.6 102.6 892.1 68.8 960.9 104 7.5 112.5 5677 920 77
8)同上、転換1年目区 286.5 95.6 1031.2 50.5 1081.7 117 21.6 57.3 5979 726 204
9)K15%:Ca40%区 269.3 62.9 839.5 76.5 916.0   10.3 54.7 4987 1022 153
264.7 104.0 744.3 76.7 820.1   19.6 107.9 5049 910 225
M 267.0 83.5 791.9 76.6 868.1 94 15.0 81.3 5002 966 189
10)K15%:Ca60%区 290.6 121.1 937.2 60.5 997.7   11.5 103.3 5774 787 133
275.8 97.3 823.5 75.0 898.5   22.7 117.4 5386 940 245
M 283.2 109.2 880.4 67.8 948.1 102 17.1 110.4 5580 864 189
11)K15%:Ca80%区 278.0 102.2 772.9 78.4 851.3   15.9 105.3 5314 1012 153
274.8 99.2 943.1 58.4 1001.5   11.3 76.7 5836 715 123
M 276.4 100.7 858.0 68.4 926.4 100 13.6 91.0 5580 864 138
12)K20%:Ca60%区 284.0 86.9 835.8 59.8 895.6   15.8 90.2 5355 828 153
282.0 105.1 918.9 57.2 976.1   14.4 76.3 5601 756 164
M 283.0 96.0 877.4 58.5 935.9 101 15.1 83.3 5478 792 159
  (注)上・・・110g以上、下・・・110g未満

B 転換そ菜畑土壌の理化学的性質
 転換初年目は、2~4㎝の土塊が多く、0.1~0.5㎜程度の耐水性団粒は少ない。土塊分布にみられる深耕と普通耕の差は僅少であるが、0.1㎜以下の団粒は前者の方が多い。
 一方、転換畑土壌は年数経過に伴って、次第に土壌孔隙が増大し、気相、液相率の高まることが認められるが、深耕のなされた場合は、容気度が低下する反面、容水量は高まる方向にある。
 なお、28℃3週間保温(インキュベート)後の無機態窒素量は殆ど変わらないが原土中のそれは転換1年目のものが最も多く深耕と普通耕では前者が幾分少ないようである。
 また、転換畑は概して置換性塩基含量(特に石灰)、塩基飽和度が低く、酸性の強いことがうかがわれる。
 転換畑の土壌水分については、水田転換そ菜畑は、鋤床層と耕起層に団結土塊(特に初年目)が存在するため、土壌中における水分移動が比較的悪く、その供給が過多のときは湿害、過小のときは旱害を招来する危険を内包しているものと思われるが前者の危懼以外は周囲の状況も加わって恵まれた水分環境におかれている場合が多いと判断される。
 さて、試験区の水分測定結果について考察してみると、一般に八月上旬頃までは、かんらん畑よりも、トマト畑の方が高水分であるが、八月後半に至って逆転し前者の高いことが認められる。
(このことは恐らく初期からトマトに比較してかんらんの方が葉面積大で要水量の高いこと及び8月中旬に入り結球期をむかえたかんらんは、吸水量が低下してきたのに対し、トマトでは収穫最盛期になって水分必要量が増してきたことなどによるものであろう。)
 また普通耕と深耕の間における水分含有率の差は余り明らかでないか降雨直後においては、概して前者が高い値を示しているところから、一応深耕によって過湿におちいるような危険はうすらいだものと判断してよいかもしれない。

 (1)土塊分布(%)
区名/土塊径(㎝) 4.0以上 4.0~2.0 2.0~1.0 1.0~0.5 0.5以下
転換2年目 普通耕区 0.55 6.97 10.64 13.81 68.03
深耕区 0.50 7.62 11.20 13.70 67.07
転換1年目区 0.53 13.96 11.13 14.83 59.55

(2)団粒分析(%)
区名/土塊径(㎝) 2.0以上 2.0~1.0 1.0~0.5 0.5~0.25 0.25~0.1 0.1以下
転換2年目 普通耕区 22.02 22.89 16.20 11.78 13.52 13.59
深耕区 24.49 16.33 12.65 13.54 12.38 20.61
転換1年目区 23.72 23.31 18.31 9.12 9.86 15.68
  (注)前処理:室温で24h・水浸

 (3)土壌3相分布
区名/土塊径(㎝) 気相容 水分容 固相容 固相重 水分重 全孔隙 乾土
水分率
湿土
水分率
飽水度 容気度
転換2年目 普通耕区 37.1 33.9 29.0 73.8 33.9 71.0 45.8 31.4 47.6 52.3
深耕区 29.0 36.6 34.4 82.8 36.6 65.5 44.3 30.7 55.9 37.4
転換1年目区 32.4 31.3 36.4 87.9 31.3 63.6 35.7 26.3 49.3 50.8

 (4)土壌水分の変化
測定日(1963年) 3/Ⅶ 25/Ⅶ 2/Ⅷ 19/Ⅷ
降水量㎜/前3日(前日)
/
区    名
12.5(7.9) 60.(1.4) 15.(1.5) 48.5(0.0)
かんらん 普通耕区 26.8(30.0) 29.6(38.8) 27.1(32.3) 30.4(36.0)
深耕区 30.8(34.8) 23.4(27.6) 27.9(32.2) 31.9(38.2)
トマト 普通耕区 30.0(36.0) 27.1(34.2) 31.4(35.4) 29.0(32.8)
深耕区 29.0(36.6) 25.7(30.2) 30.5(35.4) 28.2(33.6)

測定日(1964年) 11/Ⅶ 24/Ⅶ 5/Ⅷ 31/Ⅷ
降水量㎜/前3日(前日)
/
区    分
7.8(7.8) 10.2(6.3) 1.2(0.0) 10.4(10.0)
転換2年目 普通耕区 26.3 31.1 27.1 35.5
深耕区 27.2 31.1 27.3 33.0
転換1年目区 26.4 27.6 24.9 32.5
  (注)重量% 但し( )内は容量% 採土位置:約2~5㎝間

 (5)無機態-Nの消長
区名/項目 全窒素(%) NH3-N(mg) NO3-N(mg) 無機態-N合計量(mg)
原土 incu. 原土 incu. 原土 incu.
転換2年目 普通耕区 0.27 4.59 3.79 0.88 7.44 5.47 11.23
深耕区 0.28 4.57 3.79 0.53 7.63 5.10 11.42
転換1年目区 0.23 5.11 3.46 0.65 7.81 6.36 11.27
  (注)incubate〔28℃3週間(Weeks)〕

 (6)参考:実態調査

  a)転換後の経過年数と土壌の理化学性
土  壌  別
/
項     目
上川郡当麻町字園別 上田 一郎 当麻町字園別 谷 純一
普通
そ菜畑
(ナス)
転換畑(トマト) 普通
そ菜畑
(トマト)
転換畑(キュウリ)
1年目 2年目 3年目 1年目 2年目 3年目





真 比 重 - 2.61(2.56) 2.32(2.53) 2.60(2.49) - - - -
三相分布 固 相 - 28.4(28.5) 29.7(31.9) 24.6(34.1) - - - -
気 相 - 40.4(18.0) 40.9(19.8) 42.8(18.0) - - - -
液 相 - 31.2(53.4) 29.5(48.4) 32.6(47.9) - - - -
全孔隙率 - 71.6(71.5) 70.3(68.1) 75.4(65.9) - - - -
最大容水量 106.4 87.0(109.6) 80.7(93.1) 104.9(100.5) 94.2 98.7 101.8 98.7
  P  H N2O 4.60 4.80(5.05) 5.55(4.80) 4.39(4.45) 5.24 4.30 4.20 4.40
N、kcl 4.65 4.75(4.90) 5.08(4.85) 4.65(4.78) 5.05 4.60 4.55 4.70




置換酸度(Y1) 9.36 4.85(2.40) 1.29(2.56) 11.57(9.62) 4.36 14.98 15.06 9.64
置換性塩基
(me/100g)
Cao 5.73 6.97(5.20) 5.94(5.70) 4.91(4.47) 10.38 4.91 4.71 6.82
Mgo 0.90 0.97(0.67) 1.55(0.76) 0.55(0.52) 1.29 0.71 0.98 1.19
全炭素  (%) 7.19 4.94(5.55) 5.17(5.76) 7.00(6.10) 5.20 5.73 3.50 5.74
全窒素  (%) 0.61 0.41(0.45) 0.43(0.53) 0.59(0.50) 0.46 0.50 0.39 0.58
炭  素  率 11.8 12.1(12.3) 12.0(10.9) 11.9(12.2) 11.3 11.5 9.0 9.9
置換容量(ME) 32.02 21.74(23.01) 27.52(23.58) 29.05(21.54) 34.85 26.26 18.42 29.00
塩基飽和度(CaO+Mgo) 20.71 36.52(30.10) 27.22(26.42) 18.79(23.17) 33.49 21.40 30.98 27.62
乾土効果
mg/100g

アンモニア(NH3) 3.3 5.2(6.1) 3.3(3.3) 2.8(2.8) 2.8 4.2 2.3 2.2
硝酸(NO3) 5.0 0.4(0.5) 2.6(0.4) 5.0(14.3) 0.3 17.3 17.0 22.3

NH3 - 1.5(3.4) 1.7(6.6) 1.3(3.4) 0.6 9.7 9.7 11.6
NO3 6.0 4.0(1.3) 7.3(1.7) 8.8(18.3) 4.1 18.0 31.3 43.5
NH3 - -3.7(-2.7) -1.6(3.3) -1.5(0.6) 2.2 5.5 7.4 9.4
NO3 1.0 3.6(0.8) 4.7(1.3) 3.8(4.0) 3.8 0.7 14.3 21.2
合     計 - -0.1(-1.9) 3.1(4.6) 2.3(4.6) 1.6 6.2 21.7 30.6
施肥量(㎏/a)
各年共通
N 4.84  P2O5 2.8  K2O 5.13
炭カル 12  珪カル 56  堆肥(Comb) 700
  (注)括弧内数値は下層土壌

  b)施肥量の実態
   ⅰ)調査場所 上川群当麻町字園別3区  上田一郎
     土壌条件:黄褐色土壌・壌土満俺型(腐植凝灰岩質土壌)
     排水の良否:良

   ⅱ)対照農家の概況
     耕地面積:365a  水田 338a(内転換畑50a)
                畑 27a
     自家労働力:3.5人

   ⅲ)調査成績

 イ)施肥量(㎏/10a)    (1964年度)
利用
区分
作物の種類 作付面積
(a)
要素量 基            肥
N P2O5 K2O 千代田化成
(15.15.10)
硫安 硝安 尿素 石窒 過石 熔燐 硫加 塩加
水田 水稲 288 8.0 10.0 10.0 40 6     20       8


胡瓜:小城 20 61.7 38.0 66.4 40   25 20 20 40 45 60  
トマト:福寿 20 48.4 28.0 51.3 40     20 20 20 30 40  
西瓜:親大和 20 54.4 28.0 64.3 40     20 20 20 30 40  


茄子:橘真 6 48.4 28.0 46.3 40     20 20 20 30 40  
ビーマン:緑王 2 48.4 28.0 41 40     20 20 20 30 40  
その他の販売そ菜 2 48.4 28.0 41 40     20 20 20 30 40  
自家用畑作物 7 31.4 17.3 10 40     20 20 20 30 40  

基         肥 追         肥
菜種粕 鶏糞 魚粕 炭カル 珪カル 堆肥 硫安 硝安 尿素 硫加 米糠 菜種粕
          800 4          
50 200 80 80 560 7,000   50 20 60 35 50
50 200   120 560 7,000   25 20 50   50
50 200   80 560 7,000   50 20 60 25 50
50 200   80 560 7,000   25 20 40   50
50 200   80 560 7,000   25 20 20   50
50 200   80 560 7,000   25 20 20   50
50 200   80 560 7,000       20   50
  (注)イ 転換畑の西瓜に限り普通畑10aを含む
     ロ 転換畑の内訳
       転換1年目 19a(西瓜6a、トマト8a、胡瓜5a)
       転換2年目 23a(トマト8a、胡瓜15a)
       転換3年目  8a(西瓜4a、(そ菜苗床)、トマト4a)
     ハ 普通畑の内訳
       西瓜10a(水稲苗代)、茄子6a、ピーマン2a
       その他の販売そ菜2a、自家用畑作物7a

C関連試験
 (1)地下水位とそ菜の生育に関する試験
  a)試験目的
 地下水位の高低がそ菜の生育、収量などに及ぼす影響について検討し、水田そ菜地下適否判定上の資料をえようとする。

  b)試験設計
試験区名/項目 要素量(g/pot) 備          考
P P2O5 K2O Mgo CaO
トマト 地下水位60㎝区 6 4 8 3 40 試験方法:1/14万素焼土管(30×65㎝)使用
供試土壌 HCL・水田作土
施肥深度:25㎝
水位調節期間:8/Ⅵ~13/Ⅸ
供試品種:トマト・福寿2号
      かんらん・サクセッション
定植:2/Ⅵ
  〃   40㎝区
  〃   20㎝区
かんらん 地下水位60㎝区 6 4 8 3 40
  〃   40㎝区
  〃   20㎝区


  c)試験成績
 地下水位の高低がそ菜類の生育収量に及ぼす影響は、そ菜の種類によって大きく異なっている。即ちトマトの場合地下水位20㎝までの範囲では高水位のものほど、茎葉重、根重、収量がまさり、且つ初期の収穫割合も多い、変面かんらんにおいては全くこれとは逆で、地下水位の低い方が根系もよく発達しまた結球部重の明らかな増大傾向がうかがわれる。
 なお地温、土壌水分含量は一般に地下水位20㎝>40㎝>60㎝>の関係にある。

   ⅰ)生育並びに収量調査成績

 イ 生育状況
試験区名/項目 ト      マ      ト か  ん  ら  ん
草丈(㎝) 茎葉重
(g)
根重
(g)
根長
(㎝)
最大外葉長(㎝) 根重
(g)
根長
(㎝)
26/Ⅵ 13/Ⅶ 24/Ⅶ 20/Ⅸ 26/Ⅵ 13/Ⅶ 24/Ⅶ
地下水位60㎝区 76.4 123.0 162.0 191.0 189 40 43 32.0 55.2 56.2 342 95
70.0 115.0 144.9 171.0 135 28 - 34.8 49.0 50.5 325 -
M 73.2 119.0 153.5 181.0 162 34 - 33.4 52.1 53.4 334 -
地下水位40㎝区 74.8 117.8 145.2 173.0 251 52 54 37.0 51.0 52.5 280 72
70.0 100.3 129.0 187.0 307 88 - 32.0 51.6 51.8 285 -
M 72.4 109.1 137.1 180.0 279 70 - 34.6 51.3 52.2 283 -
地下水位20㎝区 74.4 112.0 144.8 187.0 315 110 50 34.0 49.0 51.5 245 60
74.3 110.8 133.1 (125.0) 296 84 - 37.8 54.4 56.0 267 -
M 74.4 111.4 139.0 187.0 305 97 - 35.9 51.7 53.8 256 -
  (注)トマト:地下水位20㎝区のブロックⅡは、9月上旬頃より生長点の枯死症状がみられた。

 ロ 収量調査成績
試験区名/項目 ト       マ       ト か  ん  ら  ん
健  全  果 腐敗果 未熟果 外葉部重
(g)
結球部重
(g)
ね量比 硬さ
重量   (㎏) 個数
(コ)
合計 百分比
地下水位60㎝区 13804 0.643 2.447   12 9 0 4 1,798 2,381   21.0
1.525 0.432 1.957   9 8 0 0 1,515 2,705   21.0
M 1.665 0.538 2.202 100 11 9 0 - 1,657 2,543 100 21.0
地下水位40㎝区 - - -   - - - - 1,980 1,980   21.6
- - -   - - - - 1,339 2,420   19.0
M - - - - - - - - 1,660 2,160 85 20.3
地下水位20㎝区 1.764 0.422 2.168 8 6 0 0 1,863 1,622 19.0
2.013 0.579 2.592 13 7 0 40 1,585 765 17.0
M 1.880 0.501 2.380 108 11 7 0 - 1,724 1,194 47 18.0
  (注)かんらんの硬さ:山中式高度計による測定値
     なお、地下水位40㎝区の収量は第1段階の重量測定をおこなわなかったため欠項とした。

  (備考)地下水位と結果速度
試験区名/項目 時  期  別  結  果  比  率  (%)
果  実  重 個    数
第1花房 第2花房 第3花房 第4花房 第1花房 第2花房 第3花房 第4花房
地下水位60㎝区 100 87 48 36 100 100 50 83
  〃   40㎝区 - - - - - - - -
  〃   20㎝区 100 54 46 8 100 40 30 10

   ⅱ)地下水位と地湿並びに土壌水分の関係

 イ 地温(℃)
測定月日/測定時間
種類別/試験区名
20/Ⅶ 21/Ⅶ 22/Ⅶ 23/Ⅶ 24/Ⅶ 25/Ⅶ
9 14 9 14 9 14 9 14 9 14 9 14
トマト 地下水位60㎝区 16.0 25.1 19.8 27.8 19.5 22.7 19.0 21.0 21.7 26.7 21.8 27.8
  〃   40㎝区 16.6 25.8 21.6 27.4 19.9 22.6 19.4 22.3 26.9 26.8 24.8 27.1
  〃   20㎝区 16.8 25.0 21.3 27.8 20.1 23.1 19.4 21.1 25.0 26.4 23.4 27.5
かんらん 地下水位60㎝区 15.8 21.9 19.5 25.1 19.4 22.6 19.5 21.4 22.6 25.6 21.6 26.0
  〃   40㎝区 15.8 22.3 21.0 25.1 19.8 22.6 20.0 22.0 24.0 25.8 23.0 25.9
  〃   20㎝区 15.8 22.5 20.4 25.2 19.8 22.8 19.1 21.4 23.2 27.7 22.6 26.3

27/Ⅶ 28/Ⅶ 29/Ⅶ 30/Ⅶ 平均
9 14 9 14 9 14 9 14 9 14
20.5 19.9 20.0 27.2 20.5 27.0 20.7 24.5 20.0 25.0
20.8 20.3 23.5 25.8 21.9 27.5 21.8 24.3 21.7 25.0
21.1 20.4 22.1 28.3 21.4 29.4 22.0 24.7 21.3 25.4
20.5 19.5 20.8 25.4 19.6 26.1 20.5 23.9 20.0 23.8
20.8 20.0 21.8 25.5 21.3 26.0 21.9 23.8 20.9 23.7
20.6 19.5 22.0 25.3 21.9 26.9 21.8 23.8 20.7 24.1
  (注)測定位置:地表下 10㎝

 ロ 土壌水分の変化(重量%)
種類別
/
測定日
ト      マ      ト か   ん   ら   ん
25/Ⅵ 16/Ⅶ 5/Ⅷ 31/Ⅷ 25/Ⅵ 16/Ⅶ 5/Ⅷ 31/Ⅷ
試験区名
/
測定位置 ㎝
5~8 15~18 5~8 15~18 5~8 15~18 5~8 15~18 5~8 15~18 5~8 15~18 5~8 15~18 5~8 15~18
地下水位
60㎝区
33.3 33.0 29.0 32.5 31.1 32.8 32.2 33.5 32.3 32.3 28.9 27.6 31.0 30.6 30.2 31.6
 〃  
40㎝区
34.3 35.3 36.1 36.5 35.2 35.9 34.5 36.6 31.3 35.5 36.5 35.8 33.6 33.2 33.2 36.4
 〃  
20㎝区
35.8 41.0 36.8 39.1 38.8 39.7 37.1 40.0 34.3 40.0 36.7 40.3 38.0 39.7 37.6 39.5


 (2)転換畑土壌を用いての要素欠除試験
  a)試験目的
 転換畑土壌のそ菜に対する養分供給能を検定し、施肥上の参考資料をえようとする。

  b)試験設計
試験区名/項目 要素量 (g/pot) 備   考
N P2O5 K2O Ca Mg
標準区 4.0 3.0 6.0 27.0 2.1 試験方法
 1/2 ワグネル・ポット
試験土壌
 
 H.CL.水田作土
供試品種
 トマト、福寿2号
 かんらん、サクセッション

定植:2/Ⅵ

反覆:1反覆
無肥料区 0 0 0 0 0
N・0区 0 3.0 6.0 27.0 2.1
N・多区 12.0
N・0区 4.0 0
N・多区 9.0
N・0区 3.0
N・多区 18.0
N・0区 6.0 0
N・多区 81.0
N・0区 27.0
N・多区 6.3


C試験成績
 肥料養分欠除並びに多用の両面から考察すると、転換畑土壌における肥料成分の欠乏度合は、石灰が最も甚だしく、次いで窒素、加里>苦土、林産のようであるが、殊にトマトは石灰無施用による減収率、かんらんは、いっそ多用による増収率が大きい。

  ⅰ)生育状況
試験区名/項目 ト      マ      ト か  ん  ら  ん
26/Ⅵ
(㎝)
13/Ⅶ
(㎝)
24/Ⅶ
(㎝)
20/Ⅸ
(㎝)
茎葉重
(g)
根重
(g)
29/Ⅵ
(㎝)
13/Ⅶ
(㎝)
24/Ⅶ
(㎝)
根重
(g)
標準区 59.2 76.1 100.0 145.0 190 24 28.0 37.6 41.5 133
無肥料区 71.2 86.0 101.0 144.0 118 25 20.0 21.2 22.5 29
N・0区 70.0 81.2 85.3 111.0 46 15 28.2 31.0 31.0 75
N・多区 66.3 82.5 101.8 105.0 260 62 22.2 32.0 36.5 132
N・0区 75.0 - - - - - 26.0 39.0 39.6 100
N・多区 71.2 98.2 114.8 165.0 325 75 29.5 39.5 41.0 140
N・0区 76.0 93.2 116.5 155.0 155 62 28.0 38.0 39.8 146
N・多区 68.6 92.2 118.8 162.0 255 45 22.9 34.5 37.5 160
N・0区 67.4 67.2 78.3 74.0 11 3 28.8 39.0 41.3 197
N・多区 67.6 91.0 112.4 140.0 98 37 29.5 44.0 44.0 130
N・0区 63.0 84.0 105.0 144.0 355 60 30.5 43.0 43.0 160
N・多区 66.5 - - - - - 23.8 34.0 36.8 105
  (注)トマト草丈の項中欠数になっているのは芯どまり症状のもの

  ⅱ)収量調査成績
試験区名/項目 ト      マ      ト か   ん   ら   ん
健    全    果 腐敗果 未熟果 外葉部重(g) 結球部重(g) 収量比 硬さ
重   量   (g) 個数
(コ)
合計 百分比
標準区 165 892 1,057 100 1 12 0 114 1,086 951 100 24
無肥料区 263 186 449 42 2 2 0 52 136 120 13 20
N・0区 0 371 371 35 0 6 0 75 685 1,051 111 20
N・多区 0 274 274 26 0 8 183 0 1,278 2,226 234 19
P・0区 - - - - - - - - 830 1,175 124 17
P・多区 880 608 1,488 141 3 11 420 79 1,185 1,670 176 22
K・0区 873 215 1,088 103 7 3 0 25 1,290 1,800 189 19
K・多区 1,599 621 2,220 210 11 8 0 325 860 1,316 138 22
Ca・0区 0 75 75 7 0 4 0 0 741 762 80 17
Ca・多区 241 564 805 76 2 11 0 0 909 389 41 20
Mg・0区 261 373 634 60 2 4 379 184 1,075 1,300 137 21
Mg・多区 - - - - - - - - 940 1,620 170 18
  (注)かんらん硬さ:山中式硬度計による測定値
     トマトのP・O区、Mg・多区は芯どまり株のため測定せず

Ⅴ総括
 水田のそ菜地化に関する現地試験並びに実態調査を昭和38年より実施してきたが、いま、その成果を主として土壌肥料的立場から集約してみると凡そ次の通りである。

 (1)鋤床層破砕(深耕)の影響は土壌の理化学性並びに水分消長、根系、生育状況、雑草発生量などの各面においてうかがわれるが、本条件下では深耕によりかえって減収する場合も認められるところから、その存在は当初考えられたほど大きい障害性をもつ要因ではないものの如く判断される。(過湿、過乾や根伸長阻害はそれほど甚だしいものでないことを意味する)

 (2)転換畑土壌は、塩基特に節介に欠乏していて、飽和度が低く、一般に強酸性を呈していることや、そ菜類(トマト)の養分吸収特性などからみて、石灰及び加里の施用に留意する必要があるものと考える。
 このことは、それらの供給絶対量に問題があるというばかりでなく、養分バランスの立場からしても重要な事柄であり、転換初年目においてはなおさらである。トマトにみられる尻ぐされ、生長点枯死及びかんらんの葉周辺壊死などによる品質低下は石灰多施によって殆ど解消し、加里と共に明らかな収量増加をもたらしている。なお転換畑における実際の石灰施用量は、初年目は塩基置換容量の100%相当(C.E.C.20ME、耕土深12㎝程度:CaO40~45㎏/a)第2年目80%相当(Cao35~40kg /a)但しPHで7を超えない程度とする。加里施用量は、石灰に較べると、それほど明確ではないが、余り加里飽和度を高めるのはよくないようで、凡そ10%相当(K2O5~6㎏/a)がそれぞれ適当と思われる。

 (3)地下水位の影響はそ菜の種類によって異なっていて、水位20~60㎝の範囲では、かんらんの場合それの低いほど根系発達状況、生育、収量のよいことが認められるが、トマトについてみると水位の高い方が幾分優位にあるが、すくなくも水位の高いことがそれほど影響ないか、ある程度の高水位がのぞましいということを容易に推考しうる傾向が示されている。勿論、このことは土性などによってもちがってくるものであろうか、地下水位の面からみたトマト栽培の可能範囲は可成り広いように思われる。