【普及奨励事項】
牧草地に対する厩肥および尿の施用効果
道立根釧農業試験場

1.目的
 穀菽中心の耗業経営では牧草に厩肥を施用することは殆どなかったが、専業酪農では厩肥を牧草地に還元することが多くなる。従来厩肥は基肥として覆土して施用するよう指導されていたが、多年生牧草畑に対しては、基肥として施用することに限定すると施用の機会が少ないので追肥として表面散布施用の効果を知らんとし、まず基肥として施用した場合の厩肥の肥効持続年限並に基肥とした場合と追肥した場合の肥効の差を明らかにしようとした。
 尚併せて尿の肥効を化学肥と比較検討を試みた。

2.試験方法、並に成績
(1)牧草畑に対する基肥施用厩肥の効果持続年限に関する試験
 ア 供試牧草、採草用:チモシー、赤クロバー混播(年2回刈)
          放牧用:オーチャード、ラデノクローバー混播(年4回収穫)
 イ 施肥設計、基肥として厩肥を10アール当0、2、5、10トン施用区を設け、それぞれに化学肥料で窒素0、2、4㎏の施用区を設けた、共通肥料として燐酸8㎏、加里8㎏施用
 ウ 1区面積10平方米、3反覆
 エ 試験成績
 放牧用牧草に関する成績を省略し採草用牧草についての成績を掲げると次の通りである。

 第1表 採草用牧草に対する基肥厩肥と化学肥料窒素の肥効の推移(牧草収量は10a当生草で示す)
年次 厩肥量 厩肥無施用 厩肥初年目2トン 厩肥初年目5トン 厩肥初年目10トン
N施用量
/
収量
10a当り
生産収量
内訳 10a当り
生産収量
内訳 10a当り
生産収量
内訳 10a当り
生産収量
内訳
チモシー クロバー チモシー クロバー チモシー クロバー チモシー クロバー
1

N0㎏ 1,333 535 798 1,930 862 1,068 2,127 1,097 1,030 2,108 1,130 978
N2㎏ 1,652 701 951 1,753 770 983 2,162 1,267 895 2,263 1,169 1,094
N4㎏ 1,432 715 717 1,820 986 834 1,997 1,197 800 2,058 1,194 864
2

1

N0㎏ 1,793 350 1,443 2,545 580 1,965 3,076 801 2,275 3,175 1,080 2,095
N2㎏ 1,898 563 1,335 2,397 701 1,696 3,056 1,161 1,895 3,558 1,292 2,266
N4㎏ 1,835 871 966 2,288 1,121 1,167 3,125 1,379 1,746 3,711 1,772 1,939
2

N0㎏ 1,290 262 1,028 1,368 530 838 1,250 515 735 1,492 614 884
N2㎏ 1,205 457 748 1,298 561 737 1,683 898 785 1,595 720 875
N4㎏ 1,332 750 582 1,407 808 599 1,540 928 612 1,528 857 671
3

1

N0㎏ 2,352 964 1,388 2,471 889 1,582 2,542 1,247 1,295 3,095 1,504 1,591
N2㎏ 2,471 1,354 1,117 2,565 1,617 948 2,440 1,594 846 2,961 1,802 1,159
N4㎏ 2,502 1,913 589 3,027 2,195 832 2,668 2,032 636 3,031 2,259 772
2

N0㎏ 1,685 804 881 1,768 753 1,015 1,960 663 1,297 2,018 779 1,239
N2㎏ 1,772 993 779 1,307 893 914 1,660 1,013 647 1,928 951 977
N4㎏ 1,698 1,246 452 1,722 1,278 444 1,682 1,344 338 1,605 1,152 453

 第2表 採草用牧草の厩肥と化学肥料窒素の肥効肥量比(%)
 (数字は厩肥無施用且つ化学肥料窒素無施用区の収量を100とし他区の収量をこれに比較した百分比(%))
 *印は厩肥無施用区との収量差を統計処理して検定した結果(t検定)有意のもの。
年    次 イネ科マメ科合計収量 イネ科収量 マメ科収量
初年目の厩肥施用量 初年目の厩肥施用量 初年目の厩肥施用量
0 2トン 5トン 10トン 0 2トン 5トン 10トン 0 2トン 5トン 10トン
1年目 N0㎏
100
**
145
**
160
**
158

100
**
161
**
203
**
211

100
**
134
**
129
**
123
N2㎏
124

131
**
162
**
169

131

143
**
236
**
218

119

122

112
**
137
N4㎏
107
**
137
**
150
**
154

133
**
184
**
223
**
222

90
*
105
*
100
**
108
2年目 1番草 N0㎏
100
**
141
**
171
**
177

100
**
166
**
228
**
297

100
**
136
**
158
**
146
N2㎏
106
**
133
**
170
**
198

161
**
200
**
313
**
370

93
**
118
**
132
**
157
N4㎏
102
**
128
**
174
**
206

249
**
320
**
394
**
506

67
**
81
**
121
**
135
2番草 N0㎏
100

106

97
**
116

100
**
210
**
204
**
743

100
△△
82
△△
71
△△
86
N2㎏
93

101
**
130
**
134

182
**
222
**
356
**
285

73

72

76
*
85
N4㎏
103

109
**
119
**
118

297
**
321
**
368
**
340

57

58

60
*
65
3年目 1番草 N0㎏
100

105

108
**
132

100

92
**
129
**
159

100
*
114

94
*
115
N2㎏
105

109

104
**
126

140
**
168
**
165
**
188

81

69
△△
61

84
N4㎏
106
**
130

104
**
129

198
**
227
**
211
**
234

42
**
60

46

56
2番草 N0㎏
100

106
**
118
**
121

100

94

83

97

100
**
115
**
147
**
141
N2㎏
105

108

100
**
116

124

111

126

118

88
**
104

73
**
111
N4㎏
101

103

101

96

155

159
*
167

143

51

51
△△
38

52

 第3表 厩肥と化学肥料窒素施用量の採草用牧草に於けるクロバー混生割合に及ぼす影響(数字はクロバーの混生割合%を示す)
年  次 厩肥
/
肥料N施用量
厩肥施用量(%)
0 2トン 5トン 10トン
1年目 N0㎏ 60 56 48 47
N2㎏ 58 56 41 48
N4㎏ 50 46 40 42
2年目 1番草 N0㎏ 81 77 75 66
N2㎏ 71 71 65 64
N4㎏ 53 51 56 52
2番草 N0㎏ 80 61 59 59
N2㎏ 62 57 47 55
N4㎏ 44 43 40 44
3年目 1番草 N0㎏ 59 64 51 52
N2㎏ 55 37 35 30
N4㎏ 23 27 24 25
2番草 N0㎏ 53 60 67 62
N2㎏ 45 51 39 51
N4㎏ 32 26 20 28

 t検定の結果から厩肥として施用効果持続期間を推定すると次の通り。
厩肥施用量/種別 採草用牧草 放牧用牧草
全収量 イネ科収量 マメ科収量 全収量 イネ科収量 マメ科収量
2トン施用の場合 2年目
1番草まで
2年目
2番草まで
2年目
1番草まで
2年目
2番草まで
3年目
1番草まで
2年目
1番草まで
5トン施用の場合 2年目
2番草まで




2年目
2番草まで
10トン施用の場合 3年目
2番草まで
3年目
2番草まで
3年目
2番草まで
3年目
4番草まで
3年目
4番草まで
2年目
4番草まで
  注 放牧用牧草に関する試験成績の記載は省略したが、結果のみ上記の通り記載した。

 オ 総括
 厩肥として覆土施用しても相当多量に搬入しなければ肥効の持続が保てない。たとえば5トン施用してもその効果は2ヶ年間、10トンでも3年目になるとt検定の有意差を辛うじて保つ程度の増収率しか認められなくなった。またイネ科マメ科混生牧草に対し窒素肥量を増施すると専らイネ科が優勢となりマメ科を抑圧するが、今回の試験でも窒素肥量の増施によってイネ科が増収しマメ科混生比が低下したが、化学肥料としての窒素のイネ科に対する比効は厩肥に優り、たとえば2年目1番草において化学肥料N4㎏区のチモシー収量は厩肥5トン(含有するN全量は約25㎏である)に匹敵していた。ただし厩肥中の窒素は緩効性でそれだけにマメ科が高収量に保たれイネ科、マメ科合計収量は化学肥料区に勝った。しかし厩肥成分中の肥効持続はNが最も大きいもので、厩肥の増収効果の持続がマメ科よりイネ科において長く、かつ大きかったこと、或いは厩肥施用量が増すにつれてマメ科混生比が下がったことなどから窺い知れる。

(2)牧草畑に厩肥を基肥として1度に施用した場合と、追肥として分施した場合の肥効比較試験
 ア 供試牧草、採草用:チモシー、赤クロバー混播(年2回収穫)
          放牧用:オーチャード、ラデノクロバー混播(年4回収穫)
 イ 施肥設計 a厩肥6トンを基肥として初年にまとめて施用
          b厩肥を毎春2トン宛分施(3ヶ年で計6トン)
          c厩肥を毎秋2トン宛分施(3ヶ年で計6トン)
          基肥の場合は覆土施用、追肥の場合は草地表面に撒布
          共通肥料草地化成2号(6-11-11)を年間30㎏
 ウ 1区面積10平方米 3反覆
 エ 試験成績

 第4表 採草用牧草に厩肥を基肥と分施した場合の収量推移 (10a当り生草㎏)
年   次 (A)厩肥6トンを基肥として
1度に施用
(B)2トン宛を毎春分施
(3ヶ年に計6トン)
(C)2トン宛を毎秋分施
(3ヶ年に計6トン)
(A):(B):(C)
収量比
全量 内訳 マメ
混生率
(%)
全量 内訳 マメ
混生率
(%)
全量 内訳 マメ
混生率
(%)
チモシー クロバー チモシー クロバー チモシー クロバー
1年目 1,663 1,254 408 25 1,666 1,311 355 21 1,668 1,284 384 23 100:100:101
2年目 1番草 3,188 2,585 603 19 2,908 2,089 820 28 2,740 2,191 548 20 100:91:86
2番草 1,566 858 708 45 1,835 1,099 735 40 1,643 975 668 41 100:117:105
3年目 1番草 3,198 1,853 1,345 42 4,448 2,458 1,990 45 4,095 2,541 1,553 38 100:139:128
2番草 1,615 1,095 536 33 1,890 1,208 681 36 1,805 1,427 378 21 100:117:112
合計 11,230       12,747       11,951       100:114:106

 第5表 放牧用牧草に厩肥を基肥と分施した場合の収量推移 (10a当り生草㎏)
年   次 (A)厩肥6トンを基肥として
1度に施用
(B)2トン宛を毎春分施
(3ヶ年に計6トン)
(C)2トン宛を毎秋分施
(3ヶ年に計6トン)
(A):(B):(C)
収量比
全量 内訳 マメ
混生率
(%)
全量 内訳 マメ
混生率
(%)
全量 内訳 マメ
混生率
(%)
オーチ
ヤード
クロバー オーチ
ヤード
クロバー オーチ
ヤード
クロバー
1年目 2,220 1,248 972 43 2,000 1,075 925 46 2,137 1,013 1,124 53 100:90:96
2年目 1番草 2,863 1,375 1,498 53 2,327 933 1,394 60 2,104 1,092 1,012 48 100:81:74
2番草 3,213 1,549 1,664 52 3,097 1,291 1,806 59 3,055 1,702 1,353 44 100:97:96
3番草 1,585 966 619 33 1,957 841 1,116 57 1,661 928 733 44 100:123:105
4番草 972 506 464 48 1,023 551 472 46 1,003 625 378 38 100:105:103
3年目 1番草 1,557 1,071 480 31 2,582 1,534 1,048 41 2,253 1,709 544 41 100:165:144
2番草 1,513 841 672 45 1,863 914 949 51 1,711 1,004 707 41 100:123:113
3番草 1,538 1,035 503 33 1,632 1,100 532 33 1,620 1,065 555 34 100:106:105
4番草 402 171 231 58 463 239 224 49 447 237 210 47 100:115:112
合計 15.863       16.944       16.261       100:107:113


 初年度は根釧地方の気象条件の関係もあり牧草の生育量は余り大きくなく、厩肥を2トン施用も6トン施与卯も収量に差がでない。2年目1番草は一般に収量が最も多くなるもので、厩肥施用量に比例して収量が多かった。しかし2年目後半からはむしろ分施した方が増収し、3年目は分施した方が確実にまさった。

 オ 総括
 同量の厩肥の基肥として施用したものと、これを3分し3年間に分施したものでは後者の増収効果が大きい。基肥とした場合の肥効持続年限は2~3ヶ年間で、従ってこれ以上の年限にわたり長期利用する場合には基肥として1度に施用する方法よりも、放草地表面に直接まき散らす追肥方式の方がすぐれている。追播する時期は秋よりも春の方がよいが、(秋に施用するとKが流乏しクロバー混生比が下がる)その差は余り大きくないので、時期に拘泥せず、放草畑に厩肥追肥することは有効である。

 C)尿と化学肥料の肥効の効比較
 家畜尿は一般に放牧用草地の追肥用として用いられるが、一度にまとめて多量施用するのと分施するのでは肥効上どのような差がでるか、或いは同成分の化学肥料に比べ肥効上の相異を検討した。

 ア 供試放草地 オーチャード、ラデノクローバ混生3年目草地
 イ 用いた家畜尿の成分含有率、並に施用法
   N 0.5%、P2O5 0.01%、K2O 0.9%

 尿の施用量は次の4段階とし、夫々の量を萌芽期および刈取毎に(計4回)追肥した。
 10a当りN1㎏を含む量、同じく、2㎏、3㎏、4㎏、5㎏を含む量
 いづれの場合も水で稀釈して(5倍以上)施用した。

 第6表 昭和39年度 尿と化学肥料の肥効比較
施  肥  区  分 家   畜   尿 化  学  肥  料
10a当り
生草収量
(㎏)
内    訳 10a当り
生草収量
(㎏)
内    訳
オーチ
ヤード
(㎏)
ラデノ
クロバー
(㎏)
マメ科
混生率
(%)
オーチ
ヤード
(㎏)
ラデノ
クロバー
(㎏)
マメ科
混生率
(%)
1番草 N1㎏宛分施(年4㎏) 1,605 818 787 49 1,240 700 540 43
N2㎏宛分施(年8㎏) 1,750 825 825 47 1,615 1,045 570 35
N3㎏宛分施(年12㎏) 2,015 1,183 832 41 1,865 1,369 498 27
N4㎏宛分施(年16㎏) 1,980 1,262 718 36 2,075 1,663 412 20
春にN4㎏まとめて追肥 1,750 618 1,132 65 1,685 1,031 654 39
春にN8㎏まとめて追肥 1,740 786 954 55 1,750 1,046 704 40
春にN12㎏まとめて追肥 1,850 1,275 575 31 1,840 1,259 581 32
春にN16㎏まとめて追肥 1,940 1,524 416 21 1,975 1,445 530 27
2番草 N1㎏宛分施(年4㎏) 1,720 550 1,170 68 1,500 510 990 66
N2㎏宛分施(年8㎏) 1,930 685 1,245 65 1,640 610 1,030 63
N3㎏宛分施(年12㎏) 2,070 765 1,305 63 1,890 909 981 52
N4㎏宛分施(年16㎏) 2,320 855 1,465 63 2,030 1,233 797 39
春にN4㎏まとめて追肥 1,860 365 1,495 80 1,985 843 1,142 58
春にN8㎏まとめて追肥 1,765 428 1,337 76 1,940 971 969 50
春にN12㎏まとめて追肥 1,570 518 1,052 67 2,100 1,033 1,067 51
春にN16㎏まとめて追肥 1,520 579 941 62 2,025 1,112 913 45
3番草 N1㎏宛分施(年4㎏) 1,855 565 1,320 70 1,755 892 862 49
N2㎏宛分施(年8㎏) 1,995 773 1,222 61 1,805 940 865 48
N3㎏宛分施(年12㎏) 2,195 860 1,335 61 2,085 1,207 778 77
N4㎏宛分施(年16㎏) 2,150 910 1,240 57 2,165 1,538 627 35
春にN4㎏まとめて追肥 1,765 605 1,160 66 1,760 542 1,218 69
春にN8㎏まとめて追肥 1,930 640 1,290 67 1,640 672 968 59
春にN12㎏まとめて追肥 1,960 628 1,332 68 1,760 810 950 54
春にN16㎏まとめて追肥 1,950 712 1,238 62 1,695 855 840 50
4番草 N1㎏宛分施(年4㎏) 1,340 308 1,032 77 1,225 338 887 73
N2㎏宛分施(年8㎏) 1,345 460 885 66 1,320 495 825 63
N3㎏宛分施(年12㎏) 1,675 540 1,135 67 1,260 455 805 64
N4㎏宛分施(年16㎏) 1,540 518 1,022 67 1,365 577 788 58
春にN4㎏まとめて追肥 1,245 253 992 80 1,205 217 988 82
春にN8㎏まとめて追肥 1,390 220 1,130 82 1,110 292 818 74
春にN12㎏まとめて追肥 1,475 350 1,125 76 1,255 333 922 74
春にN16㎏まとめて追肥 1,525 330 1,195 78 1,360 340 1,020 75

 家畜尿と化学肥料の放牧用牧草に対する追肥量及び分施の年間収量に及ぼす影響
施  肥  区  分 家   畜   尿 化  学  肥  料
10a当り
生草収量
(㎏)
内    訳 10a当り
生草収量
(㎏)
内    訳
オーチ
ヤード
(㎏)
ラデノ
クロバー
(㎏)
マメ科
混生率
(%)
オーチ
ヤード
(㎏)
ラデノ
クロバー
(㎏)
マメ科
混生率
(%)
昭和38年度 N1㎏宛分施(年4㎏) 7,885 2,687 5,198 66 7,070 2,690 4,380 59
N2㎏宛分施(年8㎏) 7,925 2,885 5,040 64 7,495 3,528 3,967 53
N3㎏宛分施(年12㎏) 8,435 3,735 4,700 56 7,815 4,503 3,312 42
N4㎏宛分施(年16㎏) 8,355 4,337 4,018 48 8,030 4,896 3,134 39
春にN4㎏まとめて追肥 7,775 3,096 4,679 60 7,115 3,488 3,627 51
春にN8㎏まとめて追肥 7,930 3,640 4,190 53 7,470 3,881 3,589 48
春にN12㎏まとめて追肥 7,020 3,679 3,341 48 7,575 4,258 3,317 42
春にN16㎏まとめて追肥 6,940 3,81 3,130 45 7,435 4,814 2,621 35
昭和39年度 N1㎏宛分施(年4㎏) 6,550 2,241 4,309 66 5,720 2,441 3,279 57
N2㎏宛分施(年8㎏) 6,920 2,743 4m177 60 6,380 3,090 3,290 52
N3㎏宛分施(年12㎏) 7,955 3,348 4,607 59 7,000 3,940 3,060 44
N4㎏宛分施(年16㎏) 7,990 3,545 4,445 56 7,635 5,011 2,624 34
春にN4㎏まとめて追肥 6,620 1,841 4,779 66 6,635 2,633 4,002 60
春にN8㎏まとめて追肥 6,785 2,074 4,711 71 6,440 2,981 3,459 54
春にN12㎏まとめて追肥 6,855 2m771 4,084 59 6,955 3,435 3,520 51
春にN16㎏まとめて追肥 6,935 3,145 3,790 55 7,055 3,752 3,303 47

 オ 総括
 尿を一度にまとめて施用する場合は多用しても余り増収しない。これは尿の増施によってイネ科は増収するがクロバーの生育が良くない為である(稀釈しているので、直接的な障碍は見られないが、伸長再生が若干鈍くなる)。しかし、少量宛分施するとN成分2~3㎏位に相当する量までは増収するがこの場合も増施によってマメ科よりイネ科が増収した。すなわち原尿で一回宛400~600Lが限界である。
 尿と同成分の化学肥料に比べた場合、イネ科収量は尿に勝ったがマメ科収量が劣り、従ってイネ科マメ科牧草の合計収量は尿の方が多かった。すなわち尿のN成分はやや緩効力性であり、クロバーの生育を維持し家畜の利用に適した混生比率に保つのに適している。
 また尿の肥効は同成分の化学肥料に比べNが緩効性で、増収と同時にクロバーの混生割合を適切な価に保つには尿の方が容易である。また一度にまとめて施用するよりも少量宛分施した方が増収し、且一回宛原尿で400~600L以上施用しない方がよい。