【普及奨励事項】
牧草サイレージを主体とした乳牛の飼養法確立に関する試験
北海道立根釧農業試験場

1. サイレージ多給時における濃厚飼料給与レベルの乳量乳質に及ぼす影響について
2. 牧草サイレージ調製時の糖蜜飼料の特性とその産乳効果ならびに給与法について
3. ラデノクロバー、赤クロバーならびにチモシー各サイレージの産乳効果について
4. 牧草サイレージとデントコーンサイレージの産乳性の比較
5. 秋冬移行期における牧草サイレージ多給の利用効果-放牧草と草サイレージの産乳比較
6. 時期別ならびに形態別同期牧草のめん羊消化試験
 <この牧草サイレージを主体とした乳牛の飼養法確立に関する試験は、すでに昭和38年度の成績が普及奨励事項となり、その概要を本誌に掲載したところである。今回の分は前回に引き続いての関連試験であり、その内容は目次に示した6項目にわかれているが、必ずしも全北海道に共通して普及奨励すべきかどうかについては、さらに検討を要する事項が少なくない。
 この試験は、根釧という特殊な条件下における乳牛飼養法確立を企図したものであって、根釧ならびに類似地域における乳牛飼養法を合理的かつ経済的に進めるためには、大いに参考として活用していただきたい。
 なお、紙面の都合もあって、図表の一部については省略し、また6の時期別ならびに形態別同期牧草のめん羊消化試験について全面的に省略したので了解ねがいしたい。>-農業改良課-

1. サイレージ多給時における濃厚飼料給与レベルの乳量乳質に及ぼす影響について
 さきに牧草サイレージ多給時の粗飼料の給与基準設定試験を報告しサイレージ多用でも健康を維持し、経済効果も高いことからその飼養法が充分確立できることを考察したが、そのときの濃厚飼料の給与量は乳量(FCM)の1/4量を基準としたため健康に経過できたことも考察された。
 また粗飼料摂取量を飽食量程度に前提するとき濃厚飼料の給与量の基準を設定することも重要と考えた。
 しかし、従来から産乳量の向上には濃厚飼料の補給は不可欠の条件になっており、これは真理であるが、生理的または催乳的にその補給が重要でも経済的に有利になるとは限らない。そこで本試験では各レベルの濃厚飼料の補給が産乳量、乳質、健康度、経済性に及ぼす影響を調査し、サイレージを主体とした飼養法の場合の経済的な給与基準を確立すべく実施したものである。
 イ) 試験方法
  分娩後1~6カ月、平均体重518kg、平均乳量16.5kgの乳牛12頭を用い、4群に分け、20日づつ4期80日間(昭和38年10月29日~39年1月16日)、FCM乳量の1/3、1/4、1/5、1/6量の濃厚飼料を給与し、乾草、サイレージを給与してラテン方格法で飼養し、その産乳量乳質成分、体重を調査し、経済効果とともに検討した。供試牛の概要は第1表の通りである。試験計画は第2表に示した。

 第1表 供試牛の概要
供試
牛名
種類 生年
月日
最近分娩
年・月.日
産次 産仔性 乳量 体重
Y S ホ系 60. 3.19 63.4.19 2 14.5 493
BBH 57. 9.25   9.10 4 20.0 573
S Q 55.11.13   7.14 5 16.0 541
D F 61.12. 4   4.30 1 15.2 460
QA2 51. 7. 4   9.18 7 ♀♀ 14.3 512
P N 59. 1.27   8.20 3 23.0 512
S S ホ系 54.12.16   7.31 6 21.2 625
J P 59. 7.20   7.13 3 13.6 535
H H 60. 2. 6   5. 4 2 16.0 497
B D 61.5.16   8.21 1 16.1 486
B N 59. 1.30   6.19 3 15.9 530
DFN 60.11.26   5.15 1 12.3 452

 第2表 試験計画とその方法
期別 試験期間 Ⅰ群 Ⅱ群 Ⅲ群 Ⅳ群
1 10.29~11.17 1/3 1/4 1/5 1/6
2 11.18~12. 7 1/4 1/5 1/6 1/3
3 12. 8~12.27 1/5 1/6 1/3 1/4
4 12.28~ 1.16 1/6 1/3 1/4 1/5
  注) 1. 濃厚飼料給与量はFCM乳量に対する割合。
     2. 粗飼料は1日当りグラスサイレージ45kg、1番乾草3kg給与した飽食量である。

 ロ) 試験成績
 第3表 飼料摂取日量
1/3 1/4 1/5 1/6
乾草 サイ
レージ
配合 乾草 サイ
レージ
配合 乾草 サイ
レージ
配合 乾草 サイ
レージ
配合
Ⅰ群 1.39 44.7 4.90 1.75 44.7 3.53 1.34 44.9 2.60 0.8 44.7 1.97
0.86 44.5 3.97 1.41 44.4 3.60 1.80 44.3 2.40 1.53 44.6 1.97
1.41 44.9 4.80 1.30 45.0 3.60 2.40 45.0 2.80 2.21 45.0 2.37
1.77 43.9 4.17 1.51 43.9 3.53 1.45 45.0 2.53 2.00 44.3 2.13
平 均 1.36 44.5 4.46 1.49 44.5 3.57 1.75 44.8 2.58 1.64 44.6 21.1
摂取量
採食率
45.2 98.8 100 49.8 98.8 100 58.3 99.5 100 54.4 99.1 100

 第4表 飼料成分表
飼料名 水分 乾物 粗蛋白 粗脂肪 粗繊維 NFE 粗灰分 DCP TDN
1期サイレージ 78.92 21.08 3.08 1.22 6.59 8.87 1.32 2.09 13.77
2   〃 80.14 19.86 3.04 1.81 6.84 6.62 1.55 2.07 13.54
3   〃 78.62 21.38 2.89 2.25 6.53 8.10 1.39 1.97 14.97
4   〃 80.20 19.80 2.13 1.20 5.65 9.66 1.17 1.45 13.03
1期 乾 草 18.50 81.50 9.03 3.69 28.36 35.90 4.55 5.51 46.99
2   〃 20.05 79.95 9.92 3.46 25.79 36.55 5.37 6.05 46.12
3   〃 20.68 79.32 9.31 2.82 24.43 38.97 4.78 5.07 44.94
4   〃 24.04 75.96 9.70 2.34 26.43 32.29 6.22 5.31 41.95
配合飼料 8.80 91.20 20.20 4.35 9.89 47.16 9.58 17.20 71.55
  注) 消化率        蛋白   脂肪   繊維   NFE 
         サイレージ 68 80 59 63
         一 番 草 61 55 58 57

 第5表 サイレージの有機酸組成(原物中%)
飼料名 PH FLicg Woodman
乳酸 酷酸 酪酸 乳:酷:酪 乳酸 酷酸 酪酸 乳:酷:酪
1期サイレージ 4.8 1.857 0.372   83:17 2.78 2.63 0.15 95: 5
2期   〃 3.9 1.434 0.356   80:20 1.81 1.62 0.22 88:12
3期   〃 4.3 0.180 0.571 0.600 14:42:44 1.32 0.72 0.60 55:45
4期   〃 3.8 1.703 0.647 0.074 70:27: 3 2.61 2.02 0.59 77:23
  注) 1.2.3期サイレージは40tトレンチサイレージ(表面部SMS処理)
         4期20t塔型サイロ(無添加)

 第6表 サイレージ中のN化合物の分布
飼料名 粗蛋白 VBN AAN
VBN

粗蛋白
AAN

粗蛋白
VBN+AAN

粗蛋白
純蛋白

粗蛋白
AAN

VBM
1期サイレージ 3.08 0.061 0.39 1.98 12.66 14.64 85.36 6.4
2期   〃 3.04 0.140 0.65 4.61 21.38 25.99 74.01 4.6
3期   〃 2.89 0.140 0.47 4.84 16.26 21.10 78.90 3.4
4期   〃 2.13 0.200 0.86 9.39 40.38 49.77 50.23 4.3

 第7表 乾物摂取量とその体重に対する割合
1/3 1/4 1/5 1/6
全量 体重比 粗飼
から
全量 体重比 粗飼
から
全量 体重比 粗飼
から
全量 体重比 粗飼
から
Ⅰ   群 15.03 2.72 1.91 13.50 2.45 1.87 13.03 2.46 2.01 11.26 2.12 1.76
Ⅱ   群 13.10 2.62 1.89 13.79 2.75 2.09 12.43 2.48 2.04 12.54 2.54 2.17
Ⅲ   群 15.10 2.79 1.98 15.18 2.71 1.82 14.06 2.50 2.04 12.89 2.33 1.94
Ⅳ   群 14.00 2.58 2.06 13.80 2.83 2.17 12.32 2.51 2.03 12.91 2.64 2.24
平   均 14.31 2.74 1.96 14.07 2.70 1.99 12.95 2.49 2.03 12.40 2.41 2.03
粗飼:濃飼      72:28       76:24       82:18       84:16
  注) 1. 粗飼料からとは粗飼料が摂取した乾物摂取量の体重に対する割合。
     2. 粗飼:濃飼は全粗飼料の乾物量と濃厚飼料のそれとの比率である。

 第8表 飼料養分摂取量とNRC標準比
区/
量/
1/3 1/4 1/5 1/6
DCP TDN DCP TDN DCP TDN DCP TDN
1854 10314 1638 9385 1400 9184 1030 7570
標準比 186 121 177 117 164 123 122 102
1374 9005 1625 9352 1439 8546 1294 8766
標準比 154 117 180 121 172 118 161 125
1782 10790 1341 8985 1554 9328 1473 8808
標準比 183 130 136 107 163 114 157 108
1733 9744 1549 9776 1165 8282 1402 8564
標準比 193 127 175 129 133 110 166 117


1686 9964 1538 9374 1389 8835 1300 8442
標準比 179 124 166 118 158 116 152 113
畜試比 160 117 149 111 142 109 136 106
飼料利用効率 26.56 27.49 27.18 27.42

 第9表 生体重の変化
供試牛名 1/3 1/4 1/5 1/6
Y S 501 495 482 488
BBH 582 577 550 547
S Q 575 575 559 561
平 均 553 550 530 532
D F 498 484 492 481
QA2 501 515 511 500
P N 501 508 499 498
平 均 500 502 501 493
S S 615 613 628 618
J P 510 524 550 521
H H 497 494 502 484
平 均 541 544 560 541
B O 487 481 477 491
B N  526 529 532 538
PFN 464 453 460 453
平 均 492 488 490 494
全 平 均 522 521 520 515
  注) LSD5%9.57  開始時体重518kg

 第10表 産乳日量と脂肪率
供試牛 1/3 1/4 1/5 1/6
乳量 脂肪率 FCM 乳量 脂肪率 FCM 乳量 脂肪率 FCM 乳量 脂肪率 FCM
Y S 15.47 2.80   14.76 2.80   13.84 2.65   13.42 2.78  
BBH 20.17 3.50   17.19 3.50   15.50 3.60   14.49 3.60  
S Q 16.50 3.00   14.45 3.15   12.69 3.20   12.67 3.33  
平 均 17.38 3.10   15.47 3.15 13.50 13.89 3.15 12.12 13.58 3.21 11.93
D F 16.25 3.40 15.03 15.65 3.25   14.92 3.15   14.54 3.10  
QA2 11.79 3.50   12.19 3.40   10.33 3.30   9.60 3.50  
P N 16.07 3.15   18.08 2.95   15.47 3.30   13.74 3.40  
平 均 14.70 3.35 13.27 15.31 3.20 13.47 13.57 3.25 12.04 12.63 3.33 11.36
S S 12.65 3.05    17.63 3.35   19.65 3.00   16.99 3.00  
J P 14.02 3.55   14.47 3.40   13.84 3.10   13.86 3.30  
H H 17.63 3.20   17.64 3.10   16.22 2.80   16.46 3.10  
平 均 16.43 3.27 14.63 16.58 3.28 14.79 16.57 2.97 14.01 15.77 3.18 13.83
B O 15.85 3.05   14.89 3.21   15.33 3.20   15.35 2.95  
B N  15.74 3.55   14.96 3.55   14.06 3.65   14.40 3.45  
PFN 13.45 3.40   13.63 3.45   13.50 3.55   12.20 3.15  
平 均 15.03 3.33 13.52 14.49 3.42 13.23 14.30 3.47 13.01 13.95 3.18 12.23
全 平 均 15.88 3.26 14.12 15.46 3.26 13.75 14.58 3.19 12.81 13.97 3.23 12.35
  注) LSD5% 0.806 1/4と1/5  1% 1.222 1/3と1/5及1/4:1/6

 第11表 牛乳成分の変化
期別 酸度 固形分 無 脂
固形分
脂肪率 乳糖 全蛋白質 カゼイン 灰分


0.170 10.71 7.68 3.03 4.41 2.79 2.21 0.48
0.170 10.61 7.51 3.10 4.30 2.68 2.13 0.53
0.163 10.69 7.69 3.00 4.29 2.72 1.91 0.68
0.177 11.16 7.96 3.20 4.53 2.78 1.93 0.64
平均 0.170 10.79 7.71 3.08 4.38 2.74 2.04 0.58
1 0.163 10.90 7.78 3.10 4.40 2.80 2.11 0.59
0.147 11.02 7.82 3.20 4.37 2.83 1.99 0.61
0.146 10.87 7.90 2.97 4.40 2.84 1.92 0.66
0.145 11.39 8.22 3.18 4.89 2.73 1.99 0.61
2 0.143 11.17 8.02 3.15 4.59 2.95 2.16 0.63
0.140 11.20 7.95 3.25 4.46 2.86 1.89 0.64
0.138 11.44 8.30 3.13 4.84 2.90 2.03 0.56
0.145 11.70 8.37 3.33 5.15 2.64 1.77 0.56
3 0.140 10.93 7.78 3.15 4.35 2.83 2.20 0.60
0.147 10.99 7.66 3.33 4.28 2.90 2.06 0.58
0.178 11.36 8.09 3.27 4.64 2.89 2.17 0.57
0.152 11.49 8.07 3.43 4.75 2.63 2.10 0.67
4 0.142 10.87 7.66 3.21 4.11 2.88 2.25 0.68
0.149 11.08 7.71 3.35 4.12 2.90 1.99 0.68
0.153 11.13 7.85 3.28 4.27 2.93 2.08 0.65
0.150 11.64 8.17 3.47 4.84 2.77 2.05 0.56



1/3 0.159 11.26 7.99 3.26 4.58 2.81 2.01 0.60
1/4 0.149 11.20 7.94 3.26 4.50 2.83 2.08 0.65
1/5 0.144 11.16 7.95 3.19 4.51 2.83 2.02 0.64
1/6 0.143 11.17 7.96 3.23 4.51 2.85 2.08 0.61
  注) Alc,testは何れも陰性

 飼料摂取日量……飼料摂取日量は3表のとおりで、各群各期平均日量は乾草、サイレージ、配合それぞれ1/3群:1.36、44.5、4.46kg、1/4群:1.49、44.5、3.57kg、1/5群:1.75、44.8、2.58kg、1/6:1.64、44.6、2.11kgであって、サイレージの採食率は平均99%であり、乾草は45~58%であったので、大体飽食量であろう。
 ただし乾草の採食量の低下は飽食のためか、品質低下のためか判然としないが、両原因によると思われる。
 飼料成分及びサイレージの有機酸組成……サイレージの乾草平均は、20.53%であった。その栄養組成は前年の消化率によって算出すると、各期全平均DCP1.90、TDN13.83であった。
 乾草は1番乾草を供試したが、各期全平均乾物79.18%であって、DCP5.49、TDN45.00であった。第4表のとおりである。
 サイレージの有機酸をFlieg法、Woodman法によって分析した成績を5表に掲載した。
 1・2・4期はともに良質組成を示したが3期は頗る不良な酸組成であった。しかしこの品質でも採食量には影響しなかった。
 第6表にサイレージ中のN化合物の分布を示したが、粗蛋白中のVBNの比は第1期は少なかったが、第4期は多かった。粗蛋白中のアミノ酸の比は第4期に40.38%と多いほかは他の3期は少なかった。
 アミノ酸とVBNの比は4以上で割合に蛋白分解が少ないことを示した。これらを総合すると割合に良質のサイレージであったと思われる。
 乾物摂取量……乾物摂取日量とその体重に対する割合は第7表のとおり1/3群14.3kg、2.74%、1/4群14.07kg、2.70%、1/5群12.95kg、2.49%、1/6群12.40kg、2.41%であった。
 濃厚飼料の給与量の差によって乾物摂取量の差を生じた。
 粗飼料による乾物摂取量の体重比は1/3群1.96%、1/4群1.99%、1/5群2.03%、1/6群2.03%で各群間に差がなかった。粗飼料と濃厚飼料の比はそれぞれ72:28、76:26、82:18、84:16であった。
 飼料養分摂取量……第8表に示せるとおり飼養標準量に対する実際の養分摂取量はNRC標準比と畜試標準比を掲載した。
 NRC標準(畜試標準比)はDCP、TDNそれぞれ1/3群179(160)、124(111):1/4群166(149)、118(111):1/5群158(142)、116(109):1/6群152(136)、113(106)であって、何れに比較しても各群とも標準量以上であった。
 蛋白質の増給量はTDNの増給量より大きいことが認められた。
 飼料の利用効率は1/3群のみが悪く、他は同程度で差がなかった。
 生体重の変化……1/3群522kg、1/4群521kg、1/5群520kg、1/6群515kgであったが、有意差は9.57kgであるので、各群間差異がなかった。しかし1/6群のみが減少の傾向を示した。
 産乳量と脂肪率……産乳量の成績は第10表のとおりである。
 産乳量、脂肪率、FCM乳量それぞれ1/3群15.88kg、3.26%:1/4群15.46kg、3.26%:1/5群14.58kg、3.19%:1/6群13.97kg、3.23%、12.35kgであった。
 乳量の有意差は1%水準では1/3群と1/5群及び1/6群との間に認められ、乳量は濃厚飼料の増給によって有意に増量することが認められた。
 脂肪率では各群差がなかったので、FCM乳量は乳量差と同じ群間に有意差があった。
 濃厚飼料給与の経済性……乳代(4%乳kg当り36.6円)と濃厚飼料費(kg当り35.5円)の差を日量で算出してみると、1/3群358円、1/5群376円、1/6群378円で、1/3群以外は群間差異がなく、濃厚飼料増量代しか乳代の増加がまいことが認められたが1/3群もには経済的に不利な飼養法であることが認められた。
 他の群間に差がないので何れでもこの乳代と濃厚飼料費を維持する限りこの程度の能力、乳量では構わないことになる。
 一般に市乳地帯のように高乳価になったり自給濃厚飼料などで低飼料費の場合は濃厚飼料を増給した方が有利である。
 また高能力牛で増給飼料費を上回る乳代をあげうる場合も同様であるが、この程度の能力で、これらの価格の場合は経済的な結論は難しくなり、本試験からは全く困難である。
 牛乳成分の変化……各群の平均は固形分11.20%、無脂固形分7.96%、脂肪率3.24%、乳糖4.53%、全蛋白質2.83%、カゼイン2.05%であって群間差異は全くなかった。
 試験前の10.79%、7.71%、3.08%、4.38%、2.74%、2.04%に比較すると乳量の減少とともに乳質濃度が濃くなり、何れの成分も試験期にやや高かった。
 アルコ-ルテストは何れも陰性で、乳質は各飼料群で影響ないことが認められ、これで健康度もよいことが察せられる。

 ハ) 摘要
 粗飼料を飽食程度採食させることを基本としたサイレージ多給時の濃厚飼料給与量の基準を得ようとして試験を実施した。
 本試験でも乾草1.5kg、サイレージ45kgの粗飼料を採食し、濃厚飼料は2~4.5の間で差異をつけた。
 サイレージの品質は14.31~12.40kg(体重比2.74~2.41%)であった養分摂取量はNRC標準比DCP179から152、TDN124~113であった。
 生体重でも1/3群は損はほかはほとんど同じであった。
 従ってkg当乳価と飼料費が同等の現在の原料乳地帯の場合その経済性から濃厚飼料給与量の適量を結論づけることは困難であるが、中能力牛乳価の場合は1/4~1/5量の濃厚飼料給与が適当であり、低能力牛低乳価では1/6量の給与が有利と思われる。
 いsかし、この結論は長期試験、粗飼料適用との比較、能力比較など再検討が望まれるところである。

 2. 牧草サイレージ調製時の糖蜜飼料の特性とその産乳効果ならびに給与法について
  牧草サイレージ調製上安全性と良質化を企画して各種の添加物の応用が推奨され、牧草サイレージ普及促進上多大の貢献をもたらした。
 しかし酪農の多頭化が推進されるとともにサイレージの大量低廉確保が重要になり、添加物の使用量の節減が希求されるようになった。
 従って添加量が少量で効果的であることが望ましいので、酸酵促進効果の高い高糖分含量の糖蜜飼料が考察された。
 また、粗飼料としてのサイレージの摂取増大を狙つた嗜好性増進法として考慮されるので、サイレージ調製時における糖蜜飼料の添加物としての特性を他の添加物と比較してその効果を判定し、さらに糖蜜飼料給与法としてサイレージ添加法または給与時併用法の優劣を普通配合併用法と比較して検討するため、本試験を実施した。
 イ) 試験方法
  A 牧草サイレージ調製時における各種添加物の効果
 第12表 供試牛の概要
群別 供試牛 品種 生年月日 産次 最近分娩
(年月日)
産仔性 開始時
乳量 脂肪率 体重
B D ホ系 61. 5.16 1 63.8.21 17.0 3.2 455
LBN 57. 1.13 4  11.19 25.0 3.6 483
OQJ ホ系 59. 7.20 3  7.13 13.0 3.3 500
S S 54.12.16 6  7.31 22.0 3.1 599
L D 61. 2.15 1   11.10 17.0 3.0 489
B N ホ系 59. 1.27 3  8.20 20.0 3.2 490
BBH 57. 9.25 4  9.10 20.0 3.5 520
T L  61. 5.18 1  10.17 17.0 3.0 475
S K 60. 2. 6 2  5. 4 15.0 3.1 480

 ロ) 試験成績
  A 牧草サイレージ調製時の各種添加物の効果比較
 第13表 埋蔵の概要と外観調査
草 種 処 理 埋蔵量 添加量 合計 回収量 表 面
廃棄量
排液量
イネ科 無添加 19.38    19.38 18.71 0.37  
Hcl 20.45 1.8 22.25 18.14   3.65
SMS 19.74 0.1 19.84 18.33 0.11  
糖蜜飼料 15.90 1.56 17.46 16.72 0.13  
マメ科
ラデノ
赤クロ
アルサイク
無添加 112.0    112.0 87.9 3.30 12.25
Hcl 112.0 5.76 117.76 88.4 1.50 24.30
SMS 112.0 056 112.56 85.0 2.00 21.30
糖蜜飼料 105.0 5.25 110.25 96.85 1.60 7.40
草 種 処 理 色  調 香 気 表面腐敗
イネ科 無添加 暗緑褐色~緑黄色 弱甘酸臭 表面3/4厚5mm白カビ
Hcl 緑黄色 酸臭~甘酸臭    
SMS 爽快性酸臭 〃 1/4×2mm白カビ
糖蜜飼料 緑褐色~緑黄色 甘酸芳香 〃 1/4×5mm白カビ
マメ科 無添加 暗緑黄色 芳香弱甘酸臭 表面ベタつきナット臭
Hcl 緑黄色 弱甘酸臭 〃 白青カビ発生
SMS 明緑黄色 爽快性弱酸臭 〃 ベタつきナット臭
糖蜜飼料 緑褐色 強芳香甘酸臭 〃   〃   〃

 第14表 サイレージ中の有機酸組成(原物中%)
草種 処 理 PH 100g当滴定数(cc) 滴定酸量(%) 比 色
乳酸量
比   率
乳酸:酷酸
揮発酸 不揮発酸 酷酸 乳酸
イネ科 原 料 6.0 7 30 0.042 0.270 0.17 87:13
無添加 3.72 84 257 0.504 2.313 2.07 82:18
Hcl 3.27 51 326 0.306 2.934 1.04 90:10
SMS 5.00 40 89 0.240 0.801 0.69 77:23
糖蜜飼料 4.10 113 253 0.678 2.277 2.03 77:23
マメ科 原 料 5.4 35 47 0.210 0.423 0.11 67:33
無添加 3.97 101 283 0.606 2.547 2.32 81:19
Hcl 3.60 89 279 0.534 2.511 1.58 82:18
SMS 4.47 63 158 0.378 1.422 0.85 79:21
糖蜜飼料 3.90 139 326 0.834 2.934 2.68 78:22

 第16表 原料及びサイレージの一般成分と回収率
  草 種 原 料
(処 理)
水分
(乾物)
粗蛋白 純蛋白 粗脂肪 粗繊維 NFE 粗灰分






原 料 イネ科草 79.33 3.21 2.86 0.84 5.70 9.50 1.22
マメ科草 80.02 4.08 3.25 0.67 4.43 9.56 1.24
SMS 39.70           60.30
糖蜜飼料 23.31 20.17 10.64 4.76 1.44 35.51 4.81
イネ科
サイレージ
イネ科草 82.45 2.49 1.62 1.14 5.31 7.56 1.05
マメ科草 79.89 2.54 2.17 0.97 5.58 10.04 0.98
SMS 80.78 2.39 1.57 0.87 5.86 8.50 1.60
糖蜜飼料 78.32 3.32 1.94 1.19 6.09 9.61 1.47
マメ科
サイレージ
イネ科草 78.15 3.98 2.85 0.99 5.95 9.50 1.42
マメ科草 78.20 3.84 2.89 1.23 5.02 10.23 1.46
SMS 77.95 4.06 2.87 1.24 5.00 9.90 1.85
糖蜜飼料 76.45 4.69 2.97 1.27 5.68 10.37 1.54




イネ科
サイレージ
イネ科草 82 75 55 131 90 75 84
マメ科草 86 70 67 102 87 92 71
SMS 86 69 51 96 95 81 98
糖蜜飼料 81 67 52 96 94 77 92
マメ科
サイレージ
イネ科草 85 77 69 116 85 79 90
マメ科草 86 79 69 145 72 83 87
SMS 83 76 67 140 71 81 91
糖蜜飼料 91 85 72 129 86 86 96

 第17表 サイレージの損耗の分類(埋蔵量に対するもの)
成分 損耗の
分 類
イネ科草 マメ科草
無添加 Hcl SMS 糖飼 無添加 Hcl SMS 糖飼


全損耗 18.0 13.7 14.1 19.1 15.0 13.9 17.5 8.8
表面腐敗 1.6   0.5 0.6 3.2 1.5 1.7 1.5
排出液中   3.7     4.1 7.5 7.5 2.5
呼吸発酵 16.4 10.0 13.6 18.5 7.7 4.9 8.3 4.8


全損耗 18.2 12.8 15.9 19.8 14.4 14.0 18.2 9.1
表面腐敗 1.6   0.5 0.8 3.2 1.5 1.7 1.5
排出液中   3.0     3.7 6.2 6.2 2.1
呼吸発酵 16.6 9.8 15.4 19.0 7.5 6.3 10.3 5.5


全損耗 25.0 29.7 30.7 32.6 23.3 21.1 24.4 15.1
表面腐敗 1.5   0.4 0.5 2.9 1.3 1.6 1.4
排出液中   4.6     5.6 9.7 10.2 3.6
呼吸発酵 23.5 25.1 30.3 32.1 14.8 10.1 12.6 10.1


全損耗 45.3 32.8 49.1 47.8 31.5 30.7 33.4 2.76
表面腐敗 1.1   0.3 0.4 2.6 1.2 1.4 1.2
排出液中   1.4     0.5 1.3 1.3 0.3
呼吸発酵 44.2 31.4 48.8 47.4 28.4 28.2 30.7 26.1

 ・A 外観調査……第13表のように表層のカビの発生や腐敗による損耗はHcl処理サイレージが最も少なく、SMSや糖蜜飼料の添加によっても表面廃棄量は半分以下に減少した。
 外観調査の結果緑度の保持ではSMS処理サイレージが優れ、香気では、無添加サイレージの有機酸臭に比しHcl処理では有機酸臭乏しく鉱酸臭が強い。SMS処理では有機酸臭弱く、独特のさわやかな臭気をもっている。
 これに対し糖蜜飼料添加では糖蜜特有の甘臭に加えて強い有機酸臭と芳香アルコール臭を有し、家畜の嗜好性が最も大きかった。
 全般的にマメ科草サイレージがイネ科草サイレージより有機酸組成……第14表でHcl添加サイレージは無添加サイレージは無添加のそれに比較してPHは低いが総酸量少なく、有機酸発酵がかなり抑制されることを示している。
 SMS添加サイレージはPH高く、総酸、揮発酸不揮発酸、乳酸が半減し、有機酸発酵が顕著に抑制された。HclとSMSは同作用があり、比色乳酸量と不揮発発酸換算乳酸量との間に大差があった。
 糖蜜飼料は酸生成は促進されるが、不揮発酸、乳酸の増加より揮発酸の増加が大きく、乳酸、酷酸比率は改善されなかった。イネ科、マメ科サイレージとも無添加区が良質のため添加物の効果は酸比率に対して認められなかった。
 サイレージ中のN化合物の分布……第15表のように一般成分中の粗蛋白質、純蛋白質と揮発性塩基態窒素(VBN)アミノ酸態窒素(AAN)の含有比率をみるため蛋白質含量として表示してその比率を検討すると粗蛋白(P)に対するVBNの比は無添加8~10%に比してHcl、SMS添加区は3~8%で低減効果があり、とくにイネ科草に著しかった。
 しかし、糖蜜飼料は尿素を含有するためかその含量は17~24%と倍量以上を示し、これはイネ科に多かった。
 粗蛋白中のAAN含有は酸添加区は少ないが、他は何れも多く、とくにイネ科草に多かった。従ってVBN+AANの非蛋白態窒素は原料草とは逆にイネ科草で蛋白分解が高いことが認められた。
 粗蛋白中の純蛋白(TP)比率は糖蜜飼料添加区では他の処理より両草種とも低かった。
 一般成分の回収率……第16表のように一定の傾向がみられないが、イネ科草ではHcl、SMSの添加によって乾物、NFEの回収率が向上したが、粗蛋白では低下を示した。
 しかし、Hcl添加は純蛋白質の回収率を向上した。また糖蜜飼料の効果は明瞭でなかった。
 マメ科では無添加に比較してHcl、SMS、処理は効果がなかったが、糖蜜飼料は乾物、粗蛋白、純蛋白、粗脂肪、NFE、粗灰分などの回収率が高かった。概して一般成分の回収率は乾物の損失率という言葉では代表するため、100%から差し引くと本試験では9~19%(平均15%)であって、無処理が良好なため処理差が明瞭でなかった。
 サイレージの損失分類……第17表のように損失を表面廃棄排出液呼吸発酵に分けて検討するとHcl添加により鏡面廃棄は減少するが、排出損失は増加し、この排出損失は他処理のサイレージの表面損失より大きかった。
 しかし、Hcl添加による呼吸発酵による損失の減少は著しい。
 SMSや糖蜜飼料の添加ではイネ科とマメ科で共通の傾向はみられず、SMSの添加によって表面損失は減少し、イネ科に添加した場合のみ乾物、NFEの呼吸発酵損失は減少したが、その他は効果がなかった。
 糖蜜飼料の添加によって表面損失が減少し、イネ科では発酵による損失が増加したが、マメ科草では減少し、かつ排出損失が顕著に減少した。従って、糖蜜飼料のマメ科草への応用が効果が高いことがみられた。
 添加物の経済効果を回収率からみると何れの添加物も(-)であったが、表面損失が半減するものと表層に対するHcl、SMSの添加は効果的なものと考えられる。

 ・B 糖蜜添加サイレージと無添加サイレージの産乳比較
 第18表 供試飼料成分表
飼料名 水分 乾物 粗蛋白 粗脂肪 粗繊維 NFE 粗灰分 DCP TDN
Ⅰ期糖蜜サイレージ 78.00 22.00 3.47 1.74 5.31 10.08 1.39 2.36 15.00
Ⅱ期   〃 76.62 23.38 3.72 2.61 5.05 9.78 2.22 2.53 16.37
Ⅲ期   〃 78.56 21.44 3.08 2.61 5.64 8.84 1.29 2.09 15.69
Ⅰ期無添加サイレージ 76.33 23.67 2.80 1.08 7.92 10.39 1.48 1.76 14.93
Ⅱ期   〃 80.07 19.93 3.09 1.38 5.62 8.40 1.44 1.95 13.04
Ⅲ期   〃 78.24 21.76 2.95 1.62 6.48 9.30 1.41 1.86 14.46
Ⅰ期 2番乾草 29.39 70.61 13.68 3.63 19.73 29.62 3.95 8.35 38.67
Ⅱ    〃 24.87 75.13 11.97 3.09 18.33 30.12 5.62 7.30 40.23
Ⅲ    〃 27.61 72.39 10.26 4.67 19.10 32.62 5.74 6.26 38.50
配 合 飼 料 8.81 91.19 17.76 5.05 11.11 48.96 8.31 13.85 68.61
糖 蜜 飼 料 8.50 91.50 11.82 1.06 8.20 62.13 8.29 7.00 69.45
ル タ バ ガ 90.59 9.41 0.81 0.04 2.04 6.08 0.44 0.59 8.42

 第21表 飼料摂取量
供試牛 糖飼Sil+糖飼 無添加Sil+配合 無添加Sil+糖飼
Hay Sil Ruta Cono Hay Sil Ruta Cono Hay Sil Ruta Cono
B D 5.0 31.0 10 0.8 5.0 29.9 10 2.4 4.6 27.3 10 2.2
LBN 5.0 31.0 10 1.8 4.9 29.8 10 3.1 4.7 29.8 10 2.9
OQJ 5.0 31.0 10 0.7 5.0 30.0 10 2.0 4.9 30.0 10 1.7
平 均 5.0 31.0 10 1.1 5.0 29.9 10 2.5 4.7 29.0 10 2.3
B D 4.6 30.4 10 0.4 6.0 30.0 10 2.1 5.1 27.2 10 2.3
LBN 4.0 30.8 10 0.9 4.9 30.0 10 1.9 5.0 29.9 10 2.1
OQJ 3.0 24.0 10 0.8 4.3 29.7 10 2.0 3.2 24.0 10 2.1
平 均 4.0 28.4 10 0.7 5.1 29.9 10 2.0 4.4 26.7 10 2.2
B D 5.1 28.2 10 1.1 4.7 29.5 10 2.1 5.5 29.8 10 2.1
LBN 4.5 26.4 10 1.1 3.8 29.4 10 2.1 4.1 30.0 10 2.0
OQJ 3.6 25.1 10 0.6 5.9 29.4 10 1.1 5.0 29.2 10 1.8
平 均 4.4 26.8 10 0.9 4.8 29.4 10 1.8 4.8 29.7 10 2.0
総 平 均 4.5 28.7 10 0.9 4.9 29.7 10 2.1 4.7 28.5 10 2.2
  注) 糖蜜飼料の添加量は原料草の5%であるので糖蜜飼料サイレージ+糖蜜飼料給与量は1.5+0.9=2.4kgである。

 第22表 飼料養分摂取量と体重変化
項  目 養分摂取量 体重変化
糖飼Sil

糖 飼
無添加Sil

配合
無添加Sil

糖 飼
牛名
乾物摂取量 12.29 12.64 12.77 B D 446 485 495
体 重 比 2.57 2.50 2.50 LBN 462 498 500
要求量に
対する%
DCP
TDN
139 142 125 OQJ 507 533 535
104 104 112 平均 478 505 510
乾物摂取量 10.56 13.41 11.36 S S 607 603 599
体 重 比 2.02 2.53 2.15 L D 500 502 489
要求量に
対する%
DCP
TDN
127 141 120 B N 465 483 490
109 110 100 平均 524 529 526
乾物摂取量 11.30 12.41 13.17 BBH 538 548 537
体 重 比 2.25 2.40 2.63 T L 485 482 480
要求量に
対する%
DCP
TDN
138 153 134 H H 485 520 486
107 122 117 平均 503 517 501


乾物摂取量 11.38 12.82 12.48
502

517

513
体 重 比 2.27 2.48 2.42
要求量に
対する%
DCP
TDN
135 145 125 (総平均)
107 111 100
  注) 1. 乾物摂取量による粗飼料:濃厚飼料=85:15(糖飼Sil時93:7)
     2.    〃       粗飼料摂取量の体重比 2.10%

 第23表 産乳日量
供試牛 糖飼Sil+糖 飼 無添加Sil+配合 無添加Sil+糖 飼
乳量 脂肪率 FCM 乳量 脂肪率 FCM 乳量 脂肪率 FCM
B D 14.24 3.10 12.32 14.63 3.60 13.75 13.49 3.70 12.88
LBN 19.76 3.60 18.95 20.56 3.30 18.40 17.54 3.40 15.96
OQJ 12.27 3.40 11.17 12.49 3.50 11.55 10.10 3.50 9.34
平 均 15.42 3.37 14.15 15.89 3.47 14.57 13.71 3.53 12.73
S S 8.35 3.20 7.35 17.00 3.00 14.45 14.20 3.20 12.50
L D 12.99 3.40 11.82 14.64 3.20 12.88 13.74 3.60 13.10
B N 11.73 3.30 10.49 14.64 3.10 12.66 14.11 3.10 12.21
平 均 11.02 3.30 9.89 15.43 3.10 13.33 14.08 3.30 12.60
BBH 14.29 3.60 13.43 12.88 3.40 11.72 14.65 3.50 13.55
T L 14.47 3.00 12.30 14.59 3.00 12.40 14.64 3.00 12.44
H H 9.46 3.40 8.61 6.00 3.60 5.64 11.73 3.10 10.15
平 均 12.74 3.33 11.45 11.16 3.33 9.92 13.67 3.20 12.05
総 平 均 13.06 3.33 11.83 14.16 3.30 12.61 13.82 3.34 12.46
100日間の乳代 42.742 45.560 45.018
購入飼料費 7.260 7.455 7.260
飼料費/乳代 17.0% 16.3% 16.2%

 飼料成分及び品質……給与飼料の成分は第18表の通りで、糖蜜飼料添加サイレージは6月20日の刈のものでマメ科草が多く蛋白質が高く、DCP2.33、TDN15.70であるが、無添加サイレージは7月6日刈取でマメ科が少なくDCP1.86、TDN14.14で、無添加サイレージより飼料価値が低かった。乾草は2番乾草のため水分多く蛋白質が高かったDCP7.30、TDN39.13である。
 なお、糖蜜飼料はDCP7.0で配合飼料の半分であった。
 第19表に両サイレージの有機酸組織をFlieg法、Woodman法で分析したものを掲載した。
 Flieg法によると糖蜜サイレージは酷酸生成がなく良質であったが、無添加サイレージは上部の酷酸生成が多いが、下部は少ないことを示した。糖蜜サイレージと差異がみられたが、Woodman法によると上部もにがPHとともにとくに劣質であるが、平均組成では両サイレージ間に差異がなかった。
 その結果、N分解の程度を第20表でみよう。
 Woodman法のVBN及びAANを蛋白として表示し、粗蛋白中の比率であらわすと、VBN/CPは糖蜜サイレージ18.3%に対し無処理25.6%で、AANまでの分解が高いことを示すが、これは一般に飼料価値の差がないと思われた。
 この点はA試験と異なっている。これはA試験の糖蜜飼料は尿素添加のため、VBN含量が高かったらである。
 従って純蛋白含量は糖蜜飼料サイレージが無処理サイレージより高かった。N含量の差はあるが、Nの利用効率には差がないと考察された。
 飼料摂取量……糖蜜飼料のサイレージ中の添加量を勘案して糖飼サイレージ+糖飼群の糖飼量は2.4kgで、他の2群よりやや多かったが、この群の摂取量は乾草4.5kg、サイレージ28.7kg、ルタバガ10kg、糖蜜飼料0.9kg、無添加サイレージ+配合群は乾草4.9kg、サイレージ29.7kg、ルタバガ10kg、配合2.1kgであって、無添加サイレージ+糖飼群は乾草4.7kg、サイレージ28.5kg、無添加サイレージ28.5kg、ルタバガ10kg、糖飼2.2kgであった。給与量は糖蜜サイレージ31kg、無添加サイレージ30kgであったので、それぞれ残量は7%、1%、5%であり、無添加サイレージ給与時には乾草に対する嗜好性がます傾向を示した。
 飼料養分摂取量とNRC標準比……第22表に養分摂取量を略載した。糖蜜サイレージ群の添加量は最大のはずであったが、発酵損失または嗜好性の増大がないために乾物摂取量は11.38kgと最低で、給与時添加法はそれぞれ12.82kg、12.43kgで10%以上の差があった。
 従って乾物摂取量の体重比は2.27%、2.48%、2.42%、平均2.4%で以前の乳量の1/4量の配合を給与した時の2.66%より低かった。
 粗飼料と濃厚飼料の比は85:15で、以前の75:25より大分差があった。
 NRC標準要求量に対するDCP、TDNを計算すると、それぞれ135、107、145、111、125、110:平均135、109で各群間差異がなかった。
 畜産試験場飼養標準に比較するとTDNは同量程度であるが、DCPはやや高かった。
 体重変化……第22表の体重変化は糖飼サイレージ群がやや低いが給与添加法間には差異がなかった。
 産乳量及び産乳経済性……第23表に個体別産乳日量を各期毎に掲載した。
 9頭平均で検討すると糖飼サイレージ+糖飼群、無添加サイレージ+配合群、無添加サイレージ+糖蜜飼群の乳量はそれぞれ13.06、14.16、13.82kgで、脂肪率に差がないところから、FMC乳量11.83、12.61、12.46kgであった。
 給与時配合補給法間には配合飼料、糖蜜飼料間の差がなかったが、サイレージ添加法は有意差とはならないまでも100日間の乳代は3.000円の低下をもたらした。乳代と購入費間には差がなかった。
 牛乳成分の変化……第24表は牛乳成分の変化を各期の群別平均値と群別9頭の平均値を掲載した。
 酸度は配合飼料給与時低値を示した。固形分含量は開始時に低かったが、各群とも高く、群間差異がなかった。
 無脂肪固形分も固形分と全く同様であり、脂肪率も全く差異がなかった。しかし乳糖は糖飼サイレージ給与時高く、配合群がこれにつぎ、糖飼添加群が最低であったが、この原因については不明である。
 蛋白質は配合群が最高で、糖飼サイレージ群がこれにつぐが、差がなく、糖飼添加群が最低であった。試験開始時よりこの成分は顕著に高かった。カゼインは蛋白質の傾向と全く同様であった。
 Alc,testは何れも陰性であった。従って飼料差による乳質への影響はほとんど認められなかった。

 ハ) 摘要
 糖蜜サイレージの特性を他のHcl、SMS、無処理と比較すると、前者は色調、香気は優れていた。
 表面腐敗は三者同じ効果であった。
 サイレージの有機酸組成を見ると、PHではイネ科草よりマメ科草で糖蜜飼料は効果的で、塩酸添加はとくに効果的であった。
 乳酸と酷酸の比からみると、塩酸添加、無添加処理区が良好で、糖蜜飼料のSMS添加区はやや低下していた。イネ科草、マメ科草の差異がなかったが、塩酸及びSMSの場合は乳酸量は少なかった。
 N化合物の分布を見ると、イネ科草の場合の方が粗蛋白中のVBNの比は、無添加、Hcl、SMSの場合はマメ科草の方が多かったが、糖蜜飼料では、マメ科草に少なく、処理効果が高かった。
 AAN/CPはHcl以外は何れもマメ科草よりイネ科草に多く、従って、蛋白分解量はマメ科草よりイネ科草に多いことが認められ、マメ科草に対する添加物の効果が顕著であった。
 一般成分の回収率は糖蜜飼料のみがマメ科草に対しとくに効果的であった。
  以上、添加物は糖蜜飼料の5%添加でマメ科草の損失率の低減、蛋白分解の減少、色調外観、嗜好性などに効果的であった。
 そこで100tサイロに5%糖蜜添加を混播草で行った場合と20tサイロの無添加調製サイレージを比較することにした。
 Flieg法で比較すると糖蜜の効果が顕著にみられたが、Woodman法でみると両者の間にあまり差がなかった。しかし上部の品質については添加効果があった。
 N化合物はVBN量では差がなかったが、AAN量が多く、従って蛋白分解量は高かったが、飼料価値の差がないと思われた。
 採食量に及ぼす影響をみると、残量は糖蜜サイレージ7%、無添加サイレージ平均3%であって、嗜好性及ぼす色調香気の差は顕著でなかった。
 乾物摂取量、養分摂取量に各群間差異なく、平均乾物摂取量12.21kg体重比2.4%、NRC標準比DCP135、TDN109で、粗飼料と濃厚飼料の比は85:15であったが、体重変化では無添加サイレージ配合群がやや多かった。
 産乳量では無添加サイレージの配合群14.16kg、無添加サイレージ糖飼群13.82kgで差がなかった。糖飼サイレージ糖飼群13.06kgでやや低く100日間の乳代差は300円であった。
 牛乳成分の各群間差異も顕著でないが、乳糖及び蛋白質が無添加サイレージ配合群及び糖蜜飼料サイレージ糖飼群に高い傾向を示したが、糖飼サイレージの場合の蛋白増加は早刈(6月20日)のせいであろう。そのことを考えると、無添加サイレージ配合給与法が若干有利のように観察されたが、本質的の差異ではないだろう。ただし、添加物の調製時添加法と給与時添加法では差異が認められ、後者の産乳効果、経済性が高かった。

 3. ラデノクロバー、赤クロバーならびにチモシー各サイレージの産乳効果について
  冬季間の乳牛飼養法の欠陥の一つとして蛋白質の供給不足があげられているが、その対策としてマメ科草サイレージによる補給が考えられる。
 しかし、一般にマメ科草の低下が報告されているので、イネ科草サイレージと比較してマメ科草サイレージの産乳効率を検討し、サイレージ利用草種選定の資料としようとした。
 イ) 試験方法
 供試牛の開始前乳量平均18.4kg、体重494kgの9頭を用い、3区に分け、チモシーサイレージ区、ラデノサイレージ区、赤クロバーサイレージ区とし、た。
 昭和38年9月1日~同10月21日まで51日間を3期にわけ、各期17日間の7日を移行期、10日を本試験期とした。飼養法はラテン方格法である。
 飼料給与は乾草5kg、サイレージ30kg、配合飼料はFCM乳量の1/4量を給与した。これはサイレージ調製量が少なかったからサイレージ給与量を減量し、配合を増量した。サイレージ代替量は乾物量で同量になるようにつとめた。供試牛の概要は第25表のとおりであって、その試験計画は第26表のとおりである。

 第25表 供試牛の概要
供試牛 品種 生年月日 産次 最近分娩年月日 産仔性 開始前
乳量 体重
S Q ホ系 55.11.13 5 63. 7.14 19.0 545
Y S 60. 3.13 2 63. 4.19 16.0 452
P N 60.11.26 1 63. 5.15 17.0 434
S S 54.12.16 6 63. 7.31 23.0 601
L S 61. 2. 3 1 63. 5.14 15.0 458
H H 60. 2. 6 2 63. 5. 4 18.0 452
D F 61.12. 4 1 63. 4.30 17.0 450
B N ホ系 59. 1.30 3 63. 6.19 20.1 523
L P 59. 7.20 3 63. 7.13 19.0 527

 第26表 試験計画
群 別/
期 日/
期 別
1 9. 1~9.17 赤クロバーサイレージ ラデノサイレージ チモシーサイレージ
2 9.18~10.4 ラデノサイレージ チモシーサイレージ 赤クロバーサイレージ
3 10.5~10.21 チモシーサイレージ 赤クロバーサイレージ ラデノサイレージ
  注) 乾草5kg、サイレージ30kg、配合乳量の1/4量給与

 ロ) 試験方法
 第27表 飼料摂取日量
区/
赤クロサイレージ ラデノサイレージ チモシーサイレージ
乾草 サイレージ 配合 乾草 サイレージ 配合 乾草 サイレージ 配合
第 1 群 4.66 29.8 3.8 4.81 29.8 3.3 3.9 27.9 3.3
第 2 群 5.34 30.0 3.6 4.95 29.9 4.1 4.49 30.0 3.6
第 3 群 4.79 30.0 3.7 5.06 30.0 3.7 4.65 30.0 3.4
平均採食量 4.93 29.9 3.7 4.94 29.9 3.7 4.33 29.3 3.43
採 食 率 98.6 99.7 100 98.4 99.7 100 88.4 97.6 100

 第28表 飼料成分表
飼 料 名 水分 乾物 粗蛋白 粗脂肪 粗繊維 NFC 粗灰分 DCP TDN
1期    乾  草 25.25 74.75 6.94 2.43 23.80 36.93 4.65 4.23 42.09
2期      〃 22.69 77.31 8.49 2.80 27.94 33.50 4.58 5.18 43.96
3期      〃 21.51 78.49 7.33 2.15 26.34 38.19 4.48 4.47 44.18
1期 赤クロサイレージ 80.12 19.88 3.14 1.16 5.30 8.75 1.53 2.01 12.23
2期      〃 80.43 19.57 2.99 0.54 5.72 8.33 1.99 1.91 11.28
3期      〃 79.99 20.01 2.75 1.03 6.34 8.41 1.48 1.76 12.18
1期 ラデノサイレージ 80.67 19.33 2.75 0.80 6.19 8.21 1.38 1.76 10.91
2期      〃 80.84 19.16 2.67 0.68 6.10 8.34 1.36 1.71 10.75
3期      〃 80.33 19.67 3.06 1.43 6.57 7.10 1.51 1.96 11.45
1期 チモシーサイレージ 77.13 22.77 2.63 0.72 7.41 10.68 1.43 1.45 13.58
2期      〃 78.56 21.44 2.40 0.50 6.63 9.54 2.37 1.32 11.98
3期      〃 78.81 21.19 2.40 0.84 7.10 8.83 1.92 1.32 12.32
4期 無細切 〃 72.31 27.69 2.66 1.20 8.91 13.49 1.43 1.46 16.86
配  合  飼  料 8.80 91.20 20.22 4.35 9.89 47.16 9.58 17.20 71.55


乾  草     61 55 58 57      
赤クロサイレージ     64 58 57 65      
ラデノ   〃     64 58 50 61      
チモシー 〃     54 58 66 59      

 第31表 乾物摂取量と養分摂取量
区/
成分/
養分量/
赤クロサイレージ ラデノサイレージ チモシーサイレージ
乾物 DCP TDN 乾物 DCP TDN 乾物 DCP TDN
12.13 1.450 8.325 12.45 1.342 7.682 13.80 1.149 8.791
NRC標準(体重)比 2.51 161 109 2.56 160 106 2.89 140 122
13.47 1.386 8.589 13.24 1.441 8.279 13.60 1.247 8.138
NRC標準(体重)比 2.53 145 105 2.65 149 101 2.70 129] 99
12.94 1.458 8.137 13.24 1.451 8.318 13.44 1.217 8.464
NRC標準(体重)比 2.55 156 102 2.67 163 108 2.70 129 105

12.85 1.431 8.350 12.98 1.411 8.093 13.61 1.204 8.464
NRC標準(体重)比 2.56 154 105 2.63 157 105 2.76 132 109
畜試標準比   138 99   140 99   118 102
飼料利用効率     31.4     31.2     30.1
乾物中の蛋白含量 15.62     15.63     15.03    

 第32表 産乳日量及び生体重
供試牛 赤クロサイレージ区 ラデノサイレージ チモシーサイレージ
乳量 脂肪率 FCM 体重 乳量 脂肪率 FCM 体重 乳量 脂肪率 FCM 体重
S Q 17.43 3.50   550 17.01 2.70   551 15.79 2.90   555
Y S 14.85 2.50   472 14.03 2.60   490 13.84 2.90   505
D N 14.73 3.00   427 12.88 3.50   420 10.66 3.60   450
平 均 15.70 3.00 13.35 483 14.64 2.93 12.29 487 13.43 3.13 11.67 503
S S 21.24 3.20   611 22.97 3.00   602 21.93 3.00   614
L S 10.48 3.80   490 12.11 3.60   460 11.01 4.00   474
N N 15.27 3.40   495 15.70 3.00   438 15.22 3.30   478
平 均 15.66 3.47 14.42 532 16.93 3.20 14.90 500 16.05 3.43 14.68 522
D F 14.18 3.50   471 13.16 2.90   471 15.73 3.00   468
B N 17.45 3.00   529 16.82 3.60   519 17.32 3.20   516
L P 13.77 3.70   518 13.50 3.70   519 16.23 3.50   505
平 均 15.13 3.60 14.22 507 14.48 3.40 13.18 503 16.43 3.23 14.53 496
総 平 均 15.50 3.36 14.01 507 15.35 3.18 13.46 493 15.30 3.20 13.60 507

 飼料摂取日量……飼料給与量は乾草5kg、サイレージ30kgを給与したが、サイレージはほとんど全量、乾草はマメ科草サイレージの場合はほとんど全量、チモシーサイレージで10%程度の残量を示した。
 従って各区間の差異はほとんど認められなかった。
 飼料成分の比較……乾草は1番乾草であるが、各群平均組成はDCP4.63、TDN43.41であった。赤クロバーサイレージの乾物もチモシーが混入されているので、20%程度であった。平均組成はDCP1.89、TDN11.90であった。
 ラデノサイレージは乾物19.4%、DCP1.81、TDN11.04であった。チモシーサイレージのうち細切サイレージは乾物27.6%、DCP1.46、TDN16.87であった。これはチモシーサイレージの調製量が不足したために無細切のものを後期2日間給与したので分析したものである。この3つのサイレージ間にあまり乾物量の差がなかったのはマメ科草にもチモシーが混入されていたのとマメ科の生育時期が進んでいたためと考えられる。チモシーサイレージはやや、乾物が高かったので、その分だけ乾草の採食量が減少の傾向を示した。
 サイレージの有機酸及び蛋白質分布……このサイレージは7月、8、9、10日に1本づつ詰め込んだもので、早期刈ではなかった。
 好天時詰込を完了したが、開封が8月末で2カ月足らずであって、南面から暑い日光が射光したため十分な発酵を示さなかった。
 従って開封再発酵状態を示し、良質とは外観上みられなかった。
 しかし、第29表の有機酸組成をみると、上部の酸生成が不良なことが、認められたほか各草種間の貧す津は大差なかった。
 ややチモシーサイレージに酪酸が生成されていたにもかかわらずチモシーサイレージは上部から低PHを示した。
 嗜好性もチモシーサイレージの低摂取量は高乾物量によるものであり、外観的にはラデノサイレージが最も劣質と思われた。
 N化合物の分布をCP中のVBN含量、AAN含量で比較すると、VBNではラデノ区が最も多かったが、比率はそう高くなかった。しかし、無細切予乾サイレージは21.5%であって、最も多量であった。AAN比率は赤クロバー18.76%、ラデノ28.09%、チモシー27.63%、無細切予乾サイレージ30.75%で、後者の3つのサイレージ間の差異はなかったが、赤クロバーサイレージは最少であった。そしてその量は比較的少量であったので、純蛋白比率は70%を示し蛋白分解量は良好なことを示した。
 しかし、無細切予乾サイレージはVBN+AANは50%を示し、蛋白分解量は高かった。これは無細切による空隙量の程度、PHの高さなどによることが考えられるが、その原因は不明である。
 乾物摂取量と養分摂取量……乳牛の体重や産乳量によって各区とも比較的乾物摂取量は少なく、赤クロ区12.85kg、ラデノ区12.98kg、チモシー区13.61kgであった。
 チモシー区は乾草摂取量が少なかったが、サイレージ乾物量が大きいための差である。乾物摂取量の体重比はそれぞれ2.453%、2.63%、2.76%であった。
 これをNRC標準と対比すると、赤クロ区DCP154、TDN105、で、各区とも標準を上回り、区間差異はみられなかった。
 摂取飼料乾物中の蛋白含量は何れも15%程度であるので、サイレージ給与時のN利用効率の低下はみられないと思われた。
 ただし、飼料の利用効率はチモシー区は高乾物のためやや低下したが区間差異は明瞭でなかった。
 産乳日量及び生体重……これらの飼料給与による産乳日量及びFCM乳量はそれぞれ赤クロ区15.50kg、14.01kg、ラデノ区15.85kg、13.60kgで区間差異は全くみられなかった。従って各草種間の産乳効果は同等で、草種による有意差がなかった。試験期間中の生体重はラデノ区がやや減少したが、これも有意差とはなっていない。
 牛乳成分の変化……Alc.testは何れも陰性で、酸度固形分、無脂固形分、脂肪率、全蛋白、カゼインなど何れも区間差異が判然としなかったが、ややラデノ区に減少の傾向を示した。

 ハ) 摘要
 9頭の乳牛を用い、3群に分け、赤クロバーサイレージ、ラデノクロバーサイレージ、チモシーサイレージの3区として3期によるラテン方格法による飼養試験を実施した。
 乾草5kg、サイレージ30kg、配合飼料FCM乳量の1/4量(約3.5kg)を給与したが、産乳量、FCM量は各区それぞれ15.50、14.01kg:15.35、13.46kg:15.30、13.60kgで区間有意差がなく、生体重もそれぞれ507、493、507kg区間差異はみられなかった。
 乾物摂取量、養分摂取量にも区間差異がなく、乳質成分にも差異がなかったので、マメ科草サイレージによる高産乳効果は期待できなかった。

 4. 牧草サイレージとデントコーンサイレージの産乳性の比較について
 根釧地方でもデントコーンサイレージは埋蔵の試パイが少ないことから収量が不安定にかかわらずすてきれない農家が少なくない。
 また、他の1因としてデントコーンの顕著な産乳効果や嗜好性をあげているものも多いが、当管内のように未熟のデントコーンの多い場合必ずしもそうではないのではないかと考え、牧草サイレージの産乳効果を未熟デントコーンと比較して収量安定、省力化の可能な牧草サイレージ飼養法確立の一助とするための本試験を実施した。

 イ) 試験方法
 乳牛4頭を2群とし、牧草サイレージとデントコーンサイレージを重反転飼養試験法で実施した。飼料給与法としては乾草4kg、サイレージ40kg配合飼料約2.7kgを1日1頭当り給与量である。
 本試験の供試中の概要は第34表のとおりである。

 第34表 供試中とその群別
群別 牛 名 品種 生年月日 産次 最近分娩年月日 産次性
A QA3 33. 6.26 2 37.10.16
WLD 30. 2.28 5 37.11.12
B LBN 32. 1.31 3 37. 9.19 ♂♀
H Y ホ系 31.11.27 4 37.12.15
  注) 試験期間 Ⅰ期 38.4.1~38.4.20
            Ⅱ期 38.4.21~38.5.10
            Ⅲ期 38.5.11~38.5.30
     試験期間は4月1日~5月30日までの60日間を3期に分け、各期前10日間を本試験期とし、試験期について成績を検討した。

 ロ) 試験成績
 第35表 供試飼料成分表
飼料名 水分 乾物 粗蛋白 粗脂肪 粗繊維 NTE 粗灰分 DCP TDN
Ⅰ期 デントコーンサイレージ 82.51 17.49 2.14 0.96 5.37 8.07 0.95 1.11 11.61
Ⅱ期      〃 81.74 18.26 3.17 0.55 4.52 8.33 1.69 1.65 11.08
Ⅲ期      〃 82.40 17.60 2.15 0.85 6.39 6.68 1.53 1.12 11.21
平均      〃 82.22 17.78 2.49 0.79 5.43 7.69 1.39 1.29 11.30
Ⅰ期 グラスサイレージ 78.82 21.18 2.12 1.04 8.18 8.41 1.43 1.44 13.44
Ⅱ期      〃 80.32 19.68 2.62 1.22 5.98 7.94 1.92 1.78 12.51
Ⅲ期      〃 80.54 19.46 2.57 0.93 5.02 9.16 1.78 1.75 12.16
平均      〃 79.89 20.11 2.44 1.06 6.39 8.50 1.71 1.66 12.69
2  番  乾  草 17.77 88.23 10.78 2.42 23.05 45.20 6.78 6.58 48.70
配  合  飼  料 8.80 91.20 20.22 4.35 9.89 47.16 9.58 17.20 71.55
消   化   率 デントコーンサイレージ 52 73 67 66      
グラス      〃 68 80 59 63       
2番乾草 61 55 58 57      

 第38表 飼料摂取量
期 別 デントコーンサイレージ区 牧草サイレージ
乾草 サイレージ 配合 乾草 サイレージ 配合
第Ⅰ期 3.85 38.08 2.75 3.31 40.58 2.9
第Ⅱ期 3.63 38.87 2.80 3.46 37.12 2.6
第Ⅲ期 3.28 38.12 2.70 2.74 34.41 2.7
平 均 3.59 38.19 2.78 3.17 37.70 2.73
採食率 89.8 95.5 100 79.3 94.3 100

 第39表 乾物摂取量、養分摂取量及びそのNRC標準比
項 目 デントコーンサイレージ区 牧草サイレージ
乾草 DCP TDN 体重 乾草 DCP TDN 体重
摂取量 12.57 1.149 8.264 512 14.16 1.301 9.129 511
標準(体重)比 2.46 131 109 2.77 139 114
摂取量 12.76 1.354 8.022 502 12.73 1.336 8.188 506
標準(体重)比 2.54 148 102 2.52 145 104
摂取量 12.07 1.107 7.802 492 11.58 1.247 7.605 499
標準(体重)比 2.42 124 102 2.35 137 95

摂取量 12.46 1.203 8.029 503 12.82 1.295 8.307 504
標準(体重)比 2.47 134 104 2.55 140 104
乾物中の蛋白含量 15.19     518 10.04     509

 第40表 産乳日量と脂肪率
デントコーンサイレージ区 牧草サイレージ区
産乳量 脂肪率 FCM 産乳量 脂肪率 FCM
A 14.35 3.75 13.63 B 15.04 3.63 14.21
B 14.10 3.35 12.72 A 14.26 3.75 13.61
A 14.52 3.35 13.11 B 15.30 3.25 13.55
平均 14.32 3.48 13.15 平均 14.85 3.54 13.79

 第41表 牛乳成分の変化及び成分生産量
期別
平均
滴定
酸度
固形分 無 脂
固形分
脂肪率 乳糖 灰 分
その他
全蛋
白質
カゼ
イン
Ca Alc.
Cset
GS 0.177 11.62 8.00 3.63 4.61 0.55 2.78 2.15 114.2
DS 0.177 11.55 8.21 3.33 4.68 0.70 2.83 2.25 117.7
GS 0.172 11.64 7.90 3.75 4.41 0.60 2.88 2.11 101.7
DS 0.173 11.24 7.97 3.43 4.32 0.84 2.81 2.00 114.9
GS 0.180 11.92 8.17 3.75 4.66 0.74 2.79 2.00 103.7
DS 0.178 11.49 8.19 3.30 4.67 0.71 2.81 2.06 105.9

GS 0.176 11.57 8.04 3.51 4.50 0.73 2.79 2.05 111.5
DS 0.176 11.55 8.12 3.43 4.61 0.68 2.86 2.14 109.3


GS 1.679 1.179 0.515 0.660 0.107 0.409 0.301 16.36
DS 1.602 1.126 0.476 0.639 0.094 0.397 0.297 15.16

 飼料養分組成とサイレージ品質……第35表のとおり平均組成はデントコーンサイレージの乾物17.78%、DCP1.29、TDN11.30:グラスサイレージの乾物20.11%、DCP1.66、TDN12.69であり、2番乾草はDCP、TDNともやや高かった。
 サイレージの品質は第36表、第37表にみられるように乳酸と酷酸の比率、PH、糖分残存量はデントコーンサイレージの方が良好であった。また、VBN量はデントコーンが低PHのため少なく、CP中3.7%にすぎないのにグラスサイレージは14.2%と高かった。
 このグラスサイレージの劣化は長期貯蔵、凍結融解などによるものであろう。両サイレージともAANへの蛋白分解が進行していたので、純蛋白質の割合はすこぶる不良であった。
 純蛋白質からのアミノ酸への分解が多かったので、揮発性塩基量の少ないデントコーンのAAN/VBNは比率が高値となった。
 グラスサイレージは酸組成でデントコーンサイレージに劣ったにもかかわらず採食量が変わらぬという現象については品質評価に対し、一考を要するということを示したものだろう。
 飼料摂取量と養分摂取量……飼料摂取量は第38表のようにデントコーン区の平均は乾草3.59kg、サイレージ38.19kg、配合2.78kgであり、グラスサイレージ区は乾草3.17kg、サイレージ37.7kg、配合2.73kgで、乾草サイレージともややグラスサイレージ区が少ない傾向を示したが、ほとんど差異を認めなかった。
 乾草の採食率が前者90%、後者80%とグラスサイレージ区が悪いのは、供試乾草が良質2番乾草であることを併せ考えるとグラスサイレージの高乾物含量に基因すると思われる。
 なお、サイレージは両種とも5%程度の残量であるので両種間の嗜好性の差ないこと、良質2番乾草でも残量を示したことは供試乳牛の低産乳量にもよるが、従来の乾草嗜好性についての成績からみると注目すべき一事であろう。
 この結果、乾物摂取量と養分摂取量を算出すると第39表のとおりである。デントコーンサイレージ区とグラスサイレージ区の乾物摂取量とその体重比はそれぞれ12.46kg、2.47%:12.82kg、2.55%でほとんど差がなく、僅かに後者が高い程度であって採食量と丁度逆の傾向を示した。
 従ってNRC標準に比較したDCPは4割、TDNが4%両区とも過剰であって、全く差異がなかった。
 体重変化は試験前の平均デント区518kg、グラス区509kgが試験期平均それぞれ503kg、504kgでともに差異がなかったが、試験前に比較するとデント区の残量がやや高かった。
 なお、乾物中の粗蛋白質含量がデントコーン区がやや高かったのは粗蛋白質含量の高い乾草摂取量の差異によるものと思われる。
 産乳効果……飼料摂取量、養分摂取量で両区に全く差異がなかったが、その結果の産乳量を平均値で比較すると(第40表)産乳量、FCN乳量はそれぞれデント区14.32kg、13.15kg:グラス区14.8kg、13.79kgであって、ややグラスサイレージ区に増量の傾向がみられたが、有意差とはなっていない。
 脂肪率にも差異が認められなかった。このことから両区の産乳効率にも差異がなく、産乳効果は全く、乳質効果は全く差異なしと認めてよいと思われる。
 牛乳成分の変化……牛乳成分の変化は第41表のとおりであって、滴定酸度でややグラスサイレージが高く、乳質不安定の傾向がみられたが固形分では差がなかった。
 無脂固形分でデント区がやや高い傾向を示したが、有意な差はなかった。
 乳糖もややデント区が高く、蛋白質、カゼインもやや高い傾向を示したが、これらは明瞭な差異は認められなかった。なおアルコ-ルテストは何れも陰性であった。
 産乳量と各牛乳諸成分含量によって各成分の生産量を算出するとグラス区が各成分とも産乳量が多いため高かったが、有意差とは認められなかった。

 イ) 摘要
 以前霜害をうけたデントコーンを用い牧草サイレージとの産乳効果を比較したが、僅かにデントコーンのそれが劣る成績をえた。
 しかし、霜害デントコーンであたことと、ふ添加サイレージとの間接比較であったので、今回は無添加牧草サイレージとの直接比較を行うため乳牛4割を2gんとして重反転飼養試験法でグラスサイレージとデントコーンサイレージの産乳効果を比較し、当地方におけるデントコーン作付の可否についての資料を得ようとしたものである。
 飼料成分はグラスサイレージがデントコーンサイレージよりDCP、TDNともやや高かったが、グラスサイレージの高乾物含量のため併用2番草の摂取量やグラスサイレージの生重量の摂取量が少なかったので、飼料栄養摂取量は全く等しかった。
 その結果の産乳量ではデント区14.32kgに対しグラス区14.85kgで3%程度グラスサイレージの産乳量が多かった。
 生体重に変化なく、乳量にも差異がなかったので、産乳効率も差異がなく両種サイレージの産乳効果は同等であると認めた。
 しかし本試験に供試したグラスサイレージは7月上旬刈であるので、もしも6月中下旬刈のものを供試した場合はグラスサイレージの産乳効果が高いことも考察され、完熟デントコーンサイレージを供試すればデントコーンの産乳効果が高いことも予想されるが、これについては今後の問題として残したい。

 5. 秋冬移行期の乳牛飼養上における牧草サイレージ多給の利用効果
 -放牧草と草サイレージの産乳比較-
 夏季の放牧期の産乳性は顕著に高く、冬季舎飼期の産乳性は激減するという常識のもとに産乳の年間持続性についてはあまり検討されていない。
 僅かに青草期間の延長を狙って青刈飼料の早春、晩秋(ビートトップ、根菜頸類など)の連続投与を考察するにすぎない。
 しかし、酪農の多頭化の進展に伴い飼料作物の単純化や省力化が考えられる折柄、草地酪農を根幹とするとき、当然牧草サイレージ給与が端境期まで延長されることが考察される。一般に青草から舎飼期への転換期に乳量を急減させると復元するのがなかなか困難になるので、秋季から冬季への移行期の飼養管理が重要になり、その優劣は、年間産乳量に影響する度合いが高い。従って、この期間の乳量低下の防止対策上この粗飼料形態の差異の本質的な産乳価値を検討する必要があるので、一般的な飼養法として放牧草-サイレージ乾草・サイレージの産乳量の変化と放牧草とサイレージの産乳効果比較牧草サイレージの消化試験などから端境期における牧草サイレージの利用効果について明らかにしようとしたものである。

 イ) 試験方法
  Ⅰ 牧草サイレージの消化試験
   緬羊3頭を供試し、予備期8日、採糞期7日を1試験期とし、牧草サイレージ単用期、牧草サイレージ+澱粉期、牧草サイレージ+P+Ca期の消化率、灰分出納を比較した。
 さらに乳牛2頭づつを供試してサイレージ単用群、サイレージ+配合群の消化率、灰分出納を同一サイレージ下調査し、乳牛、緬羊間の比較も行った。

  Ⅱ 秋冬移行期における牧草サイレージ多用試験
   乳牛4頭を放牧期、牧草サイレージ多用期、乾草サイレージ期と移行し、その産乳量の傾向から牧草サイレージの利用効果を判定しようとした。
 産乳量、産脂量、栄養摂取量、乳汁成分を調査した。

  Ⅲ 放牧草と草サイレージの産乳比較
   ホ系種4頭、ジャージー牛2頭、計6頭を供試し、放牧草の時期の関係で1群とし、期別試験法によって、1・3期を放牧草期、2期をサイレージとして、6期平均と2期の産乳量を比較した。
 試験期間は各期3週間とし、各期の前1週間を予備期、後2週間を本試験とした。放牧期には夜間乾草を給与し、サイレージ期は6月21日刈取チモシーである。
 Ⅰ・Ⅱの試験の供試牛の概要は第42表のとおりである。

 第42表 供試牛の概要
試験 供試牛名 種類 生年月日 最終分娩年月日 産次 産仔性 開始時
生体重 乳量
S Q ホ系 30.11.13 36. 2.26 2 448 18.0
S S 29.12.26 36. 2.18 4 518 18.0
BBH 32. 9. 5 36. 3.29 2 504 15.0
D R 28.12.13 36. 3.29 5 496 14.0
HLD 33. 6. 9 37. 1. 7 2 455 15.0
S K ホ系 35. 2. 6 37. 2.26 1 428 16.0
H Y 31.11.27 37. 1. 7 4 520 17.0
LBB 34. 7.18 37. 2.28 1 430 15.0
J-39 31. 3. 3 37. 4.21 3 383 16.0
JQS 33. 3. 9 37. 4.21 2 375 17.0

 ロ) 試験成績
  Ⅰ 牧草サイレージ消化試験
 第43表 飼料及び養成分析表 (省略)
 第44表 飼料摂取量と排糞尿量(1日1頭平均)
区別 牛羊名 飼料摂取量(g) 排糞量(g) 排尿量
(cc)
サイレージ 風乾重 澱粉 配合 P Ca 原量 風乾量
1 3.000 660 813 295 2.000
2 3.600 790 959 365 2.150
3 4.000 880 1.127 391 2.270
1 2.800 644 100 5 856 331 1.700
2 2.950 679 100 5 810 366 1.700
3 3.280 754 100 5 965 356 2.450
1 1.800 531 10 7.5 541 231 1.700
2 2.000 590 10 7.5 703 370 1.700
3 2.500 738 10 7.5 910 353 2.050
1 2.000 580 555 250 1.350
2 2.000 580 620 291 1.350
3 2.300 667 745 336 1.450
S Q 58.900 12.954 200 33.975 5.456 9.515
S S 58.600 12.892 200 28.385 4.797 12.772
BBH 53.100 11.862 28475 4.476 9.805
D R 60.000 133.20 42.375 5.577 9.395

 牧草サイレージの緬羊ならびに牛による消化試験は第43~46表のとおりである。
 緬羊はサイレージを本質的に牛より好まない傾向にあるため緬羊の各試験は牛のそれよりも消化率が劣っていた。その乾物消化率は牛62.5%であるにかかわらず緬羊のそれは53.7%と98%近くの差があるようである。
 牛の放牧時の消化率は74.2%で、最高で10%も高かった。
 牛の試験では配合を給与したものと非給与のものでは5%程度の差があり、前者が良好であった。牛の有機物の消化率の平均は蛋白質68.3%、脂肪80%、繊維58.8%、NFE62.9%であった。
 緬羊で澱粉やP、Caの灰分を添加した場合、消化率の向上は顕著でなかった。しかし、濃厚飼料の効果は緬羊では行わなかった。緬羊の消化率平均は蛋白質59.8%、脂肪58.3%、繊維48.7%、NFE58.7%である。
 次に灰分出納をみると牧草サイレージのみでは牛、羊ともPの不足がみられ出納は陰性である。灰分剤、澱粉や配合などの添加時には陽性または陰性でも軽度になるので、これらの飼料とも併用が必要であると思われた(牛20g、羊1gの摂取量であった。)
 Caではサイレージ単用時に陰性になる1例の例外がみられたが、他の単用時や飼料併用時には陽性であった。これを飼養標準に比較しても充分要求量をみたし、牛では日量90gでは4~5gが摂取されていた。
 Mgは何れも充分量の摂取がみられ出納は常に陽性であった。摂取日量は羊1.5g、牛35g程度であった。
 以上のことからPのみが不足する傾向で他の灰分、可消化蛋白質、可消化総養分では充分量摂取されていた。従って第1胃細菌の活性度を高めるためにもPの補給を濃厚飼料の形態で供給することが有利であると考えられた。

 Ⅱ 秋冬移行期における牧草サイレ-ジ多用試験
 第47表 飼料供給量及び栄養摂取量
供試牛 飼料給与量(kg) 摂取養分量(g) 要求量に対
する割合
体重に対
する摂取量
乾草 放牧草 サイレージ 配合 DCP TDN DCP TDN
放牧

9.7

26
S Q 2.7 45.0 2.0 1.324 6.181 133 73 2.53
S S 2.6 51.0 2.5 1.494 6.869 126 70 2.52
BBH 2.7 45.0 2.0 1.324 6.181 140 80 2.39
D R 2.6 48.0 2.0 1.494 6.809 135 75 2.49
サイレージ

9.20

11.5
S Q 58.9 2.0 1.420 9.564 162 127 3.34
S S 58.6 2.0 1.415 9.523 162 127 2.87
BBH 53.1 1.035 7.248 141 111 2.32
D R 60.0 1.170 8.190 160 127 2.66
乾草サイレージ

11.6

26
S Q 4.0 30.0 2.0 1.150 8.890 160 140 3.20
S S 4.0 30.0 2.0 1.150 8.890 160 137 2.77
BBH 4.0 30.0 1.5 1.097 8.535 172 144 2.53
D R 4.0 30.0 1.0 1.033 8.180 149 143 2.58

 第48表 飼料成分表
飼料名 原物中(%) DCP TDN 摘要
水分 粗蛋白 粗脂肪 粗繊維 NTE 粗灰分
放牧草 88.30 2.40 0.64 2.07 5.60 0.99 2.20 8.90 ラデノ80:チモシー20
乾 草 14.60 6.40 1.80 31.60 38.70 6.90 3.40 37.10 チモシー
配 合 12.60 18.10 4.40 8.90 50.30 5.70 15.40 76.30 ふ、大豆粕、アマニ粕
サイレージ 80.02 2.85 1.87 6.55 7.10 1.61 1.95 13.65  
配 合 9.85 16.37 2.55 8.96 57.56 4.68 13.60 76.20 燕麦、ふ、大豆粕
乾 草 9.02 8.07 1.73 32.81 45.10 3.27 4.92 49.87  
サイレージ 73.28 3.45 2.40 8.30 10.64 1.93 2.36 18.25  
配 合 9.75 16.01 1.70 8.90 59.24 4.40 12.81 71.01 燕麦、ふ、大豆粕

 第49表 産乳日量及び産脂量

群 別 供試牛名 放牧期
20日
サイレージ期 慣行期
20日
対照期 試験期
増減量
同左率
前20日 後20日


配合添加 S Q 17.72 15.95 15.05 11.19 28.91 +2.09 +7.2
S S 18.34 15.35 13.89 9.59 26.87 +2.36 +8.8
平均 18.03 15.65 14.47 10.37 17.94 +2.23 +7.8
無添加 BBH 14.84 10.14 9.22 6.87 21.71 -2.35 -10.8
D R 15.66 10.50 8.45 5.52 21.13 -2.19 -10.3
平均 15.25 10.32 8.83 6.20 21.42 -2.27 -10.6
全平均 16.64 12.99 11.65 8.29 25.93 -0.29 -1.2
配合添加 S Q 0.532 0.463 0.436 3.347 0.879 +0.02 +2.3
S S 0.569 0.468 0.410 0.329 0.898 -0.02 -2.2
平均 0.551 0.466 0.424 0.338 0.889 +0.001 +1.1
無添加 S Q 0.490 0.330 0.304 0.269 0.759 -0.125 -16.5
D R 0.603 0.431 0.351 0.235 0.838 -0.056 -6.7
平均 5.547 0.385 0.328 0.250 0.799 -0.091 -11.6
全平均 0.549 0.426 0.376 0.294 0.843 -0.041 -4.8

 飼料摂取量……第47表のとおり放牧期は夜間乾草を、昼夜放牧草を飽食させたが、乾草2.6~2.7kg、放牧草45~51kgの採食量で、配合は2kg程度であった。放牧草のTDN含量が低いためTDN摂取量が少なかったが、体重当り乾物摂取量は2.5%であった。
 サイレージ単用期は配合2kg、添加群と無添加群としたが、前者はサイレージ58.8kgを摂取し、後者は56.6kgであった。
 これは前者が産乳量が高かったためである。しかし栄養摂取量はDCP・TDNとも4頭全部が同程度であって、放牧期よりも多かった。
 慣行飼養期は乾草4kg、サイレージ30kg、配合1~2kgを給与し、DCP・TDNとも各期に比較して最高であったが、乳期の進行が著しく、産乳量は激減した。
 飼料成分表……第48表のように放牧時の飼料成分のTDNが放牧草乾草とも著しく低いほかはサイレージ単用期のサイレージは普通の高水分サイレージであった。慣行飼養期のサイレージは予乾サイレージであったので、DCP・TDNとも高値を示した。
 なお、本試験期ではサイレージの有機酸組成は調査しなかったので不明である。
 産乳日量及び産脂量……サイレージ単用期の産乳効果の傾向を把握するため、第49表のとうに乳量の多少によって、配合添加群と無添加群とした。配合添加群は放牧期、慣行期の平均と比較すると産乳量はやや増加し(7.8%)、産脂量は差異を認めなかった。
 無添加群は産乳量10.6%、産脂量11.6%減少した。これはサイレージ単用が青草単用と異なり、養分摂取量では充分でも産乳効果率が低いことを考察させた。従ってサイレージ単用期の産乳効率の向上には配合飼料の併用が不可欠のものと認めた。
 なお、産脂量も産乳量と同様の傾向であったが、僅かにサイレージ期に低下した。慣行飼養期は乾乳期に近づいたためその傾向は明瞭でなかった。
 第1図に試験期間中の産乳曲線を示したが、配合添加群と無添加群の差異が明瞭で、無添加群のサイレージ単用移行期の低下は顕著で、他は乳期の進行状況(分娩後7~9月目)から漸減した。
 体重は4頭平均値でみると放牧期475kg、サイレージ期492kg、慣行期507kgであって、産乳量の減少の著しいサイレージ期の増量が著しく、さらに乾乳期の近づいた慣行期には一層増体重(1日当り)が大きかった。
 牛乳成分の変化……第50表の各期の成分を比較すると比重、乳酸酸度とも変化が少ない。固形分量は経過とともに増量するが、これは、乳期が終わりに近づたためで飼料の差異によるものでない。
 これと同傾向は無脂固形分量、脂肪率、乳糖、蛋白質にもみられ、P、Ca、mgの灰分も同様であった。
 放牧期とサイレージ期の変化はほとんど同量であったが、慣行飼養期は激減とともに牛乳成分の濃化現象がみられた。しかしこれは飼料による影響でないことは明らかであろう。
 なお、サイレージ単用期の配合飼料群と無添加群に成分の顕著な差異を認めたが、個体差と考えたのでこれを平均して考察した。
 血液成分の変化と健康度……第51表にサイレージ単用期の配合の有無による2群の血液成分の放牧期、サイレージ期、慣行期の成績を表出した。
 赤血球数、白血球数、血色素、ヘマトクリット値は乳期の経過とともに含量増加の傾向を示したが、2群間の差がなかった。
 血糖、グロス反応に差がなく、Ca、mgも変化なかったが、P含量はサイレージ期に低下し、とくに配合無添加群に著しかった。
 血清蛋白も全く変化しなかった。
 サイレージ多給によるケトン体の増量も放牧、サイレージ、慣行各期と差異がなく、配合の有無でも差異がなくケトン固性はみられなかった。その他、健康度に全く異常なかったが、配合無給与群の血中の含量低下からP供給量の不足が考察された程度であった。

 第1図 乳量変化



Ⅲ 放牧草と草サイレージの産乳比較
 第52表 期別飼料摂取量(kg)
期 別 飼 料 供 試 牛
HLD S K H K LBB J-39 JQS 平均
乾 草 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0
放牧草 50.0 45.0 49.0 42.0 49.0 47.0 47.0
配 合 2.5 3.3 2.9 3.3 1.8 2.0 2.03
乾 草 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0
サイレージ 40.0 40.0 40.0 40.0 35.0 35.0 29.2
配 合 3.0 3.5 3.5 3.0 3.5 3.5 3.33
乾 草 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0
放牧草 45.0 45.0 45.0 40.0 40.0 40.0 42.5
配 合 3.5 3.5 3.5 3.5 3.0 3.0 3.33
Ⅰ・Ⅱ平均 乾 草 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0
放牧草 47.5 45.0 47.0 41.0 44.5 45.0 45.4
配 合 3.0 3.4 3.2 3.4 2.4 2.5 2.98

 第53表 飼料成分
飼料名 給与時
乾物量
一般組成分(%) DCP TDN
水分 乾物 粗蛋白 粗脂肪 粗繊維 NFE 粗灰分
Ⅰ期 放牧期 16.40 83.72 16.28 3.47 1.42 3.51 6.22 1.66 2.64 12.78
Ⅱ期   〃 18.89 81.56 18.44 3.24 6.91 4.80 7.82 1.67 2.46 14.04
Ⅰ期 乾 草 80.75 19.25 80.75 5.92 2.08 21.78 46.48 4.54 3.66 46.45
Ⅱ期 83.48 16.52 83.43 5.78 1.91 26.02 45.22 4.55 3.59 48.26
Ⅲ期 83.32 16.68 83.32 7.32 2.60 24.00 44.44 4.94 4.55 48.39
サイレージ 19.66 80.17 19.83 2.80 1.09 6.09 8.34 1.51 1.54 12.51
配合飼料 90.00 10.00 90.00 20.10 4.12 9.50 47.10 9.18 17.09 70.71
消 化 率 1番乾草 58 62 58 63 57      
サイレージ 61 55 73 66 62      
放牧草 68 69 55 58 71      
  注) サイレージ酸組成    不揮発酸:揮発酸   乳酸:酷酸:酪酸 
     51:49 
     46:54
   41:39:20 
   40:33:29 

 第54表 飼料養分摂取量と体重変化
項  目 供 試 牛 名
HLD S K H Y LBB J-39 JQS 平均
乾物摂取量 12.87 12.77 13.07 12.28 12.07 11.93 12.50
同上体重比 2.86 3.00 2.53 2.87 3.16 3.22 2.94
標準比 DCP 213 220 204 216 176 176 201
TDN 130 131 122 129 111 111 122
体   重 450 425 516 428 381 370 428
乾物摂取量 13.07 13.52 13.52 13.07 12.54 12.54 13.21
同上体重比 2.78 2.99 2.53 2.87 3.12 3.24 2.93
標準比 DCP 163 163 172 172 148 158 163
TDN 129 128 130 135 114 123 126
体   重 470 452 535 456 401 385 450
乾物摂取量 14.15 14.15 14.15 13.21 12.76 12.76 13.53
同上体重比 2.86 3.02 2.55 2.83 3.19 3.19 2.94
標準比 DCP 219 219 212 220 176 176 204
TDN 140 141 134 140 116 116 131
体   重 495 467 554 466 400 400 463




乾物摂取量 13.91 14.27 14.01 13.14 12.42 12.59 13.02
同上体重比 2.85 3.01 2.54 2.85 3.17 3.20 2.94
標準比 DCP 216 220 208 218 176 176 203
TDN 135 136 128 135 114 114 127
体   重 473 446 535 447 380 390 446

 第55表 産乳日量
項 目 供 試 牛 名 10日間の
購入飼料費
放牧期に
対する試
験期の増減
HLD S K H Y LBB J-39 JQS 平均 乳代
産乳量 14.77 15.36 15.33 15.10 15.83 16.31 15.45 9.994円  
脂肪率 3.30 3.00 3.40 2.80 4.00 4.00 3.42 51.052  
FCM 13.22 13.05 13.95 12.38 15.85 16.31 14.13 19.6%  
産乳量 11.74 13.29 12.30 11.68 12.28 12.81 12.33 12.654 -1.20(8.9%)
脂肪率 3.43 3.45 3.60 3.53 4.90 5.30 4.03 44.910 +0.45(13.5%)
FCM 10.74 12.20 11.56 10.86 13.94 15.30 12.43 28.2% -0.14(1.1%)
産乳量 11.58 13.57 10.71 11.81 11.00 11.00 11.61 12.654  
脂肪率 3.40 3.10 3.35 2.85 4.70 4.70 3.68 39.743  
FCM 10.54 11.74 9.66 9.77 12.16 12.16 11.00 31.8%  




産乳量 13.17 14.47 13.02 13.46 13.43 13.66 13.53 11.324  
脂肪率 3.35 3.05 3.38 2.88 4.35 4.35 3.56 45.414  
FCM 11.88 12.40 11.80 11.08 14.00 14.24 12.57 24.9%  

 第2図 平均産乳量及び脂肪量



 飼料摂取量……第52表に期別個体別飼料摂取量を掲載した。
 各期とも乾草を夜間3kgを投与し、配合飼料2~3kg給与を基準として放牧草、サイレージを飽食程度にした。
 第Ⅰ期は6頭平均乾草3kg、放牧草47kg、配合2.63kg:第Ⅱ期は乾草3kg、放牧草42.5kg、配合3.33kgを摂取sita.
 サイレージの採食量は放牧草より少なく、それだけ配合飼料が多給された。
 ホルスタイン種とジャージー種の採食量は放牧期、サイレージ期とも大差がなく採食したのでm体重当りではジャージーが多いと考察された。
 飼料成分及び品質……第53表に各期の飼料成分を表出し、別の緬羊の消化試験によってDCP、TDNを計算したが、秋季の放牧草は水分含量が少なく飼料価値が高かった。
 1番乾草の消化率は第53表の下部ものもを用い、各期平均成分はDCP3.93、TDN47.70であった。サイレージも同様に算出されたが、DCP1.54、TDN12.51で、蛋白質を除いた諸成分とも消化率は乾草よりサイレージの方が良好であった。
 しかしサイレージ単用の場合は乾草より不良であった。放牧草の消化率は以前の当場の成績を用いたが、乾草はサイレージより消化率は高かった。
 なお、サイレージの酸組成は不良であって、不揮発酸と、揮発酸の比は49:51で、乳酸:酷酸:酪酸は40:36:24であった。
 やや発酵酸量が少なく、糖残存量が原物中0.22%もあり、完全発酵していなかった。
 サイレージはチモシー早刈草(6月21日刈)であったが、放牧草のDCP2.46に比較して、1.54で著しく低値であった。TDNもまた放牧草14.04に比較して12.51で、やや低かった。これはおもに消化率の差異に基因するものと思われる。
 飼料養分ならびに乾物摂取量と体重変化……第54表に飼料養分摂取量のNRC標準に対する比率、乾物摂取量とその体重比、体重変化などを表出した。
 飼料養分摂取量のNRC標準比を各牛平均してみると第Ⅰ期DCP201TDN122:第Ⅱ期DCP204TDN131で標準に比較して、DCPが倍量、TDNが2~3割放牧期に多く摂取させたことを示した。第Ⅱ期のサイレージ期はDCP163、TDN126でDCPが6割、TDNは2~3割標準より多く摂取しているが、両期間に栄養摂取量の差異がないことを示した。
 乾物摂取量は第Ⅰ期放牧期12.50kg、体重比2.94%、第Ⅲ期放牧期それぞれ13.53kg、2.94%で両期平均13.02kg、2.94%であった。
 第Ⅱ期サイレージ期は乾物摂取量13.21kg、その体重比2.93%で、全く乾物摂取量においても放牧期サイレージ期間に差異を認めなかった。乾物摂取量の体重比はジャージー牛は各期とも3%以上で、ホルスタイン種より多い傾向を示した。
 体重変化はジャージー牛が入っているためその平均体重は少なかった。6頭平均開始体重は432kgであったが、第Ⅰ期428kg、第Ⅱ期451kg、第Ⅲ期462kgでⅠ、Ⅲ期平均446kgに比較するとサイレージ期の体重が若干上回り充分維持できることを示している。
 産乳量及び産乳経済性……第55表に期別個体別平均産乳日量を掲載した。産乳量を6頭平均値でみるとⅠ期の放牧期からⅡ、Ⅲ期と急減したが、これは乳期が5~9カ月目であったためである。Ⅰ、Ⅲ期平均の産乳量に比較してⅡ期サイレージ期は8.9%減量したが、脂肪率はⅠ期3.42%、Ⅲ期3.68%に対し、Ⅱ期4.03%と増量したので、FCM乳量はほとんど差がなかった。
 このことから放牧期は産乳量は高いが、脂肪率低く、サイレージ期は産乳量は低いが、脂肪率は高く、産乳量では全く差異がないことがわかる。そしてこの傾向は前試験(Ⅱ試験)のサイレージ配合群と全く同様の傾向であって、第2図はそれを明示している。
 産乳量経済性をみるため購入飼料費の乳代に対する割合をにると放牧期24.9%、サイレージ期28.2%であるので放牧期が有利であることは明らかである。
 牛乳成分の変化と生産量……第56表に牛乳成分の変化を6頭平均で各期を比較した。
 固形分はサイレージ期にやや高い傾向を示したが、これは産乳量と逆の傾向であった。無脂固形分は差がないので、この傾向は脂肪率の増加によるものである。乳糖、灰分に差がなかったが、全蛋白質は、僅かに減少の傾向を示した。カゼインでは差がなかった。
 酸度はサイレージ期に低いがRothera test alcohol testは陰性であった。
 成分生産量は産乳量と同傾向を示し、放牧期やや多く、脂肪量のみサイレージ期に多かった。しかし総じて乳質に及ぼす影響は放牧草サイレージ間に全く差がなかった。

 ハ) 摘要
 夏季放牧期から冬季舎飼期への移行期においての乳量低下の激減はその後の冬季産乳量の顕著な減量の原因となるので、この期間のサイレージ多給法の利用効果を確かめようとした。
 サイレージを給与するにあたり、サイレージの単用は配合飼料との併用時より消化率も低下し、さらにPの出納も陰性になるので、配合の併用は産乳効率の向上、消化率の向上に必要と認めた。
 また牛の消化率は羊のそれより高いことが認められた。
 このことは乳牛の放牧サイレージ多用試験でも認められ、40日間のサイレージ単用期間の摂取量は、57.7kgに達したが、配合添加群は産乳量、産脂量の低下が放牧期、乾草サイレージ期平均に比較して認められなかった。
 サイレージ単用群は乳量が少ないため標準に比較して養分摂取量が配合添加群同様多いにかかわらず、産乳量の低下は11~12%に達した。これは濃厚飼料の産乳効果の差異と解釈できよう。このときの牛乳成分、乳質に影響なく、血液成分でもサイレージ期の配合無添加群のP含量の低下以外血糖、ケトン体、蛋白その他の成分、健康度が放牧期、慣行飼養期と差がないことから配合を併用すれば充分サイレージ多給飼養が可能であることが認められた。
 産乳量に対する放牧期と草サイレージの効果は上述の試験では正確でないので、放牧期とサイレージ期を乾草、配合を併用して実施したところ、サイレージの酸組成は不良であったにかかわらず、6月21日刈の早期刈サイレージのため乾物摂取量、養分摂取量が放牧草と同様で、体重も維持した。産乳量は低下したが、脂肪率の向上があるためFCM乳量では全く差異を認めず、乳質にも変化ないことから放牧草と早期刈サイレージの産乳効果は同等のものと認めた。
 従って青草給与時と異なり、サイレージ給与時には少量の濃厚飼料と併用すれば(粗飼料と濃厚飼料の比が本試験では80:20~85:15)放牧期から舎飼期の転換飼料として有効に多給利用できることが認められた。
 ただし、濃厚飼料給与の経済性については追試の要があると思われる。