【普及奨励事項】
寒冷地における簡易鶏舎と多羽数飼育試験
           北海道立滝川畜産試験場

1. ビニール利用簡易鶏舎の実態調査
 寒冷地における鶏の多羽飼育に当たって、鶏舎に対する多額な資本投下が大きな障害要因となっている。このため、近年主としてビニールを利用した簡易鶏舎が普及して来ているが、厳寒期における保温、湿度、換気及び建築構造上種々の問題が少なくないが、これらについての調査成績が殆ど見られない。
 当場では本道の気象条件に適した簡易鶏舎の構造、様式等を検討するため、道内の養鶏地帯である名寄市(道北)、帯広(道東)、長沼町(道央)よりそれぞれ各1ヶ所づつ簡易鶏舎を対象とした鶏多羽数飼育の実態調査を行ったのでその結果を報告する。
-調査養鶏場の選定方法とその概要-
 1. 調査地域の選定
  簡易鶏舎の現地調査に当たっては本道の代表的養鶏地帯である空知、上川、十勝の三支庁を対象としてこれら選定支庁の中から北海道で最も寒い地域に近い第3表の丁地域から名寄市、丙地域に属する地区から帯広市、乙地域から長沼町の三ヶ所を選定した。(第3図参考)
 2. 簡易鶏舎の選定
  上記の選定した3地域の中から1.000羽以上の採卵鶏を簡易鶏舎(本調査では簡易鶏舎を建築費坪当り10.000円以下の鶏舎と仮に設定した)で飼育し、しかも気温、産卵率等を正確に記録し得る施設と能力をもつ組合経営養鶏場2ヶ所(帯広・名寄)個人経営養鶏場1ヶ所長沼計3ヶ所を対象とした。

 第3表 道内各地の平均最低気温


地   域



毎日最低平均気温(℃)
函 館
室 蘭
浦 河
札  幌   苫小牧
岩見沢   稚  内
釧  路   網  走
根  室   留  萌
     旭 川  帯 広
     北 見  遠 軽
     紋 別
     中標津      
陸 別
川 湯
弟子屈
-11℃<t -15℃<t-15℃~-11℃≦-11℃ -20℃<t≦-15℃~-20℃-15℃ t<-20℃
 
戸外温度  (℃) -2 -11 -7 -15 -12 -20 -17 -25
戸外湿度  ( % ) 70~75 80~85 70~75 80~85 70~75 80~85 70~75~80~85


 3. 調査養鶏場の概要
 A養鶏場は帯広市内の農業団体経営の養鶏場でこの地方の指導的役割を果たしている所である。
 現在約5.000羽の鶏を飼育しているが、簡易鶏舎の展示と試験を兼ねて一部にビニール利用簡易鶏舎を設置している。尚一部種卵を採種するため群飼ゲージによる飼養を行い、この地方のモデル簡易鶏舎である。
 B養鶏場は名寄市内の団体経営の養鶏場で、簡易養鶏場で7.000羽の採卵鶏を飼養し現在他に同様簡易鶏舎で10.000羽の採卵の鶏飼養を計画一部飼育を始めている。名寄市は道内でも寒い地区であるにもかかわらず鶏舎構造の単純であること、建築資金が坪当り3.000円以下という建築資金が安価なことが特長で、日本の養鶏の最北端でこのような簡易鶏舎で果たして経済的な維持できるかと一応疑問をもたれる所である。(写真1参照)
 C養鶏場は札幌市の道南約30kmの長沼町にあり北海道とぢては比較的温暖な地域に位置し、現在約3.000羽の採卵鶏を簡易鶏舎で飼養している。
 
 1. 鶏舎所在地の気象概況
  (各測候所調べ10ヶ年平均)
  場所 戸外平均最低温度 戸外平均温度
1月 2月 1月 2月
A鶏舎 帯広 - ℃ - ℃ - ℃ - ℃
B 〃 名寄 -18.4 -13.8 -4.9 -1.9
C 〃 長沼 -14.5 -13.2 -1.7 -0.5


 2. 鶏舎の構造及び飼養規模
 本調査では簡易鶏舎10.000円以下と仮に限定したためその構造が殆ど似たものになった。詳細は第4表に見る通り、屋根は何れも板張りの上に砂付ルーフイングを張り、壁の大部分はビニール張りで殆どが1年或いは2年で100%更新している。屋根の砂付ルーフイングは多雪地帯でも3~4年の耐久力は十分あるようである。

 第3図 北海道内の冬期間の温度分布図



 第4表 鶏舎の構造及び飼養規模
養鶏場 構  造
組立 屋 根 天井 壁及び窓 土台
A帯広
(道東)
木骨 板張り
ルーフイング
なし 腰60cm軒下30cm板二重張り
中間150cm金網ビニール張り
石灰から コンクリート
ブロック
B名寄
(道北)
木骨 板張り
砂付ルーフイング
なし 腰50cm板張り
その他金網ビニール張り
土 間 堀立て
C長沼
(道央)
木骨 3分野地板
ルーフイング張り
アスファルト仕上げ
なし 金網ビニール張り
窓ビニール張り障子はめ込み
コンクリート コンクリート
叩き

 飼養規模及び管理様式
鶏舎坪数 飼養羽数 坪当り羽数 管理様式 備 考
75坪 2.134 28.45 群飼ケージ  
333.5坪 7.000 20.98 単飼ケージ  
208坪 成 3.200
若 1.000
21.33 単飼ケージ 集糞機付


 3. 簡易鶏舎の構造
 道内における簡易鶏舎はその殆どが落葉樹の丸太を利用した堀立式で壁に農用ビニール、屋根は4分板の上にルーフイングを張るという簡易な鶏舎が建てられている。
 壁のビニールは風圧に耐えるため内側に3cm亀甲目金網をはりその上にビニールをはっている。ビニールは養鶏場により厚さ0.1mm~0.05mmの透明なものを1枚或いは2枚にして使っている。特別の防寒対策として屋根ルーフイングの下に飼料空袋を2~3枚入れること或いは壁ビニールを2枚重ねて張るという方法が一部にとられている。
 床の土間粘土タタキで表面に石灰がら或いは川砂をしきつめる方法がとられているが養糞処理の関係上全面コンクリート床にしている所も見られる。鶏舎の大きさは保温性から見て正方形の建物が望まれるが建築費が高くつくことから奥行のせまい鶏舎が多い。

 第4図 簡易鶏舎の構造



 4. 簡易鶏舎における飼養羽数と管理様式
 本調査における飼育規模は本道としては比較的大きい方で約2.000羽、3.000羽、7.000羽の飼育規模であるが元来簡易鶏舎は鶏舎そのものの保温性が少ないために単位面積当りの飼養羽数を多くすると共に1鶏舎内の羽数を多くする必要があるので、簡易鶏舎のほとんどは1群300羽以上で管理方法は単飼ケージのヒナ段2段、3段或いは垂直2段、3段及び群飼ケージの1段或いは垂直の2段の立体配置を行い従来の平飼飼育に比し2倍から3倍の羽数の密度となっている。
 尚鶏養管理方式として平面飼育が考えられるが単位面積当り飼育羽数が1/2~1/3に減るため鶏舎の建築費がそれだけ高くつくこと、叉鶏自体の発熱が少ないため室温の保持が困難の理由から簡易鶏舎においては平飼形式は殆どとられていない現状である。

 5. 鶏舎建築に要した経費
 鶏舎建築に要した経費は3.3当りB鶏舎2.480円、A鶏舎8.670円、C鶏舎10.000円と大差があるがB鶏舎の2.480円は自家労力で自家材料を活用建築したため極端に安価になったもので一般的にはこのような建物には5.000円前後要するものと推算される。
 これを飼育鶏1羽当りに要する費用として見るとA325円、B124円、C623円の建築費を負担している。
 叉鶏飼養に要する内部施設を加算するときA491円、B299円、C872円が一羽飼養のための人件費を除いた一切の費用である。
 建築に要した経費の内訳は第5表に見る通りである。

 第5表 簡易鶏舎建築に要した経費
養鶏場 区 分 建物 ケージ 電気工事 給餌給水器 ビニール 水道工事 その他 備考
A 帯広 総 経 費 650.000 15.600 10.000 53.000 12.000 29.000 10.000    
坪当り経費 8.670 2.370 130 710 160 390 130  
1羽当経費 325 108 5 27 6 15 5 491
B 名寄 総 経 費                   
坪当り経費 2.480               
1羽当経費 124 105 5 50 5 10 299
C 長沼 総 経 費     220.000     130.000 600.000   その他の集糞機
600.000円6連40mのもの1.2連
坪当り経費 10.000              
1羽当経費 632 105 50 50 5 32   872


 6. 鶏舎内の温度及び湿度
  (1) 調査簡易鶏舎内外の温度差
 種々の条件から舎温は夏季21℃以下、冬期は0℃以上に保ち、かつ冬期の舎内温度は激変をさけることが大切で、ti(舎内温)の範囲は0~21℃ならば良いということになる。一方to(舎外温)は本道各地の1月平均外気温で累年のデーターから-2~-13℃をとれば良い。これに対してtiをいくらにとるかは問題であるが何れにせよ0℃より下がることは諸種の面から望ましくない。
 この問題について国内に適当な資料がないので、米国で一般に行われているtoとtiとの関係を式で表現して見ると次のようになる
to
    ti= 10.5℃
2
 今A・B・C三養鶏場でのそれぞれ測定記録から鶏舎内外の最低平均温度を調査比較するとそれぞれ第5図、第6図、第7図のとおりである。

  (2) 簡易鶏舎におけるtiとtoの関係
 昭和39年2月7日測定員が現地におもむき自記温湿度測定器によりtiとtoを測定し、toによりtiを算出、実測値と計算値の差を比較検討した所第6表、第7表のとおりであり、これら簡易鶏舎においても戸外温度(to)から戸内温度(ti)を実用の範囲内で推定出来るものと思われる。

 第6表 tiとtoの関係(A養鶏場の測定値から)
時間/ 18 21 24 3 6 9 13 備  考
to -4℃ -7℃ -9℃ -13℃ -16℃ -13℃ 0℃  
ti 6 5.5 5 1.5 0 2 1.0 ti実測値
ti= to
2
+10.5℃ 
8.5 7.0 5.5 3.5 2.0 3.5 10.5 tiの計算値
ti-( to
2
+10.5℃)
-2.5 -1.5 -0.5 -2.0 -2.0 -1.5 0.5 実測と計算値の差

 第7表 tiとtoの関係(B養鶏場の測定値から)
時間/ 15 19 21 24 3 9 9
to -3.0 -6.3 -11.7 -18.4 -15.9 -15.7 -13.2
to 1.2 4 2 0 0 1 4
to
2
+10.5℃
8.5 7.8 4.1 0.8 2.05 2.15 3.40
ti -( to
2
+10.5)
3.5 3.8 -2.1 -0.8 -2.05 -1.05 0.6
  (イ) A養鶏場(帯広)
  (ロ) B養鶏場(名寄)

  (3) 簡易鶏舎内の湿度
 成鶏にとっては相対湿度が50%付近が最も適した湿度とされている。寒冷時に湿度が高いと熱伝導による体熱の放散が多くなり、反対に夏の暑い時期に湿度が多いと鶏自身の体熱の放出が困難となり鶏の受ける影響は非常に高いものである。
 今回の調査では湿度の正確な測定が出来なかったが、特にビニール利用簡易鶏舎は密閉式のうえ日中と夜間の温度差が大きく、このため温度の最低時における湿度は何れの鶏舎においても85~95%の過湿状態を示していた。

  (4) 換気
 簡易鶏舎内における多羽数飼育の場合の気象環境から見て、換気は最も不可欠の重大問題であると考える。
 簡易鶏舎はその殆どが保温のためビニールによる密閉に近い状態にあるが換気の殆どが大部分は軒下又は出入口による不適正な自然換気を行い大型鶏舎(奥行の3間以上もある深い鶏舎)ではモニター型、小中型鶏舎)ではモニター型、小中型鶏舎ではセミモニター型による天井からの入排気を行っているが、この様な鶏舎は夜間或いは日照の少ない日中は換気量の調整が困難で舎内温度の保持が困難となる場合が屡々(しばしば)見られている。
 ビニールを主とした簡易鶏舎においては電気換気扇による強制換気が望ましいものと考える。調査したA・B・C養鶏場における換気状況は第8表のとおりである。

 第5図 鶏舎内平均最低温度と舎外平均音素(37年1月)



 第6図 鶏舎内平均最低温度と舎外平均音素(37年1月)



 第7図 鶏舎内平均最低温度と舎外平均音素(38年1月)



 7. 簡易鶏舎の産卵率
 調査した簡易鶏舎における産卵率は何れも55%~70%程度のもので本道における一般産卵成績に比べ特に不良とは認め難い成績である。A・B養鶏場における月別年間産卵成績は第9表及び第10表のとおりである。

 第8表 換気
  換気様式 換気孔の設置 換気量調節の方法
A 帯広 自然換気 特になし 冬期間殆ど行わず専ら出入口の開閉による
B 名寄 自然換気 軒  下
全面約3寸あけ
冬期間飼料空袋で穴を殆ど密閉する
C 長沼 自然換気 屋根中央
換気孔
 

 第9表 A養鶏場年間産卵成績              (白レグ、初年鶏)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 平均
産卵率 53.2 56.0 70.0 75.5 75.3 68.5 59.6 63.0 57.1 11.0 33.3 48.0 56.0
  備考 1) 9月より産卵率の低下したのは初産前の若どりを補充したtめ。
      2) 群飼ゲージによる飼育したもの。

 第10表 B養鶏場の月別年間産卵成績
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
産卵率% 62.6 74.3 81.0 84.0 81.0 79.0 69.0 69.0 35.0 36.0 34.0 54.0
濁汰率% 1.51 8.41 3.89 6.62 8.26 1.81 6.55 6.54 7.50 5.95 5.61 2.20
  備考 1) 9月より産卵率の低下したのは初産前の若どりを補充したため。
      2) 単飼ゲージ飼育による。

 A・B養鶏場における鶏舎内最低温度と産卵関係を示すと第8図及び第9図のとおりであるがこれらによると-5℃程度の舎内温度の低下ではさほど産卵の低下が見られていない。

 8. 管理方法
 簡易鶏舎における管理方式は冬期間舎内の保温のため単位容積当りの飼育羽数を多くすため殆どが単飼ゲージ、或いは群飼ゲージによる飼育である。
 飼料の給与は市販配合飼料を粉餌のまま1日2~3回人力により配餌している。給水は通常エスロンの給水樋で給水しているが厳寒期には夜間凍結するので、夜間は給水を中止している。このため早朝点灯の場合には改めて給水をしなければならない不便がある。叉舎内温度が日中でも0℃を下る時は給水樋の水が凍り、時には鶏糞が凍り、糞の搬出が困難の場合も見られる。このような状況で1人当り飼料管理可能の羽数は約2.000~2.500羽である。

 第12表 暖・寒鶏舎の産卵数、摂取量、飼料要求率(1月中)
   産卵数 飼料摂取量 飼料要求率
鶏舎区分 20.56個 19.86個 101.98g 126.8g    
  備考  暖鶏舎 1月最高平均9.00℃  最低平均4.73℃
       寒鶏舎 1月  〃   5.13℃    〃  -6.06℃

 点灯飼養は9月下旬頃より日中時間を含めて1日13~14時間程度の日照時間になるように行っている。点灯操作は一般にタイムスイッチで点灯時間を正確にするよう努めているが、点灯開始時期或いは終了期或いは終了時期が遅すぎたり適切でないものが相当見られるので今後適切な指導が望まれる。鶏舎内の暖房は殆ど行っていないが、極一部の養鶏場にあっては石炭、或いは重油による給温暖房を行っている所も見られる。

 9. 鶏糞処理
 冬期間鶏糞は3~4日目毎に比較的舎内温度の高い日を選び人力或いはスクレーパーにより舎外に出し低温のため、自然乾燥も殆ど出来ないので堆積或いは自家の畑に撒布している。
 夏期間は日光風力による自然乾燥が大部分を占め一部火力乾燥を行っている。
 調査したA・B・C養鶏場の労働時間は第13表の通りである。

 10. 斃死、濁汰率と産卵率簡易鶏舎における鶏の健康状態については特に簡易鶏舎であるために斃死、濁汰が増加するという傾向は見られていない。

 要約
 近年ビニールを利用した簡易鶏舎が目立ってふえているが、これら簡易鶏舎の構造、様式、環境条件調査のため道内の主要養鶏地帯である名寄(道北)、帯広(道東)、長沼(道央)よりそれぞれ各1ヶ所宛計3ヶ所の簡易鶏舎を選び実態調査を行った。

 第8図 鶏舎内最低温度と平均産卵率(37年1月)



 第9図 鶏舎内最低温度と平均産卵率(37年1月)



 第13表 労働時間
労働時間 点検 暖房 更新
勤務者 飼料給与 集 卵 採 糞 卵整理
婦人1名 1日  2回
1日  40分
計   80分
朝  4回
夕  2回
計 90分
1日1回
(2名)
 120分


 60分

 5時間
  50分
日照時間
  を含む
  13時間
なし 月4~5%

トータ
   2名 1日  2名
1日  50分
計  150分
7日1回
(1名)
 180分
       〃

  14時間
なし 月5%
  2.5名 1日2回2名
1日  90分
計  180分
2日1回
(1名)
  60分
       〃

  14時間
なし 月8~9%

トータ

 A 養鶏場の斃死、濁汰率
    10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9
斃死濁汰率 16.8 8.4 14.8 7.7 6.2 7.1 2.5 2.8 6.0 14.0 8.1 10.4 67.7%
  備考 12月に濁汰斃死の高いのは、種卵採取のため、白痢検査を実施し併せて種鶏として欠点のあるものを濁汰したため。

 B 養鶏場の斃死、濁汰率
月/ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
斃死濁汰率 1.51 8.41 3.89 6.62 8.26 1.80 6.5 6.54 7.50 5.95 5.61 2.20
産 卵 率 62.6 74.3 81.0 84.0 81.0 79.0 69.0 69.0 35.0 36.0 34.0 54.0
  備考 品種、白色レグホン、初年鶏

 1. 調査簡易鶏舎の選定
 上記の選定した地域の中から1ヶ所で1.000羽以上の採卵鶏を飼育している養鶏場を選定した。
 2. 簡易鶏舎の構造
 簡易鶏舎は殆どが落葉丸太、はざ木等を利用した堀立て式のものが多く、壁は全面ビニール、屋根は生子トタン、或いは砂付ルーフイング一枚という簡単なものが多い。このため建築費も3.3m2当り2.500円~10.000円で普通鶏舎にくらべ非常に割安となっている。

簡易鶏舎
の構造
骨組 屋   根 天井 壁・窓 土 台
丸太 板張りの上に砂付
ルーフイング、或い
は浪子トタン
なし 腰約50cm板張り
その他金網及び
ビニール張り
土間 堀立て

 3. 簡易鶏舎気温、湿度等環境条件構造上の特長から戸外温度の影響を受けやすく、戸外温度toと舎内温度tiとの関係は次ぎの式のようであった。
   最高温度  ti=to/2+10.5℃
   最低温度  ti=to/2+ 3.0℃
  湿度については早朝温度低下時に85%~90%に達し好ましい状態ではなかった。鶏舎は殆ど密閉に近い状態で換気不良であったが、Ca2ガスについては特に多いということはなかった。
 4. 産卵状態
 産卵は何れも55%~70%程度で本道の平均産卵率から見て、不良とは認められなかった。
 5. 健康状態
 簡易鶏舎であるため斃死、濁汰が特に多い傾向は認められず健康であった。
  以上の調査結果から簡易鶏舎の保温、湿度換気及び建築構造上今後改善すべき種々の問題点が見出された。

Ⅱ 簡易鶏舎の試作と飼養試験
 道内における簡易鶏舎の実態調査の結果をもとに三通りの簡易鶏舎を試作し、試作鶏舎内環境調査、飼養試験及び簡易鶏舎内の寒冷条件が生体に及ぼす影響について調査を行った。
 結果は次の通りである。
 ・簡易鶏舎の試作
  道内における簡易鶏舎の実態調査の結果をもとに構造材料の異なったA・B・Bの三通りの鶏舎を試作した。
 鶏舎の構造等の詳細は第1表及び第1図、第2図に示す通りである。

 第1表 試作鶏舎の構造及び大きさ
  構   造 大きさ
屋  根
A 砂付ルーフイング
飼料袋 (1枚)
野地板 (4分)
0.02m/m
ビニール2重
(壁面積の1/2)
4分板
ビニール1重
0.02m/m 1枚
24.8m2
B 砂付ルーフイング
飼料袋 (1枚)
S   P 2.5m/m
野地板 (4分)
同 上 同 上 24.8m2
C カラートタン
S   P 25m/m
耐水ベニヤ
タキロン
(壁面積の1/4)
カラートタン
S  P 25m/m
24.8m2

 第1図 簡易鶏舎の断面図



 叉鶏舎建築に要した経費は第2表、第3表に示すとおりである。
 1. 供試鶏及び供試鶏の配置
  供試鶏及び供試鶏の配置は第4表、第3図に示す通りである。
 2. 試験期間及び方法
  試作し簡易鶏舎に供試鶏舎を配置した第5表に見る方法で簡易鶏舎における飼養試験を行った。

 第2図 屋根の構造



 第2表 試作鶏舎の建築経費(3.3m2当り)
A鶏舎 B鶏舎 C鶏舎
4.980円 6.140円 未定※
  備考 (1)建築経費には建築のための労力を含んでいない。
      (2)大量生産の場合は10.000円以下可能、メーカー生産のもの。
 3. 調査成績及び考察
 (1) 環境条件調査及び考察
  1) 鶏舎内の温度
 成績の臨界温度は上限は27℃、下限は16.5℃とされ、これより高温時はエネルギーの要求量が減少し、冬期は体温維持のためエネルギー消費が増加するといわれている。このため冬期間の鶏舎内温度は飼料節減の意味からも重要なことであるが本道における簡易鶏舎内の室温及び外気温は極めて低く本試作鶏舎の温度湿度測定の結果は第6表、第4図のとおりである。
  2) 舎外温度(to)と舎内温度(ti)との関係
 試作簡易鶏舎における関係を調べるため、米国で行われているtiとの関係式t'i=t2o+10.5℃の式にtoを代入し計算式によるt'iと実測値との適合度の検定を行った。
 結果は第8表(1)は見る如くで最高温度についてはt'i=t2o+10.5℃の関係式による推定値と実測値が比較的適合し、本式の適用が可能と考えられる。
 しかしながら最低温度については第8表(2)に見る通り本関係式では1・2・3月とも平均7℃の差が認められるので、本簡易鶏舎ではti=t2o+3の関係式がより適合度が高い。

 第3表 建築経費材料内訳 A鶏舎
材料名 数量 単価 金額
(円)
備   考
丸太      8×8 10 350 3.500 B鶏舎の場合
SP25m/m@400円で、3.3m2当り
単価は4.940円+1.200円=6.410円













3.3m2当り4.940円
 〃      10×3 5 400 2.000
大ヌキ 12× 4×1 6 220 1.320
タルキ 12×1.5×1.5 42 130 5.460
ヌキ   12×3.5×0.6 5 170 850
4分板       (坪) 15 700 10.500
砂付ルーフイング(坪) 9 244 2.196
小        舞 25 15 375
アングル 30×30×30(m) 15 70 1.050
ビニール    1m巾 22 60 1.320
  〃      2m巾 6 120 720
針         (kg) 3 60 180
針金        (kg) 2 70 140
    29.611

 第4表 供試鶏
鶏舎区分 WL×WL
(羽)
WL×RI
(羽)
AL×WL
(羽)

(羽)
A 鶏舎(ビニール) 40 56 48 144
B 鶏舎(ビニールSP併用) 40 40 48 144
C 鶏舎(パネル) 40 40 48 128
D 鶏舎(対照※) 100 100
220 136 165 516
  備考
   ※(1)対象D鶏舎は当場大型ケージ鶏舎(木造120坪、396m2)で側壁に約12cmおが屑を充填してある程度の耐寒構造をもったもの。
     (2)供試鶏は同一時期ふ化、同一交配のものを用いた。

 第3図 鶏舎及び試験鶏の配置



 これは舎外気温、鶏舎の構造、飼育羽数の多少等が大きく影響するものであり、この面の今後の研究が必要である。
  3) 簡易鶏舎内の温度
  換気が悪いと炭酸ガスが増して有害であると云われているが、炭酸ガスそれ自身は何ら有害ではなく、環境衛生面からは炭酸ガスの濃度空気の汚染の程度を表わす指標として用いられているのに過ぎないとされている。
 現在換気量を定めるには室内温度、湿度をその目標としている。
 成鶏にとっては相対温度50%附近がもっとも適した湿度といわれ、寒い時期に湿度が高いと、熱伝導による体熱の放出が多く、それだけ寒さが身にこたえることになるが、簡易鶏舎における湿度の状態を見ると第10表のとおりで、早朝午前4時~6時が24時間中最低温度であるがこの時間が最も相対湿度が多く、75%~90%程度を示している。
 この湿度も日照にともなう温度上昇と共に、相対湿度は少なくなるので、最も温度低下の著しい早朝の1~2時間何らかの方法で給温することが相対湿度の極端な増加を防止する有効な一手段である。
 尚本道においては早朝における湿度上昇防止のための換気は極端な舎内温度を低下させるので不可能と考える。

 第6-1表 各鶏舎内の平均温度(1月)
鶏舎 平均最高温度(℃) 平均最低温度(℃) 累積平均温度(℃)
A +8.14 -4. 1 1.08
B +7.98 -3.76 1. 1
C +8.03 -3.07 0.59
D +6.19 +2.67 5.35
  備考 累積平均温度とは、2時間隔定気温の平均温度

 第6-2表 各鶏舎内の温度(2月)
鶏舎 平均最高温度(℃) 平均最低温度(℃) 累積平均温度(℃)
A +7.8 -5.0 0.51
B +7.8 -4.2 1.18
C +8.8 -3.9 1.51
D +6.36(22日まで) +2.6(22日まで) 4.45(22日まで)

 第4図 1月中のビニール鶏舎内(A)温度






 第7表 調査期間中の舎外気温

平均最高温度(℃) 平均最低温度(℃) 累積平均温度(℃)
1月(31日) -3.44 -12.63 -7. 7
2月(27日) -4.96 -15.17 -10.2

 (5) 簡易鶏舎建築上の問題
 前途のように簡易鶏舎では舎内温度は直接外気温に影響される。このため日照中は寒冷期でも10℃程度の舎内温度が得られる。同様な原因で早朝外気温が下がった場合は、舎内温度も極端に低下する(第9図~第12図)のでこの時間中の低下を最小限にとどめる対策が必要である。
 (6) 対策
  ①太陽光線を十分取り入れるため、太陽の副射の多い南、東及び西に面した壁にビニール壁面を多くし、冬は出来るだけ熱を吸収し、夏は適当な日除けを施こし太陽の直射を避けるようにする。
 尚ビニールフイルムは熱伝導率が大きいのでビニールを2重にする必要がある。この場合ビニールフイルムの間隔は内部で対流を起こさないよう6cm以下にもって行くのが望ましい。
  ②屋根からの熱貫流熱量を少なくすること。この場合も薄いビニールフイルム等で天井を作るとは、(1)と同様天井内部で熱対流を起こし効果が認められなかった。この場合はビニールフイルムと天井の間隔を同様6cm以内にする必要がある。
  ③換気量を少なくすること。
 普通の10坪くらいの木造家屋では30%くらい逃げるといわれ、本道における寒冷時にはこの損失は更に大きいものと思われる。この意味から夜間における換気量は出来る限り小さくするよう考慮する必要がある。
  ④舎内温度を保つため3.3m2当り(軒高2m程度)20羽~25羽の飼養羽数が望ましい。
  ⑤ビニール壁と地面との間から賊風が入りやすいので特に注意する。尚換気のための入気が直接鶏体に当ると産卵が低下するので入気孔の設置が望ましい。
 (2) 生産性調査結果及び考察
  1) 試験鶏の管理
 生産性調査に当たっては供試鶏516羽を各鶏舎に等分し昭和38年12月から昭和39年3月まで4カ年間、産卵数、飼料摂取量、飼料要求率について夫々調査した。
   (イ)給与飼料は第12表のとおりである。
   (ロ)飼料給与の方法
 飼料給与の方法は配合飼料を1日2回に分けて粉餌のまま給餌樋に給与した。給与は飽食とし、採食量は10日に1回宛残食量を測定して行った。尚給餌樋は小さいと飼料を外にこぼす場合が多いので特に特大の給餌を使用し採食測定の正確を期するよう努めた。

 第10-1表 各鶏舎内の温度(1月)
鶏舎別 平均最高温度 平均最低温度
A 89.3% 74.3%
B 91.7 66.1
C 86.8(26日間) 61.6(26日)
D 76.5(1日~10日迄) 64.7(1日~10日迄)

 第10-2表 各鶏舎内の温度(2月)
鶏舎別 平均最高温度 平均最低温度
A 93.4% 76.1%
B 97.8 73.5
C 94.8(26日迄) 72.8(26日迄)
D 77.3(1日~10日迄) 65.0(1日~10日迄)

  (ハ) 給水方法
 給水給水樋により給水したが1月、2月中の厳寒期には給水樋が凍り、給水器中の氷りの採取と給水に手数がかかった。

 第9図 ビニール鶏舎内(A鶏舎)
温度分布図(0時~24時まで1日中の平均温度)



 第11図 パネル鶏舎(C鶏舎)
温度分布図(0時~24時まで1月中の平均温度)



 第12図 普通鶏舎内(D鶏舎)
温度分布図(0時~24時まで1月中の平均温度)



   (ニ) その他の管理
  試験期間は各月とも日長時間が13時間になるように点灯飼育を行った。
 点灯は3.3m2当り約15Wの光量の普通電灯で行った。
 採糞は3日~4日に1回舎内温度が高く鶏糞が溶けた時に行った。
   (ホ) 試験鶏の健康状態
  試験鶏の健康管理については特に注意を払ったがA鶏舎の一部及び対照普通鶏舎にジフテリー症にかかり、一時産卵を停止したものが5~6羽あったが抗生物質を給与し、被害を最小限にとどめたがこの発生は直接鶏舎内の環境の不良によるものと断定する資料は得られなかった。
 その他特に疾病の発生は認められなかった。

 第12表 給与飼料

玉蜀黍 小麦 脱脂米糠 麦皮 大豆粕 魚粕 ルーサン
ミール
炭カル 第 2
燐カル
食塩 各 種
ビタミン
抗生物質
粗蛋白 可消化
養分総量
52 15 5 5 10.8 10.8 3.55 4.6 0.2 0.5 0.35 16.5% 67%

 (2) 産卵成績
  ビニール鶏舎では早期産卵したものがまれに凍結割れすることがあったが、その後早期に一度卵を集めることで凍結割れを防止することが出来た。
 産卵は第13表、第13図に見る通り比較的良好で各鶏舎共70~80%程度の産卵を示している。
 これら産卵数について分散分析の結果は第13表の通りで12月、1月、2月の3カ月間は各鶏舎間に産卵数に有意な差が認められた。

 第13表 産卵数(月別、交配別の産卵数)
月別 交配様式 鶏    舎 平均
ビニール(A) ビニールSP併用(B) パネル式(C) 普通
12 平 均 22.06 22.32 21.47 21.65
1 平 均 23.15 25.05 23.92 20.68
2 平 均 21.19 23.42 22.86 18.03
3 平 均 24.64 27.00 23.70 20.06

 (3) 飼料の摂取量
 飼料は前途の如く当場配合飼料を給与した。成鶏の臨界温度は上限は27.5℃、下限は16.5℃とされている。従って体温維持のためには高温時にはエネルギー要求量が減少し、冬期間は体を維持するためにエネルギーの要求量が増加する。
 叉森本氏らは生産飼料においてもより以上のT・D・Nを必要とすると云っている。このため冬期間は鶏自身は摂食量を多くして調節しているが白グレでは摂食量の限界が130g程度なのでこれ以上になるときは高カロリー飼料を給与して効果を上げている。
 滝川畜産試験場で筆者らは第18表のような実験結果を得ている。
 今回の試験で調査した結果は第19表、第14図に示す通りである。各鶏舎間に殆ど差異が認められなかったが、これは各鶏舎間に著しい温度の差異がなかったため本調査では摂取量にはあらわれなかったものと考える。
 品種間では各月とも有意な差が認められているが当然の事と考えられる。
 A・B・C及び普通鶏舎に飼養されている夫々の鶏の飼料摂取量については各鶏舎間にも有意差は認められなかった。

 第17表 エネルギー飼料と平均産卵率
  試験期間1月26日~2月28日  (岐阜)
CP TDN 平均産卵率(%)
17.8 63 51.6
18.2 68.2 63.8

 (4) 飼料要求量について
 試験期間中の飼料要求率を示すと第22表、第15図の通りで、試験期間中を通じてA鶏舎が比較的高い要求を示しているが分散分析の結果は第23表の通り、1月、2月、3月共A鶏舎はB・C鶏舎に有意な高い要求率を示した。

 第18表 暖、寒鶏舎別の産卵数、摂取量飼料要求率(1月中)
   産卵数 飼料摂取量 飼料要求率
鶏舎区分
20.56箇 19.86箇 101.98g 126.8g 2.69 3.95
  備考 ① 暖鶏舎平均最高温度9℃   平均最低温度4.73℃
      ② 寒鶏舎平均最高温度5.13℃ 平均最低温度-6.06℃
      ③ 両鶏舎の構造上累積温度にも相当差があるように認められたが測定出来なかった。

 第19表 飼料摂取量
月別 交配様式/
鶏   舎
WL×WL RL×WL AL×WL 平均
12 A 100.3 106.7 120.8 109.3
B 100.8 121.2 111.5 111.2
C 100.0 115.7 113.0 109.6
D 99.3 96.3
平均 99.3 114.5 115.1  
1 A 100.7 110.0 111.7 107.3
B 102.8 115.0 106.7 108.6
C 104.8 118.8 112.7 112.1
D 106.7 106.7
平均 103.9 114.6 110.2  
2 A 107.3 119.7 109.8 112.3
B 101.5 127.5 113.5 114.2
C 104.5 115.5 119.8 113.3
D 101.3 101.3
平均 103.7 120.9 114.4  
3 A 104.0 128.8 117.0 116.6
B 100.0 129.8 119.2 116.3
C 100.3 107.5 106.0 104.6
平均 101.4 122.1 114.1  

 第14図 鶏舎別、月別、交配別飼料摂取量(1日1羽当り採食量)




 第20表 飼料摂取量の分散分析

月別 鶏  舎 自由度 平方和 平均平方和 F
12 鶏  舎 2 33 16.5 0.13
品  種 2 2.497 1.248.5 9.67※※
交互作用 4 3.230 807.5 1.17
個  体 4.5 5.764 128.9  
1 鶏  舎 2 220 110 1.77
品  種 2 1.225 613 9.67※※
交互作用 4 179 45 0.71
個  体 4.5 2.854 63.4  
2 鶏  舎 2 308 151.5 2.52
品  種 2 2.469 1.234.5 20.5※※
交互作用 4 552 138.4 2.29
個  体 4.5 2.706 60.2  
3 鶏  舎 2 1.688 844 12.2※※
品  種 2 3.887 1.944 28.11※※
交互作用 4 874 219.5 3.17
個  体 4.5 3.112 69.15  

 第21表 飼料摂取量(WL)
月  別/
鶏舎別
12月 1月 2月 平均
A 100.3 100.7 107.3 102.8
B 100.8 103.8 101.5 102.1
C 100.0 104.7 104.5 103.1
D 96.0 106.7 101.3 101.3
平均 99.3 104.0 103.7  

 これはA鶏舎のB・Cに比らべ低温であったこと及びその他の原因によるものと考えられる。
 叉品種間には有意差が見られるがこれは品種の違いによる体重の大小、産卵の良否に当然変えるべきものである。
 叉同一白色レグホーンをこれらA・B・C3つの簡易鶏舎と対照のD鶏舎で飼養した結果第23表、第15図に見る通り対照のD鶏舎が要求率においては、すぐれているが分散分析の結果は鶏舎間に有意な見出し得なかった。12月から2月までの各月間には有意差が認められた。(第24表)

 (3) 鶏体に及ぼす生理的影響に関する調査
  白血球像~常法により塗抹し、マイギムザ2重染色を行い偽好酸球と淋巴球の比を求めた。
  1) 体温
 各鶏舎の平均体温は第25表に示した。

 第23表 飼料要求率(月別、品種別)
月別 鶏舎別 AL×WL WL×RL WL×WL 鶏舎平均
12 A 3.33 3.66 3.48 3.48
B 2.65 3.85 3.54 3.35
C 2.72 4.07 3.79 3.55
D 2.96 2.96
平均 2.93 3.87 3.45  
1 A 3.08 3.35 3.48 3.31
B 2.72 3.00 3.00 2.92
C 2.80 2.79 3.01 2.90
D 3.02 3.02
平均 2.88 3.06 3.16  
2 A 3.19 2.99 3.06 3.08
B 2.49 2.95 2.71 2.71
C 2.52 2.97 3.01 2.82
D 2.83 2.83
平均 2.73 2.97 2.90  
3 A 2.63 2.71 2.57 2.64
B 2.34 2.72 2.59 2.55
C 2.28 2.91 2.99 2.72
D
平均 2.41 2.78 2.72  

 第25表
鶏舎 例数 1.10 1.24 2.7
AM PM AM PM AM PM
A 5 42.5 41.8 43.3 43.5 42.3 42.0
B 5 43.4 42.4 442.6 43.3 42.2 42.7
C 5 43.3 41.8 41.9 42.1 43.3 43.0

 以上の結果より各測定日毎に、各鶏舎及び測定時(午前及び午後)の体温について分散分析による比較を試しみたところ第27表~第29表に示したような結果を得た。
 即ち、1月24日及び2月7日では各鶏舎で差が認められ、これらの差は1月24日では3鶏舎相互に、叉2月7日ではA鶏舎とC鶏舎との間にそれぞれ差が認められている。(tnrkey test P<0.05)
 これら体温と、第26表に示した室温との関係についてみると、1月24日は各鶏舎とも最低温度を示し、叉1月10日は2月7日よりも低温を示しているが体温には差を認めていない。叉1月24日の所見でもA鶏舎における体温が最も高くC鶏舎では最も低い値を示すなど、体温と室温とも間には一定の傾向を認めず、これら体温の差を直ちに室温の影響によるものとは考え難い。
 1) 体重
 各鶏舎毎試験開始前及び終了時に体重測定を行ったが特に鶏舎間の差異は認められなかった。
 2) 疾病の発生及び斃死
 試験期間中の疾病の発生及び斃死の状況については簡易鶏舎が対照の普通鶏舎にくらべやや多いという傾向が認められるが、斃死の原因等について見ると白血症によるものが多く、叉飼養鶏の一般外貌高によってその活力を判定すると概して良好であり、簡易鶏舎における環境条件が疾病の発生を多くしているものと判定出来ずに更に長期の調査が必要と考えられる。
 以上から考察すれば寒冷感作の鶏に対する生理的指標として
 1. 体温、白糖値、白血球像、体重の変化及び疾病の発生状況
 2. 産卵、飼料摂取量
 などから総合的に考察すれば簡易鶏舎における環境条件、特に寒冷、日中温度等が鶏体に及ぼす生理的な影響はさほど大きいものでないように思われた。
 叉感冷作は今回の簡易鶏舎におkては連続的なものでなく早朝に氷点下を記録しても午後にはかなり室温は上昇していることなどを考察すれば、今回用いた程度の簡易鶏舎における寒冷感作はさほど鶏体にとって悪い影響(特に経済的な条件において)を及ぼすものでなく環境に対する鶏の適応性はかなり広いものと思われる。
 簡易鶏舎(ビニール鶏舎)利用上留意すべき事項
  簡易鶏舎は主としてビニールを利用した簡易鶏舎構造であるため、日照中と夜間の舎内温度差が大きく、叉相対温度においても1日中の較差が大きい等特異な問題点が見られる。
 簡易鶏舎の利用に当り次の事項に特に留意し鶏舎内環境の改善を期待する。
 1. 防寒のための断熱、構造に留意する。


 従来の簡易鶏舎は野地板にルーフイング一枚という構造のものが多く、このため屋根からの夏の放出が多く屋根の雪がすぐ溶けてしまうほどのものであったが、これらの熱量を少しでも鶏舎内の保温に利用したい。
 屋根裏に断熱材を直接はりつけるか、或いはダンボールの空箱、飼料袋等をルーフイングの下に数枚重ねて敷き、熱量の放出を防ぐ。
 2. 過湿を防ぐ
 簡易鶏舎では舎内の温度変化が大きいため、相対湿度の変動も大きく舎、内温度低下時(早朝)の湿度は80%~85%に達する。
 一般に除湿のために換気が行われるが、早朝は戸外気温が低く、換気により舎内温度が急激に低下するので逆効果をまねく場合がある。
 この場合の換気は最小限にとどめむしろ舎内温度の低下を防ぐ防寒対策を過湿防止の手段としたい。
 次に鶏舎内の水分及び有毒ガスの発生源である鶏糞は毎日戸外に出すことが望ましい除湿の対策である。
 1. 換気扇の利用
 簡易鶏舎においては換気筒による自然換気が困難な問題が多いので換気扇による強制換気を行うようにする。
 標準換気量は次の算式による算出し、必要な換気扇の数、台数を決定する。
  換気量(m/分)=換気係数×飼養羽数(羽)×鶏羽の平均体重(kg)
  換気係数は(冬期)0.05~0.025とする。
 換気は日中鶏舎内の温度上昇時に行い、夜間早朝の換気は最小限にするか或いは殆ど行わないようにする。
 換気扇の取り付け位置には注意する。




 上から入れて下から排気する。入気は直接鶏体に当たらないよう注意する。
 4. 日光を十分利用する。
 鶏舎は冬の日光を十分受け入れる得るような場所と方向に建てるべきである。叉日光のあたる壁面はビニール面をなるべく多くするように配慮する。
 5. 飼育羽数とケージの配列方法
 1群300羽くらいまでの小鶏舎においては鶏舎内の鶏の発生熱量が少ないために飼育密度をやや多くする(ケージひな段、3段坪当り24羽~30羽。)それ以上の群においては作業能率等からひな段2段(坪当り20羽前段)とする。
 ケージの配列に当っては温度変化のはげしい壁側から少しはなして配列するようにする。
 6. ビニール鶏舎に鶏を収容する場合の注意
 秋口鶏をビニール鶏舎に収容する場合この時期の換気不良によると思われる事故が多いので給水樋の水の凍結が始まる頃までビニールを密閉せずに、強風のみをさけるようにし、その後凍結が始まってからビニールで密閉するようにする。