【普及奨励事項】
蹄耕法による草地造成に関する試験
北海道農業試験場草地開発部

Ⅰ蹄耕法の適応性(第1試験)
1.試験目的
 蹄耕法による草地造成方式の適応性を明らかにするため、長草型の自然草地において、慣行法による場合との比較検討を行い、この間経年的植生、土壌の理化学性、牧養力ならびに本方式による技術的な問題点を明らかにしようとする。

2.試験方法
 2-1 試験圃場
 畜産部四望台地で、東南面に10度の傾斜を有し、植生は第1表に示したようにススキ-ハギ-ワラビ-ササ型で、これに樹令10年前後のシラカバの2次林が形成されたところでha当たり、3,400本の密度でシラカバ81%、ナラ17%で平均樹高は3.9mであった。

 第1表 試験地の植生(年1回刈取条件下で)
年   次 1957 1958 1959 1960
生草量 (㎏/10a) 1,341 1,332 1,102 794





%
ススキ 57.3 56.1 57.0 64.5
ハギ 21.8 17.5 13.6 13.5
ワラビ 11.9 14.8 16.0 5.0
ササ 3.7 0.9 1.6 0.1
スゲ 1.9 2.7 4.4 0.9
フキ 1.8 - 0.8 4.4
ヨモギ - 0.8 0.7 1.8
シラカバ 0.3 0.8 0.1 -

 第2表 供試圃場の土壌の化学性※
層序 層染
(㎝)
PH  T-C 腐植
(%)
T-N
(%)
C/N 可給態
燐酸
mg/100g
置換性塩基mg/100g
H2O KoL (%) Cao Mgo K2O Na20
1 0~3 6.8 5.6 11.52 19.8 0.64 18.0 3.4 633 78 28 8
2 3~6 6.7 5.7 8.04 16.0 0.50 16.1 2.8 464 51 24 7
3 6~10 6.9 6.1 1.19 2.0 0.07 17.0 6.0 103 10 6 6
4 10~12 6.9 6.9 1.01 1.7 - - 10.1        
  ※ 東北大学山根助教授(1958)

 2-2試験処理
 試験地間は全面に立木を伐採し、野草を刈払い、火入れを行った。跡地に次の3処理区を設けた。
自然区:無処理(施肥、播種をしない)
NZ区:施肥、播種、ストッキングによる蹄耕処理
簡易区:トラクターによる砕土後、施肥、播種および覆土沈圧による処理

 第3表 試験処理の概要
区分 1961 1962 1963 1964
立木
伐採
搬出
61年
9月
野草
刈払
61年
9月
全面
火入
4月
27日
石灰
撒布
4月
30日
トラク
ター
デスク
4月
30日
施肥
播種
5月
2日
ストッ
キング
5月
2日~
6日
覆土
沈圧
5月
2日
放牧に
よる
野草
抑圧
植生に
応じた
放牧と
掃除刈
植生に
応じた
放牧
放牧と
掃除刈
追肥
4月
植生に
応じた
放牧
放牧と
掃除刈
追肥
自然区 - - - - - - 3回 - 3回 -
NZ区 - - 5回 6回 -
簡易区 - 5回 6回 -
  註 ①伐採-木立は地際より切倒し、抜根せず
     ②刈払-ロータリーカッターを使用
     ③砕土-キャタピラトラクター(30PS)にてデスクハローを3回掛
     ④播種-10a当り牧草播種量および種子の発芽率
   
          アカクロバー 5.7㎏ (93%)





計 22.7㎏
他にエンバク 20㎏
          ラジノクロバー 3.4㎏ (87%)
          クリムソンクロバー 2.3㎏ (98%)
          オーチャードグラス 4.5㎏ (76%)
          イタリアンライグラス 4.5㎏ (92%)
          メドウフエスク 2.3㎏ (96%)
     ⑤施肥-10a当り施肥量
          基肥(播種時)
          炭カル     59kg
          硫安      10㎏
          過燐酸石灰  50㎏
          熔燐      20㎏
          草地用化成  60㎏  2号(6:11:11)
          追肥(第1回放牧後)
          熔燐       20㎏
          過燐酸石灰  20kg
          硫酸加里   20㎏
      初年目の合計施肥は炭カル80㎏のほかNとして7.0、P2O5として24.6K20で15.6㎏各10a当りの成分量と
      なった。
      2年目には4月中旬に草地化成肥料2号を30㎏/11a追肥した。
      3年目には追肥をしなかった。
     ⑥播種方法-NZ区は種子、肥料を混合して、火入後に地表に散播し、簡易区はデスクハローによる砕土
      後に散播し、レバーハローにより覆土を行い、ローターの2回掛により沈圧した。
     ⑦ストッキング-NZ区は播種後、体重450㎏のホルスタイン牝牛を4日間にわたり、ha当り延80頭のストッキ
      ングを行って種子、肥料の踏付けを行った。この間1日1頭当り2㎏づつ配合飼料とビートパルプを給与
      し、乾草は自由な採食をさせた。
     ⑧放牧-NZ区と簡易区は草生に応じ放牧したが、放牧後は不食草を掃除刈した。

 2-3試験調査
  2-3-1放牧方法
  第1図 放牧時期と回数

  ×掃除刈

3.試験成績
 3-1 造成年における発芽の状況
 造成後24日目、39日目および第1回放牧後の103日目において、定点コドラート法により1m2当りの発芽密度を調査した。これらによると3期平均で自然区ではススキ70、ハギ53、ワラビ4本の密度に対し、NZ区ではエンバク8、イネ科牧草78、マメ科牧草36、ススキ31、ハギ84、ワラビ2本の密度を示したように、かなり牧草の発芽定着がみられた。しかし火入後、施肥、播種を行ったが、ストッキングと放牧を行わなかった場合には、牧草の定着がほぼ半減した。これに対し火入後トラクターにより簡易に砕土処理を行った場合は、エンバク14、イネ科牧草151、マメ科牧草91、ススキ15、ハギ51、ワラビ3本のように牧草の定着はきわめて良好に行われた。


処理区 自然区 NZ区 簡易区
年次刈取 62の1 63の1 64の1 62の1 62の2 63の1 63の2 64の1 64の2 62の1 62の2 63の1 63の2 64の1 64の2
生草量(㎏) 1,050 1,100 420 1,910 1,440 3,080 2,407 2,350 1,850 1,808 1,440 2,150 2,090 2,100 1,590


(%)
牧草 0.0 0.0 0.0 4.1 60.6 83.8 75.0 89.2 64.3 20.3 73.7 94.8 80.5 98.6 96.3
エンバク 0.0 0.0 0.0 4.0 1.0 0.0 0.0 0.0 0.0 20.9 2.4 0.0 0.0 0.0 0.0
ススキ 41.4 57.5 58.0 40.0 8.1 0.4 10.0 0.4 0.4 4.9 9.5 0.5 0.3 0.0 0.0
ハギ 30.4 14.5 3.8 21.6 10.2 3.5 11.0 0.0 0.0 14.2 4.1 0.5 4.3 0.0 0.0
ワラビ 18.3 20.5 11.9 2.2 2.5 0.0 3.0 0.0 2.3 20.9 4.5 4.2 14.9 1.4 3.3
その他 9.9 7.5 26.3 28.1 17.6 12.3 1.0 10.4 33.0 18.8 5.8 0.0 0.0 0.0 0.4
牧草率(%) 0.0 0.0 0.0 4.1 60.6 83.8 75.0 39.2 64.3 20.3 73.7 94.8 80.5 98.6 96.3
優良野草率(%) 71.8 72.0 61.8 61.6 18.3 3.9 21.0 0.4 0.4 19.1 13.6 1.0 4.6 0.0 0.0

概況
 (1)禁放区の植生
 3処理区に夫々禁放区を設け、3ヶ年にわたり自然区は毎年8月上旬、NZ区および簡易区は2回刈取を実施して、植生の変化を調査した。
 3ヶ年間の植生は、自然区では生草量26トン/10aで、ススキ52%、ハギ16%、ワラビ17%であり、3ヶ年間のDMは882㎏、DCPは37.8㎏、TDNは527㎏であった。これに対しNZ区では生草量130/10aで、初年目3.35トン、2年目5.5トン、3年目4.2トン植生についても牧草63%、エンバク1%、ススキ10%、ハギ8%、ワラビ2%で、DMは2.6トンで自然区の約3倍、DCPは3.7トンで約10倍、TDNでは1.8トンで約4倍のように造成効果は顕著なものがみられた。
 また簡易区では生草量11トンで、牧草76%、エンバク3.1%、ススキ3%、ハギ4%、ワラビ8%で3年目における1~2播刈時の牧草率が98.6%、96.3%のように導入効果が高いことを示した。

  3-3放牧過程における植生と放牧利用草量

 第4表 季節的牧草の生育量(休牧中の再生量)1963~1964年
区別 放牧回数 放 牧 期 間 放牧前後の
生草量(㎏/10a)
休牧日数 休牧期間中の
再生量(㎏/10a)
自然区 1 6月6日 6月~13日 694~171 35

30
694
2 7月21日 7月~29日 640~485 469
3 8月19日 9月~3日 920~388 435
      1,598
NZ区 1 8月14日~5月28日 774~270 17
13
12
25
774
2 6月15日~7月2日 1675~815 1,405
3 7月16日~7月25日 1450~755 635
4 8月7日~8月14日 1750~407 995
5 9月9日~9月16日 1275~498 868
      4,647
簡易区 1 5月14日~6月3日 1231~247 11
8
18
17
1,231
2 6月15日~7月2日 1612~434 1,365
3 7月11日~715日 1525~652 1,091
4 8月3日~8月14日 1400~460 748
5 9月1日~9月8日 1405~410 945
      5,385
自然区 1 6月16日~6月18日 520~273 31
43
520
2 7月20日~7月23日 556~163 283
3 9月5日~9月9日 640~228 477
      1,280
NZ区 1 4月28日~5月1日 320~106 12
13
18
19
20
320
2 5月14日~5月22日 1083~434 977
3 6月5日~6月15日 1343~356 909
4 7月3~7月12日 1350~315 994
5 8月1日~8月10日 1520~413 1,205
6 8月31日~9月9日 1178~378 765
      5,170
簡易区 1 4月28日~5月1日 364~161 12
13
17
19
20
364
2 5月14日~5月22日 999~579 838
3 6月5日~6月15日 1327~640 748
4 7月3日~7月12日 1825~365 1,185
5 8月1日~8月10日 1463~483 1,098
6 8月31日~9月9日 1190~350 707
      4,940


概要
 (1)放牧地における植生
 自然区においては初年目2回、2年目3回、3年目3回の放牧が行われ、年間における利用生草量は10a当り、初年目1.4トン、2年目1.2トン、3年目1.1トン、ススキ、ハギの占める優良野草率は84.5%、52.4%、49.5%のように逐年減少を示した。
 NZ区においては初年目2回、2年目5回、3年目6回の放牧が行われ、年間利草生草量は10a当り初年目1.8トン、2年目4.2トン、3年目4.8トンのように逐年増加し、牧草率16.2%、87.4%、98.8%の推移に対し、優良野草率は51.7%、4.3%、0.2%のように蹄耕法による造成効果が認められた。
 簡易区もNZ区と同じ放牧回数が行われ、年間利用生草量は、10a当り初年目2.5トン、2年目5.0トン、3年目4.6トンで、その牧草率も31.9%、94.3%、99.7%であり、初年目16.6%を氏得mた優良野草も2、3年目にはほとんど姿をとどめないほどに牧草地化された。

  3-4牧養力

 第5表 3ヶ年間の牧養力(ha当り)
区    分 自 然 区 N Z 区 簡 易 区
'62 '63 '64 '62 '63 '64 '62 '63 '64
生草量(屯/ha) 14.0 12.1 10.5 36.6
(100)
18.1 41.5 47.9 107.5
(294)
25.4 49.7 46.3 117.4
(321)
牧草率(%) 0 0 0 0 16.2 87.4
(22~30.1)
98.9 67.5 31.9 94.3
(14.9~48.8)
99.7 67.5
優良野草率(%) 84.5 52.4 49.5 62.1 51.7 4.3 0.2 18.7 16.6 1.0 0 5.9
延放牧頭数(500㎏補正) 260 221 206 687
(100)
287 582 773 1.646
(240)
359 656 794 1.809
(263)
乾草摂取(1日1頭当り㎏) 2.7 - - - 1.2 - - - 1.4 - - -

 第6表 消費草量と菜食部草の栄養価
区   分 自然区 NZ区 簡易区
63 64 63 64 63 64
延 Cow day(10a) 22.1 20.6 58.2 77.3 65.6 79.4
利用栄養量
(㎏/10a)
DM 208 278 524 600 525 514
DCP 28.5 21.5 125.3 131.6 120.4 122.5
TDN 146 179 417 475 414 427
1日1頭当り
推定採食量
生草(㎏) 54.6 51.0 71.3 62.0 758 58.3
DM(㎏) 9.4 13.5 9.0 7.7 8.0 6.5
DCP(㎏) 1.29 1.04 2.15 1.69 1.83 1.54
TDN(㎏) 6.61 8.69 7.16 6.14 6.31 5.38
菜食部位※
草の栄養価(%)
DM(㎏) 14.9 - 11.3 - 9.8 -
DCP(㎏) 2.1(1.1) - 2.7(23.8) - 2.2(22.4) -
TDN(㎏) 10.5(70.0) - 9.0(79.6) - 7.7(78.6) -
  ※ ( )内は無水物中%

概要
 (1)牧養力
 放牧善後のコドラートの植生の変化から利用草量を算出し、さらにha当りの延放牧Cow dayを示すと、自然区では初年目260頭、2年目221頭、3年目206頭、計687頭であり、NZ区では181頭、415頭、479頭の3ヶ年合計は1,075頭で自然区の2.4倍であった。また簡易区では254頭、497頭463頭の3ヶ年合計は1,174頭で自然区の2.6倍を示し、牧養力の改善が認められた。
 (2)1963~1964年における消費草量と菜食部草の栄養価
 放牧善後のコドラート調査から消費された草量を調査してみると、自然区では体重500㎏(One Cow day)の若牛は1日当り推定生草量54.6~51.0㎏、DM9.4~13.5㎏、DCP1.29~1.04㎏、TDN6.61~8.69㎏であり、これに対し、NZ区では生草量71~62㎏、DM9.0~7.7㎏、DCP2.15~1.69㎏、TDN7.16~6.14㎏であった。これに対し簡易区では生草量76~58㎏、DM8.0~6.5㎏、DCP1.83~1.54㎏、TDN6.31~5.38㎏のように算定された。
 以上のように3ヶ年における試験の経過から、草地造成時において、機械化作業の期待しにくい地形、障碍物の状態または長草型野草生地帯において、家畜蹄を利用した蹄耕法による簡易な草地造成方式の一つとして、慣行的な砕土処理による造成草地と比較検討した結果、北海道における山間、傾斜地などの条件に対し、一応適応しうるものとの確信が得られた。しかし、本方式による行程のうち火入後におけるストッキングの時期、ストッキングの量、第1回放牧のタイミングなど検討すべき問題点が生じたので、これらについては、さらに第2試験を実施し、基本的要因の解析を行い、その技術対策を明確にするため、試験を継続した。

Ⅱ蹄耕法の基本要因の解析(第2試験)
 1.試験目的
 本造成方式の造成過程における、2、3の問題点を究明するために本試験を行った。即ち、(1)火入れ後の経過とストッキングのタイミング(2)ストッキングの量(3)ストッキング後の第1回放牧のタイミング(4)施肥量などである。
 2.試験方法
 第1試験の隣接地で、同じような2次林と植生よりなる傾斜地である。

  2-1供試圃場
  2-1-1 2次林の状況
 ha当り平均1730本でその状況は第25表に示した。

 第1表 2次林の状況
樹種 樹種割合(%) 平均胸高直径(㎝) 平均樹高(m) 平均樹令
ナラ 45 4.6 4.2 11~12年
シラカバ 23 5.4 5.4 10
エンジエ 22 2.3 3.1 10~11年
タラノキ 7 3.0 3.4 10~11年
ヤナギ 2 2.5 - -
ホーノキ 1 3.0 - -


  2-1-2植生
 第1試験地と大体同一の長草型原野草である。その他、土壌も略や同一条件と思われた。
  2-2-2試験地の前処理
 1962年9月に供試地の2次林は地際より伐採、搬出した。その後野草については背負式動力下刈機で、全面の刈払いを行った。
 3.試験成績
 A火入れ経過日数とストッキングのタイミング(火)
  A-1試験目的
 1962年の第1試験は火入れ直後にストッキングを実施したため、供試牛には1日1頭当り2㎏ずつの配合飼料とビートパルプ及び乾草を自由に採食せしめた。しかし、大規模にストッキングを実施する場合には補助飼料の給与も、労力、経費の面で大きな問題となる。火入れ後に再生する野草を放牧牛に採食せしめつつストッキングを行うことの可能性を検討し、火入れ直後と、30日および60日後のかなり野草の再生した状態でのストッキングによる牧草導入の効果を明らかにしようとした。さらに放牧ごとに掃除刈を行って不食草の抑圧効果をも明らかにしようとした。

  A-2試験処理
 ①施肥 10a当り炭カル50、硫安10、過石20、燐酸25、草地化成30各㎏を種子と混合散布(N44、P2O512.3、K2O3.3各㎏/10a)
 ②種子 10a当り赤クローバー1.0、ラジノクローバー0.5、オーチャード0.75、イタリアンライグラス0.5各㎏および燕麦40㎏を用いた。
 ③放牧およびストッキング

 第2表 ストッキングと放牧(haあたり)
略名 内容 ストッキング
(月日)
ストッキング量 1日1頭あたりストッキング時の補助飼料
延頭数 体重500㎏補正 配合(㎏) ビートパルプ(乾)(㎏) 乾草(㎏)
(火)-1 火入直後 5/6~7 80 66.5 2 2 10
(火)-2 30日後 6/3~4 80 66.5 1 1 5
(火)-3 60日後 7/5~6 120 99.8 0 0 0

 ④掃除刈 3区とも1/2は放牧ごとに、不食野菜を刈払った。
  A-3 試験成績
 ①ストキング時の植生

 火入れ後の日数と野草の再生状況
1963年 1964年
放牧期間、回数 延頭数 放牧期間、回数 延頭数
6/13~9/17 4回 310 5/2~9/13 6回 1,040
7/22~9/19 3回 220 5/4~9/17 6回 840
8/7~9/5 2回 140 5/5~9/20 6回 540

 ②放牧結果

 第3表 2ヶ年間の改良効果
区      分 火-1 火-2 火-3
1963 1964 1963 1964 1963 1964
放牧回数 4 6 10 3 6 9 2 6 8
生草収量(t/10a) 4.11 6.34 10.45 3.00 5.99 8.99 2.63 5.28 7.91
放牧最終時の牧草率(%) 55.0 95.9 - 65.0 95.2 - 16.3 91.0 -
合計栄養収量(㎏/10a) 固形量 365 628 993 326 402 726 276 448 724
DCP 57.0 138.4 195.4 47.6 100.2 147.8 51.2 79.7 130.9
TDN 260 511 771 228 362 590 212 358 570
延放牧頭数(10a当り) 31.0
(26.8)
104.0
(36.6)
135.0 22.0
(16.9)
84.0
(65.7)
106.0
(82.6)
14.0
(12.0)
58.0
(46.3)
72.0
(58.3)
採食生草量(t10a) 24.2 4.09 6.51 18.6 3.50 5.36 2.30 2.79 50.9
1日1頭当り採食固形量(㎏) - 8.20 - - 6.22 - - 9.68 -
  註1.放牧最終時の牧草率の64年は各区とも6回の平均である。
    2.延放牧頭数の下の( )内は体重500㎏に補正した頭数である。

 ③掃除刈の効果

 第4表 無刈払と刈払処理の植生※(1963)
区    分 (火)-1 火入れ直後
     ストッキング
(火)-2 30日後に
     ストッキング
(火)-3 60日後に
     ストッキング
無刈払 刈払 無刈払 刈払 無刈払 刈払
全被度(%) 66.3 80.6 50.7 55.5 59.3 55.3
被度中
牧草の占める割合(%)
79.7 82.4 27.0 71.8 8.7 74.5
全頻度※2(回数) 235 327 144 250 149 242
頻度中
牧草の占める割合(%)
88.9 81.7 39.5 78.0 23.5 85.1
  ※1)ライン・イターセプション法による。(1963年10月17日調査)
  ※2)5m中にふれる回数(出現個体数)

概要
 (1)長草型野草地の場合、火入れ後30日頃には、再生野草は400㎏/10a近くなり、この時点で施肥、播種及びストッキングを行った場合、この再生野草による播種牧草の活着抑制はほとんどみられなかった。しかし60日後、再生野草が150㎏/10aにも達した時点では同時に再生野草の種類が多くなり灌木なども順次萌芽し、初年目における牧草の定着は著しく阻害された。
 しかしながら翌年の早期における牧草と適度に放牧回数を増やすことによって2年目には高い牧草率に向上させ得た。
 以上の点から長草型野草地では火入れ後35~45日頃には0.5~1.0屯/10aの野草が再生しこれを有効に利用しながらストッキングを行うことが、補助飼料の節約、初年目の牧草の定着、野望の採食べ嗜好性、ストッキングによる野草抑圧の効果など全般的にみて望ましい。なお、造成予定地は前年秋に全刈又は条刈りして4月下旬~5月上旬(札幌附近)の乾燥期に火入れすることが前植性の焼払い効果を高め、初年目の利用回数を多くすることからも望ましい。

 Bストッキングの量と牧草導入効果
  B-1試験目的
 1962年の試験ではストッキングの量を80頭/haの標準として行い、明らかにストッキング牧草の定着に有効であることが認められた。今回はストッキングの量を0、40、80、120頭/haとして同一の造成管理を行って効果を明らかにしようとした。
  B-2試験処理
 ①施肥は、全区とも10a当り炭カル50、硫安10、過石20、熔燐25草地化成2号30各㎏を種子と混合撒播
 ②種子は、10a当り赤クロバー1.0、ラジノクローバ0.5、オーチャード0.75、イタリヤンライグラス0.5と燕麦40㎏を使用した。
 ③放牧の状況

 第5表 ストッキングと放牧(haあたり)
略名 内容 ストッキング
月日
ストッキング量※ 1日1頭あたりストッキング時の補助飼料
延頭数 体重500g
補正
ビートパルプ(乾)
配合(㎏)
乾草 (㎏)
(S)-1 Stocking 40頭 5/24 40 34.8 各2 6
(S)-2 80頭 5/25~26 80 69.6 各2 6
(S)-3 120頭 5/27~29 120 104.4 各2 6
    1963年 1963年
    放牧期間、回数 延頭数 放牧期間、回数 延頭数
(S)-1 Stocking 40頭 5/30~8/24 3回 280 5/6~8/25 5回 680
(S)-2 80頭 7/3~8/26 3回 320 5/8~8/27 5回 650
(S)-3 120頭 7/7~8/31 3回 320 5/11~8/30 5回 690
  ※ 各区に同一施肥、播種を行ったがストッキング0の区を作った。その後は同一の放牧及び刈払い処理した。

 ④掃除刈 放牧後3区とも全面刈払いを行った。
 ⑤放牧結果

 第6表 2ヶ年間の改良効果
区      分 S-1(40頭/10ha) S-2(80頭/10ha) S-3(120頭/10ha)
1963 1964 1963 1964 1963 1964
放牧回数 3 5 8 3 5 8 3 5 8
生草収量(t/10a) 2.84 8.23 11.07 3.30 5.78 9.08 3.75 6.43 10.18
放牧最終時の牧草率(%) 59.7 94.1 - 79.8 93.7 - 81.4 90.5 -
合計栄養収量(㎏/10a) DM 174 618 792 282 469 751 252 317 569
DCP 32.3 117.1 149.4 55.9 154.8 210.7 52.5 69.6 122.1
TDN 133 478 611 226 495 721 198 272 470
延放牧頭数(10a当り) 28.0
(21.8)
68.0
(57.6)
96.0
(79.4)
32.0
(24.7)
65.0
(53.2)
97.0
(77.9)
32.0
(24.7)
69.0
(56.5)
101.0
(81.2)
採食生草量(t10a) 1.77 5.51 7.28 2.28 4.03 6.31 25.8 3.20 5.78
1日1頭当り採食固形量(㎏) - 10.73 - - 8.82 - - 5.61 -
  註 1.放牧最終時の牧草率は64年は各区とも5回の平均である。
     2.延放牧頭数の下の( )内は体重500㎏に補正した頭数である。

概要
 (1)Hoof-Coultiuation時におけるストッキングの効果は明らかに示され、ストッキングを行わなかった場合には、おこなった場合に比べて被度、頻度中に占める牧草の割合は著しく劣った。また、或る程度までストッキング量を増加させることによって、牧草率を向上させうることが示されたが、haあたり、80頭程度のストッキングをおこなえば、120頭の場合に近い牧草率が得られることが認められ、2年目には各区とも非常に高い牧草率になった。
 以上の点からストッキング量は家畜の頭数、火入れ後の地表の状況、家畜の種類などによって異なるが、一般にホルスタイン若牛(400~500㎏)であればhaあたり80頭前後、マットなどの状況によっては100~120頭程度のストッキング量が望ましい。
 (2)ストッキングに用いる家畜としては緬羊なども考えられ、接地圧は人間やトラクターの場合より大きく、牛に近い値が示され相当なストッキング効果が期待されよう。

 Cストッキング後の放牧のタイミングおよび除草剤利用と牧草導入効果
  C-1試験目的
 1962年の第1試験において造成時のストッキング後における放牧のタイミング(放牧量とその時期)は再生する野草とにおいて重要な意義を有することが推察された。ストッキング後土壌の条件が良好であれば、2~4日目で、マメ科草の発芽がみられ、7~10日目でイネ科草の発芽が示されるが、それにともなって、在来野草も急速な再生を行う。もし、第1回の放牧が遅ければ、野草が急速に生育して牧草は生育が抑圧され、さらに野草自体の嗜好性と栄養価を減退させる。また、あまり放牧が早期であれば、発芽生育中に蹄傷などによる活着障害が考えられる。これらの点から、ストッキング後の第1回放牧を20日目に行い、延5回の放牧を行って野草の抑圧を行う区と、40日目に第1回の放牧を行って延4回の放牧処理および60日目に第1回の放牧を行い、延3回の放牧をする3処理を行った。
  C-2試験処理
①施肥、3区とも、10a当り炭カル50、硫安10、過石20、熔燐25、草地化成2号30㎏を種子とともに撒播した。
②種子は、10a当り赤クロバー10、ラジノクロバー0.5、オーチャード0.75、イタリヤンライグラス0.5各㎏と燕麦40㎏/10aとした。
③ストッキングと放牧

 第7表 ストッキングと放牧(haあたり)
略名 内容 ストッキング
月日
ストッキング量 1日1頭あたり
ストッキング時の補助飼料
1963年 1964年
延頭数 体重500㎏
補正
配合
(㎏)
ビートパルプ
(乾)(㎏)
乾草
(㎏)
放牧期間
回数
延頭数 放牧期間
回数
延頭数
(T)-1 ストッキング後
20日目
第1回放牧
5/8~9 80 66.4 2※
(2)
2
(2)
10
(4)
5/30~9/16
 5回
440 5/2~9/15
 6回
880
(T)-2 40日目 5/10~11 80 66.4 2 2 10 6/20~9/18
 4回
300 5/4~9/19
 6回
800
(T)-3 60日目 5/12~13 80 66.4 2 2 10 7/16~9/19
 3回
250 5/5~9/21
 6回
580
  ※( )内は第1日放牧時の補助飼料

  C-3 試験成績

 第1図 ストッキング後日数と野草の再生

①放牧結果

 第8表 2ヶ年間の改良効果
区      分 T-1 T-2 T-3
1963 1964 1963 1964 1963 1964
放牧回数 5 6 11 4 6 10 3 6 9
生草収量(t/10a) 3.56 6.53 10.09 3.39 5.15 8.54 4.71 6.61 11.32
放牧最終時の牧草率(%) 72.6 96.1 - 59.2 92.7 - 43.0 96.2 -
合計栄養収量(㎏/10a) DM 213 498 711 318 429 747 448 526 974
DCP 46.4 121.6 168.0 43.1 82.9 126.0 80.4 114.4 194.8
TDN 18.9 411 600 252 348 600 340 419 759
延放牧頭数(10a当り) 4.40
(32.9)
88.0
(66.1)
132.0
(99.0)
32.0
(23.7)
80.0
(59.9)
112.0
(83.6)
28.0
(21.5)
58.0
(44.3)
86.0
(65.8)
採食生草量(t10a) 2.52 3.86 6.38 1.81 3.17 4.98 2.88 3.64 6.52
1日1頭当り採食固形量(㎏) - 7.50 - - 7.16 - - 12.87 -
  註 1.放牧採取宇治の牧草率の64年は各区とも6回の平均である。
     2.延放牧頭数の下の( )内は体重500キロに補正した頭数である。

②除草剤の効果

 第9表 撒布後108日目、越冬時の状況(1963)※
区分 対照 (A)
フライトB液剤
(B)
フライトB液剤
(C)
ブラスコン液剤
マメ科牧草 2.9 0.3 2.9 1.6
イネ科牧草 1.2 1.8 1.0 1.8
ササ 1.2 0.9 0.6 0.7
フキ 1.0 1.0 0.7 0.5
ワラビ 1.6 1.5 1.2 1.3
ススキ 1.6 0.6 0.5 0.5
ヨモギ 0.3 + 0.2 0.3
灌木類 1.6 0.4 1.0 0.8
  ※ 被度(観察値)による1963年10月調査
     (T)-1、(T)-2、(T)-3の3区の平均値で示した。
  注)被度 4とは100%、3とは50%、2は25%、1は12.5%で+とは2%以内を示す。
    草種毎の被覆割合で合計すると4以上になる場合もある。

 第10表 越冬後の状況(2年目第1回放牧前)(1964)※
区分 フライトB液剤 フライトB液剤 ブラスコン液剤
草丈(㎝) 被度 植生(%) 草丈(㎝) 被度 植生(%) 草丈(㎝) 被度 植生(%)
イネ科牧草 12 2.4 77 12 1.3 15 11 1.8 26
マメ科牧草 8 1.1 8 9 3.5 74 9 3.1 65
フキ 11 0.6 4 11 0.3 2 10 0.3 3
ササ 15 1.1 8 15 0.6 3 16 0.9 5
その他 - - 3 - - 5 - - 1
草量(㎏-10a) 125 225 218
  ※ 被度、植生は観察値 1964年5月1日~5月5日に調査
     (T)-1、(T)-2、(T)-3の3区の平均値

概要
(1)ストッキングにより採食された野草はその後、再度、再生し、ストッキング後20日目には150㎏/10a、40日目には1,200㎏、60日目には2,800㎏に達し、第1回目の放牧が遅れるにつれ牧草の活着は抑圧され牧草率が低下した。しかし、2年目には各区とも高く示され、その差はみられなくなった。ストッキング後20日目には播種牧草はまだ幼苗期であるが、以上の結果から放牧により受ける蹄傷よりも野草の繁茂による生育抑制の方が大きいと考えられる。したがって野草の再生量および採食嗜好性、放牧後の残食野草の処理および野草の抑圧効果などとも考え合わせれば20~30日目に第1回の放牧をおこなうことが扱くか適である。
(2)除草剤による野草抑圧効果は、24D338%+ATA43%(フタイトB液剤)、24D360%+245T30%(ブラスコン液剤)については撒布当初著しい効果がみられたが、牧草に対する薬害も極めて大きかった。とくにフタイトB液剤の場合は翌年も収量が少なく、マメ科草も少ない。ブラスコン液剤の場合、牧草類は比較的早く薬害から立ち直り、野草、灌木に対しては最も効果が大きい。
 24D312.5%ATA14%(フライトB液剤)については、遅効性であるが薬害や殺草効果、撒き易さなどの点から最も良い結果が出ている。ただし、野草や灌木が伸びすぎた場合に撒布しても効果はみられない。

 D施肥と牧草導入の効果
  D-1試験目的
 1962年の試験においては、かなりの施肥を使用した。これらの点から、肥料の量と形態などについて、その効果を明らかにしようとした。
  D-2試験処理
 ①種子はA-Cと同様に赤クロバー1.0、ラジノクロバー0.5、オーチャード0.75、イタリヤンライグラス0.5各㎏/10aに燕麦40㎏/10aを用いた。
 ②肥料処理

 第11表 肥料処理(1963)
Plot 区分 施肥量(㎏/10a) 施肥量(要素量㎏/10a)
炭カル N P2O5 K2O mgO
A 無肥 - 0 0 0 0 0
B 化成肥料 草地化成   60㎏
 (6:11:11) 
0 3.6 6.6 6.6 0
C 高度化成肥料 高度化成   33㎏
 (16:19.5:19.7:3.6)
0 5.3 6.4 6.5 1.2
D 慣行 硫安 過石 熔燐 草地化成
 10   20   25     30
50 3.8 12.3 3.3 8
E 倍量 硫安 過石 熔燐 草地化成
 20   40   50     60
100 7.6 24.6 6.6 1.6
  ※ 1964年に同量の追肥を行った。

 ③ストッキングと放牧

 第12表 放牧とストッキング(haあたり)
略名 ストッキング
 月  日
ストッキング量※ 1日1頭あたり
ストッキング時の補助飼料
延頭数 体重
500㎏補正
配合(㎏) ビートパルプ
(乾)  (㎏)
乾草
(㎏)
(肥)-1 5/31~6/1 80 69 2 2 6
(肥)-2 6/2~3 80 69 2 2 6
(肥)-3 6/4~5 80 69 2 2 6

略名 1963年 1964年
放牧期間、回数 延頭数 放牧期間、回数 延頭数
(肥)-1 7/11~9/14 3回 340 5/6~9/23 6回 680
(肥)-2 7/15~8/20 2回 180 5/8~9/24 6回 650
(肥)-3 7/18~8/18 2回 180 5/11~9/29 6回 690
  ※ 各区内を5分し、それぞれの肥料処理をしたのち、全面ストッキングを行った。

 ④掃除刈:全面放牧後に掃除刈を行った。
  D-3試験成績

 第13表 年間収量(1964)
区       分 (A)
対照
(B)
草地化成2号
(C)
高度化成
(D)
慣行
(E)
倍量
刈取回数 (回) 3 4 4 4 4
植生(%)

イネ科牧草 45.9 62.9 56.5 68.8 61.5
マメ科牧草 14.8 27.6 31.1 25.6 33.2
牧草計 60.7 90.5 87.6 94.4 94.7
生草収量(t/10a) 2.4 6.3 8.0 10.0 8.7
成分(%)

D、M 19.9 17.6 15.7 15.5 16.6
DM中DCP 11.3 13.8 14.6 15.3 14.1
DM中TDN 68.7 69.7 71.4 70.4 71.2
栄養収量(㎏/10a)

D、M 46.8 111.7 125.0 154.7 144.8
DCP 52.9 154.1 182.5 236.7 204.2
TDN 321.5 778.5 892.5 1089.1 1030.9
  註 収量は合計、割合は平均値

概要
 (1)初年目は、対照区を除いて、ほとんど牧草被度には差がみられなかった。一般に、マメ科牧草の繁茂がイネ科牧草に優先していた。
 (2)2年目には牧草率は対照区でも60%、その他の区では90~95%に向上し、とくにイネ科牧草の割合が初年目に比べ著しく増加した。
 (3)土壌によるが、一応10a当たり、基肥として、N4~5㎏、P2O56~12㎏、K2O3~6㎏位の施用が望ましい。
 (4)将来大規模な草地化などで利用され易い形の高度化成単用によっても、イネ科牧草が若干低いが充分な改良効果が示された。

Ⅲ家畜およびトラクターの接地圧
 1.試験目的
 Hoof Cultivation 法において、かちくの蹄による肥料、種子の踏み込みは、牧草、活着、着生に大きな要因をもつものである。今回、これらの点から、乳牛、緬羊、豚、人およびトラクターについて、一定面積(1cm2)に対する踏圧について調査を行った。

 2.試験方法
 A 緬羊は体重17~95㎏までの18頭を用い、蹄の裏にインクで手型取る方法で実施し、その後用紙を方眼紙に複写して面積を測定した。
 B 乳牛および人、地上部の一定硬度(山中式硬度0.26㎏/cm2)の箇所を清掃し、牛の蹄型をとり、それをビニールで複製後、方眼紙に複写し、実蹄面積を出した。
 C トラクターについては各トラクターのカタログより引用した。

 3.試験成績

 第14表 家畜別、トラクター別の平均接地圧
家畜、トラクター 体重と区分
(㎏)
接地面積
(㎝2)
接地圧(㎏/㎝2) 平均接地圧
(運動) (㎏/㎝2)
停立時 運動時

(ホルスタイン種)
270~380 250~350 1.15 2.30 2.8
570~580 350~420 1.54 3.08
600~660 400~490 1.46 2.92
緬羊
(コリテール種)
20~30 40~50 0.56 1.12 1.8
40~50 50~55 0.87 1.74
60~70 57~77 1.01 2.02
80以上 70~83 1.16 2.32

(ヨークシャー種)
9~10 16~17 0.56 1.12 2.3
50~60 45~60 1.09 2.18
100~170 56~94 1.82 3.64
50~70 240~290 0.22 0.44 0.4
トラクター 一般
(クローナータイプ)
5.0屯 13,000 0.38 - 0.45
7.5〃 16,680 0.45 -
14.0〃 25,756 0.54 -
湿地用
(クローラータイプ)
ホイールタイプ※
5.9〃 39,000 0.15 - 0.2
10.6〃 41,280 0.26 -
-〃 - 1.52.0 - 1.5~2.0
  ※ 農業機械ハンドブックより

 概要
 (1)かちくの接地圧について、簡単な調査を行った結果、ホイールタイプ、トラクター並み又はそれ以上の大きな接地圧が示された。
 (2)一般的にかちくの接地圧は体重の増加にともなって大きくなる傾向がみられた。

Ⅳ摘要
 簡易な草地造成方式の一つとして、傾斜(10度)した長草型野草地の2次林地において蹄耕法の適応性および蹄耕時における基本要因の解析を行ったが、大要次のような結果を得た。
 (1)適応性試験(第1表)においては全区野草を刈払2次林は抜根することなく地際から伐採して火入れを行った。そこに火入れのみの自然区、蹄耕法を行ったNZ区、火入れ後トラクターデスクハローの砕土処理によって播種床をつくった簡易区の3処理区を設けた。
 播種後は3処理区とも2回の放牧により野草の抑圧を行い、放牧後に掃除刈を実施した。
 (2)3ヶ年間の放牧結果では、自然区の生草量は、初年目ha当り14.0トン、2年目、12.1トン、3年目、10.5トンで漸減の傾向にあり、また、ススキ、ハギの優良野草率は3ヶ年平均で62%であるが、これも初年目84.5%が3年目49.5%に減少している。延放牧Cowday(体重500㎏換算)は初年目260頭、2年目221頭、3年目206頭(各ha当り)で、自然草地における牧養性はあまり高くない。
 これに対しNZ区は生草量が初年目18.1トン、2年目41.5トン、3年目47.9トンで放牧草率は初年目16.2%のものが2年目97.4%、3年目98.9%となり、3ヶ年平均で67.5%の牧草導入効果が期待できた。反面優良野草率は初年目51.7%のものが、3年目0.2%のごとく激減し3ヶ年平均では18.7%を示した。延放牧Cowdayでは初年目(2回放牧)287頭が2年目(5回放牧)528頭、3年目(6回放牧)773頭に向上し、蹄耕方式による造成効果が認められた。
 簡易区では、生草量が初年目25.4トン、2年目49.7とん、3年目46.3トンとなり、その牧草率も31.9%94.3%、99.7%と年次ごとに向上し、また延放牧Cowdayについても、359頭、656頭、794頭、のようにNZ区若干上回る結果を示した。
 (3)以上により第1次試験においては蹄耕法による草地造成の適応性が認められたが、この間において①火入れ後の経過日数による再生野草の利用とストッキングのタイミング②ストッキングの頭数③ストッキング後の経過日数と第1回放牧のタイミング④施肥量などについての問題点が残され、これらについての試験を継続実施した。
 (4)火入れ後直ちに施肥、播種をしてストッキングを行うことについての工程は初年目の効果いついては、火入れ直後行うのがもっとも好結果が得られる。すなわち火入れ後ストッキングの時期を遅らせるほど越冬前における牧草率が低い。しかし一般には火入れ後34~45日頃の再生野草を利用ししながらのストッキングを行うのが補助飼料の節約、初年目の牧草定着野草の採食嗜好性、野草の抑圧などの効果を高くすることができる。
 また、火入れ後60日を経過したものは、牧草の萌芽を妨げ、初年目の牧草導入効果を低くするが、その後の放牧管理が当を得れば、2年目における牧草率向上はかなり期待しうることを認めた。
 (5)ストッキングの量についてはha当り40頭、80頭、120頭について検討したが、前項同様、120頭区が初年目の効果がもっとも高いが、2年目の放牧管理に当を得れば、各区とも牧草率の向上、生草収量の改善が期待しうるものである。
 一般にはホルスタイン若牛(400~500㎏)であればha当り80頭前後が適頭数と考えられ、地表のマットなどの状態によっては頭数を増加することが望まれる。
 (6)ストッキング後再生野草は10a当り20日目150㎏、10日目1,200㎏、60日目2、800㎏のように生育を早める。従って第1回の放牧を何時行うかは、放牧地の良否の消長に影響を持つが、遅くなるほど導入牧草の生育を妨げるので、ストッキング後20~30日目くらい第1回の放牧を行うタイミングとするのが有利である。
 (7)造成初年目における基肥として、各種の肥料型態の異なるものを使用したが、無肥の対照区以外は、初年目の越冬時にマメか牧草の優占が認められたが、2年目には25~33%のマメ科率となり、10a当り6~10トンの生草収量が示された。従って基肥として一応、N4~5㎏、P2O56~12㎏、K2O3~6㎏くらいの施用が適当と考えられる。
 (8)造成工程の一要素を占める沈圧は、この場合かちくの蹄によるストッキングまたは放牧によることとなるが、その接地圧を調べてみると、家畜の蹄は、ホイールトラクター並みか、それ以上の能力を持つことが認められた。
 したがって北海道では、農家の経営にとり入れられている家畜、例えば乳用牝とく、乾涸牛、肉牛、めん羊、馬などを利用することにより、この方式の活用部面がかなり広いものと考えられる。

 参考表 NZ1(1962)、NZ2(1963)の所要経費の算出
区         分 NZ
金額
(円)
単価
(円)
NZ
金額
(円)
地表処理 刈    払 8,000円     8,000  
火 防 線 4,800 14,400 800 4,800 14,400
火 入 れ
後 始 末 1,600        
改良資材 炭 カ ル 800kg 2,400 3 500kg 1,500
硫   安 100 1,910 19.1 100 1,910
過   石 300 4,350 14.5 200 2,900
熔   燐 200 2,940 14.7 250 3,680
草地化成2号 600 12,480 20.8 300 6,240
小   計   24,080     16,230
牧草種子 オーチャード 4.5㎏ 1,440 320 7.5㎏ 2,400
イタリアンライグラス 4.5 540 120 5.0 600
メドフェスキュー 2.3 460 200 - -
アカクロバー 5.7 2,366 415 10.0 4,150
ラジノクロバー 3.4 1,836 540 5.0 2,700
クリムソンクロバー 2.3 610 265 - -
エ ン 麦 20.0 - - 40.0 -
小   計   7,252     9,850
施肥番種その他     4,000 800 4,000 4,000
牧  柵 アングル材 100本 18,000 180 18,000 18,000
バ ラ 線 1,200m 9,120 68 1,200m 9,120
  合  計   76,852     71,600
  1.道庁資料による単価を用いた(NZ1、NZ2とも同じ
  2.牧柵接地経費は含まず。)

Ⅴ指導要綱
 北海道地域における、草地開発計画によれば、今後6~7年の短期間において、約30万haの草地造成が予定されている。これらの対象地は規模の大小を問わず土地所有の子牛を問わず機械開コンが中心であることは論をまたないが、自然環境条件によっては、簡易な手段による施工方式も、かなり行われることが予測される。
 本研究の主題である蹄耕法は、簡易施工方式の一つではあるが、その取扱いについては、ある程度の集約性をもつものである。すなわちかなりの数量に及ぶ牧柵、家畜、土壌改良、資材、肥料、牧草種子を必要とするので、その実施に先立ち、造成対象地の充分なる調査資料を得ると共に、適切な計画立案が必要である。
 従って、草地造成施工法として蹄耕法を行う場合には、次の諸点について配慮されることが望ましい。
 1.草地の造成計画
 蹄耕法を行う対象地は、主に機械開コンを困難にするような地帯、即ち集約的な工法を不適とする山間傾斜地などに行われることが多い。そのためにはその地帯の土壌、植生、樹林、障害物、用水、土地保全、土地利用などを十分把握するとともにその工法の適応性、草地の経済性などについても、充分検討を加え、周到なる草地造成計画のもとに実施される必要がある。

 2.草地の土壌及び気象条件
 造成予定地の植生歴、土壌及び気象条件などから予め適応する草種施肥の経済性など予備調査を行うことが望まれる。

 3.造成後の利用管理
 造成後における適切な放牧管理、追肥管理など放牧地利用等家畜の精算計画に見合う管理方式の確立が必要である。

 4.障害物
 放牧を主とする草地においては地形が不整であったり立木、砕石その他の障害物はかなり多いものと考えなければならない。集約草地の造成の場合と異なって全面的な抜根や除去作業を行う必要はないが、障害となる立木の伐採と搬出、障害草の刈払いなどは行うが家畜の放牧に支障とならない根株、地表に裸出する礫石などは除去を行わず、放牧地としての目的を満足させる程度に環境を整理する。

 5.樹林
 草地の全体計画から予め水源涵養林、防風林、退避林、土壌保安林、柵林などを計画的に残し、人工植栽林についても考慮する必要がある。

 6.灌木その他不要野草の処理
放牧予定地内の雑灌木又はハギ、ササなど放牧家畜に供しうるものは重放牧によって処理することが望まれる。即ち前年に重放牧を行って、種子床のクリーニングを計ったり不要野草の攪乱を行うのも効果的であるが、放牧の行われていない密生したササ地などは、刈払いをして火入れするのが処理として望ましい。一般に刈払いは造成の前年秋にプシュカッターの如き簡易な機械力による全面又は部分刈払をしておくと翌年の火入れは危険なく容易に処理できる。火入れが困難な場合には家畜の重放牧によって行うことも安全な対策の一つである。

 7.火入れ
 北海道では火入れを4月下旬~5月上中旬にかけて行うのがもっとも効果的である。火入れに際しては、防火要因をととのえ不足の危険を招かぬよう充分な準備が必要である。火入れは風下より点じ風上に向かって焼払いをする。この場合、地表の落葉堆まで十分焼きつくせるような火力が必要で、地表が裸出する程度になることが好ましい。

 8.種子床の造成
 火入れ又は重放牧によってクリーニングされた対象地は即時種子床として活用できる。この場合予定される工程として家畜のストッキングが行われるので牧柵の取り付けを行うのがよい。

 9.基肥
 土壌条件によっても考慮すべきであるが、10a当り炭カル30~50㎏(普通地)、Nとして4~5㎏、P2O56~12㎏、K2O3~6㎏、Mgo1~8㎏の使用が望まれる肥料の形態は傾斜地などの点を考慮して粒状化成肥料が好ましいが、単肥施用の場合でも1/3~1/2は粒状の化成肥料を用いるのが有利である。

 10.牧草種子
 土壌や気象条件によっても異なるがイネ科牧草としてオーチャードグラス、チモシー、イタリヤンライグラス、メドウフェスキュー、ベレニアルライグラス、ケンタッキーブリューグラスが用いられまめ科牧草としてアカクロバー、シロクロバー、ラジノクロバー、時にはアルサイククロバーなどの利用がすすめられる。播種量は10a当り2.5~3.5㎏程度の混播が必要である。

 11.播種及びストッキングの時期
 4月下旬に火入れを行ったものは、30日後になるとススキ、ハギなおdの再生萌芽がかなり多く、10a当り500㎏位期待される。この時期に施肥、播種とストッキングを行うのが補助飼料の補給も殆ど必要なく、また野草の抑圧にも効果的である。しかし火入れ後60日後も経過すれば再生野草が伸びすぎて粗剛になりストッキングを行っても採食も少なく牧草の活着も不良になる。

 12.ストッキングの割合
 ストッキングはha当り、500キロの体重の牛では70頭前後が一応の標準と考えられるが、条件によっては増減してもよい。
 ストッキングをまったく行わないで播種した場合には牧草の発芽、定着は著しく悪い。また、土壌が乾燥したり火入れが不良のときには多目にストッキング(90~100頭)することが必要である。

 13.ストッキング時の土壌水分
 播種前20日間に10~30㎜の降雨があり、土壌水分が0~10㎝で21~35%であれば牧草の定着には良好であり、ストッキング後も適度な土壌水分のため良好な発芽が期待される。

 14.第1回目の放牧のタイミング
 ストッキング後代1回目の放牧時期は重要なものである。ストッキング後20日目には10a当り生草量150㎏、30日目で700㎏、40日目で1250㎏位の再生野草が生育する。再生野草の抑圧と効果的な採食及び牧草の定着から見ればストッキング後20~35日目頃に第1回の放牧を行うのが有利である。

 15.その後における放牧時期
 4月下旬に火入れを行うとストッキングは5月下旬、第1回目の放牧は6月下旬、第2回目は7月下旬、第3回目は9月上旬に行って造成初年目は越冬させる。第1回放牧前の草量はha当り4~7トン、第2回目7~10トン、第3回目5~7トンの草量が期待される。この場合ha当りストッキングには70頭、第1回放牧時50頭、第2回70頭、第3回60頭程度の放牧を行って野草の抑圧をはかる。

 16.放牧と掃除刈
 放牧後はできるかぎり掃除刈を行うのが良い。とくに嗜好に適さない、フキ、ススキの茎、タラノ木、ワラビ、エンジュなどの萌芽を刈払っておくのが効果的である。

 17.初年目の牧草活着
 標準の蹄耕時においては第1回放牧時の牧草率は1~2%、第2回放牧時では35~40%、第3回放牧時には60~85%の牧草の定着が期待される。

 18.家畜の蹄の接地圧
 ストッキングの効果が顕著に認められたが、ストッキング時における蹄の接地圧を家畜別にみると牛では平均2.8㎏/cm2、めん羊1.8㎏/cm2、豚2.3㎏/cm2、ホイールトラクター(自重7.5トン)では0.45㎏/cm2、ホイールトラクターでは約1.7㎏/m2である。したがって蹄耕時には牛、めん羊の他、肉牛、馬などの活用も有効と考えられる。

 19.2年目以降の放牧管理
 蹄耕法を行った造成草地は2年目になると、早春から萌芽をよく観察しなるべく早期放牧を行うのが好ましい。牧草率も2年目は80~95%程度に改善されるので極力放牧回数を多くして良好な状態に管理することが必要である。