【普及参考事項】
秋播ライ麦生草多収栽培に関する試験
道立天北農業試験場

A 秋番ライムギの播種期と生育の推移に関する試験(昭和36年)

目的 当地方において播種期を異にした場合起生期後の生育の推移と各期刈取期における生草重について調査を行う。

1.試験方法

 耕種梗概
前作 播種期
(月日)
播種
様式
播種量
施肥量 ㎏/10a 摘           要
硫安 過石 硫加
えん麦 8.20
8.25
9.5
9.20
条播
50㎝×
 10㎝
7.0 14.5 35.0 5.0 えん麦の再生したものを夏期緑肥として鋤き込む
  刈取期   5月15日、5月25日、6月5日
  供試品種  パトクーザ、宗谷在来
  冬枯予防  秋季根雪前にセレサン10a当3㎏を散布


2.試験結果

 生育と生草重調査
品種名 播種期
(月日)
刈取期別
(月日)
幼穂の長さ
(㎝)
刈取時の 10a当り
生草重
(㎏)
同比
(%)
適期播種に
対する遅播
の収量比(%)
草丈(㎝) 葉数(本)
  9.5 5.15 2.1 41.6 6.3 1,060 100 100
5.25 8.5 63.7 8.0 2,033 192 100
ペトクーザ 9.5 6.5 出穂始 102.2 8.0 2,349 222 100
9.20 5.15 1.1 30.9 5.7 318 100 30
5.25 5.8 51.7 7.0 817 257 35
6.5 穂朶期 83.6 7.0 1,506 473 64


B 秋番ライムギ生草多収栽培法に関する試験

目的 早播多汁飼料を補うため之が対策として生育度の早いライムギの多収栽培法について試験する

1.試験方法
 供試験品種  「宗谷在来」
 耕種概要
 前作物 えん麦
 播種期 9月5日


 昭和37年度
播種様式 播種量(㎏) 栽植密度 10a当施肥量(㎏) 追  肥
畦巾(㎝) 播巾(㎝) 堆肥 硫安 過石 硫加
普通播 4.1 50 10 1,125.0 26.3 22.5 5.6 硫安起生期に
7.5㎏
広巾播 6.15 30 20
普通播(追肥) 4.1 50 10


刈取期調査
 第1回5月15日、第2回5月25日、第3回6月5日

 生草収量と栄養生産性について調査(昭和36年)
播種法 刈取期
(月日)
生草重
(㎏/10a)
同 比
(%)
干物収量
(㎏/10a)
粗蛋白収量
(㎏/10a)
同 比
(%)
普通播区 5.15 937 100 136 24.6 100
広巾 〃 1,793 100 260 47.0 100
普通〃(追肥) 1,750 100 254 45.9 100
〃 〃 5.25 1,860 199 320 36.0 146
広巾 〃 2,447 136 421 46.4 101
普通〃(追肥) 2,220 127 382 43.0 94
〃 〃 6.5 2,395 256 393 33.6 137
広巾 〃 2,925 163 479 41.1 87
普通〃(追肥) 2,715 155 445 38.1 83


2.試験結果

 刈取各期別分析表(無水物中%)(天北農試)
刈取期別 粗蛋白質
5月15日 18.10
5月25日 11.26
6月5日 8.57


昭和39年度
1.試験方法
 耕種概要に就いては播種様式、刈取期の変更の外は前年度と同じ
 播種期  9月5日
 刈取期  5月10日、5月20日、5月30日
 播種様式 畦巾㎝×播巾㎝
  普通播区  50 × 10
  広巾播区  30 × 20
  往復播区  25 × 10
  密条播区  18 × 10
 秋期薬剤散布 10月25日

2.試験結果

 刈取時の生育および収量調査(3区平均)
試験区名 刈取期 刈  取  時  の 生草重
(㎏/10a)
各期の普
通播区の
収量に対
する比 %
5月10日
刈各区に
対する比 %
草丈
(㎝)
茎 数
(38㎝ 本)
葉数 幼穂の
長さ(㎝)
普通播区 5.10 24.5 60.2 5.1 0.76 435.0 100 100
広巾〃 25.8 57.3 5.3 - 597.5 134 100
往復〃 24.3 46.7 5.2 - 592.0 136 100
密条〃 23.4 44.0 5.2 - 527.5 121 100
広巾〃(追肥) 29.4 58.5 5.8 - 613.5 141 100
普通〃 5.20 45.4 39.0 6.1 3.7 746.0 100 172
広巾〃 45.3 48.7 6.1 - 1,046.0 140 175
往復〃 46.9 34.7 6.1 - 822.5 110 139
密条〃 42.8 35.8 5.8 - 805.0 108 153
広巾〃(追肥) 44.6 52.5 6.2 - 780.0 105 127
普通〃 5.30 73.3 27.5 6.9 出穂直前 1,034.0 100 238
広巾〃 73.0 32.5 6.9 - 1,395.0 135 234
往復〃 69.9 21.0 6.7 - 1,215.0 118 205
密条〃 66.6 16.8 6.9 - 1,282.0 124 243
広巾〃(追肥) 47.3 21.0 6.8 - 1,554.0 150 251


成績の総合考察
1.播種期
 秋播ライムギの播種期は8月中の早播は初期生育が旺盛で越冬前に茎葉が繁茂しすぎ越冬中に冬枯又は損傷することが多いので試験の結果から9月上旬播が適期のようである。

2.播種様式と刈取各期の生草重について
 刈取各期の生育と生草重について2ヶ年の結果より検討すると普通播区に較べいづれの播種様式も増収率を高めるが広巾播区は平均して43%程度の増収で播種様式中最も安定した増収率を示し、往復播区20%、密条播区17%程度等はあまり差異のない増収性を示した。なお起生期に窒素肥料の追肥は普通播、広巾播等にも肥効があり、各期の刈取別では、広巾播30%、普通播で30~40%程度の増収の傾向を示した。

3.刈取期別の生育の推移と栄養生産性の関係について
 起生期直後の生育経過によれば5月上旬より生育が進み中旬以降の草丈の伸長が目立ち5月中~下旬にわたり水ノン之上昇とともに草丈の伸長が旺盛となる。
 刈取期別では5月上旬刈取、中旬下旬と刈取期が遅れるにしたがい生草重の増収率が目立って高率を示すが、栄養生産性の点では5月中旬刈取時の粗蛋白質が18.10%で初期成育中の茎葉は栄養価が高く5月下旬(止葉期)頃では11.26%、出穂始頃では8.57%と5月、中、下旬刈取期に比べ粗蛋白質が約半分以下と顕著に少なくなるため、栄養生産性の点から検討しても、刈取期は5月下旬の止葉期頃までに刈取を行うことが栄養価が高く、また家畜の嗜好性よりみても好適するが出穂期以降の刈取給与は採食性が著しく低下するため端境期の多汁飼料の対策としては春先の生草用ライムギの刈取期は前述の諸点より検討して5月下旬までに刈取を行い、生草重と栄養生産を併せ刈取を行うことが効果が一層高いことが考察される。
 なお刈取期が5月中下旬に行うため跡地の利用も可能となり、土地の高度利用の点が大きいものとみなされる。