【普及参考事項】
子実用とうもろこし栽培試験(密植多肥栽培法)
北海道農業試験場作物部
北海道立中央農業試験場畑作部
北海道立十勝農業試験場

Ⅰ緒言
 近年、わが国における「とうもろこし乾燥子実」の輸入は、畜産の振興に伴う飼料需要の増大と、化学工業の伸展により「第1表」に示す如く、昭和30年度24万屯、昭和38年度259万屯と10ヶ年を経ずして10倍という激増の傾向にある。又、輸入飼料を形態別にみても「とうもろこし」の需要が圧倒的に多い事が理解できよう。


 第1表 輸入飼料(飼料形態)   (単位 1,000t) 農林省畜産局
年次
(昭和)
とうもろこし ソルガム ふすま 粒用小麦 大豆
油かす
魚粉 その他
30 236 30 29 58 78 - 7 438
31 349 9 92 17 92 - 19 578
32 545 - 142 50 108 - 32 877
33 709 - 180 58 115 - 42 1,104
34 921 16 290 62 137 - 30 1,456
35 1,435 56 496 85 283 8 75 2,439
36 1,833 170 747 61 43 38 210 3,202
37 2,216 412 716 42 - 46 297 3,729
38 2,593 757 747 50 83 97 624 4,951


 又、「第2表」は参考迄に之等「とうもろこし乾燥子実」の国別輸入実績をかかげたものである。
 他方、この間の国内生産は、「第3表」に示す如く、北海道内3万屯前後、全国で10万屯前後の横這いを続けている。為に国内自給度は低下の一方で、例えば昭和30年度29.8%が、昭和38年度は僅かに3.9%となっている。
 この現状に対し、国では自給度向上を目標に「とうもろこし生産確保対策事業」は開始した。
 筆者等は「子実用とうもろこし」の現状打開策の一つとして、統計資料の示す如く、10アール当り200㎏前後という低収量を、優良な一代雑種の育成普及と慣行栽培法にかわる多収栽培技術の確立を図る事を目的に本試験を行ったものである。


 第2表 とうもろこし乾燥輸入実績  (単位:L) 昭和38~39 大蔵省税関部統計課
国  別 年間輸入量 国  別 年間輸入量
米  国 1,323,250 台  湾 378
南阿連邦 763,358 カンボデイア 5,843
タ  イ 430,819 韓  国 8,973
ローデシア 28,728 モザンビック 1,460
朝  鮮 42,314 インドネシア 244
ルーマニア 51,991 カ ナ ダ 689
中  共 78,838 外国領海域 5
ケ ニ ア 24,192    
アルゼンチン 77,134    
ブラジル 36,202 2,883,518


 第3表 子実用 とうもろこし作付面積および生産量   農林省統計調査事務所
年 次
(昭和)
作付面積
(町)
反当収量
(㎏)
収穫量
(t)
地 域 作付面積
(町)
反当収量
(㎏)
収穫量
(t)
5 16,448 179 29,537 (昭38)石狩 923 186 1,717
15 25,095 127 32,053 空知 1,741 216 3,758
25 16,220 172 28,061 上川 1,871 234 4,374
28 15,620 134 20,987 留萌 631 175 1,103
29 14,470 89 12,876 後志 561 201 1,126
30 14,950 201 30,083 檜山 788 173 1,361
31 16,550 125 20,646 渡島 1,607 229 3,673
32 15,303 180 27,602 胆振 955 281 2,679
33 15,500 208 32,300 日高 327 275 899
34 14,600 201 29,400 十勝 1,025 327 6,621
35 13,500 211 28,400 釧路 365 225 821
36 13,500 251 33,800 根室 64 86 55
37 13,418 201 26,911 網走 965 275 2,662
38 12,976 239 31,004 宗谷 153 101 155
        全国 38,800 267 103,500


Ⅱ北海道農業試験作物部大7研究室(月寒)成績
(1)試験A 普通品種、一代雑種の栽培法に関する試験(昭和35年度)
 イ 試験目的
 異なる耕種基準のもとで、普通品種、一代雑種の生育、特性収量を調査し、多収栽培技術確立の基礎資料を得る。

 ロ 試験方法
 1)供給品種 2
 交4号(早生フリント一代雑種)、坂下(早生フリント品種)

 2)栽植密度(畦巾、株間) 4
栽植本数/a(本) 畦巾(㎝) 株間(㎝)
.370 90 30
556 60 30
741 45 30
1,111 30 30


 3)施肥量(㎏/10a) 3 (標肥、2倍肥、4倍肥)
  追肥 938㎏
  標肥 (全標量) 硫安(21.0%)41.6㎏、過石(18.5%)45.7㎏ 硫加(48.5%)11.1㎏
      (要素量)N:8.73㎏、P2O5:8.46㎏、K2O:5.39㎏

 ハ 試験成績
 播種期 5月20日

 第1表 栽植密度効果に関する成績
品種名 施肥量 アール当
栽植本数
(本)
成熟期
(月日)
稈長
(㎝)
着穂高
(㎝)
雌穂長
(㎝)
粒列数 一列
粒数
アール当り
子実重(㎏)

標準比
(%)
千粒重
(g)
交4号 (平均) 370 9.27 216 75 18.1 11.7 38 37.9 ※100 306
556 9.27 222 81 16.5 11.8 34 48.4 128 295
741 9.26 218 81 15.1 12.0 31 55.3 146 288
1,111 9.26 217 85 13.0 11.6 28 57.7 152 266
坂下 (平均) 370 9.21 186 65 20.4 8.2 42 32.4 ※100 302
556 9.20 194 73 18.5 8.3 38 38.6 119 288
741 9.21 201 77 17.3 8.1 37 43.2 133 276
1,111 9.20 196 80 14.6 8.2 31 41.5 128 259


 第2表 施肥効果に関する成績
品種名 施肥量 アール当
栽植本数
(本)
成熟期
(月日)
稈長
(㎝)
着穂高
(㎝)
雌穂長
(㎝)
粒列数 一列
粒数
アール当り
子実重(㎏)

標準比
(%)
千粒重
(g)
交4号 標肥 (平均) 9.25 211 75 15.3 11.5 32 44.2 ※100 287
2倍肥 9.27 213 79 15.4 12.0 32 49.8 113 292
4倍肥 9.28 231 88 16.4 11.9 34 55.5 126 287
坂下 標肥 (平均) 9.21 190 72 17.4 8.1 37 35.6 ※100 285
2倍肥 9.20 197 76 17.4 8.2 37 38.9 109 281
4倍肥 9.21 196 74 18.3 8.3 38 42.4 119 278


 第3表 品種別 栽植密度、施肥量とアール当子実重量との関係
品種名 施肥量 アール当り栽植本数 備   考
370 556 741 1,111 平均
交4号 標肥 36.1 50.5 50.7 39.5 44.2 L.S.D 密度:6.1㎏
(5%) 施肥:7.8㎏
※※MAX 76.1㎏/a


L.S.D 密度:7.7㎏
(5%) 施肥:4.3㎏
※※MAX 49.8㎏/a
2倍肥 39.2 46.9 55.6 57.4 49.8
4倍肥 38.4 47.7 59.7 ※※76.1 55.5
平均 37.9 48.4 55.3 57.7  
坂下 標肥 31.3 38.8 37.7 34.4 35.6
2倍肥 32.8 37.9 44.6 40.4 38.9
4倍肥 33.1 39.1 47.4 ※※49.8 42.4
平均 32.4 38.6 43.2 41.5  


 ニ 試験成績の考察
 1)生育、特性について
 出穂期、成熟期については、供試2品種共に栽植密度、施肥量の増減による顕著な傾向は認め難かった。
 その他の形質については、栽植本数の増加は雌穂長、1列粒数、千粒重を明らかに小さくし、又施肥の影響は「交4号」で標準肥と4倍肥との間において稈長、雌穂長は増加するがその他では一定の傾向を見出し難かった。

 2)収量について
 「交4号」においては、アール当りの栽植本数741~1,111本の間に統計的にも有意差が認められる増収効果があり、一方「坂下」では、370~556本の間で増収するが、それ以上では減収傾向に入る。
 施肥量については、2品種共4倍肥において有意差を認めるが、特に「交4号」の方が増肥による効果が著しい。
 但し、施肥量は、供試圃場の地力等との関聯において定められるものであり、4倍肥が適当との結論とはならない。
 又、「交4号」においては、栽植密度と施肥量との交互作用に有意差があり、その特異性について今後の検討の余地を残した。

 3)品種間差について
 一代雑種と普通品種との差異にも関聯するが、「交4号」は、標準肥で密植になれば増収限界に来るが、密植と共に増肥すれば増収効果は著しく、他方「坂下」においては密植と増肥によっても増収限界に早く達しその最高も低い。

(2)試験B 施肥技術に関する試験(昭和36~37年度)
 B~1 肥料の分肥(基肥、追肥)に関する試験 (昭和36年度)
 イ 試験目的
 密植多肥栽培における施肥技術として基肥のみと分肥との効果を試験し肥料の効果的利用を図る。
 ロ 試験方法
 1)供試品種 2(交4号、坂下)

 2)栽植密度 (畦巾、株間)2
栽植本数/a(本) 畦巾(㎝) 株間(㎝)
556 60 30
833 60 20


 3)施肥量(㎏/10a)3 (標肥、2倍肥、2倍肥分肥 (1/4は幼穂 形成期に追肥) )堆肥950㎏
  標肥(全肥量) 硫安(21.0%)41.6㎏、過石(20.0%)45.7㎏、硫加(51.5%)11.1㎏
     (要素量) N:8.74㎏、P2O5:9.14㎏、K2O:5.72㎏

 ハ 試験成績
 播種期 5月20日
 追肥期 7月6日

 ニ 試験成績の考察
 本試験は、昭和35年度の試験Aの結果を再確認する事と、2倍肥という多肥において、一部分施の効果の有無を調査したものである。

 1)「交4号」「坂下」共に標準肥においては密植により減収するが、「交4号」は密植と多肥とを併せれば顕著な増収を示す。特に本年の良好な気象条件もあって、最高アール当り80.6㎏の収量を示した。

 2)2倍肥の場合は、全量基肥よりその中1/4を幼穂形成期頃(7月上旬)に追肥の形で分肥した方が増収傾向が顕著であった。

 3)追肥技術には、要素量、追肥時期と肥料の利用率等更に究明する余地を残している。


 第1標 品種別 栽植密度、施肥量とアール当り子実量との関係
品種名 施肥量 アール当栽植本数 備  考
556 833 平均
交4号 標肥 52.6 51.0 51.8 MAX 80.6kg/a
2倍肥 67.4 72.7 70.1
2倍肥(1/4分肥) 64.8 ※※80.6 72.7
平均 61.6 86.1  
坂下 標肥 38.1 29.8 34.0 MAX 50.2kg/a
2倍肥 40.6 40.8 40.7
2倍肥(1/4分肥) 44.3 ※※50.2 47.3
平均 41.0 40.3  


Ⅲ試験C 子実用一代雑種の栽培法に関する試験  (昭和37~39年度)

 イ 試験目的
 子実用とうもろこしの多収栽培技術の確立と機械化省力栽培の可能性を検討するにたる主要因を究明する。

 ロ 試験方法
 早、中、晩生の一代雑種を供試し、栽植本数と施肥量を異にした場合の生育相の異変、増収限界等を調査する。

 1)供試一代雑種 3
 早生フリント種 交4号 (昭和37年のみ月交205号)
 中性フリント・デント種 交6号
 晩生デント種 交504号


 2)栽植密度(畦巾、株間)3
栽植本数/a 畦巾 株間
556本 90(昭37-60cm) 20.0(昭37-30cm)
667 90(  〃   ) 16.6(  〃-25 )
833 90(  〃   ) 13.3(  〃-25 )


 3)施肥量(㎏/10a) 3 (標肥、1.5倍肥、2.0倍肥) 堆肥945㎏
  標肥(全肥量) 硫安(21.0%)37.8㎏、過石(20.5%)40.8㎏、硫加(50.0%)9.8㎏
  (要素量)N:7.94㎏、P2O5:8.36㎏、K2O:4.90㎏

 4)試験区の配置法および反復数
 3×3×3 Confoundeng Design(r =2)

 ハ 試験成績
 晩種期 昭37-5月16日、昭38-5月9日、昭39-5月14日


  年次別子実収量
熟性 品種名 施肥量 栽植密度 備考
556本/a 667本/a 833本/a
昭37 昭38 昭39 昭37 昭38 昭39 昭37 昭38 昭39
早生 交4号
(月交205号)
標肥 30.9 36.5 38.6 42.3 51.3 37.0 43.7 44.6 55.8 ※60㎏/a以上
2倍肥-3
1.5倍肥 50.5 55.4 45.9 58.2 44.9 45.3 59.2 57.7 52.9
2倍肥 49.6 48.7 46.3 ※60.3 55.6 46.1 ※※62.4 ※※62.4 47.6
中生 交6号 標肥 54.1 ※61.0 47.8 ※64.8 ※66.0 47.7 ※64.6 ※63.4 42.5 ※60㎏/a以上
標肥-5
1.5倍肥-6
2倍肥-3
1.5倍肥 ※66.9 ※69.1 51.0 ※63.2 ※※75.0 45.8 ※※75.0 ※68.3 46.1
2倍肥 55.7 ※62.0 49.9 56.9 ※74.1 48.4 56.8 ※70.6 43.2
晩生 交504号 標肥 50.5 56.7 45.6 48.0 ※72.5 43.7 38.4 ※63.5 45.9 ※60㎏/a以上
標肥-2
1.5倍肥-2
2倍肥-3
1.5倍肥 51.5 ※64.8 52.4 50.8 56.2 47.2 52.5 ※67.1 49.9
2倍肥 51.3 ※70.2 51.7 48.3 ※71.7 46.3 55.2 ※※81.4 43.1
備考 ※60kg/a以上6
(交6号-4)
(交504-2)
※60kg/a以上8
(交4号-1)
(交6号-5)
(交504-2)
※60kg/a以上10
(交4号-2)
(交6号-5)
(交504-3)
 
  ※※ 最高子実収量  交4号 2倍肥 833本/a 62.4㎏/a(昭37、38)
                 交6号 1.5倍肥 667~833本/a 75.0㎏/a(昭37、38)
                 交504号 2倍肥 833本/a 81.4㎏/a(昭38)


 ニ 試験成績の考察
 密植多肥栽培において目的とする子実収量をアール当り60㎏以上得る条件を第6表に総括した。
 「交4号」においては、相生種を中央部で栽培する関係上、栽植本数600本/a以上、施肥量1.5~2倍肥であろう。
 「交6号」は中生、種として最も条件はよく、栽植本数5~600本/a施肥量1.5倍肥において目的が達せられる。
 「交504号」は晩生、デント種として栽培条件の最もよい場合に最高の収量を得られるので、栽植本数600本/a、施肥量1.5倍肥を中心に考えるべきであろう。

Ⅲ北海道中央農業試験場畑作部(札幌)成績
 (1)試験A 栽植密度、施肥量ととうもろこし生育との反応に関する試験(昭和31~32年度)

 イ 試験目的
 栽植密度および施肥量を異にした場合のとうもろこし生育におよぼす影響を調査する。

 ロ 試験方法

 1)栽植密度(畦巾、株間)4
栽植本数/a 畦巾 株間
185 90 60
370 60 45
741 45 30
1,481 30 22.5


 2)施肥量(㎏/10a)4 (無肥、標肥、2倍肥、4倍肥)、堆肥1,875㎏
  標肥(金肥量) 硫安(20.0%)13.1㎏、過石(18.5%)35.1㎏、、硫加(50.0%)0.23㎏、大豆粕8.6㎏
  (要素量)N:3.19㎏、P2O5:6.48㎏、K2O:0.3㎏

 3)供試品種 複交4号(早生、デント一代雑種)

 ハ 試験成績

 栽植密度、施肥量とアール当子実重量との関係
年  次 施肥量 アール当り栽植本数(㎏) 備   考
185 370 741 1,481 平均
昭和31年度 無肥 28.8 42.7 43.1 29.5 36.0 L.S.D(5%)
施肥量間:9.3㎏
栽植密度間:3.3㎏
同一肥料内密度間:7.6㎏
※※MAX 60.1㎏/a
標肥 30.9 45.3 52.7 36.6 41.4
2倍肥 31.0 53.0 ※※60.1 44.4 47.1
4倍肥 44.0 52.4 58.3 44.3 49.8
平均 33.7 48.3 53.5 38.7  
昭和32年度 無肥 27.9 40.9 36.0 19.3 31.0 L.S.D(5%)
施肥量間:5.0㎏
栽植密度間:3.7㎏
同一肥料内密度間:7.6㎏
※※MAX 49.1㎏
標肥 27.1 41.5 41.3 29.6 34.9
2倍肥 31.3 46.4 ※※49.1 37.2 41.0
4倍肥 28.2 48.8 ※※49.1 35.0 40.3
平均 28.6 44.4 43.9 30.3  
平  均 無肥 28.4 41.8 39.6 24.4 33.5  
標肥 29.0 43.4 47.0 33.1 38.2
2倍肥 31.2 49.7 ※※54.6 40.8 44.1
4倍肥 36.1 50.6 53.7 39.7 45.0
平均 31.2 46.4 48.7 34.5  


 ニ 試験成績の考察
 1)生育期節について
 雄穂抽出期、絹糸抽出期および成熟期は多肥する程早くなり、密植すれば雄穂抽出期はほとんど変わらないが、絹糸抽出期、成熟期はおくれる傾向を示す。而して多肥粗植区が生育期節を早くするが、施肥量では2倍肥、4倍肥との間には差が認め難く、栽植密度ではアール当り741本と1,481本との間に明らかな差異が認められた。

 2)生育状況について
 施肥量を増加すると、草丈、着穂高は高くなり、1列粒数、千粒重は増加するが、雌穂長、粒列数については無比量区以外は差異を認め難い。
 栽培密度を高めると草丈、着穂高は高くなるが、アール当り1,481本区では逆に低くなり、その他の形質は密植するにつれて次第に劣ってくる。

 3)収量について
 総重量および茎葉量は一般に多肥になるほど又、密植になるほど増加する。
 子実収量は是非および栽植密度による効果は両年とも有意であり、施肥量については2倍肥、4倍肥区が無肥、標肥区よりまさるが2倍肥、4倍肥間では有意差がない。又、栽植密度については、昭和31年はアール当り741本区が最もまさり、370本区がこれについでいるが、昭和32年は370本区および741本区が最も多収で両区に差異はなかった。
 次ぎに、施肥量と栽植密度の交互作用は昭和32年度は有意ではないが、昭和31年度は有意であった。このことは栽植密度による収量の影響は年次によっては施肥水準によって変わることを示している。
 しかし多肥条件(2倍肥、4倍肥)の下では密植による増収傾向は一定であった。

Ⅱ試験B 栽植密度に関する試験(昭和34~37年度)

 イ 試験目的
 各種塾期のデント一代雑種について多肥条件下の栽植物密度と生育の反応を調査し、併せて最も適する栽植密度を知る資料を得る。

 ロ 試験方法
 1)供試品種 3
 早生 複交4号、中生 複交8号、極晩生 ジヤイアンツ


 2)栽植密度 4~5
栽植本数/a 畦巾
(㎝)
株間
(㎝)
供 試 品 種 備       考
複交4号 複交8号 ジャイアンツ
247 45 90     1)施肥量は試験場標準肥の2倍肥とした
2)ジャイアンツ
 昭35 複交4号と同じ
 昭36~37 表示のとおり
370 45 60
494 45 45
617 45 36
741 45 30  


 3)施肥量(㎏/10a)
  堆肥 1,500㎏
  (全肥量)硫安(21%)37.6㎏、過石(20%)70.2㎏、硫加(50%)15.0㎏、大豆粕 17.2㎏
  (全肥要素量)N:9.0㎏ P2O5:14.3㎏、K2O:7.9㎏

 ハ 試験成績

 第1表 昭和34~37年平均成績


アール当
本数(本)
雄穂
抽出期
(月日)
絹糸
抽出期
(月日)
成熟期
(月日)
草丈
(㎝)
着穂高
(㎝)
アール当
有効雌
穂数(本)
雌穂長
(㎝)
粒列数 一列
粒数
アール当り(㎏) 対標
準肥
(%)
千粒重
(g)
総生
草重
乾茎
葉重
15%
子実重


4
370 7.25 8.2 9.16 215 74 360 13.5 14.5 31.9 207.1 31.5 44.9 100 290
494 7.5 8.2 9.15 218 75 460 12.9 14.2 30.4 232.9 35.7 50.3 112 285
617 7.25 8.3 9.16 221 80 548 12.3 14.2 28.5 263.4 42.5 54.8 122 282
741 7.25 8.2 9.15 227 83 633 11.1 13.8 27.4 260.9 45.1 50.0 111 273


8
370 8.2 8.9 9.22 245 92 354 15.5 16.1 36.4 237.6 35.7 47.6 100 253
494 8.2 8.9 9.22 247 95 477 14.4 15.9 34.6 284.1 44.4 56.4 118 247
617 8.2 8.10 9.22 251 98 561 13.2 15.4 32.3 303.1 53.4 53.2 112 235
741 8.3 8.10 9.23 250 100 641 12.7 14.9 31.0 409.3 60.2 53.3 112 234





247 8.3 8.12 10.1 267 102 234 17.0 16.7 34.1 258.5 38.4 29.4 (74) 284
370 8.5 8.12 10.2 276 108 304 16.3 16.9 34.2 273.5 70.7 39.7 100 280
494 8.5 8.14 10.1 270 112 408 14.2 16.4 29.8 385.8 78.8 42.8 106 270
617 8.6 8.16 10.2 266 113 444 13.3 15.8 28.5 422.9 84.5 35.5 89 263
741 8.13 8.19 10.3 - - 400 11.4 16.1 24.1 453.6 99.5 32.5 (81) 255
  表注:「複交4号」、「複交8号」は昭和34~37年の4ヶ年平均、「ジャイアンツ」は昭和35~37年の3ヶ年平均である。


 ニ 試験成績の考察
 1)生育及び特性について
 雄穂および絹糸の抽出期、成熟期は「複交4号」では密植による影響は認められないが、「複交8号」「ジャイアンツ」では僅かに遅れる傾向にある。草丈は「複交4号」「複交8号」では密植になるに従い高くなるがアー当り370本が最高で密植になる程漸次低くなる。着穂高は各品種とも密植になる程高くなる。
 その他雌穂長、粒列数、一列粒数、千粒重等は密植になるに従って漸次劣ってくる。

 2)収量について
 総生草重、茎葉重は密植になる程漸次増加の傾向を示すが、子実収量については品種のよい差異を示し、最適密度としては、アール当り「複交4号」は617本、「複交8号」「ジャイアンツ」は494本に中心があると認められた。

Ⅲ試験C 栽植様式に関する試験(昭和38年度)
 イ 試験目的
 「試験B」において各種熟期のデント種に対して最も適すると考える栽植密度を定め得たので、これを中心とした株間、株立本数に関しての栽植様式を検討し、併せて機械化栽培上の参考に資する。

 ロ 試験方法
 1)供試品種 3
 早生 複交4号、中生 複交8号、極晩生 ジャイアンツ

 2)栽植密度
供試品種 1/10アール当り
37本 42本 48本 53本 60本
複交4号    
複交8号    
ジャイアンツ    


 3)栽植様式
密度
1/10アール当(本)
1株本数 畦巾(㎝) 株間(㎝) 密度
1/10アール当(本)
1株本数 畦巾(㎝) 株間(㎝)
37 1 90 30 53 1 75 25
2 60 2 50
3 90 3 75
42 1 85 30 60 1 70 23
2 60 2 46
3 90 3 69
48 1 80 30        
2 60
3 90


 4)施肥量(㎏/10a)
  堆肥 1,500㎏ 硫安 38㎏、 過石 68㎏、硫加12㎏、大豆粕 18㎏

 ハ 試験成績

 栽植密度、1株本数とアール当り収量との関係
品種名 栽植密度
(1/10a)
(本)
アール当り子実重量(㎏) アール当り子実重量(㎏)
1株本数(本) 1株本数(本)
1 2 3 平均 L.S.D(5%) 1 2 3 平均 L.S.D(5%)
複交4号 48 48.9 48.5 48.7 48.7 栽植密度間:4.2㎏

1株本数:3.4㎏
363.9 341.0 333.5 346.1 栽植密度間:34.8㎏

1株本数:18.8㎏
53 54.3 50.9 51.4 52.2 393.5 382.1 346.1 373.9
60 47.3 46.4 48.5 47.4 394.5 395.2 385.1 391.6
平均 50.2 48.6 49.5   384.0 372.8 354.9  
複交8号 423 52.1 55.6 55.6 54.4 栽植密度間:5.0㎏

1株本数:3.6㎏
410.8 412.3 414.8 412.6 栽植密度間:31.4㎏

1株本数:11.7㎏
48 60.4 55.3 53.9 56.5 450.8 446.2 413.1 443.7
53 58.7 55.0 56.2 56.6 481.4 472.5 454.5 469.5
平均 57.1 55.3 55.2   447.7 443.7 426.8  
ジャイアンツ 37 56.9 50.8 48.6 52.1 栽植密度間:2.9㎏

1株本数:6.0㎏
419.0 415.0 389.4 407.8 栽植密度間:39.9㎏

1株本数:6.6㎏
42 55.5 57.9 53.4 55.6 463.0 471.6 440.8 458.5
48 52.6 55.0 54.0 53.9 495.6 473.0 457.4 475.3
平均 55.0 54.6 52.0   459.2 453.2 429.2  


 ニ 試験成績の考察
 1)生育、特性について
 雄穂抽出期、絹糸抽出期および成熟期、又草丈、着穂高、雌穂長等の特性については「試験B」の栽植密度による影響と同様の傾向を示した。又、之等は1株本数による影響は殆ど認められなかった。但し、「ジャイアンツ」では3本立区が草丈、着穂高、雌穂長ではやや劣る傾向を示している。

 2)収量について
 総生草重については、栽植密度の増加と共に増収し、1株本数では1.2本立間には差はないが、本3立は1.2本立より劣っている。
 茎葉収量は各品種共密植により増加し、1株本数では「複交4号」および「ジャイアンツ」は本数間の差は少ないが「複交8号」は2本立区がややまさっている。
 子実収量を高めるには「複交4号」は530㎏/a、「ジャイアンツ」は420本/a「複交8号」については栽植密度間の差は殆ど認められなかった。1株本数については「複交4号」「複交8号」では本数間の差はなく「ジャイアンツ」は3本立がやや劣ったが有意差は認められない。

 3)本試験栽植密度
 1株本数の範囲では「複交4号」「複交8号」「ジャイアンツ」については株間を広くして1株本数を増加しても子実収量に影響はないとみてよい。

Ⅳ北海道立十勝農業試験場(十勝)成績
 イ 試験目的
 密植みよるとうもろこしの生態的差異を検討し増収栽培並に機械化栽培上の資料を得ようとする。

 ロ 試験方法
 本試験は昭和35年~38年の4ヶ年に亘って実施したが、昭和36年以降は夫々前年度の試験結果に基づいて設計を一部変更したので各年次同一設計ではない。


 試験方法一覧
年次 供試品種 栽植密度(株/a) a当施肥量(㎏) 播種期
区別 堆肥 N P K
昭和35年 複交4号 90×30(371) 標準肥 200 0.6 0.8 0.5 播種期5月20日
複交7号 60×30(556) 倍肥 200 1.2 1.6 1.0
  45×30(741)          
  30×30(1,111)          
昭和36年 交4号 75×30(444) 標準肥 200 0.6 0.8 0.5 播種期5月15日
複交4号 60×30(556) 倍肥 200 1.2 1.6 1.0
  75×20(667)          
  60×20(833)          
昭和37年 交4号 75×30(444) 標準肥 200 0.6 0.8 0.5  
複交4号 60×30(556) 5割増肥 200 0.9 1.2 0.75
  75×20(667) 倍肥 200 1.2 1.6 1.0
昭和38年 坂下 75×30(444) 標準肥 200 0.9 1.2 0.6 播種期5月14日
月交398 60×30(556) 5割増肥 200 1.35 1.8 0.9
交4号 75×20(667) 倍肥 200 1.8 2.4 1.2
  注 1)各年次共 1株1本立
     2)標準肥量を作条施肥し増肥分は全層施肥を行った。


 ハ 試験経過概要

 ニ 試験成績
 (1)昭和35年

 収量調査
施肥量 品種名 栽植密度 a当(本) 不稔個
体歩合
(%)
a当収量(㎏) 比率(%)
雌穂数 有効
雌穂数
稈重 比率(%) 子実重
標準肥 複交4号 90×30(371) 367.1 363.8 1.8 178.5 100 49.9 100
60×30(556) 512.2 471.5 7.9 214.1   46.1 92
45×30(741) 592.5 478.5 20.0 252.7   33.4 67
30×30(1,111) 462.5 306.3 58.4 270.1   14.8 30
複交7号 90×30(371) 370.4 368.2 0.2 171.5 100 51.8 100
60×30(556) 534.0 485.4 4.8 197.3   52.6 102
45×30(741) 637.5 572.7 15.9 238.0   42.4 82
30×30(1,111) 555.5 377.0 52.5 296.6   19.7 38
倍肥 複交4号 90×30(371) 379.2 372.6 1.7 199.4 100 60.8 100
60×30(556) 544.9 513.2 3.9 227.5   71.1 117
45×30(741) 699.6 578.0 12.3 252.1   66.4 109
30×30(1,111) 592.7 427.8 48.4 283.8   37.2 61
複交7号 90×30(371) 362.4 352.8 0.2 165.9 100 61.9 100
60×30(556) 536.9 513.2 8.2 202.2   67.0 108
45×30(741) 720.8 617.6 13.2 241.5   61.8 100
30×30(1,111) 757.6 544.4 35.3 296.4   48.9 79


 (2)昭和36年

 収量調査(a当)
施肥量 品種名 栽植密度 雌穂数
(本)
有効
雌穂数
(本)
不稔個
体歩合
(%)
生稈重
(㎏)
比率(%) 子実重
(㎏)
比率(%)
標準肥 交4号 75×30(444) 524.8 432.1 1.1 167.9 100 63.1 100
60×30(556) 433.3 473.7 5.4 171.6 102 44.3 70
75×20(667) 617.0 537.4 13.1 204.4 122 48.6 79
60×20(833) 712.9 584.9 12.7 222.4 132 38.2 61
複交4号 75×30(444) 503.8 442.0 0.6 148.6 100 65.7 100
60×30(556) 570.8 565.8 1.4 160.9 108 61.9 95
75×20(667) 684.1 664.2 0.8 157.8 106 55.6 86
60×20(833) 815.8 778.2 2.1 199.7 134 56.5 86
倍肥 交4号 75×30(444) 501.4 427.2 1.7 189.0 100 67.4 100
60×30(556) 483.7 483.7 3.2 211.0 111 58.9 87
75×20(667) 579.7 579.7 3.4 248.7 132 70.0 104
60×20(833) 728.0 569.8 13.2 223.5 118 56.3 85
複交4号 75×30(444) 488.9 446.9 0 159.1 100 71.0 100
60×30(556) 563.0 538.2 0.5 163.5 103 70.5 97
75×20(667) 662.0 634.6 1.5 207.5 130 77.7 110
60×20(833) 848.8 791.0 3.0 186.7 117 73.8 104


 (3)昭和37年
施肥量 品種名 栽植密度 雌穂数
(本)
有効
雌穂数
(本)
不稔個
体歩合
(%)
生稈重
(㎏)
比率(%) 子実重
(㎏)
比率(%)
標準肥 交4号 75×30(444) 469.2 427.2 3.9 45.6 100 49.2 100
60×30(556) 563.0 501.0 9.3 55.6 121 44.8 91
75×20(667) 686.7 564.7 15.3 59.6 131 43.8 89
複交4号 75×30(444) 456.8 427.2 3.9 42.2 100 46.8 100
60×30(556) 573.0 543.2 2.2 57.9 136 53.1 115
75×20(667) 681.6 646.8 3.0 66.2 156 55.7 120
5割増肥 交4号 75×30(444) 471.6 427.2 3.9 45.5 100 57.2 100
60×30(556) 525.3 503.0 4.7 51.1 112 54.2 98
75×20(667) 664.2 572.2 14.2 71.4 156 52.8 93
複交4号 75×30(444) 488.9 439.6 1.1 49.1 100 52.9 100
60×30(556) 568.0 538.2 3.2 49.6 101 51.2 97
75×20(667) 686.2 636.8 4.5 56.8 116 53.4 100
倍肥 交4号 75×30(444) 461.8 437.1 1.7 55.9 100 63.5 100
60×30(556) 555.6 533.3 4.0 51.6 92 66.0 104
75×20(667) 676.7 579.6 13.1 64.8 115 63.2 101
複交4号 75×30(444) 471.7 434.6 2.2 50.4 100 55.5 100
60×30(556) 580.4 543.2 2.3 50.8 101 63.1 114
75×20(667) 671.7 649.3 2.6 57.9 114 69.0 120


 (4)昭和38年

 収穫物調査
施肥量 a 当 収 量 (㎏)
生稈重 比率(%) 子実重 比率(%)
標準肥 154 100 48.4 100
174 100 59.6 100
209 100 63.5 100
171 111 43.4 90
162 93 64.2 108
190 91 64.7 102
174 113 41.3 85
183 105 69.6 116
150 72 69.9 110
5割増肥 131 100 44.9 100
118 100 52.9 100
169 100 58.0 100
177 135 53.2 128
206 174 75.0 142
259 153 85.2 146
147 112 47.5 106
171 143 69.6 131
207 122 78.3 135
倍肥 140 100 51.3 100
177 100 60.7 100
227 100 63.2 100
186 133 57.7 112
183 103 68.5 113
228 100 74.6 118
162 115 51.9 101
196 111 71.6 117
213 94 75.0 118


 考察
 昭和35年及び昭和36年度の試験結果より栽植密度については凡そ500~700本内にあるものと推定された。即ちa当り800本以上の密植条件では稈が軟弱となり倒伏が増加し、不稔個体も施肥水準に関係なく増加し多収効果はあがらなかった。また逆に370本内外の疎植では施肥量を増加しても増収効果は極く低い。昭和37年及び38年の両年は444、556、667本の栽植密度で試験を実施したが書多収をあげる栽植密度は品種により異なり複交4号は667本で最高収量を示し交4号は556本で最高収量を示した。
 施肥量に就いてはN1.35、P1.8、K0.9(38年5割増肥)までは増肥効果が顕著であるが、N1.8、P2.4、K1.2(38年倍肥)の水準では発芽遅延、初期生育の抑制等の障害がみられ、増収効果はあがらない。従って本試験で行った施肥法ではN1.35、P1.8、K0.9位が多肥栽培の限度とみられる。
 供試品種については密植適応性の品種間差が不稔個体の発生割合等から明らかに認められ、複交4号は密植条件下でも不稔個体の発生が少なく、密植向品種と考えられ、「交4号」は密植に伴って不稔個体が増加し中植(556本)条件下で最高収量をあげることから極密植には不適な品種と考えられる。供試年次は1ヶ年のみであるが、複交7号、は複交4号と似た傾向を示し、また坂下、「月交398号」は「交4号」と同様に比較的疏植に適する品種と考えられる。
 以上、早生子実用とうもろこし品種を密植多肥栽培することにより品種によっては、a当り80㎏くらいの収量をあげ得ることが認められた。

Ⅴ総括
 北海道における一代雑種育成の歴史をみると、昭和17年「真交13号」昭和22年「札交130号」が発表された事に始まり、その何れもが品種間交配種であった。その後は昭和27年に「不交1、2号」「複交1、2、3号」が育成され現在に至る間に、自殖系統間交配種を中心に20組合せの子実用、飼料用、生食加工用一代雑種が育成又は導入されて来ている。
 而して之等の中現在奨励品種として増殖採種をしている組合せは第1表に示したものである。
 今回の成績は栽培試験としては不十分な点が多々あるが、道中央部(札幌、月寒)および十勝地域における本栽培試験成績をまとめれば次の如くである。

 (1)本栽培試験は「密植多肥栽培」による増収技術の確立を目的に行われ、子実生産量の目標は10アール当り600㎏(10俵)以上においた。

 (2)品種は現在採種されている一代雑種を供試したが、増収には一代雑種利用が第1である。而して、之等の中にも耐密植性については品種間差があるが、普通品種より耐密植性は高い、従って密植と多肥を伴わせれば著しく増収性を発揮する。

 (3)栽植密度は早、中、晩生の熟性と地域によって異なる。
  早生種:「交4号」「複交4号」は中央部で600本/aが」中心であり、十勝では「交4号」500本/a、「複交4号」600本/aと異にした方がよい、「複交7号」は「複交4号」に準じる。
  中生種:「交6号」は中央部で500~600本/a、「複交8号」は400~500本/aがよい成績を収めた。
  晩生種:「交504号」は600本/a前後がよい。又、「ジャイアンツ」は極晩生種であり400~500本/a迄となる。

 (4)標準栽植密度はこれまで360本~420本/aであったので500~600本/aの方向が増収につらなる事が明らかとなった。栽植様式の検討は十分でなかったが、之等の範囲内で畦巾、株間を広げて、株立本数を3本迄ふやしても収量には影響しなかった。
 但し、株立本数については、1本立の増合は欠株がない事、2本立、3本立の場合は、株毎に2本なり3本が整一な生育をする栽培技術を伴う事で、その可否を論ずる必要がある。
 すなわち、2~3本の中1本でも生育が劣ると株立本数の質が異なる訳である。


 第1表 北海道におけるとうもろこし一代雑種奨励品種一覧
粒の種別 品種名 熟性 特          性
フリント 交4号 早生 道中央部より道東・道北地帯における子実用在来フリント種
「坂下」「ロングフェロー」より多収・良質
フリント・
スイート
七夕早生 極早生 生食用品種中で最も早生・都市への早出用、あるいは
根釧地帯の自家用
スイート ゴールデン・
ビューティー
やや極早生 「七夕早生」よりやや晩いが、豊産、良質の生食・加工用
根釧地域を除く全道一円に適する
イエロースイート 早生 豊産な生食用
ゴールデン・
クロス・
    バンタム
中晩生 普通栽培における生食適期は9月上~中旬、食味は非常に
よく罐詰加工用としても栽培される
デント ジャイアンツ 極晩生 サイレージ用には道中央部以南および道東・道北地帯の栽培、
環境のよい所、エローデントより生草量は劣るが栄養収量多い
交504号 晩生 道南部における子実用
道中央部、道東、道北部のエンシレージ用
複交4号
(交503号)
中晩生 道南部の子実用
道中央部、道東、道北部のエンシレージ用
デント・
フリント
交6号 中生 「デント×フリント種」として安定した生育を示し、
道中央部の子実用サイレージ用、道東道北部のエンシレージ用
デント 複交8号 中生 「U28」に替わる品種、道中央の子実用および道東、
道北部のエンシレージ用
複交5号 中、早生 「複交4号」よりやや晩い、道中央、道東道北の子実用
道東・道北の山間部のエンシレージ用
複交7号 早生 道中央部、道東・道北の平坦地帯の子実用
道東・道北部のエンシレージ用
複交4号 早生 道東・道北部の子実用
複交6号 早、早生 デント種の中では最も早い(粒に白色粒が混入するので自家用)
道東・道北部の子実用、根釧地帯のエンシレージ用
  注 1.播種量は10アール当りフリント種、デント種は3㎏、スイート種は2㎏とする。
     2:一代雑種の種子は自家採種とせず毎年更新のこと。
     3:種子には薬剤が粉衣してあるので残っても家畜に与えないこと。

 (5)施肥量は全肥の標準要素量(㎏/10a)N=7.9 P2O5=8.4 K2O=4.9とした場合はその5割増以上の増肥と前記密植を伴わせる必要がある。各場所の基準は次の如くである。
(㎏/10a) 月寒 札幌 十勝
N 11.9 9.0 13.5
P2O5 12.6 14.3 18.0
K2O 7.4 7.9 9.0

 之等は地力、堆肥の給与量等により変わるであろうし、又、肥料の種類は硫安、過石、熔燐、硫加が主体で肥料形体の検討は行わなかった。

 (6)上記金肥の多肥に当たっての施肥技術については、全量基肥とするより一部幼穂形成期頃の追肥の方が利用率が高い。又、金肥の施肥位置については慣行法の利点が再確認されたが、更に肥料焼け等を防ぎ利用率を高める工夫が必要である。(例えば下側方帯、作土播巾等)
 但し、追肥の要素量、時期等理論的追究は行っていない。

 (7)道中央部と十勝とは地域差があり、本試験でも密植の限界は低く又施肥量は明らかに多い。