【普及参考事項】
ペーパーポットによるタマネギの移植栽培に関する試験成績
農業改良課

Ⅰ. 目的
 ペーパーポットによる玉葱移植栽培の実用性を検討するために、ポットの大きさと苗の生育及び定植後における生育収量などとの関係について調査する。

Ⅱ. 試験場所
 札幌市元町、岩波、細貝及び氏家氏(39年のみ)ほ場
 岩波ほ場…壌土、細貝ほ場…埴壌土、氏家ほ場…埴壌土

Ⅲ. 試験材料及び方法
 38年度
 1. 供用品種
  ゴールデンビューティー、発芽率98%
 2. 試験区
ポットの大きさ
(径×長さ)
育苗本数
(本)
播種粒数
備   考
1 3×6.75



700
700
1粒播まき
2粒播まき
 
2 3×10.0 700
700
1粒播まき
2粒播まき
3cmポットは1冊700本(50×14)
3 3×13.5 700
700
1粒播まき
2粒播まき
 
4 2×6.75 1.400 2粒播まき  
5 2×10.0 1.400 2粒播まき 2cmポットは1冊1.400本(70×20)
6 2×13.5 1.400 2粒播まき  
7 対照(慣行) 散  播  


 3. 育苗方法
 農家慣行の冷床によるビニールトンネル育苗をおこない、床土は玉葱育苗床土60kgにテンポロンを4kgの割で混合したのもを使い、ポット1冊当り硫安50g、過石170g、硫加25gを使用した。
 床土の充填や播種はビートの紙筒育苗法に準じておこなったが、床土はポットの上端より1~1.5cmの深さにつめ、播種後ポット一杯に覆土した。
 覆土には各冊ともECP粉剤を10g混用した床土を4.5kg宛使った。播種したポットを冷床に設置する場合にはポットの上端をそろえるようにした。

 第1表 ポット1冊当り床土使用量
ポットの大きさ
(cm)
床土使用量
(kg)
3×6.75 24.2
3×10.0 33.9
3×13.5 42.8
2×6.75 22.9
2×10.0 30.2
2×13.5 40.2

 播種は3月26日(細貝)及び27日(岩波)、間引は4月26日、定植は5月18日(細貝)、18~19(岩波)におこなったので育苗日数は52日である。
 育苗中の潅水や温度管理などは農家の慣行に準じておこなったが、苗取りの際の潅水は多くし、定植前日の夕刻3.3m2当り180Lを3回に分けて潅水し、当日の朝更に約100Lをかけてポット及び床土が充分に湿めるように注意した。
 対照区は3.3m2当り硫安450g、過石1kg、硫加225gを施し、3.3m2当り播種量約60ccで、苗立数は約6.000本であった。
 ポット区のものは苗取りの際に冷床で1冊当りECP粉剤20gの割でポット内床土表面に散播しておいて、定植時の作条処理は省略したが、対照区は慣行に従って苗取り前の処理はおこなわず、本ほの作条に10a当り9kgの割で散粉してから定植した。

 4. 定植ほ場の耕種
 (1) 植距  岩波ほ場  27×12cm  1行植
         細貝ほ場  42×12cm  2行植
 (2) 1区面積  岩波ほ場9.9m2、細貝ほ場7.3m2、3区制
 (3) 施肥、防除、中耕、除草など農家慣行に準じた。
岩波ほ場の10a当り施肥量
  堆肥3.375kg、脱脂米糠500kg、秋施与
  硫安10kg、過石40kg、硫加20kg、春全層施与
  要素量N…19.45kg、P2O5…3868kg、K2O…37.78kg
岩波ほ場の防除
  6月28日、7月9日、18日、24日、30日、8月5日、9日、14日、19日の9回。殺菌剤はダイセン又はマンネブダイセンとトリアジンを混用殺虫剤は6月28日はBHC水和剤、7月18日、24日、30日、8月14、19日の5回はDDT水和剤加用散布。

 39年度
 1. 供用品種  札幌黄(38年北札幌農協採種)
 2. 試験区
ポットの大きさ
(cm)
種  子
育苗本数
(本)
備  考
1 2×6.75 普通種子 5.600 1~4区とも半数は床土に7%
テンポロンを混用。
播種板を使用する。
2 Pelleted seed
3 3×6.75 普通種子
4 Pelleted seed
5 慣   行 普通種子 6.000  

 (1) 冷床育苗
 1粒まき
 (2) 播 種
 岩波ほ場3月29日、氏家ほ場4月1日、細貝ほ場4月25日
 (3) 定 植
 岩波ほ場5月25日、氏家ほ場5月26日、細貝ほ場5月25日
 (4) 植 距
 畦巾45cm、条間15cm、株間12cm2行植
 (5) 施肥、防除、中耕除草など農家慣行

Ⅳ 試験結果
 〔Ⅰ〕苗の生育
 1. 発芽状況
  播種後低温がつづいたため発芽はおくれ、4月8日に各区とも発芽をはじめた。区によって初期の発芽にやや遅速がみられたがポットの径や長さなどとの間に一定の傾向はみられなかった。
 発芽率は岩波ほ場は93.8~97.7%、平均95.8%、細貝ほ場は平均90.4%、でやや低いが、細貝ほ場の場合も6区(2×13.5CM)の83.6%以外は88.0~93.9%であって、両ほ場の場合ともポットの大きさ(径や長さ)や播種粒数などによって、発芽率に差はみられなかった。

 第2表 発芽率(38年)
ポットの大きさ 播種数 岩波ほ場 細貝ほ場 平均
4月26日
(%)
4月13日
(%)
4月26日
(%)
4月13日
(%)
4月26日
(%)
1区3×6.75cm 1粒播 85.2 96.0 60.1 93.9 94.9
2 〃 65.0 96.7 75.5 91.8 94.2
平 均 75.0 96.3 67.8 92.8 94.5
2区3×10cm 1粒播 54.0 94.7 56.7 88.0 91.3
2 〃 59.7 97.7 69.8 91.3 94.5
平 均 56.8 96.2 63.2 89.6 92.9
3区3×13.5cm 1粒播 75.8 96.6 59.1 91.8 94.2
2 〃 56.8 94.9 47.6 90.5 92.7
平 均 66.3 95.7 53.3 91.1 93.4
4区2×6.75cm 2粒播 73.2 95.5 57.7 92.1 93.8
5区2×10cm 2 〃 60.0 93.8 45.4 90.9 92.3
6区2×1.35cm 2 〃 62.0 95.9 68.1 83.6 89.7
3cmポット 1粒播 71.7 95.8 58.6 91.2 93.5
2 〃 60.5 96.4 64.3 91.2 93.8
2cmポット 2 〃 65.1 95.1 57.1 88.9 92.0

 2. 生育状況
 播種後30日ごろまでは第3表のように殆ど生育に差がみられないが、2cmポットの2粒まきではこの時期が間引の限界で、これよりおくれると密生の悪影響がではじめるようである。
 定植時の苗の大きさは第4・5表のとおりで両ほ場ともおなじ傾向がうかがわれ、葉数、第3葉長、葉鞘部の長さや太さ、側根の発生状況、苗重などに示されているようにポットの径では2cmより3cmの方が苗の生育は進み充実もまさっている。2cmポットの場合には葉鞘部の長さや太さなどからうかがわれるように播種後45日ごろから密生害があらわれはじめ、やや徒長傾向がみられた。従って2cmポットでの育苗限界は播種後40~45日ごろまでと思われる。
 ポットの長さとの関係では2cm、3cmポットの場合とも短い6.75cmが最も生育がよく、10cmと13.5cmポットの差はあきらかでない。
 対照(慣行)区との比較では苗の生育は3×6.75cmポットはまさり3×10cm、3×13.5cmポットは差がなく、2×6.75cmポットはやや劣り、2×10cm、2×13.5cmポットは徒長ぎみで劣った。

 第3表 播種後30日目(4月26日)の苗の大きさ(38年)(岩波ほ場)
ポットの大きさ 葉数 葉長(cm) 根数 菜長(cm)
7 対   照 1.0 5.8 3.7 4.9
1 3×6.75cm 1.0 5.5 3.9 4.1
2 3×10.0 1.0 5.6 3.7 6.5
3 3×13.5* 1.0 7.0 4.2 7.5
6 2×13.5* 1.0 6.6 3.8 6.3
  注) *は5個体、その他は20個体平均

 第4表 定植時(播種後51日、5月17日)の苗の大きさ(岩波ほ場)(38年)
ポットの大きき 播種 葉数 草丈
(cm)
第3葉長
(cm)
葉鞘長
(cm)
葉鞘部の径 根数 側根発
生個体率
(%)
苗重
(g)
基部
(cm)
地際部
(cm)
7 対   照   3.0 20.5 2.4 3.1 0.41 0.36 11.9 40 1.09
1 3×6.75cm 2粒 3.0 20.1 3.7 2.7 0.44 0.38 14.2 80 1.25
1〃 3.0 20.2 3.2 2.7 0.41 0.38 03.0 80 1.16
平均 2.9 20.2 3.5 2.7 0.43 0.38 13.6 80 1.21
2 3×10.0 2粒 3.0 18.6 1.9 2.9 041 0.36 11.6 70 1.05
1〃 3.0 17.3 1.7 2.8 0.41 0.34 11.7 70 0.98
平均 3.0 18.0 1.8 2.9 0.41 0.35 11.7 70 1.02
3 3×13.5 2粒 3.0 18.1 1.7 2.8 0.40 0.32 13.0 70 0.99
1〃 3.0 19.8 2.2 3.1 0.42 0.36 12.5 60 1.16
平均 3.0 19.0 2.0 3.0 0.41 0.34 12.8 65 1.08
4 2×6.75 2粒 2.8 21.4 2.7 3.3 0.36 0.30 12.0 60 1.01
5 2×10.0 2.7 19.6 1.5 3.4 0.30 0.28 11.2 30 0.84
6 2×13.5 2.7 22.8 1.5 3.5 0.36 0.28 12.3 40 0.89

 第5表 定植時(播種後51日、5月16日)の苗の大きさ(細貝ほ場)(38年)
ポットの
大きさ
葉数
草丈
(cm)
葉鞘長
(cm)
葉鞘部の径 根数
苗種
(g)
基部
(cm)
地際部
(cm)
1 3×6.75cm 3.0 20.7 3.0 0.42 0.38 12.0 1.22
3 3×13.5 3.0 22.5 3.7 0.39 0.33 10.6 1.08
4 2×6.75 2.6 21.2 3.7 0.35 0.28 9.6 0.94
6 2×13.5 2.6 19.5 3.4 0.37 0.28 8.8 0.76
7 対  照 2.2 21.5 3.7 0.40 0.31 9.2 0.96

 また、対照に較べポット育苗は株間が均一になるので整一な苗がえやすい。播種粒数と苗の生育の間には差はにられなかった。
 39年度においても第6表のように苗の生育とポットの大きさとの関係については38年と同じ傾向がみとめられ2cmよりも3cmポットがよく、叉Pelleted seed普通種子に較べ苗の生育はやや劣った。

 第6表 定植時の苗の大きさ(39年)
ほ場 草丈
(cm)
葉数
葉鞘長
(cm)
同径
(cm)
根数
細貝氏 2cmポット・Pelleteds 19.1 3.1 2.5 0.54 13.5
  〃   ・普通種子 21.5 3.3 3.4 0.65 15.0
  〃   ・Pelleteds 19.7 3.2 2.7 0.64 15.5
  〃   ・普通種子 20.2 3.5 2.8 0.69 15.5
氏家氏 2cmポット・普通種子 23.5 3.0 3.2 0.59 14.7
3cm 〃 ・  〃 23.7 3.3 3.1 0.62 14.9
慣   行・  〃 29.3 3.3 4.2 0.54 14.6

 3. 苗立率
 定植時における苗立率は第7表のとおりでポットの大きさや播種粒数によって差がみられる。2cmポット(平均92%)よりも3cmポット(2粒まき平均97.7%)が高く、ポットの長さとの関係では6.75cmの平均95.3%に対し10cmは92.2%、13.5cmは91.2%で短いものほど高い。これは長いポットほど育苗中の乾燥の影響を強くうけたことによるものと思われる。
 播種粒数については1粒(平均90.2%)よりも2粒まき(平均97.7%)が高いが播種及び間引労力を考えると発芽率の高い(最低90%以上)種子を使って1粒まきをするのが得策と思われる。

 〔Ⅱ〕 苗取り
 播種後52日目に苗取りしたが、ポットの腐蝕などみられず、玉葱の冷床50日育苗にはポットの紙質は適当と思われる。
 定植前日及び当日早朝に充分潅水したので苗取りの際のポットの剥離はきわめてよかった。ただ、一部に側根がポットの側壁をとおしているものがあったが、ポットの剥離を防げる程度のものはなかった。育苗日数がこれ以上長期にわたると側根がポットの側壁を縫合して剥離がむつかしくなる場合が予想される。このようなことからもこのポットでの育苗は50日前後が限界と思われる。
 ポットの大きさと苗取りの関係では直径については問題がなかったが、長さでは短い6.75cmのものは、10cm及び13.5cmのものより、ポットの下端が破れやすかった。これはポットの下の床土内え押入分布した根によるもので短い6.75cmポットの場合が、ポット外での根の発育が最も進んでいたためと思われる。従って、苗取りの際にはスペードなどでポット外に出ている根をなるべくポットの直下の部分で切断するように注意する必要がある。
 苗取りしてから運搬、定植までの間に天候によってはポットの上端2~3mmの部分が乾燥のため再び粘着してポット破損を招くことがあるから苗取り後定植までのポットの扱いには注意を要する。

 〔Ⅲ〕 定植後の生育
 1. 活着状況
 38年は定植後強風の日が多かったので対照区は植えいたみがひどく、ポット各区に較べ活着の状態には大差がみられた。
 対照区は定植後まもなく萎凋し、3~4日で元葉の黄変枯損や葉先きの枯れこみなどがあらわれ、第11、12表のように定植後2週間ごろまでは定植時より生葉数は減少し、草丈も低くなったが、ポット各区では定植時に萎凋したものはなく、植えいたみは殆どみられず、特に3cmポットでは定植後における発育停止などみとめられなかった。2cmポットが3cmポットに較べ活着が稍々劣ったことはポットの床土の量の差などよりも密生のため苗が徒長気味で充実が劣ったことによるところが多いように思われる。
 定植後における根部の状態にも大差がみられた。第8表は8日目の状態であるが、対照区の個体は根が少ないだけでなく、定植時の根は活力を失い淡褐色を呈しているのに対し、ポット区の個体の根は白色で定植後も発育が続け、すでに側根が相当発生していた。叉定植後における盤茎からの新根の発生状況(本数、長さなど)にも著しい差がみられた。
 定植8日目で、すでに2~5本ぐらいの根がポットを貫いて伸びておりポット外の長さが5.5cmに達しているものもみられた。このような点からみて定植後における根の発育、分布などがポットによって大きく影響されることはないように思われる。

 第7表 苗立率(5月16日)(38年)
ポットの
大きさ
(cm)
播種数 岩波ほ場
(%)
細貝ほ場
(%)
平均
(%)
1 3×6.75 1粒播 95.3 91.9 93.6
2 〃 96.7 99.8 98.2
平 均 96.0 95.8 95.9
2 3×10.0 1粒播 93.3 85.3 89.3
2 〃 98.0 96.6 97.3
平 均 95.6 90.9 93.3
3 3×13.5 1粒播 89.9 85.7 87.8
2 〃 97.3 98.0 97.6
平 均 93.6 91.8 92.7
4 2×6.75 2粒播 95.2 94.2 94.7
5 2×10.0 2 〃 92.4 89.9 91.1
6 2×13.5 2 〃 89.4 90.0 89.7
  3cmポット 1 〃 92.8 87.6 90.2
3cmポット 2 〃 97.3 98.1 97.7
2cmポット 2 〃 92.7 91.4 92.0

 第8表 定植後8日目の根部の状態(38年)
ポットの大きさ 総葉数 生葉数 葉長(cm) 茎の径(cm) 根数 定植時の新生根数
1 3×3.67cm 3.7 3.0 24.2 0.70 16.7 4.0
7 対   照 3.0 2.0 12.0 0.49 9.3 1.7

 第9表 定植後16日目の状態(38年)
ポットの大きさ 生葉数 草長(cm) 茎の径(cm) 根数(本)
1 3×6.75 3.4 25.7 0.73 22.8
2 3×10.0 3.6 26.4 0.87 26.4
3 3×13.5 4.0 26.6 0.86 24.2
4 2×6.75 3.2 21.9 0.66 21.0
5 2×10.0 3.0 22.7 0.63 21.8
6 2×13.5 3.0 24.2 0.65 23.6
7 対  照 2.8 15.7 0.57 16.6

 第10表 定植後30日目の状態(38年)
ポットの
大きさ
葉数 茎葉数 茎の径 根数 総重
地際部 最大部
1 3× 6 5.4 39.2 0.97 1.28 37.6 14.65
2 3×10 5.2 42.6 0.99 1.33 41.3 16.70
3 3×13 5.2 38.1 0.91 1.23 35.5 13.30
4 3× 6 5.3 37.2 0.92 1.25 38.2 13.60
5 2×10 5.4 40.2 0.94 1.18 37.4 13.45
6 2×13 4.8 35.7 0.87 1.15 34.5 11.35
7 対 照 4.3 31.9 0.72 0.92 26.3 7.65

 第11表 定植後における生育状況(38年)
月     日/
ポットの大きさ
葉  数 草 丈
6.3
(15日目)
6.17
(29日目)
6.3
(15日目)
6.17
(29日目)
1 3×6.75 2.99 4.90 18.1 37.4
2 3×10.0 3.13 4.93 17.5 36.2
3 3×13.5 3.10 4.93 18.6 26.9
4 2×6.75 2.75 4.73 15.3 32.3
5 2×10.0 2.63 4.60 14.9 30.7
6 2×13.5 2.53 4.37 14.6 29.4
7 対  照 2.64 4.53 14.6 31.1
L.S.D  1% 0.26 0.35 3.4 3.8
       5% 0.19 0.25 2.4 2.7

 第12表 定植後における生育状況(細貝ほ場)(38年)
月     日/
ポットの大きさ
葉  数 草  丈
5.26
(8日目)
6.3
(16日目)
6.17
(30日目)
5.26
(8日目)
6.3
(16日目)
6.17
(30日目)
1 3×6.75 3.24 3.57 5.43 22.4 25.1 42.1
2 3×10.0 3.17 3.39 5.39 23.4 24.8 40.6
3 3×13.5 3.18 3.55 5.27 22.9 24.7 41.1
4 2×6.75 2.65 3.10 5.02 22.1 23.2 40.0
5 2×10.0 2.81 3.13 5.10 22.7 23.4 39.1
6 2×13.5 2.68 3.24 5.03 21.7 22.7 38.7
7 対  照 2.41 2.61 4.30 12.7 15.6 30.9
L.S.D  1% 0.32 0.41 0.26 3.2 2.2 2.6


 2. 生育状況
 ポットの大きさと定植後の生育の関係は第9、10、11、12表のとおりで、ポットの径については判然とした差がみられ3cmポットの生育がはるかにまさっているが、ポットの長さとの間には3cm及び2cmポットの場合ともはっきりした差がみられない。
 対照区との比較では3cmポットは両ほ場とも生育がまさっているが、2cmポットでは細貝ほ場はまさっているが、岩波ほ場の場合は短い6.75cmはややまさっているようであるが、10及び13.5cmとの差はあきらかでない。
 39年は定植時の天候が順調であったので活着状況には差はみられなかったが、その後の生育では38年と同様に2cmポットに較べ3cmポットの生育が良好で、両者の間に判然とした差がみとめられた。

 第13表 定植後の生育状況(岩波ほ場)(39年)
区/
月日
葉  数 草  丈
2cmポット 3cmポット 慣 行(cm) 2cmポット 3cmポット 慣 行(cm)
6.20 4.5 4.7 4.2 22.2 24.7 21.7
7. 2 5.9 6.2 5.7 43.1 47.4 40.4
7.15 8.1 8.2 7.6 68.8 74.5 64.9

 第14表 定植後の生育状況(細貝ほ場)(39年7月2日測定)
3cm.P.C 3cm.C.T 3cm.C.C 2cm.P.C 2cm.C.T 2cm.C.C 慣  行
葉  数 6.5 6.6 6.9 6.2 6.3 6.4 6.1
草丈(cm) 60.6 60.7 62.2 57.9 56.2 59.3 57.5
  注):C.P.…Pelleted seed普通床土、C.C.…普通種子、普通床土
     C.T.…普通種子、床土テンポロン加用

 〔Ⅳ〕 収量
 定植数に対する収穫率は第15、16表のようにポット各区の間には大差なく一定の傾向もみられないが、対照区に較べるとかなり高い。この差が植えいたみだけによるものか、又はタマネギバエなど病虫害の差によるものかなどについては調査を欠くため断定できないが、ポット区の欠株がかなり少ないことは注目に値しよう。
 平均重はポットの長さとの間には一定の傾向がみられないがポットの直径による差はあきらかで、両ほ場、両年とも3cmポットとほぼ同じ傾向でポットの長さの影響は顕著でないが、ポットの直径による差はあきらかで、両年とも3cmポットは2cmポットよりもまさっている。
 対照区に較べると3cmポットは38年は実に20~27%、39年も最高16~20%の増収をみておる。2cmポットでは38年は短い6.75cmポットは増収しているが、10及び13.5cmポットは差がなく、39年は2cmポットは逆に10%前後の減収をみている。

 第15表 収量(岩波ほ場)(38年)
ポットの
大きさ
(cm)
収穫率 平均重 区(99m2)当り収量
1 3×6.75 86.9 166.2 111 43.13kg 127
2 3×10.0 86.9 170.1 113 43.37 127
3 3×13.5 87.2 159.2 106 40.90 120
4 2×6.75 87.1 150.1 100 40.30 118
5 2×10.0 83.7 148.7 99 35.23 103
6 2×13.5 88.4 130.5 87 35.10 103
7 対  照 78.9 150.1 100 34.10 100
L.S.D 1%       57.1  
      5%       4.07  

 第16表 収量(細貝ほ場)(38年)
ポットの
大きさ
(cm)
収穫率
(%)
平均重
(g)
区(7.3m2)
当り収量
(kg)
1 3×6.75 88.7 136.6 36.30
2 3×10.0 93.9 130.1 36.12
3 3×13.5 90.5 132.3 35.95
4 2×6.75 89.5 112.8 31.77
5 2×10.0 89.8 125.0 35.15
6 2×13.5 89.5 119.9 31.33
  注) 事故のため対照区の調査はできなかった。

 第17表 収量(岩波ほ場)(39年)
規格内収量(9.9m2) 大・上玉収量
(g・%)
個数 重量
(g)
平均重
(g)
2cmポット 242 28.180 87 115.8 29 25.198 87
3cmポット 261 38.775 120 148.2 118 36.825 127
慣   行 256 32.388 100 125.5 100 28.900 100

 第18表 収量(細貝ほ場)(39年)
規格内収量(5.94m2) 大・上玉量
(5.94m2)
(g・%)
10a、規格
内収量
(トン)
個数 重量
(g・%)
平均重
(g・%)
3cm.P.C 205 42.250 116 206.1 102 42.000 190 7.01
3cm.C.T 180 36.800 101 204.4 101 36.500 105 6.11
3cm.C.C 194 38.450 106 198.2 98 38.100 109 6.38
2cm.P.C 187 33.250 91 177.8 88 32.350 93 5.52
2cm.C.T 188 30.500 84 162.2 80 29.700 85 5.06
2cm.C.C 194 33.600 92 173.2 86 33.100 95 5.58
慣   行 180 36.400 100 202.2 100 34.900 100 6.04


 〔Ⅴ〕 労力
 38年
 1. 土つめ及び覆土作業
 ポット1冊当り2人6~7分 計12~14分
 2. 播種
 浅い皿に入れた種子をピンセットでポットに落としたり、鉄板をV字型の樋状に曲げたものに種子を入れてピンセットの先で落としたが、能率は個人差がかなり大きく、叉慣れるに従って向上した。
 第2日目の岩波ほ場での作業時間を示すと
   3cmポット  1粒まき  1冊当り  15~25分
                          平均19.1分
   3cmポット  2粒まき    〃   22.5~35分
                          平均28.8分
   2cmポット  2粒まき    〃    51~56分
                          平均53.5分
 であった。
 叉おなじ播き方で普通種子とPelleted seedを比較したものは次ぎのとおりでPelleted seedの利用によって播種労力が34%節減された。
   3cmポット  1粒まき  普通種子     1冊当り  18分
   3cmポット  1粒まき  Pelleted seed   1冊当り  12分
 3. 間引作業
 播種後30日目に行った。葉鞘部で切れることなく簡単に抜き取れたが作業は困難で、3cmポットは1冊に30分、2cmポットは52~65分、平均58.5分を要した。
 4. 定植作業
 農家慣行の方法で行ったが、対照区に較べポット区は作業がしにくく、特にポットが長くなるほど能率が低下した。正確な測定はできなかったが、ポット区は約20%ぐらい多く要した。人力でも作業方式をかえることによって能率を高めることが可能と思われる。
 39年
 播種作業能率化のため播種板の利用について検討した。
 ポット一冊当りの播種時間は第19表のように、2cmポットの場合Pelleted seed約3分40秒、普通種子は約6分、3cmポットの場合はPelleted seed約4分30秒、普通種子は5分30秒で、38年の手まき(3cmポット、1粒まき)ではPelleted seed約12分、普通種子は18~19分を要しており、これに較べるとPelleted seed、普通種子ともに約1/3で済んでおり省力効果は顕著である。
 Pelleted seedに較べると普通種子は時間がかかるが、10a分(50冊)の播種が5時間で済むので、労力の点では特にPelleted seedを使う必要はないように思われる。尚、播種板利用の場合、最も時間のかかるのは板の孔に種子をつめる行程であるが、孔の大きさや深さの検討、板の周囲三方に縁をつけるなどによって能率はかなり高まるものと思われる。

 第19表 播種労力(播種板使用)(39年)
 (1) 氏家ほ場(4月1日)
ポットの大きさ 種  子 測定冊数
(冊)
平均時間
(分・秒)
3cmポット Pelleted seed 2 6.04
2 6.30
平均 6.17
3cmポット 普通種子 4 6.38
4 7.30
平均 7.04
2cmポット Pelleted seed 5 3.35
普通種子 7 5.54

 (2) 細貝ほ場(4月2日)
ポットの大きさ 種  子 測定冊数
(冊)
平均時間
(分・秒)
      Ⅰ
3cmポットⅡ
Pelleted seed 4 4.46
3 4.20
平均 4.33
      Ⅰ
3cmポットⅡ
普通種子 4 5.26
4 5.31
平均 5.29
2cmポット Pelleted seed 3 4.38
普通種子 3 8.30

 播種板による播種の状態は第20表のとおりで約10%前後種子の入ってないポットがあるが、これはポットに土を充める際にポットを強く拡げすぎたことによるもので、この点に留意することによって解決できるものである。

 第20表 播種整度(播種板使用)(39年)
ポットNO. ポット当り播種粒数 合計
(%)
0% 1% 2% 3%
3cmポット
Pelleted seed
1 7.6 88.6 3.8 100
2 10.1 87.9 2.0
3 10.1 88.9 1.0
平均 9.3 88.5 2.2
3cmポット
普通種子
5 10.6 76.5 11.8 1.1
6 11.8 79.5 8.2 0.5
7 13.0 74.5 12.0 0.5
8 4.6 71.0 23.9 0.5
平均 10.0 75.4 14.0 0.6
2cmポット
Pelleted seed
9 5.8 87.5 6.2 0.5
10 2.4 95.1 2.5
平均 4.1 91.3 4.4 0.2
2cmポット
普通種子
11 13.6 67.2 18.2 1.0
12 4.4 77.3 16.8 1.5
平均 9.0 72.3 17.5 1.2


Ⅴ 要約
 ポットの大きさについては苗の生育、植えいたみ及び定植後の生育、収量などからみて、本道で普通におこなわれている50日前後の育苗の場合には、直径3cmのポットが適当であり、長さについては一定の傾向はみられないがポットの経費、床土の消費量、人力による移植作業の能率などを考えると6cm前後のものでよいように思われる。
 径3cmのものに較べ2cmポットの活着、生育、収量などが劣ったのはポット当りの床土量の差によるものもあるかと思われたが、播種後45日以降に現れた密生害によるところも大きいように思われる。従って40~45日育苗の場合については2×6.75cmポットについても検討する価値があるように思われる。
 播種粒数については2粒まきの方が苗立率は高くまさっているが、播種労力、播種量、間引労力などの点を考えると発芽率の高い良い種子を使って1粒まきする方が得策であろう。
 育苗管理の面ではポットは慣行に較べると乾燥しやすいので灌水には注意する必要がある、叉、ポットを設置する冷床は育苗中に根がポットの下部まで伸びるので、この部分も床土とおなじ条件に準備しておく必要があろう。
 ペーパーポット育苗の玉葱栽培への利用については多くの問題点がある。例えば、播種や定植に労力を多く要することや、ポットの経費が現在の小売価格では10a当り約1万円を要することなどである。しかし、その反面、天候の如何にかかわらず、ほとんど植えいたみなしに定植ができること、増収効果は高く、特に収穫株率が高まっていること、整一な良苗が確実にたち、屑苗が少なくなることなどの利点もある。また、播種労力については播種板の利用によって、かなり省力化されるので実用的には問題ないものと思われる。
 以上のように今後検討を要する点もあるが、増収技術としての実用性についてはかなりの期待がもてるものである。定植作業の能率化をはかることが今後の利点になるものと思われる。