【普及参考事項】
えん麦に対するPCP尿素の施用試験
北海道農業試験場農芸化学部

1.目的
 燕麦に対するPCP尿素の肥効並びに除草効果を施肥法の関連に於いて見ようとする。

2.供試肥料の成分
 15%PCP尿素、全窒素(T~N)37.12%、PCPナトリウム塩(PCP~Na)16.00%

3.気象条件
 農耕期間(4~9月)の平均気温は、5月上中旬、6月、8月中旬が平年並みか稍高目の他は、何れも平年より低く、特に7月中旬は異常な低温が続いた。降水量は5月中旬は殆どなく旱魃気味であったが、他は平年並みか多目で、5月上旬、5月下旬~6月中旬は特に多かった。日照は5月中旬に平年を上廻ったが、5月下旬以降8月一杯までは著しく寡照であった。

4.試験設計

 1)試験区及び施肥設計
  10a当N要素量(㎏) PCP~Na
(㎏)
尿素 15P尿
条施 表面 全層 表面 全層
1.慣行条施 6 - - - - -
2.尿素半量条施、覆土後
 15PS尿半量、表面全面散布
3 - - 3 - 1,290
3.尿素半量条施、覆土後
 尿素半量、表面全面散布(2区の対照)
3 3 - - - -
4.15P尿(PCP2㎏相当)
 全面全層
 N不足分尿素条施
1.36 - - 4.64 - 2,000
5.尿素、全面全層
 (4区の対照)
1.36 - 4.64 - - -
6.-N - - - - - -
  共通肥料 P2O5 (過石)6㎏  K2O (硫加)6㎏  MgO(硫酸苦土) 2㎏

 2)一区面積及区制 2.7m×3m=8m2     3連制
 3)供試品種 前進
 4)施肥法
  イ 表面全面散布、播種、覆土後、土壌と混和した肥料を全面に散布、畦間を軽くホーで中耕した。
  ロ 全面全層、土壌と混ぜた肥料を全面に均一に散布し、鍬で約9㎝の深さに耕鋤、よく混和後作条。

5.栽培概要
 畦間 45㎝ 条播(播種量10a当10.8L
 播種 4月29日
 除草 6.12 6.20(P尿全層区は無除草)
 培土 6.20
 収穫 8.17

6.試験成績

 1)生育調査(3区平均)
  発芽 草丈 茎数 出穂 成熟期
45日目 成熟期 45日目 成熟期 揃い
1.慣行条施 5.5 5.8 5.9 56 155 68 35 7.5 7.7 7.10 8.11
2.尿素半量条施
 15PS尿半量表面
5.5 5.8 5.9 53 154 62 39 7.5 7.7 7.10 8.11
3.尿素半量表面
 (2区の対照)
5.5 5.8 5.9 55 158 60 33 7.5   7.9 8.11
4.15P尿全層 5.5 5.8 5.9 53 156 66 41 7.6   7.10 8.11
5.尿素、全面全層
 (4区の対照)
5.5 5.8 5.9 58 157 63 41 7.4   7.10 8.11
6.-N 5.5 5.8 5.9 46 137 44 29 7.5 7.8 7.10 8.11

 2)収量調査(3区平均)
  a当収量 ㎏ 子実
収量比
1L重
(g)
千粒重
(g)
総重 茎稈重 子実重 シイナ重
1.慣行条施 105.5 59.2 40.2 0.04 100 435 28.9
2.尿素半量条施、覆土後
 15PS尿半量、表面全面散布
104.1 63.1 39.2 0.06 97.5 430 29.4
3.尿素半量条施、覆土後
 尿素半量、表面全面散布(2区の対照)
102.3 56.1 40.3 0.18 100.2 436 28.5
4.15P尿(PCP2㎏相当)
 全面全層
 N不足分尿素条施
105.4 59.5 39.6 0.12 98.5 420 27.7
5.尿素、全面全層
 (4区の対照)
105.8 59.2 42.3 0.05 105.2 443 30.1
6.-N 75.4 37.6 32.9 0.04 82.2 458 28.6

 3)雑草調査
  被覆度 % 雑草調査(6月19日 g/m2)
5.27 6.19 ハコベ ツユクサ アカザ スズメノカタビラ
1.慣行条施 10 100 863 3 17 7 890
2.15P尿表面(PCP1,290g相当) 5 50 469 4 - 3 476
3.尿素表面(2区の対照) 10 100 947 12 2 - 961
4.15P尿全層(PCP2,000g相当) - 10 136 3 1 - 140
5.尿素全層(4区の対照) 10 100 1,168 3 2 - 1,173
6.-N 10 50 320 7 - - 328
  (注)6月19日調査の被覆度は除草せず残しておいた処の被覆度を示す。

7.試験結果の概要
 1)生育調査
 4月29日播種、P尿施用による発芽障害は見られず、各区一斉に5月12日発芽期に達した。発芽後、初期の生育は、P尿表面区は若干生育の乱れが見られ(生育不均一)P尿全層区は生育の抑制をうけて、草丈が劣っていた。これらのP尿施用による生育初期の障害は6月上旬までで、その後生育の遅れを挽回して、成熟期には草丈、茎数共、各区殆ど差が認められなかったが、茎数は昨年同様、表面散布区より全層施用区の方が多目の傾向が見られた。

 2)収量調査
 茎稈収量は、慣行条施区に比べて、全層施用は尿素、P尿何れも差がなかったが、表面散布ではP尿施用区が多く、尿素施用区は少なかった。
 子実収量は、慣行条施区に比べ、尿素の全面施用区は若干優れていたが、他区間には差が認められなかった。

 3)除草効果
 P尿施用による抑草効果は明瞭な結果が得られた。試験圃場の優先雑草は、ハコベが主であったが、6月19日の調査では、P尿表面散布区は半減、P尿全層施用区では、10%程度の被覆度で培土まで除草する必要がない程の好結果を得た。

 4)実用化に対する所見
 P尿の播種後表面散布では、地表面にP尿をそのまま露出させておくことは、PCP-Naの分解を早めて抑草効果を低下させるので、散布後軽く中耕して、P尿を或る程度地中に入れることが必要なので、作業もそれだけ頻雑になり、初期生育の乱れを生じ易く、又抑草効果も50%で、培土までにはどうしても中旬に一回除草を行わなければならないので、実用化は期待できない。
 P尿の全面全層は、耕鋤前にP尿を均一に撒布して耕耘機で切一に砕土するもので、地力の割合高い所では、肥効も変わらず宿根性の雑草が優先している土地でなければ抑草効果も高く、播種後培土まで無除草でよく、燕麦に対して充分実用化できるP尿の施用法と思われる。