【普及参考事項】
耕土改良に関する試験
北海道立十勝農業試験場

 この試験は別項「不良下層土肥培試験」とも関連して十勝地方の火山灰畑土壌の生産性を高める方法を見出すために行われたもので試験年次は昭和36年~39年の4ヶ年にわたっている。

1.試験地土壌
 段丘地 火山性土

      点線は深耕の耕起位置を示す。

2.試験方法
 ア 供試作物
    大麦「アカンムギ」 甜菜「導入2号」 大豆「コガネジロ」 但し36年「かりかち」
    3作物の輪作栽培(大豆→甜菜→大麦→大豆)
 イ 試験設計 1区15m2 2連制 3作物 総区数48区
 ウ 耕種梗概

 大麦
年次 播種期 収穫期 栽 培 法
36 5月2日 8月2日 畦巾50㎝条播
37 5月1日 8月3日
38 5月1日 8月1日
39 4月28日 8月6日

 大豆
年次 播種期 収穫期 栽   培   法
36 5月18日 10月10日 畦巾50㎝株間25㎝ 1株2本立
37 5月18日 10月12日
38 5月18日 10月15日
39 5月20日 10月23日

 甜菜
年次 播種期 収穫期 栽 培 法
36 5月2日 10月11日 畦巾50㎝株間25㎝
37 4月30日 10月10日
38 5月1日 10月1日
39 4月28日 10月17日
  その他の栽培管理に当場標準法による。

3.試験区別および施肥量
試験区別 区別略称
1 深耕基準肥作条施用 深普肥
2 深耕基準肥作条+全層+堆肥 深普肥全層堆
3 深耕基準肥倍量作条 深作条倍肥
4 深耕基準肥作条+全層施用 深普肥全層
5 普通耕基準肥作条施用 普普肥
6 普通耕基準肥作条+堆肥
  (但し甜菜作付時のみ)
普普肥(堆)
7 普通耕基準肥作条+全層施用 普普肥全層
8 普通耕基準肥作条+心土施用 普普肥心土肥

 昭和37年度は昭和36年度より昭和38年度まで上記処理した跡地に、基準肥作条施肥による、均一栽培をした。その施肥量は下記の通り。

 10a当基準肥量(㎏)
作物 N P2O5 K2O MgO
大麦 4 8 4 3
甜菜 10 15 8 6
大豆 2 10 5 5

 耕起方法
  深耕ーデスクプラウ 30㎝耕
  普通耕ーボトムプラウ 12㎝耕
 但し、甜菜は昭和38年の場合、全層施肥、心土肥および作条倍量施用の各倍量施肥区はNのみ50%増、P2O5、K2O、MgOは倍量とした。全層施肥法は昭和38年度の場合、耕起後前奏施肥し、ロータリーにて表層15㎝程度に混合した。昭和36、37年度は表層にレーキで混合した。
 堆肥施用量は10a当2,000㎏
 供用肥料 N:硫安(但し、甜菜は作条肥のみ硫安:智硝6:4)
        P2O5作条は過石 全層は熔燐
        K2O:硫加
        MgO:昭和36年度より昭和38年度までは水マグ(水酸化苦土) 昭和39年度は硫酸苦土

4.試験経過の概要
 (1)大麦
 昭和36年 生育初期における旱魃のため有効分けつは少なかったが、6月中旬以降の高湿適湿により生育は良好で病虫害の発生もなかった。しかし出穂後、多肥区の草丈の伸長大で倒伏がみられた。耕起処理の差は施肥処理に比して小さく、明らかな差はみられなかった。

 昭和37年 生育全般を通じてほぼ順調な気象条件であったが、ホクチモザイクの発生著しく無効分けつ多く生育は著しく不良であった。生育状況における多肥の効果は大であったが、耕起方法の差は明らかでなかった。

 昭和38年 発芽は適湿を得て順調であったが深耕区はやや発芽揃が遅く、とくに作条部多肥の「深作条倍肥」が遅かった。5月は高湿旱魃、6月中旬までは低温多雨で初期生育は良好でなかったが出穂後は天候も順調で登塾も良好であった。生育状況における処理間の差は耕起法については明らかでなく施肥処理の差が大であり、多肥により生育は旺盛でとくに前奏或いは心土施肥による多肥区は発芽当初から優った。しかし成熟期においては深耕区は草丈やや高く有効茎数少なく後できの様相を呈し、登熟の状況も不良であった。

 昭和39年 基準肥による均一栽培を行ったが発芽、出水状況、成熟期に差はみられなかった。6月上旬以降天候は不順で生育は全般に不良で、かつホクチモザイクの多発のため生育、登熟は平年に比してかなり不良であった。耕起方法による生育の差は茎数において深耕区が劣る傾向を示したが草丈については差がなかった。また前年までの施肥の相異による差が茎数においてみられ、多肥跡地は茎数が多かった。

 (2)大豆
 昭和36年 発芽は良整で稚苗時一時旱魃ぎみであったが、全般に高温で7月以降における多湿な天候のため草丈の伸長いちぢるしく8月上旬には一部に倒伏さえみられた。登熟も順調であったがマメシンクイガの被害が多かった。耕起法による差は明らかでなかったが開花期以降の侵攻区の生育は旺盛であった。また施肥処理による差は明らかで多肥により生育は著しく旺盛であった。

 昭和37年 発芽時の気象は良好であったが深耕区の発芽は遅く、とくに作条部多肥区は発芽は著しく遅れた。6月末から7月かけて一時旱魃ぎみで7月中旬以降9月上旬まで多雨で日照少なく生育は不良となったが登塾は順調であった。処理間の生育の差については普通耕区の生育は深耕区に比して優り莢数も多く成熟期も早かった。また施肥の影響も明らかで多肥により生育は旺盛で熟期も遅れた。

 昭和38年 発芽当初土壌は乾燥したが発芽は差がなかった。稚苗時の生育は良好でなかったが6月中旬以降おおむね順調な気象経過により生育および登塾は平年並みであった。普通耕区の生育は良好で多肥により生育は旺盛となるが、施肥による普通耕各区の変異は深耕区より小さく、深耕区の標肥は生育も最も劣るが多肥により生育はかなり旺盛で葉色も普通耕多肥より濃かった。

 昭和39年 基準肥による均一栽培を行ったが、発芽当時高温適湿であったので処理による発芽状況には差がなかった。6月中旬以降天候は極めて不順で生育は著しく遅延し、かつ不良であったがさらに9月下旬強い降霜により成熟期に達し得なかった。また深耕区は全般にシストセンチュウの被害が発生し調査不能となった。
 普通耕各区における前年までの施肥処理の差の形響は明らかでなかったが、前々年堆肥施用区の分枝数は大である。

 (3)甜菜
 昭和36年 発芽は良整であったが発芽後6月中旬まで高温豪雨に経過したので立枯れ株がみられとくに多肥区に多かったが甜菜の生育は極めて良好であった。しかし8月以降は日照少なく多湿高温であったので病害の発生多くと塾状況も不良であった。処理間の差については、深耕区の生育は普通耕に比して劣るが多肥処理によって旺盛な生育をしめした。深普肥区は7月下旬ころからN飢餓の状態をしめし登塾が早かった。

 昭和37年 発芽当時土壌は乾燥ぎみであったので深耕区とくにその多肥の各区は発芽が遅れ整一を欠いた。深耕区の初期生育はかなり劣っていたが7月下旬以降は普通耕よりむしろ旺盛な生育をしめした。全般に順調な気象経過により生育ならびに登塾は良好であったが、多肥により登塾はかなり遅れ緑色の濃いまま収穫された。

 昭和38年 発芽は土壌乾燥のために整一を欠き深耕区に灌水をしたが深耕区とくに深耕多肥区の発芽は不良であった。稚苗時の生育は旱魃と風害さらにその後の冷湿な気象により不良であったが6月中旬以降天候回復とともに生育は好転し平年並みの生育ならびに登熟をしめした。処理間の生育の差については生育初期深耕区は普通耕に比して劣ったが多肥区は旺盛な生育を示し、7月以降は耕起法の差はみられず施肥効果のみが認められた。収穫期においては基準肥条件の登熟は著しく進み養分不足に近い状態をしめし、多肥区の登熟は遅かったがとくに深耕区における多肥処理は草丈高く枯葉数も少なかった。

 昭和39年 基準肥による均一栽培を行ったが、発芽状況および初期生育に処理間の差はみられなかった。6月下旬以降9月上旬に至るまで不順な気象に終始し、甜菜の生育はやや不良で根部の肥大は遅延したが、登塾は順調に行われた。前年までの施肥の差の影響および耕起法による差異については明らかでなかったが、深耕区における堆肥連用跡地の生育はやや旺盛であった。

5.収量調査成績
 (1)大麦

 ○年次別収量調査票
試験区別 収             量            ㎏/10a
36年 37年 38年 平均 39年
茎稈重 子実重 茎稈重 子実重 茎稈重 子実重 子実重 茎稈重 子実重
1 深普肥 235.8 219.2















316.6 217.8 211.5 340.0 145.5
2 深普肥全層堆 314.6 249.1 443.3 265.5 257.3 376.4 194.3
3 深作条倍肥 287.6 261.9 367.2 228.9 245.4 354.0 174.4
4 深普肥全層 283.7 251.1 350.2 276.6 263.9 336.7 173.9
5 普普肥 264.4 264.1 324.6 187.7 225.9 354.6 192.2
6 普普肥(堆) 260.6 272.0 323.4 191.5 231.8 384.9 206.2
7 普普肥全層 319.0 317.9 372.3 273.0 295.5 395.3 203.6
8 普普肥心土肥 371.7 308.2 407.9 279.6 293.9 323.5 204.4


試験区別 子実収量割合 %
36年 37年 38年 平均 39年
1 深普肥 81.8







116.0 96.7 75.7
2 深普肥全層堆 92.9 141.5 113.9 101.0
3 深作条倍肥 97.7 122.0 108.6 90.7
4 深普肥全層 93.7 147.4 116.8 90.4
5 普普肥 100 100 100 100
6 普普肥(堆) 100 103.0 102.6 107.3
7 普普肥全層 118.6 145.4 132.0 105.9
8 普普肥心土肥 115.0 149.0 130.1 106.3

 (2)大豆
試験区別 収             量            ㎏/10a
36年 37年 38年 平均 39年
茎稈重 子実重 茎稈重 子実重 茎稈重 子実重 子実重 茎稈重 子実重
1 深普肥 300.7 239.9 246.7 217.8 345.3 232.0 229.9 - -
2 深普肥全層堆 327.0 229.7 301.1 233.6 317.7 245.30 236.1 - -
3 深作条倍肥 327.9 242.3 260.2 190.6 289.8 248.1 227.0 - -
4 深普肥全層 306.3 271.4 276.6 202.6 266.6 248.3 240.8 - -
5 普普肥 367.9 283.4 276.3 247.9 257.5 252.1 261.1 262.0 87.3
6 普普肥(堆) 391.4 272.7 268.6 244.0 293.7 27.6 262.4 273.7 96.8
7 普普肥全層 374.2 308.9 331.1 277.7 294.5 268.4 285.0 257.9 85.1
8 普普肥心土肥 347.3 299.3 318.1 268.6 297.6 257.5 275.1 248.4 91.7


試験区別 子実収量割合 %
36年 37年 38年 平均 39年
1 深普肥 85.6 88.4 92.0 88.1 -
2 深普肥全層堆 82.6 95.0 97.1 90.4 -
3 深作条倍肥 87.1 77.5 98.4 86.9 -
4 深普肥全層 97.6 82.4 98.5 92.2 -
5 普普肥 100 100 100 100 100
6 普普肥(堆) 100 100 107.3 100.5 110.9
7 普普肥全層 111.1 112.7 106.5 109.2 97.5
8 普普肥心土肥 107.6 109.2 102.1 105.4 105.0

 (3)甜菜
 昭和36年
試験区別 10a当収量 ㎏ 収量比 T/R 正常/分岐 根中糖分(%) 純糖率(%)
菜根重 頸葉重 可製糖量 菜根重 可製糖量
1 深普肥 2,690 2,087 349.5 101.7 96.7 0.78 1.00 15.25 85.2
2 深普肥全層堆 3,410 3,675 436.5 129.0 121.0 1.08 1.06 15.27 83.8
3 深作条倍肥 2,564 3,096 335.3 97.0 92.8 1.21 1.00 15.42 84.8
4 深普肥全層 2,656 3,170 352.0 100.4 97.6 1.19 1.00 15.52 85.4
5 普普肥 2,644 1,974 360.4 100 100 0.75 0.44 1,560 87.1
6 普普肥(堆) 2,982 2,230 396.9 112.8 110.0 0.75 0.40 15.62 85.2
7 普普肥全層 2,665 3,006 326.7 100.3 90.6 1.13 0.48 14.77 83.0
8 普普肥心土肥 2,316 3,117 253.2 87.6 70.2 1.35 0.67 13.47 81.1

 昭和37年
試験区別 10a当収量 ㎏ 収量比 T/R 正常/分岐 根中糖分(%) 純糖率(%)
菜根重 頸葉重 可製糖量 菜根重 可製糖量
1 深普肥 2,954 2,650 479.8 99.6 100.5 0.89 1.18 18.00 90.3
2 深普肥全層堆 3,075 4,374 476.0 103.7 99.9 1.42 1.03 17.11 90.5
3 深作条倍肥 3,075 4,307 468.0 103.7 98.3 1.40 1.42 16.84 90.4
4 深普肥全層 3,115 4,288 490.2 105.1 102.6 1.38 1.44 17.22 91.5
5 普普肥 2,965 2,038 477.4 100 100 0.69 0.82 17.51 92.0
6 普普肥(堆) 3,545 2,688 569.6 119.6 119.2 0.76 0.40 17.61 91.7
7 普普肥全層 3,450 3,432 543.3 116.4 113.6 1.00 0.73 17.07 92.3
8 普普肥心土肥 3,293 3,462 523.2 111.1 109.5 1.05 0.56 17.27 92.1

 昭和38年
試験区別 10a当収量 ㎏ 収量比 T/R 正常/分岐 根中糖分(%) 純糖率(%)
菜根重 頸葉重 可製糖量 菜根重 可製糖量
1 深普肥 2,582 2,257 420.8 104.4 116.9 0.87 55 17.74 92.0
2 深普肥全層堆 3,113 4,294 466.5 125.9 129.6 1.38 48 16.78 89.4
3 深作条倍肥 3,184 4,413 501.4 128.8 139.3 1.39 48 17.29 91.0
4 深普肥全層 2,897 3,373 469.5 117.2 130.5 1.16 49 17.62 92.0
5 普普肥 2,471 2,132 359.9 100 100 0.86 33 16.65 86.9
6 普普肥(堆) 3,085 3,038 488.7 124.8 135.8 0.99 38 17.52 90.5
7 普普肥全層 2,766 3,123 451.3 111.9 125.4 1.13 45 17.71 92.1
8 普普肥心土肥 2,930 3,.107 455.0 118.6 126.4 1.06 53 17.02 91.2

 昭和39年
試験区別 10a当収量 ㎏ 収量比 T/R 正常/分岐 根中糖分(%) 純糖率(%)
菜根重 頸葉重 可製糖量 菜根重 可製糖量
1 深普肥 2,757 2,769 450.2 113.8 118.8 1.00 81.4 17.75 92.0
2 深普肥全層堆 3,221 3,529 528.1 132.9 139.4 1.15 81.6 17.86 91.8
3 深作条倍肥 2,683 2,855 447.3 110.7 118.1 1.06 72.4 18.16 91.8
4 深普肥全層 2,832 3,006 447.4 116.9 118.1 1.13 59.5 17.75 89.0
5 普普肥 2,423 3,076 378.8 100 100 1.27 39.1 17.43 89.2
6 普普肥(堆) 2,595 3,469 412.9 107.1 109.0 1.34 43.6 17.64 90.2
7 普普肥全層 2,788 3,203 448.3 115.1 118.3 1.15 28.6 17.63 91.2
8 普普肥心土肥 2,714 3,114 431.1 112.0 113.8 1.15 41.6 17.71 89.7

 ○年次別菜根収量
試験区別 菜根収量 ㎏/10a 収量比 %
36年 37年 38年 平均 39年 36年 37年 38年 平均 39年
1 深普肥 2,690 2,954 2,582 2,742 2,759 101.7 99.6 104.4 101.8 113.8
2 深普肥全層堆 3,410 3,075 3,113 3,186 3,221 129.0 103.7 125.9 118.3 132.9
3 深作条倍肥 2,564 3,075 3,184 2,941 2,683 97.0 103.7 128.8 109.2 110.7
4 深普肥全層 2,656 3,115 2,897 2,889 2,832 100.4 105.1 117.2 107.3 116.9
5 普普肥 2,644 2,965 2,471 2,693 2,423 100 100 100 100 100
6 普普肥(堆) 2,980 3,545 3,084 3,204 2,595 112.8 119.6 124.8 119.0 107.1
7 普普肥全層 2,665 3,450 2,766 2,960 2,788 100.3 116.4 111.9 109.9 115.1
8 普普肥心土肥 2,316 3,293 2,930 2,846 2,714 87.6 111.1 118.6 105.7 112.0

6.土壌三相分布と水分含量
調査位置 調査月日 普通耕(12㎝) 深耕(30㎝)
水分
%/W
三相分布 水分
%/W
三相分布
気相 液相 固相 気相 液相 固相
0~5㎝ 5.6 32.0 44.0 31.3 24.7 34.1 45.6 32.8 21.6
5.15 32.7 39.8 34.2 26.0 33.2 45.2 32.5 22.3
5.26 33.5 25.6 41.5 32.9 34.9 28.0 41.7 30.3
5.29 31.6       32.9      
6.16 29.9 33.0 33.7 33.3 30.8 35.4 33.0 31.6
7.27 32.4 34.2 36.8 29.0 32.4 33.6 37.3 29.1
10~15㎝ 5.6 35.1 26.3 42.5 31.3 35.5 35.1 39.3 25.6
5.15 34.9 36.3 38.4 25.3 34.6 33.5 41.8 24.7
5.26 34.8 25.7 43.0 31.3 34.8 28.2 41.5 30.3
5.29 33.0       34.3      
6.16 30.8 31.7 34.5 33.8 30.8 34.0 34.9 31.1
7.27 34.4 35.8 37.7 26.5 34.1 38.4 36.7 24.9
20~25㎝ 5.6 42.0 27.8 48.6 23.6 36.7 33.1 41.3 25.6
5.15 40.1 37.2 41.2 21.6 36.1 30.7 43.0 26.3
5.26 40.8 27.9 46.3 25.8 36.1 28.1 42.9 29.0
5.29                
6.16 37.7 24.2 45.8 30.0 33.3 28.8 39.6 31.6
7.27 47.5 33.2 43.2 23.6 35.1 28.9 42.4 28.7
  (注)%/Wは重量パーセント
    三相分布は容積割合で示されてある。

7.試験結果と考察
 ア 大麦
 3ヶ年継続試験に於いて37年度はホクチモザイタ多発のため試験成績は得られなかった。
 36年度深耕初年目では深耕区の生育は普通耕に比してやや劣り、耕鋤法の差よりも施肥の影響が大であったが、同一施肥では深耕区が明らかに劣った。多肥により茎稈、子実重はかなり増加し、とくに深耕区における堆肥を伴う増肥により茎稈重は著しく増すが、子実重はなお普通耕標肥に比して劣っていた。38年においても36年同様普通耕多肥区が茎稈、子実重ともに大であり、深耕条件における多肥効果は著しかったが、深耕区の生育は出穂以後同一施肥段階では普通耕と変わらぬ生育を示し茎稈重は普通耕に近い収量となり、子実重は標肥では普通耕を上回った。深耕における作条倍肥区は発芽を阻害し、生育の前半における草丈および有効茎数を減じ、子実収量も他の多肥処理に比して劣った。
 また38年の養分吸収調査の結果では深耕多肥区では三要素の含有率高いが成熟遅れぜい沢吸収の傾向をみせた。
 なお39年は標肥条件により各処理の残効および処理の累積効果を試験したが、普通耕区の生育収量まさり、前年までの多肥処理の残効がみられとくに前年までの堆肥施用の効果が明らかで、養分吸収にもその影響がみられた。しかしこの跡地は深耕区での収量高く養分吸収量の著しく大であった甜菜の跡地であることを考えれば、施肥反応大きい大麦の生育収量が深耕区で劣ったことは当然かと思われた。

 イ 大豆
 36~38年を通じ深耕区の大豆の生育は普通耕に比して劣り、深耕区における多肥により生育は旺盛となるが普通耕に比すれば莢数少なく開花期以降の伸長が大であった。このため深耕区の茎莢および子実重は3年間を通じ普通耕に比して劣り多肥の効果も低く、このような多肥条件における堆肥の効果も僅かであった。
 しかし年次的にみれば深耕による減収度は経年的に軽減することがみられる。37年において深耕区における作条倍肥区の生育収量は標肥に比して劣ったが、これは発芽の遅れおよび初期生育の不振が原因とみられ深耕においては旱魃年に多肥処理により発芽および初期生育阻害の懸念がある。
 37年の根系調査によれば7月末においては深耕区の根の伸長は良好であったが、生育収量の優劣には直接結びつかなかった。

 39年はかかる連年処理の累積効果をみるべく均一栽培を行ったが、冷害のため未成熟に終わりかつ深耕区はシスト線虫の被害を受けたので深耕、普通耕の対比はできなかったが、普通耕においては前々作における対比の効果が認められた。

 ウ 甜菜
 深耕区の発芽は土壌乾燥時には発芽が不揃となりさらに作条部多肥は発芽は一層阻害され初期生育を抑制するてとが認められた。この点については大豆も同様であり土壌三相分布調査の結果、深耕区は表層の土壌水分は普通耕と大差ないが、下部の気相多く土壌水分は低いことがみられ、このことが発芽を阻害することが推察され、更に深耕による下層土の混合により塩気吸着能力の減退は土壌水の塩基濃度を高める結果となり発芽および初期生育に対する影響を一層強くするものとみられる。また3ヶ年を通じ初期の生育は深耕によりやや劣り標肥では登塾は早まる傾向がみられ、また多肥では生育は旺盛となるが、深耕区においては生育後半にあと出来の状態を示し登塾はやや劣りT/Rは高い傾向が得られた。しかし根中糖分の低下はなかった。なお38年度は初期生育の不良、生育後半における旺盛な生育および登熟の不良から深耕区多肥の採根収量に対する効果は低かったが、一般に多肥による根重の増加が大であった。また堆肥施用の効果はかなり大きく多肥条件においても堆肥の施用による収量は増加した。さらに特記すべきことは甜菜地上部の生育は深耕することにより普通耕に比し劣りあるいは遅延するのであるが、整根割合が明らかに高まり根型は良好で深耕初年目においても菜根収量は普通耕に劣らず第2区は明らかに増収していることである。深耕区はK2O含有率が極めて高く吸収量は著しく大であった。また堆肥施用処理によりK2OおよびP2O5の含有率が高くなり、これらの吸収量は著しく増加した。
 39年度に跡地について標肥条件による均一栽培を行ったが、その結果、耕起法の差の影響は生育状況に明白な差は見られなかったが3ヶ年堆肥連用の効果は明らかで、深耕区は整根割合高く全般に高い根収を挙げT/Rも低かった。養分吸収状況についても前年と同様に深耕区は頸葉部のNおよびCaO、MgO含有率は低かったがK2Oは高い水準にあり、P2O5については差が無く根部における差異も明らかでなかった。また多肥区の跡地は深耕、普通耕とも葉根収量多く各要素の吸収量多く前年度までの多肥の残効が明らかに認められた。

8.総括
 不良下層土の深耕については作物によって反応が著しく異なるが深耕による耕土改良の可能性が認められた。
 すなわち、甜菜については深耕により地上部の生育は初期やや劣り、あと出来の傾向をみせるが根型は良好となり初年目においても減収することなく、深耕に伴う施肥改善による増収の可能性は著しく大であるが、大豆については深耕による生育の不振、収量の低下がみられ、増肥あるいは堆肥の施用により減収の程度は軽減するが、なお普通耕には及ばず、この減収度は累年的に緩和され堆肥の連用あるいは増肥によって3ヶ年目においては普通耕と同程度の収量に近づくが普通耕を上回る収量は3ヶ年目においても得られなかった。しかし跡地における大豆の生育収量に及ぼす前々年施用の堆肥の効果が認められるので、施肥効果の低い大豆において多肥条件下で堆肥施用処理を行った点に問題点があると考えられ更に検討する必要が認められた。
 これに対して大麦については耕鋤法の差異よりも施肥法による影響が極めて強く認められ、深耕による生育の不振、あと出来の傾向がみられ深耕初年目ではかなりの減収がみられるが増肥によって解消し深耕3年目においては同一施肥条件でも普通耕より増収をみた。またこれら処理の跡地均一栽培の結果は施肥処理の残効がかなりみられ普通耕に対比すれば深耕区が劣ったが、この点は前作が収量多く養分吸収量の著しい甜菜であったことを考慮すれば施肥に大きく左右される大麦については当然の結果かと考えられる。
 しかし一般に深耕区は下層の気相多く水分が普通耕に比し少なく、地表面の塩基吸着力の減少と相まって旱魃年には発芽および初期生育を阻害することもあるので、この増肥の一方式として増肥分の全層施肥と全量作条施肥についても検討したが収量については明らかな結果は得られなかった。
 また養分吸収状況について調査した結果、深耕区におけるN、MgO、CaO%はおおむね低い傾向にあるがP2O5は明白な差はなく逆にK2Oはかなり高い値を示し、また増肥による養分吸収量は深耕区で著しく増大するがいわゆる後出来の様相を呈すので、深耕地における施肥の種類とその方法について更に改善の余地があると考えられる。