【普及参考事項】
土地基盤整備後の圃場状態調査
北海道立中央農業試験場農業機械部

1 試験目的
 水田の大型機械かを目標として、各地で大型水田の造成が行われ、且つ行われんとしている。土地基盤整備事業が、機械化のために真に役立つことが必要であって、そのためには、問題点の究明とその対策を明らかにする必要がある。本試験は、その第一着手として、トラクター用作業機並びにコンバインに関する試験の実施対象圃場について調査したものである。
 南幌町の供試田は、既存の大型水田で一筆が20aに近く、10年程前に整備されており暗渠も充分に出来ている。
 長沼町の供試田は、38年秋に、ブルドーザーによって、大型化をはかったもので、10a内外のものを40aいるが、殆ど新設したものである。
 南幌町も長沼町も平坦地の水田であって基盤整備により、それほど大きな問題の起こる地域ではないが、両者の比較により基盤整備が、圃場状態をどの程度変化させてるかを知る一助となる。

2 調査項目及び方法
 (1) 田面の高低差-耕起作業前と代掻後とについて測量した。
 (2) 土壌貫入抵抗
    丸東式コーンペネトロメーター(コーン面積6.69cm2)で、1㎝刻みで50㎝の深さまでの貫入抵抗を測定した。
 (3) 土壌水分
    採土鑵に土壌を採取、含水量の調査を実施した。
 (4) 大型コンバインによる畦畔乗越状態
    畦畔の断面を畦畔乗越の前後に調査した。

3 調査圃場及び調査期日
 南幌町 白倉 菊一氏圃場 3.9ha(4月22日)
 長沼町 牧野 正氏圃場  4.2ha(4月24日)
 但し、代掻後の田面高低差、コンバイン乗越に伴う畦畔形状についてはそれぞれの作業の際に実施した。

4 調査結果
 大型コンバインによる畦畔乗越状態
(1)南幌圃場(A)
 イ 比較的低い畦畔で既設の水田に多い
 ロ 畦畔中央部の沈下約8~9㎝
 ハ コンバイン重量2,951㎏、タイヤ外径159㎝、タイヤ巾46.5㎝

(2)南幌圃場(B)
 イ 上記畦畔巾と同様だが比較的高く崩れ易い
 ロ 畦畔中央部の沈下約5㎝~13㎝
 ハ コンバイン重量2,260㎏、タイヤ外径111.8㎝、タイヤ巾25.4㎝

(3)長沼圃場
 イ ブルドーザーによる畦畔造成
 ロ 巾が広く比較的高い。沈下約5㎝
 ハ コンバイン重量3,000㎏。クローラ巾65㎝、長さ180㎝

考察
 (1)南幌圃場
 1区劃17~19に、整備されており、施行後10年を経過した良好な条件下にある。3.84haの試験区内での高低差は、最大47㎝であり、長辺に沿った265mについては、20㎝内外、これを5枚の区劃に割ってあるから、隣り合った水田の田面差は平均4㎝にすぎない。短辺に沿った162mについては、35~20㎝内外で、これも5枚の区劃に割ってあるから、7~4㎝の田面差を有するにすぎない。本圃場では殆ど機械力を用いず、10年目に整備が完了している。即ち、人力によって畦畔位置の造り変えを行った後、馬にスクレーバーを牽引させて、その区劃区の高低を均せば足りたのである。
 田面相互間の高低差が少ない場合は、畦畔も低くてすみ、17㎝から26㎝の範囲で形成されており、深水灌漑にも支障がない。畦畔乗越状態の図で知る如く、コンバインは容易に乗越可能であり、畦畔の沈下、崩壊はあるが、あとから手直し作業をしても、それほどの労力がかかるものと思われない。
 土壌の物理的性状の一端を知るために、コーンペネトロメーターにより、貫入抵抗を調査したが、全圃場に亘り、地下20㎝内外のところに貫入抵抗30㎏以上の盤層を有しており、30㎝以下では20㎏以下になる箇所が多い。したがって、この盤層を破らないで、トラクター或いはホイール型コンバインの作業が行えるならば、それらの走行に支障は全くない。稲運搬のため、トレーラーの往復通路となった場所は、表層から硬いが、耕起整地作業より、充分、普通の姿にもどり得るものである。

 (2)長沼圃場
 前年秋の施行で、ブルドーザーの履帯跡が圃場一面についていた。各田区間の高低差は、南幌町と同様に少なく、540mで最大80㎝であった。したがって、ブルドーザーを入れて作業をしてはいるが、移動させた土量はさほど多くないものと思われる。然も、ブルドーザーの運転技術も優秀であって、肉眼観察では、あまり区劃内の高低差はない様に思われたが、測量して見ると相当の凹凸が出来ており、最も凹んでいるところで27㎝である。
 この圃場についてプラウ、ロータリーハロー、代掻機の作業を実施し、代掻後の調査では、相当に平坦かしたが、次の様な点が指摘される。

 ア 小部分、或いは細長い凹みは、比較的容易に平均化される。したがって、ブルドーザー作業にあたって、そのような小さな起伏については、あまり考慮をはらわなくてもよい。

 イ 縦方向(長辺に沿った方向)に高低差がはげしい場合は、平均化がしずらく、10㎝内外の高低差が残ったままとなる。したがって、ブルドーザー作業には、この方向の高低差の少なくなる様努力する必要がある。

 ウ 横方向(短辺に沿った方向)の高低差は、比較的その後の作業で修正しやすい。

 エ 強風の中での代掻作業は困難をきわめる。風の力で水が風下に押され、高低差修正の基準を得ずらく、風下の土壌表面が高くなる場合が多い。強風中の代掻作業は、十分習熟する必要があるし、春先の最多風向の方向に水田の長辺をならべない様に、区劃整理をする必要がある。

 畦畔の形状は、ブルドーザーによって造られてあるため、平均21㎝と低く、巾は1mを越すものが多い。この様な畦畔は乗越えが極めて容易であるが、巾は8.0㎝内外でも十分と思われる。
 貫入抵抗を調査した結果、南幌町とやや似た傾向を示すところもあるが、一般に盤層が浅いところにあり、ブルドーザーで削られたことを示すものである。又、削られ、且つ履帯で踏み固められたところは、上層のみに盤層があり、プラウ耕によりこの盤層がなくなり、機械の走行が困難となる。この様な状態下にあっては、コンバインの様な重量のある機械では、ホイール型を使用せず、装軌型(クロラー型)のコンバインの導入が必要になる。
 埋木の穴が出来た場合には、手間がかかっても、他から乾いた土壌を運んできて埋め立て、十分つき固めておく必要がある。