【普及奨励事項】
いもち病防除新農薬の効果に関する試験成績
北農試病理昆虫部
道立中央農試稲作部

Ⅰ　総括
　新殺菌剤カスガマイシン剤、PCBA剤について、いもち病防除効果を検討した。その結果、いずれも薬害は全く認められず、防除効果も従来より使用されているいもち防除剤にまさる場合が多く、極めて有効である。また、これらの新殺菌剤は人畜に対する毒性も殆どなく、いもち病防除剤として適当なものと考えられる。
　使用量は次ぎの基準による。
　　　　水和剤 ┐
│
┘		 10ア－ル当り原薬剤量　100g(又はcc)
　　　　液　剤
　　　　粉　剤 　　　　　　　〃　　　　　　　3kg
なお、新殺菌剤には次ぎのものがある。
カスガマイシン ┌
│
│
│
└		 カスミン粉剤
カスミン粉M剤
カスミン水和剤
カスミンM水和剤
カスミン液剤
　　
PCBA剤 ┌
└		 プラスチン粉剤
プラスチン水和剤


Ⅱ　試験成績
　1.　稲作部成績
　　(1)　試験方法
　ア　試験場所　　岩見沢市金子町道立中央農試稲作部ほ場
　イ　供試品種　　テルニシキ
　ウ　1区面積及び区制　　1区25m23反復　　乱塊法
　エ　薬剤散布期　量、方法
　　液剤　7月28日45L/10a、8月9日54L/10a、8月18日63L/10a、8月26日63L/10a
　　ミスト機
　　粉剤　7月28日、8月9日、8月18日、8月26日3kg/10a、動力散粉機
　オ　調査時期、方法、薬害8月9日、8月19日、葉いもち病8月19日病斑面ｓけい歩合
　　　　節、首いもち病9月8日、9月30日罹病率、収量10月4日玄米重
　カ　供試薬剤試験区別
　　(ｱ)　液剤区
試験区別 有効成分および含有量
1.　カスミン水和剤　　　　　　　　400倍 カスガマイシン　2.0%
2.　プラスチン水和剤　 　　　　　200〃 ペンタクロルベンジルアルコ－ル　50.0%
3.　　　〃　　　　　〃　　　　　　　400〃 　　　　　　　　　　〃　　　　　　　　　 　〃
4.　プラスチン、ブラエス水和剤 400〃 ペンタクロルベンジルアルコ－ル30%、ブラエス1.0%
5.　ベラスチン、M338　　　〃　　400〃 　　　　　　　　　　〃　　　　　　　　　〃、カスガマイシン1.0%
6.　ブラスチン、HF112　　 〃　　200〃 　　　　　　　　　　〃　　　　　　　　　〃、有機合成化合物　%
7.　　　〃　　　　　　　　　　〃　　400〃 　　　　　　　　　　〃　　　　　　　　　〃　　　　　　〃
8.　フミロン錠　　　　　　　　25錠/40L PMTS、EMP、EMU　Hg2.5%
9.　ブラエス水和剤　　　　　　　　400倍 ブラストサイジンS2.0%
10.　無散布 　

　　(ｲ)　粉剤区
試験区別 有効成分および含有量
1.　カスミン粉剤 カスガマイシン0.2%
2.　エア－カスミンM粉剤　 2kg カスガマイシン0.15%、PMI　Hg0.3%
3.　　　　　　〃　　　　　　　2.5kg 　　　　　〃　　　　　　　　　　〃
4.　ブラスチン粉剤 ペンタクロルベンジンアルコ－ル4%
5.　ブラスチン、ブラエス粉剤 　　　　〃　　　　　　3%、ブラエス0.1%
6.　ブラスチン、M338粉剤 　　　　〃　　　　　　3%、カスガマイシン0.1%
7.　ブラスチン、HF112粉剤 　　　　〃　　　　　　3%、有機合成化合物
8.　ブラエスM粉剤 ベラエス0.1%、PMA　Hg0.1%
9.　クミスイ粉剤 PMI　Hg0.2%
10.　無散布 　

　　(2)　試験結果
　　ア　液剤区
試験区別 薬害 葉いもち
(%)		 節いもち 首いもち 10a当り収量
(9.8)% (9.30)% (9.8)% (9.30)% 玄米重

(kg)		 無散布
区対比
(%)
1.　カスミン、水和剤　　　　400倍 － 0.21 0.1 3.4 6.0 8.6 418.3 196.4
2.　ブラスチン、水和剤　　 200〃 － 0.08 0 0.3 2.0 4.6 391.9 184.0
3.　　　〃　　　　　　〃　　　400〃 － 0.21 0.1 0 2.0 3.0 396.0 185.9
4.　ブラスチン、ブラエス〃400 〃 － 0.07 0.2 0.3 2.6 0.9 359.7 185.8
5.　ブラスチン、M338〃　　400〃 － 0.09 0.5 0 3.2 4.6 377.0 177.0
6.　ブラスチン、HF112〃　 200〃 ＋ 0.07 0 0 3.3 1.8 310.5 145.8
7.　ブラスチンHF112　〃　 400〃 ± 0.18 0 0.5 1.4 3.4 336.1 157.8
8.　フミロン錠　　　　　　25T/40L ± 0.57 0.7 3.2 7.1 11.1 413.4 194.1
9.　ブラエス、水和剤　　　　400倍 ＋ 0.21 2.3 5.8 6.8 11.4 345.8 162.3
10.　無散布 ＋ 6.10 27.4 62.5 52.3 80.0 213.0 100

　　イ　粉剤区
試験区別 薬害 葉いもち
(%)		 節いもち 首いもち 10a当り収量
(9.8)% (9.30)% (9.8)% (9.30)% 玄米重

(kg)		 無散布
区対比
(%)
1.　カスミン粉剤 　 0.29 0.3 4.8 10.0 31.8 303.6 166.6
2.　エア－カスミンM粉剤　 2.0kg － 0.49 0.5 5.7 7.3 39.5 266.7 146.3
3.　　　　　　〃　　　　　　　　2.5kg － 0.25 0.2 8.1 7.8 27.0 295.8 162.3
4.　ブラスチン粉剤 　 0.50 0.3 6.2 7.2 11.1 319.6 175.4
5.　ブラスチン、ブラエス粉剤 　 0.39 0.3 0.9 3.9 9.0 342.4 187.9
6.　ブラスチン、M338粉剤 　 0.34 0 2.1 6.5 14.1 348.0 191.0
7.　ブラスチン、HF112粉剤 　 0.51 0.5 1.5 7.8 13.5 334.7 183.7
8.　ブラエスM粉剤 － 0.38 0.3 6.3 9.5 18.8 321.1 176.2
9.　クミスイ粉剤 　 0.70 0 6.7 7.0 31.8 304.2 167.0
10.　無散布 　 4.17 12.0 47.7 46.1 83.7 182.2 100

　2.　北農試病理昆虫部成績
　　(1)　試験方法
　ア　試験場所　　札幌市篠路町字屯田3番通り
　イ　供試品種　　農林20号
　ウ　区制面積　1区16m23反復　乱塊法
　エ　散布時期、量、方法　7月30日、8月9日、8月20日　3回
　　粉剤は小型散粉機で3kg/10a
　　液剤は肩掛噴霧器で1・2回100L/10a、3回120L/10a
　オ　調査月日、方法
　　薬害調査　8月3日、8月11日、葉いもち病調査、9月3日(病斑面積歩合)
　　節、首、枝梗いもち病調査、9月28日(罹病率)収量10月27日(玄米重)
　カ　供試薬剤、試験区別
　　(ｱ)　液剤区
試験区別 有効成分および含有量
1.　カスミン　水和剤　　　　　1.000倍 カスガマイシン2.0%
2.　ブラスチン　水和剤　 　　　800〃 ペンタクロルベンジルアルコ－ル50.0%
3.　　　〃　　　　　〃　　　　　1.000〃 　　　　　　　　　〃　　　　　　　　　　　〃
4.　ブラスチン、M338水和剤1.000〃 ペンタクロルベンジルアルコ－ル30.0%
5.　　　〃　　　　　　　〃　　　1.500〃 　　　　　　　　　カスガマイシン1.0%
6.　セレサン　水和剤　　　　 1.000〃 PMA　Hg2.5%
7.　　　　　　〃　　　　　　　　 2.000〃 PMA　Hg2.5%
8.　ブラエス　乳剤　　　　　　1.000〃 ブラエス1%
9.　　　　　〃　　　　　　　　　 2.000〃 ブラエス1%
10.　無散布 　

　　(ｲ)　粉剤区
試験区別 有効成分および含有量
1.　ブラスチン　粉剤 ペンタクロルベンジルアルコ－ル4.0%
2.　ブラスチン、M338　粉剤 ペンタクロルベンジルアルコ－ル3.0%、カスガマイシン0.2%
3.　セレサン石灰　粉剤 PMA　Hg0.25%
4.　ブラエス　粉剤 ブラエス0.2%
5.　無散布 　

　　(2)　試験結果
　ア　液剤区
試験区別 葉いもち
(%)		 節いもち
(%)		 首いもち
(%)		 枝梗いもち
(%)		 10a当り収量
玄米重
(kg)		 無散布
区対比
(%)
1.　カスミン　水和剤　　　　1.000倍 0.09 2.9 2.5 12.8 309 108.4
2.　ブラスチン　〃　　　　　　 800〃 0.08 0.7 1.7 12.2 341 119.6
3.　　　〃　　　　〃　　　　　1.000〃 0.14 1.3 1.3 9.7 316 110.9
4.　ブラスチン、M338〃　　1.000〃 0.04 2.2 1.8 12.9 336 117.8
5.　　　〃　　　　〃　　　　　1.500〃 0.04 2.3 2.1 13.3 372 130.5
6.　セレサン　水和剤　　　 1.000〃 0.27 2.5 1.9 11.5 320 112.2
7.　　　〃　　　　〃　　　　　2.000〃 0.23 2.7 2.3 14.2 318 111.6
8.　ブラエス　乳剤　　　　　1.000〃 0.72 8.0 4.3 14.4 325 114.0
9.　　　　〃　　　　　　　　　 2.000〃 0.40 7.2 4.7 14.5 252 88.4
10.　無散布 1.32 24.5 9.3 21.3 285 100.0
　　備考　　各薬剤とも薬害はみられなかった。

　イ　粉剤区
試験区別 葉いもち
(%)		 節いもち
(%)		 首いもち
(%)		 枝梗いもち
(%)		 10a当り収量
玄米重
(kg)		 無散布
区対比
(%)
1.　ブラスチン　粉剤 0.32 1.6 1.0 10.1 336 105.0
2.　ブラスチン、M338　粉剤 0.11 3.5 1.5 13.6 372 116.0
3.　セレサン石灰　　〃 0.16 1.7 1.3 14.0 349 109.1
4.　ブラエス　粉剤 0.69 4.8 1.9 14.6 353 110.3
5.　無散布 1.36 32.1 7.9 24.0 320 100.0
　　備考　　各薬剤とも薬害は認められなかった。