【普及奨励事項】
レ-キ付プラウによる藁稈類の完全すき込み法
-コンバイン収穫跡地の藁稈すき込み作業体系-
北海道農業試験場  畑作部
              機械化栽培研究室

 麦及びとうもろこしのコンバイン収穫跡地には多量の藁稈が圃場に残存するので、耕起作業の際プラウへ藁稈がつまって作業能率を低下させると同時に藁稈のすき込み精度を不良にし、後作業に悪影響を及ぼす。これを改善するため藁稈をあらかじめすき溝に移動させるレ-キを試作してプラウに装着し、これをレ-キ付プラウと仮称して、作業性能および作業体系について検討し、能率的でしかも後作業に悪影響を及ぼさない藁稈すき込み作業体系を確立した。
 1. 試作した藁稈すき込み用レ-キと供試プラウ耕起部分の藁稈をすき溝に移動させるアタッチメントとしては、すでに牧草用として実用化されている回転輪型サイドデリバリ-レ-キの作用性に着目し、これを応用した。耕起巾50cmのプラウを対象として試作したレ-キは第1図の通りである。
 レ-キのプラウへの取り付けは第2図の通りとし、パイプとリンクを利用して間接固定とした。

 第1図 藁稈すき込み用レ-キ


 第2図 二連二段犁へのレ-キの取りつけ法(高北ハイプラウ247)


 2. レ-キ付プラウの作業性能
  (1) レ-キの作用巾
 レ-キにより藁稈が移動する距離は作業速度に関係なく、主として藁稈の乾湿に左右され、藁稈が乾燥して軽い場合には50~58cm、湿っている場合は40cmであった。また藁稈の長さによっても若干異なった。いずれにしても第3図のようにレ-キの作用巾が40cm以上であれば、耕起巾50~60cmの耕起には支障がない。
 レ-キの取り付け角度は上記の条件では進行方向に対して45°がよかった。レ-キの作用巾を広くして藁稈を完全にすべき溝に移動させようとすると、藁稈の一部は溝を超えて既耕地に散乱するので、藁稈の一部が次の耕起部分に残る程度にするとよい。

 第3図 レ-キの作用巾と耕起作業との関係
       A              B
     耕起巾50cm       耕起巾60cm


a レ-キによって藁稈の移動した巾

b プラウの耕起巾
  この場合A・Bともにプラウに藁稈
はつまることなく、反転すき込み性能
は良好である。
     一連プラウ         二連プラウ
  (2) 藁稈すき込み性能
  麦類の場合、藁の細断長さが20cm以下ならば、地表から10cmの深さまでに分布する量は全体の5~7%にすぎない。細断長さが50cmでもロ-ラまたはデスクハロ-で処理し、麺稈が倒れた状態であれば地表から10cmまでの分布率は16%以下であり、後作業への悪影響は考えられない。
 とうもろこしの場合も、すき込み性能は極めて良好であった。
  (3) 耕起作業能率
  麦の場合ヒイ-ルドチョッパ-で細断したのち、二連プラウで耕地したが約30m進む毎にプラウに麦稈を土にめりこませてから再び耕起を試しみたが、作業は不可能であったので一連プラウで耕起した。この場合には二連プラウに比較してプラウへのつまりは少なくなったが、作業時間は8.1時間を要した。しかし、同じ一連プラウにレ-キをつけた場合には作業時間は3.9時間となり、作業能率は2倍に向上した。
 二連プラウの場合には作業不可能であったが、レ-キをつけることによって作業は中断されることなく、作業時間は3.2時間で、裸地の耕起時間はほとんど変わらなかった。
 なお麦を40~50cm程度に高刈りした場合には必ずしもチョッパで細断する必要はなく、ロ-ラあるいはデスクハロ-の前処理だけで耕起が可能であるが、この場合にはプラウへのつまりが若干あり、作業能率は4.2時間であった。
 とうもろこしの場合も麦の場合と同様に、プラウにレ-キをつけることにより作業能率は著しく向上し、た。
 けん引抵抗力は測定できなかったが、麦の場合にトラクタ-のスリップ率を測定した結果ではレ-キを付けない場合と差異はなかった。またトラクタ-の運転または作業に対してプラウにレ-キを付けたことによる不都合な面は何ら認められなかった。
 
 3. 麦及び作業体系
  麦の場合、前処理作業機として、コンバインストロ-チョッパ、ヒイ-ルドチョッパ、ロ-タリ-カッタ、ロ-ラ、デスクハロ-がある。フイ-ルドチョッパでの細断作業では、うしろのカバ-をあけて作業速度を速めることができる、細断長さは吹き上げる場合よりも長くなるが耕起作業には問題がない。ロ-ラおよびデスクハロ-による前処理作業はプラウの進行方向に合わせて行う必要がある。
 とうもろこしの場合には、フイ-ルドチョッパ、ロ-タリ-カッタによる細断作業は耕起前処理として必要である。作業能率・精度は両機種とも同じと考えてよいが、ほ場が不均一であると溝の部分にある稈は細断されずに残り、耕起作業の場合プラウにつまるので、ほ場はできるだけ均平であることが好ましい。
 以上の結果から、麦およびとうもろこしのコンバイン収穫跡地の藁稈すき込み作業体系を示すと第4図のとおりである。耕起作業の所要時間は麦の場合、改良前の10.1時間に対して4.9~5.9時間となり、藁稈のすき込み精度は完全である。すき込み作業は、平坦地でエロ-ジョンの心配の少ない場合は、秋季に行うことが好ましい。

 第4図 麦およびとうもろこしのコンバイン収穫跡地藁稈すき込み作業体系
 作物   圃場条件   前処理   耕起   総作業時間 
 (時/ha)
 同比 
 (%)
 藁稈すき込み
 精度

      -の結びつきが推奨する耕起作業体系
      ( )内は作業時間