【普及奨励事項】
除草剤によるラベンダ-雑草防除試験成績
北海道農業試験場作物部
北海道立中央農業試験場畑作部

 昭和36年~40年の5ヶ年に亘りラベンダ-圃場に対する除草剤の試験を行ってきたが、ラベンダ-の花茎収量、収油量に悪影響がなく、除草効果の高い除草剤としてCAT、アトラジン(Atrazine)
プロパジン(Propazine)CI-IPCが実用化しうる結果が得られた。
 雑草発生前のDCMU処理は薬害の恐れがあり、MCP+接触剤(PCP、DNDC、或いはDNBP)は除草効果が低く、多年生禾本科雑草を対照とするDPAの処理は開花異常を起こすので実用化は困難であった。

Ⅰ 試験目的
 ラベンダ-の生育収量に悪影響がなく、除草効果の高い除草剤を見出し、除草労力の節減を計る。

Ⅱ 試験方法の概要
 1. 試験場所: 曾田香料KK 岩内農場
 2. 耕種梗概: 除草以外農場慣行法による
 3. 試験区別
  A 秋処理
 (1) 昭和36年
   ① CA+100g
除草剤     ① 8月30日
処理期
   ② CI-IPC250 ② 9月20日
 (2) 昭和37年
    ① CI-IPC 250g
    ② CAT 100g
    ③ 慣行
     9月19日処理、DPA500g加用
 (3) 昭和38年
   ① CI-IPC 250g   ③ アトラジン 100g
   ② CAT    100g   ④ プロパジン 100g
   ⑤ 慣行
       9月26日処理
 (4) 昭和39年
  同上の他考区として    ⑥ 無除草
                   ⑦ リニユロン 100g
                      9月22日処理
  B 春処理
 (1) 昭和38年
  ① CI-IPC 100g
  ② CAT 50g
  ③ 慣行  5月1日処理
 (2) 昭和39年
  ① CI-IPC 250g   ④ プロパジン 100g
  ② CAT 100g      ⑤ 慣行
  ③ アトラジン100g       5月12日処理
 (3) 昭和40年
  同上の他参考区として ⑥ リニユロン
                 ⑦ 無除草
                     5月11日処理

Ⅲ 試験結果
 A 秋処理
  1. 処理期について
   CAT100g、CI-IPC250gを昭和36年8月30日、9月20日の雨期に処理を行った。優占草種はハチジョウナ、コヌカグサ、ハコベでその他ツユクサ、ヒメスイバが発生していた。越冬後のラベンダ-生育は無処理と変わらず、薬害は全く認められなかった。
 雑草布は不均一であったが、第1表、第2表に示したように秋処理の時期によって除草効果が著しく異なった。すなわち、越冬前、後雑草重は9月20日処理が著しく少なく、8月30日処理により除草効果は著しく高かった。8月30日処理は同期の無除草と比較すると除草効果はなかりあるが、処理後の気温が高く、除草剤の分解不活性化が早く結果的に9月20日処理に著しく劣るもののようである。

 第1表 秋処理の処理期と越冬前雑草重(10月19日調査)
処理期 薬剤名 反復 雑草重
(g)
百分比
(%)
同左
9月20日
(%)
8月30日 CAT 100 1 250    
2 900
平均 575 78 426
IC-IPC 250 1 760    
2 300
平均 530 72 393
無処理 1 650    
2 790
平均 740 100 548
9月20日 CAT 100 1 20    
2 10
平均 15 11 11
IC-IPC 250 1 40    
2 20
平均 30 22 22
無処理 1 170    
2 100
平均 135 100 100

 第2表 秋処理の処理期と越冬後雑草重(5月9日)
処理期 薬剤名 反復 雑草重 百分比
(%)
9月20日
無処理対
(%)
コヌカグサ
(g)
広葉
(g)
合計
(g)
8月30日 CAT 100 1 370 40 410    
2 60 10 70
平均 215.0 25.0 240 28 42
IC-IPC 250 1 200 70 270    
2 70 70 140
平均 135.0 70 205 24 36
無処理 1 460 440 900    
2 130 680 810
平均 295 560 850 100 148
9月20日 CAT 100 1 10 0 10    
2 20 0 20
平均 15.0 0 15.0 3 3
IC-IPC 250 1 70 0 70    
2 5 20 25
平均 37.5 10.0 47.5 8 8
無処理 1 10 570 580    
2 80 490 570
平均 45.0 530.0 575.0 100 100


  2. 除草剤の種類と除草効果
   供試した薬剤中CAT、アトラジン、プロパジン各100gは第3表に示すように著しく効果が高く慣行の1/3程度に雑草を抑制した。ラベンダ-は同一圃場での栽培が長期に亘るのでエゾノギシギシ、ノボロギク、ハチジョウナ、ヒメスイバ、コヌカグサ等の多年草が発生多くこれらに対し各薬剤名の効果は低い欠点がある。CI-IPCはトリアジン系3薬剤より雑草範囲が狭く効果が低く、かつ年次の差があった。秋処理の除草効果は6月末まで継続するが、6月中旬以降は雑草が急激に増加するからこの時期に中耕除草を行う方がのぞましい。

 第3表 秋処理の除草効果
試験区別 ヒメスイバ アカザ ハコベ ノボロギク 禾本科 その他 百分比
CI-IPC 250 37 45.0 0 15.5 0 27.3 49.4 137.2   
38 0 125.0 41.0 226.5 0 120.5 513.0
39 0 0 1.3 0 0.7 43.4 45.4
平均 15.0 41.7 19.3 75.5 9.3 71.1 231.9 74
CAT    100 37 53.3 0 3.9 0 11.5 30.4 99.1  
38 0 30.0 77.5 28.0 43.8 9.5 188.8
39 2.7 0 2.0 0 1.5 8.2 14.4
平均 18.7 10.0 27.8 9.3 18.9 16.0 100.8 32
アトラジン100 37  
38 0 13.5 32.5 26.8 12.3 88.6 173.7
39 0 0.3 0.3 0 12.8 44.3 57.7
平均 0 6.9 16.4 13.4 12.6 66.5 115.7 37
プロパジン100 37  
38 0 8.5 18.0 60.8 46.0 74.3 207.6
39 0 0.3 1.5 0 0.4 4.2 6.4
平均   4.4 9.8 30.4 23.2 39.3 107.0 34
慣     行 37 36.0 0 2.0 0 130.0 12.3 181.3  
38 0 48.3 415.0 197.5 13.5 22.5 696.6
39 3.3 1.7 8.8 9 15.4 39.8 69.0
平均 13.1 16.7 141.9 65.8 52.9 24.9 315.3 100
無  除  草 37    
38
39
平均  
リニユロン 37    
38
39
平均  
  注) 37年: 37年9月19日処理(DPA500加用)  38年7月3日調査  3反復
     38年: 38年9月26日処理  39年7月4日調査  2反復
     39年: 39年9月22日処理  40年7月16日    3反復

  3. ラベンダ-花茎収量
   花茎収量に大差はないが、2ヶ年の平均収量でCI-IPCがやや劣りプロパジン収量が最も多収を示し、アトラジン、CATがこれについだ。
 収油量は昭和40年の蒸溜中の故障で信用度が低いが、いずれも慣行に優る収油量があった。除草剤処理によって収油率に悪影響はないと思われる。

 第4表 秋処理の収量調査
試験区別 花茎収量 収 油
区当
(kg)
10a当
(kg)
百分比
(%)
区当
(kg)
10a当
(kg)
百分比
(%)
CI-IPC 250 39 12.20 366.0 108 0.76 2.782 117
40 10.10 303.0 81 0.65 1.970 106
平均 11.15 334.5 94 0.71 2.376 112
CAT    100 39 12.35 370.5 109 0.64 2.371 100
40 12.60 378.0 102 0.50 1.890 102
平均 12.48 374.3 105 0.57 2.131 101
アトラジン 100 39 13.35 400.5 118 0.62 2.483 105
40 12.70 381.0 102 0.69 2.629 141
平均 12.48 390.8 110 0.66 2.556 121
プロパジン100 39 13.60 408.0 120 0.69 2.815 119
40 14.40 432.0 116 0.53 2.290 123
平均 14.00 420.0 118 0.61 2.553 121
リニユロン 39
40 12.30 369.0 99 0.30 1.107 60
平均 12.30 369.0 99 0.30 1.107 60
慣   行 39 11.30 339.0 100 0.70 2.373 100
40 12.40 372.0 100 0.50 1.860 100
平均 11.85 355.5 100 0.60 2.117 100
  38年:2反復 7月14日収穫

 B 春処理
  1. 除草効果
   3ヶ年の春処理の結果、CAT、アトラジン、プロパジンの3薬剤の除草効果に差なく、収穫期の雑草はいずれも慣行の1/3であった。CI-IPCはアカザに対する殺草力、ヒメスイバ、ノボロギク、その他広葉雑草の抑草力が上記3薬剤より弱い。

 第5表 春処理の除草効果
試験区別 ハチジョウナ
(g)
ノボロギク
(g)
ハコベ
(g)
ギシギシ
(g)
禾本科
(g)
その他
(g)

(g)
百分比
(%)
CI-IPC 250 37 60.0 11.5 2.0 0 0 28.0 101.5  
38 0 193.5 55.3 142.5 6.5 32.6 428.4
39 0 61.7 0 33.3 0 97.7 142.7
平均 20.0 88.9 18.4 58.6 2.2 52.8 240.9 68
CAT    100 37 302.7 2.3 0.2 0 0 65.7 370.9  
38 0 0.3 11.3 42.8 3.5 27.5 85.4
39 0 0 0 21.7 0.8 9.7 32.2
平均 100.9 0.9 3.8 21.5 1.4 34.3 163.0 46
アトラジン100 37  
38 0 11.5 52.5 82.5 6.5 70.4 223.4
39 0 0 0 40.0 2.7 0.3 43.0
平均 0 5.8 26.3 61.3 4.7 35.4 133.2 46(46)
プロパジン100 37  
38 0 5.0 0 35.5 6.8 4.0 51.3
39 0 0 1.3 23.7 1.5 15.6 42.1
平均 0 2.5 0.7 29.6 4.2 9.8 46.7   
慣     行 37 261.7 99.3 7.8 0 0 119.8 488.6  (16)
38 0 21.0 185.0 6.5 0.3 334.9 547.7
39 0 0 4.3 11.7 0 9.3 25.3
平均 87.2 40.1 65.7 6.1 0.1 154.7 353.9 100
無  除  草 37  
38
39 21.5 9.0 113.0 185.0 3.7 123.0 455.2
平均 21.5 9.0 113.0 185.0 3.7 123.0 455.2  
リニユロン 37  
38
39 3.0 0.5 0 0.7 0.3 28.4 32.9
平均 3.0 0.5 0 0.7 0.3 28.4 32.9  
  注) 38年: 5月1日処理 (6月11日、MCP40+PCP600)、CI-IPC100g、CAT50g
                   3区平均雑草調査7月3日
     39年: 5月12日処理 雑草調査7月4日  2反復
     40年: 5月11日処理 3反復 7月16日調査
     アトラジン、プロパジン百分比は慣行39、40年平均286.5を100とする。

 2. 収量調査
  2ヶ年平均花茎収量はCI-IPCが最も多収を示し、CATがこれについだ。プロパジン、アトラジンは慣行とほぼ等しい花茎収量であった。プロパジン、アトラジンの収油率が高く、収油量に薬剤間の差はなく、いづれも慣行に対し20%~30%の多収を示した。

 第6表 春処理の収量調査
試験区別 花茎収量 収 油
区当
(kg)
10a当
(kg)
百分比
(%)
区当
(kg)
10a当
(kg)
百分比
(%)
CI-IPC 250 39 22.350 670.5 138 0.35 2.345 118
40 7.600 228.0 95 0.57 1.300 129
平均 14.970 449.3 124 0.46 1.823 122
CAT    100 39 20.450 613.5 127 0.33 2.025 102
40 8.300 249.5 104 0.62 1.606 159
平均 14.375 431.3 119 0.48 1.816 121
アトラジン 100 39 16.300 489.0 101 0.55 2.690 135
40 7.500 225.0 94 0.50 1.125 112
平均 11.900 357.0 99 0.52 1.908 127
プロパジン100 39 17.400 522.0 108 0.50 2.610 131
40 7.800 234.0 98 0.53 1.240 123
平均 12.600 378.0 104 0.52 1.925 129
リニユロン 39
40 7.900 237.0 99 0.45 1.067 100
平均 7.900 237.0 99 0.45 1.067 100
慣   行 39 16.150 484.5 100 0.41 1.198 100
40 8.000 240.0 100 0.42 1.008 100
平均 12.075 362.3 100 0.42 1.498 100
  注) 昭和39年
      〃 40年  区間  NS

Ⅳ ラベンダ-に対する除草剤使用基準及び注意事項
 (1) 春(萌芽期、5月上旬)、秋(9月下旬)の雨期のしぃろが可能である。秋の処理は8月の処理は著しく除草効果が劣るので9月下旬の処理を行うよう注意を要する。
 (2) 使用薬剤はCAT、プロパジン、アトラジン、CI-IPCのA薬剤であるが、前3者は成分量100g/10a(製品量でいずれも200g/10a)、CI-IPCは成分量250g/10a(製品量約550g)を水70L~90L/10aで全面散布する。
 この場合薬液がラベンダ-に附着しても差支えない。
 (3) 春は雑草発生前処理であるが、既存の多年草のある場合はこれを除き秋は必ず除草後に除草剤の散布を行うこと。
 (4) 秋処理は春の追肥の際、中耕機をかけるので処理層が破壊されるものと思われるが、試験の結果では秋処理の効果は7月まで認められるので追肥中耕は行っても差支えない。
 (5) いずれも薬剤も多年草に対しては一時的な抑制効果に終わるので手取りする必要がある。