【普及奨励事項】
定植年除虫菊の除草剤に関する試験成績
北海道立上川農業試験場
Ⅰ 試験目的
 各種除草剤が定植当年除虫菊の除草効果ならびに生育に及ぼす影響について検討する。

Ⅱ 試験方法
 (1) 耕種梗概
  昭和39年6月下旬より8月にわたり砂床に芽挿法により育苗
  昭和40年6月4日無肥料にて定植を行う(畦巾60cm×株間25cm)
   追肥は6月26日行った(硫安10kg/10a)
   除草剤散布 6月10日
 (2) 1区面積及び区制  1区6m2 乱塊法2反復
 (3) 供試品種 ワッサム
 (4) 供試面積 200m2
 (5) 土性  砂壌土

Ⅲ 試験区別
処理
番号
薬剤名 剤形 薬量(成分量)g/10a
1 PCP 微粒 1.000
2 1.500
3 CAT 50
4 100
5 リニユロン 56
6 75
7 プロパジン 50
8 75
9 CIMU 100
10 CI-IPC 100
11 DNBPA 200
12 無処理


Ⅳ 試験経過の概要
 6月4日に3~5cmの苗を定植した。定植後6月上旬いっぱいは高温適湿に恵まれて活着は比較的良好であった。除草散布当日は土壌も適湿で除草剤散布には好条件であったが散布日の午後6時頃より1.9mmの降雨があって薬害が懸念された。
 除草剤散布時期の除虫菊は定植後6日に当り、活着の初期であった。その後6月中下旬は降水量が極めて少なく除虫菊の生育は不良であった。7月に入ってからは降水量も増し追肥の効果もあって生育も回復に向かい、その後は特に支障なく経過した。

 6月の気象表
項  目 6月1日 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21日 22 23 24 25 26 27 28 29 30
平均気温(℃) 12.5 13.5 13.0 13.0 11.3 11.9 9.7 12.1 14.0 15.1 16.7 15.8 18.8 19.0 17.9 18.5 19.8 15.5 16.6 19.3 19.8 17.2 18.0 14.9 14.4 18.5 20.2 19.2 19.7 18.6
降水量 (mm) 1.0 8.9 8.4 3.0 12.0 17.4 7.4 1.9 4.4 3.1 0 2.4 0 0 0.3 1.0 24.5

Ⅴ 試験成績
 1. 生育調査
試験区別 草丈
7月24日
開花数 薬害
6月12日
薬害
7月24日
備  考
PCP微粒剤 1.000g 18.3 7.0 終始薬害は見受けられなかった。
散布後日頃より除虫菊の生育が回復
しはじめたが若干回復の遅れが見えた。


液剤散布区は6月中下旬の乾燥時には
無処理区と大差なく何れも生育が停滞
気味であったが7月上旬になり、生育が
回復に向かったにもかかわらず各区共
に葉が依然として淡黄色に褐色し、
左の7月24日現在も依然として各区の間
区の間に後遺症差異を残していた。


散布後2日目頃より幼葉が枯れ始めたが
日が経つにつれて回復に向かった。草丈はあるが軟弱徒長気味
   〃    1.500g 15.3 6.5
CAT        50g 14.8 5 稍少
 〃       100g 12.2 5 稍多
リニユロン    50g 10.2 1
   〃      75g 9.6 1
プロパジン    50g  11.1 1.5
   〃      75g 15.2 6.5
CIMU      100g 11.9 1.5 稍多
CI-IPC     100g 18.2 5.5
DNBPA     200g 13.5 2.5 稍多
無処理区 17.7 5.5

 2. 雑草調査(7月13日調査) 
    (m2当り本数)
試験区別/雑草名 あかざ たで つゆ草 よもぎ すべりひゆ なずな はちじょうな はこべ すぎな かたばみ だいおう 小計 すずめの
かたびら
ひえ しばむぎ 小計 合計
PCP微粒剤 1.000g 8.5 10.0 21.5 12 10.5 2 2.5 13 27 0.5 0 107.5 41 6 12.5 59.5 161.0
   〃    1.500g 3 4 6.5 12.5 7 2 0.5 6 9.5 0 0 51.0 13.5 4 5 22.5 73.0
CAT        50g 8 30 41.5 4 5.5 0 0 0.5 7.5 0.5 0 102.5 2.5 24 0.5 27.0 129.5
 〃       100g 9 13.5 25.5 3.5 3 0.5 0.5 0 5.5 0 0 61.0 1.5 4.7 0 42.5 109.5
リニユロン    50g 3 13.5 23.5 1 0.5 0 0 0 4.5 0 0 46.0 0 1.5 2.5 4 50
   〃      75g 0 5 53 12 0 0 0 0 4.3 0 0 113.0 0 0.5 7 7.5 120.5
プロパジン    50g  1 21 21 4 1 25 0 0 2.5 0 0 53.0 0 23 1.5 24.5 77.5
   〃      75g 0 9 17 10 0.5 0.5 0 0 10 0.5 0 47.5 0 10 8.5 18.5 66.0
CIMU      100g 2.5 0.5 16 5 0 0 0 0 42 0 0 66.0 0 0.5 0 0.5 66.5
CI-IPC     100g 65 1.5 50.5 22 4.5 15 0 0 21.5 2 0 152.0 2 0 16.5 18.5 170.5
DNBPA     200g 1.5 18 16 15 1 0 2.5 0 1.5 0 0 55.5 7 13 10.5 30.5 86.0
無処理区 50.5 126.5 55.5 8.5 8 19 0 45 9.5 3 2 327.5 17.5 3 6.5 27.0 354.5

    重量(m2当り)
試験区別/雑草名 あかざ たで つゆ草 よもぎ すべりひゆ なずな はちじょうな はこべ すぎな かたばみ だいおう 小計 すずめの
かたびら
ひえ しばむぎ 小計 合計
PCP微粒剤 1.000g 11.3 6.8 51.0 20.5 16.0 20.0 10.0 19.0 43.3 0.3 0 198.0 40.3 3.5 47.3 71.0 269.0
   〃    1.500g 1.5 1.0 25.3 15.5 14.8 0.5 0.5 4.5 37.0 0 0 100.1 5.0 3.8 18.0 26.8 126.9
CAT        50g 5.5 20.5 148.8 6.3 4.3 0 0 0.05 31.0 0.5 0 216.8 1.0 19.8 1.5 22.3 239.1
 〃       100g 3.3 5.3 101.3 4.5 1.8 3.8 0.5 0 8.5 0 0 128.8 1.0 18.5 0 19.5 148.3
リニユロン    50g 4.3 8.5 118.0 6.65 0.05 0 0 0 10.5 0 0 141.4 0 1.5 3.5 5.0 146.4
   〃      75g 0 4.4 14.4 15.0 0 0 0 0 90.3 0 0 253.6 0 0.05 13.5 13.6 267.2
プロパジン    50g  0.25 14.8 56.3 5.3 0.5 2.8 0 0 26.8 0 0 106.0 0 19.8 6.3 26.0 131.0
   〃      75g 0 7.0 30.0 12.3 0.05 0.5 0 0 33.3 0.5 0 83.2 0 11.5 26.3 37.8 120.9
CIMU      100g 5.3 0.25 47.8 16.0 0 0 0 0 147.8 0 0 217.0 0 0.05 0 6.05 217.1
CI-IPC     100g 90.3 1.0 118.5 36.5 2.5 10.8 0 0 42.0 0.5 0 301.8 1.3 0 13.8 15.0 316.8
DNBPA     200g 0.8 13.8 22.5 16.0 0.25 0 2.5 0 1.0 0 0 56.8 0.8 6.8 29.8 37.3 94.0
無処理区 66.8 185.3 304.5 18.8 10.8 34.8 0 52.9 23.0 2.3 3.0 701.9 10.8 2.0 14.0 26.8 728.6

   本数ならびに重量百分比
試験区別 本数
(本)
百分比
重量
(g)
百分比
備考
PCP微粒剤 1.000g 167.0 46 269.0 37 雑草重量の



Lsd  0.05
       164g

Lsd  0.01
       232g

   〃    1.500g 73.0 20 126.9 17
CAT        50g 129.5 36 239.1 33
 〃       100g 109.5 30 148.3 20
リニユロン    50g 50.0 14 146.4 20
   〃      75g 120.5 34 267.2 37
プロパジン    50g  77.5 22 131.0 18
   〃      75g 66.0 18 120.9 16
CIMU      100g 66.5 18 210.1 30
CI-IPC     100g 170.5 47 316.8 43
DNBPA     200g 86.0 24 94.0 13
無処理区 357.5 100 728.6 100

Ⅳ 試験結果の考察
 1. 除虫菊の薬害および生育に及ぼす影響について
  散布後2日目の薬害調査ではDNBPAのみに接触害が見られたが散布後6月中下旬は乾燥状態が続いたために6月下旬になって除虫菊は全般に淡緑色となり褐色が目立ちはじめたが一般に液剤散布区>は無処理区PCP微粒区に比べてその度合いが強かった。7月に入って適度な降水があり生育の回復と同時に無処理区PCP微粒区区は葉の傑色の度が増したが液剤区は依然として葉色は淡緑~淡黄色で優れなかった。叉この褐色の回復は8月に入った。
 2. 殺草効果について
  優占雑草はつゆ草・たで・あかざ・はこべで部分的にはよもぎ・すぎな・しばむぎ・すずめのかたびら等が群生していた。PCP微粒剤はあかざ・たで・はこべの殺草効果は大きく、叉つゆ草にも効果が見られた。CATはあかざ・はこべ・たでの殺草効果が大きかった。リニユロン・プロパジン・CIMUは共にあかざ・たで・はこべ・すずめのかたびらの殺草効果は大きく、その他の雑草には効果がなかった。DNBPAはあかざ・たで・はこべに対しての効果が大きかった。
 3. 実用化に対する所見
  除虫菊は除草剤に対して抵抗性が弱い作物の1つであり何よりも薬害の生じないことが重要な点と思われる。本試験ではPCP微粒剤が殺草効果も比較的良く薬害も1.000gで全く見当らず非常に良い結果を得た。これは微粒剤であるために作物体に直接触れなかったことによるものと思われる。
 4. 綜合考察
  (1) 当年除虫菊除草剤としてはPCP微粒剤が良い結果を得たが、薬量は1~1.25kg(製品で4~5kg)程度が適当と思われる。
  (2) 散布時期は雑草の発生初期の散布が効果が高いので除虫菊の場合定植後1週間前後が望ましい。
  (3) 微粒剤は土壌水分によって効果に差があるので土壌湿度高い時に使用することが望ましい。ただし除虫菊の茎葉に水滴のある時は散布を避けた方が良い。
  (4) 微粒剤散布に当っては均一に撒くことが大切なので散粒機を使うか又は手撒きの場合など均一にしかも撒込まぬよう注意することが必要である。
  (5) 経年除虫菊については散布時期耐薬性にも問題があるので今後の課題にしたい。