【普及奨励事項】
ぶどう「バッファロ-」に関する試験成績 道立中央農試園芸部 |
Ⅰ 来歴
1961~62年にカナダバイランド農試より導入したもので、ハ-バ-ト×ワトキンス(ミルズ×オンタリオ)の交配種である。
Ⅱ 特性調査
1. 生態調査
品種名 | 年次 | 萌芽期 | 展葉期 | 開花期 | 着色期 | 収穫期 |
バッファロ- | 38 | 5. 8 | 7.5 | |||
39 | 5. 2 | 5.15 | 7.10 | 9.18 | ||
40 | 5.17 | 5.28 | 7.11 | 9.16 | 10. 5 | |
ヴァンビュレン | 38 | 5.13 | 7. 1 | 9. 8 | ||
39 | 5. 6 | 5.18 | 7. 9 | 9.22 | ||
40 | 5.20 | 6. 1 | 7.10 | 9.16 | 10. 3 | |
フレドニア | 38 | 5. 8 | 7. 1 | 9. 8 | ||
39 | 5. 4 | 5.15 | 7. 6 | 9.22 | ||
40 | 5.19 | 6. 1 | 7. 8 | 9.14 | 10. 3 | |
ヒムロッド | 38 | 5.13 | 7. 8 | |||
39 | 5. 7 | 5.17 | 7.13 | |||
40 | 5.22 | 5.29 | 10. 3 | |||
キャンベルスア-リ- | 38 | 5. 7 | 7.11 | 9. 5 | ||
39 | 5. 4 | 5.14 | 7. 6 | 9.16 | ||
40 | 5.17 | 5.28 | 7.10 | 9.17 | 10. 5 |
品 種 | 収穫 | 調査 | 果房長(cm) | 果房重(g) | 総粒数 | 総粒重(g) | 果粒重(g) | 果粒径 (タテ×ヨコcm) |
バッファロ- | 10.5 | 10.7 | 13.1 | 188.4 | 54.6 | 182.8 | 3.4 | 1.72×1.72 |
ヴァンビュレン | 10.5 | 10.7 | 11.7 | 185.0 | 65.2 | 179.4 | 2.8 | 1.58×1.63 |
フレドニア | 10.5 | 10.7 | 13.1 | 193.6 | 51.2 | 188.4 | 3.7 | 1.86×1.78 |
キャンベルス | 10.5 | 10.7 | 16.8 | 327.0 | 77.4 | 317.9 | 4.1 | 1.86×1.99 |
品 種 | 樹令 | 樹 性 | 開花期 | 収穫期 | 耐病性 (褐斑病) |
||||
耐寒性 | 樹勢 | 枝梢発 生状態 |
結果状態 | 花振性 | |||||
バッファロ- | 4 | 強 | 中 | 良 | 中~良 | 少 | 7.10 | 10.5 | やや弱 |
ヴァンビュレン | 5 | 強 | 中~強 | 良 | 良 | 少 | 7. 6 | 10.3 | 強 |
フレドニア | 5 | 強 | 強 | 良 | 良 | 少 | 7. 5 | 10.3 | 弱 |
キャンベルス | 5 | 中~強 | 中~強 | 良 | 中~良 | やや多 | 7. 7 | 10.5 | やや弱 |
品 種 | 果実果汁の特性 | 1樹当 収量 (kg) |
用途 | ||||||||||
粒色 | 1房 平均重 (g) |
房形 | 粒着 | 肉質 | 糖度 | 酸度 | 香 | 品質 | 脱粒性 | 貯蔵性 | |||
バッファロ- | 紫黒 | 200 | 長錘 | やや粗 | 柔緑 | 19.3 | 1.40 | 芳香 | 極上 | 難 | 40 | 10 | 生加 |
ヴァンビュレン | 青黒 | 180 | 短円筒 | 密 | 柔緑 | 14.0 | 1.10 | やや香 | 上 | 易 | 15 | 16 | 生 |
フレドニア | 青黒 | 190 | 短円筒 | 密 | 柔緑 | 13.7 | 1.26 | やや香 | 中~上 | 易 | 15 | 19 | 生 |
キャンベルス | 黒 | 340 | 長錘 | 極密 | やや堅緑 | 14.2 | 1.14 | やや香 | やや上 | やや易 | 20 | 28 | 生 |
品 種 | 分析月日 | 全糖 | 還元糖 | 総酸量 | ブリックス | PH |
バッファロ- | 10. 6 | 15.76 | 11.12 | 1.40 | 17.8 | 2.9 |
ヴァンビュレン | 10. 7 | 11.95 | 7.91 | 1.10 | 14.0 | 3.1 |
フレドニア | 10. 6 | 10.87 | 8.33 | 1.26 | 13.2 | 2.9 |
ヒムロッド | 10. 6 | 18.29 | 17.52 | 1.18 | 20.0 | 2.9 |
キャンベルス | 10. 7 | 12.60 | 12.07 | 1.14 | 14.2 | 2.9 |
ナイヤガラ | 10.11 | 9.76 | 10.79 | 1.28 | 14.8 | 2.9 |
デラウェア | 10.11 | 15.74 | 15.50 | 1.56 | 18.5 | 2.7 |
品 種 | 収穫当日 | 2週間後 | 3週間後 | 4週間後 | 5週間後 |
バッファロ- | 19.3 | 19.4 | 19.6 | 19.5 | 18.0 |
ヴァンビュレン | 14.0 | 13.6 | 13.6 | 13.2 | 調査せず |
フレドニア | 13.7 | 14.5 | 13.5 | 13.7 | 〃 |
キャンベルス | 14.2 | 13.9 | - | - | 〃 |
品 種 | 収穫当日 | 2週間後 | 3週間後 | 4週間後 | 脱粒計 |
バッファロ- | 0(0) | 0(0) | 0(0) | 1(0.8) | 1(0.8) |
ヴァンビュレン | 0(0) | 4(2.2) | 31(16.7) | 13(7.0) | 48(25.9) |
フレドニア | 0(0) | 2(1.0) | 12(6.2) | 6(3.1) | 20(10.3) |
キャンベルス | 0(0) | 3(1.6) | 15(8.1) | 9(4.9) | 27(14.6) |
品 種 | 4週間後 | 8週間後 |
バッファロ- | 全て収穫時と変わらず | 香少なく、果梗褐変商品化劣る |
ヴァンビュレン | 果粒萎凋、果肉溶け汁質なし、悪臭、商品価値なし | |
フレドニア | 果肉変質、香味悪変、商品価値なし | |
キャンベルス | 外観、果肉変わりないが、食味よくない。商品価値劣る。 | 発酵臭、果肉褐変、カビ激しい |
Ⅳ 考察
第1に問題にされる脱粒性については、「バッファロ-」はほとんど完璧というべき耐脱粒性を有すことが明らかにされた。次ぎに果房、果粒の外観の変化であるが、少なくとも1ヶ月は収穫時の状態を保持できた。ただ香りについては、1ヶ月を経過する頃から次第にうすれてゆくようである。また果梗も8週間後には完全に褐変するので、安全貯蔵期間は約40日が限度であろう。
しかし同時に試験した品種を対照するとき、フレドニアは約15日、ヴァンビュレンでは15日もしくはそれ以下、キャンベルア-リ-でも約20日が精々であった。
従ってバッファロ-はその果実の貯蔵性についてかなりすぐれた特質をもつものと考えられる。
Ⅴ 総合考察
最近の果樹に対する消費者の要望は、他作物と同様品質第1主義の傾向が強くなってきた。ことにブドウに対する要望は従来の品種の点で満足されなくなっている。すなわち、従来のブドウ品種は南は九州から北は北海道まで、ほとんど同一品種が栽培されているが、これらの品種は糖分が低いばかりでなく、花振り性が高かったり、徒長にすぎて寒地では凍害を受けることさえある。
今後の品種としては、糖度が高く、芳香を有することと、更に、耐寒性が高く、貯蔵力のあるものが要望されている。
これらの点からみて「バッファロ-」は上記のように大きな特徴を備えていることから、従来の本道における品種としては類例のないものである。更に、「バッファロ-」は高糖度であること、酸度が高く生食、加工兼用種としても有望であろう。今1つの特徴は従来の奨励品種はいずれも「げんこつ型」といって粒着が密であるので、1房の折半は容易であり、生食用とくにデザ-ト用としても便利である。また、粗着のブドウは脱粒しにくいといわれているが、かえって従来の品種より脱粒しにくいという特徴を備えている。また糖度が収穫適期に19℃以上となるのはシベレリンでも使用しない限りは従来の品種にはみられない。
なお、栽培の難易については、従来のものと全く変わりがない。収量は従来の太房を目標としていたキャンベルスに比較すれば約7~8割程度となろう。しかし、品質の点でこれを十分補ない得ることは確かと考えられる。収量については現在まだ幼木なので将来成木になったときについてはどうかという問題もあろうが、現在の精密な試験調査の結果からみて危惧することはないと思われる。むしろ、栽培者の経済性が従来のものより高きなることが予想される。
Ⅵ 特徴の要約
1. 熟期 早生種
2. 糖度 19以上最高22
3. 香気 万人向きの特殊芳香
4. 粒着 やや粗
5. 貯蔵力 11月下旬まで
6. 葉 葉形中等の三片葉で葉色は暗緑色
7. 巻ひげ 断続性
8. 花 自家結実性で雄芯直立
9. 結果母枝 垂曲しない明瞭な縦条あり、節間広く、節厚い。
10.新梢 軟毛でおおわれ緑色
Ⅶ 栽培上の注意
栽培上特に他品種と異なる点はない。むしろ幼木中の樹勢が強くないため、剪定は容易である。従って初期収量が多い。
1. 土壌は排水良好な乾燥地を好むが、地下錘の高い不良土壌でも能力を十分発揮する。
2. 施肥は石灰を十分施用して土壌酸度を中和し、燐酸、加里は多目に施こす。(例えば要素比率をN:P:Kを1:1.5:2.0)
3. 栽培範囲としては現在の産地では経済栽培ができる。将来はキャンベルスをバッファロ-におきかえてゆく経営が考えられる。