【普及奨励事項】
リンゴ新農薬に関する試験

Ⅰ モノックス(有機硫黄剤)に関する試験-
北海道農試園芸部第1研究室
 1. 対象病害……りんご黒点病
 2. 薬剤名………モノックス(有機硫黄剤)
 3. 主成分………NNビス(ジメチル シチオカ-バイモル)エチレンジアミン30%
 4. 散布倍数……1.000倍
 5. 試験方法
  (1)供試品種は紅玉を用い樹土で大枝別に駆を設け1駆3反復した。
  (2)散布は動力噴露機で落花後25日に処理
  (3)調査は10月中旬実施
 6. 試験結果
  (1)りんご黒点病薬剤防除試験  (昭和40年)
項目/薬剤名 散布
倍数
調査
果数
黒点病(%) 銹果(%)
健全 健全
モノックス 1.000 293     1.0 99.0 13.8 14.5 36.2 35.5
ノックメ-ト 1.000 297   2.3 23.0 74.7 19.9 17.1 31.8 31.2
無散布 301 0.4 5.0 33.7 60.9 12.4 11.5 42.2 33.9
  1区3反復  6月26日散布

  (2)りんご黒点病薬剤防除試験  (昭和35年)
項目/薬剤名 散布
倍数
調査
果数
黒点病(%) 銹果(%)
健全 健全
ノックメ-ト 1.000 262 10.6 21.1 47.0 20.8 10.6 13.0 27.4 49.0
改良ファ-バム 1.000 274 10.0 12.5 51.9 25.6 10.2 13.5 36.5 39.8
サンキノン 1.500 263 7.2 8.4 36.2 48.2 7.9 7.0 32.3 62.8
ハイバンS 400 273 1.8 6.0 40.0 52.2 9.4 15.1 27.6 47.9
モノックス 800 276 0.6 5.1 35.2 59.1 5.0 5.6 30.0 59.4
無散布 282 50.9 28.2 17.7 3.2 5.2 7.1 34.5 53.2
  1区3反復  7月1日散布

 7. 概評
  (1)昭和40年の結果では黒点病に対してモノックスが優れた効果を示した。銹果についてはノックメ-トより健全果が多かった。
  (2)昭和35年は黒点病の発生の多い年であった。黒点病に優れた効果のあるのはモノックスで次いでハイバン、サンキノンで、改良ファ-バム、ノックメ-トは著しく劣った。
 一方銹果についてみると被害が少ないのはサンキノン、モノックスで次いでノックメ-ト等である。
 以上の両年の結果モノックスはノックメ-トに比べ黒点病の被害率が少なく且つ銹果も少ない事が認められる。

 8. 使用上の注意
  (1)モノックスはりんご黒点病の防除薬剤である
  (2)散布倍数は1.000倍とす。
  (3)散布にあたっては単用を常としボルドゥ混用は避けること。
  (4)本剤は2年目以上経過した薬品は用いないこと。

Ⅱ ニッソ-ルに関する試験成績
北海道農試園芸部第1研究室
道立中央農試園芸部
 1. 対象害虫  りんごはだに
 2. 薬剤名………ニッソ-ル乳剤(フッ素剤)
 3. 主成分………N-メチル-N-(1-ナフチル)-モノフルオル醋酸アミド 35%
 4. 散布倍数……2.000倍
 5. 毒性  急性経口  LD50 158.7mg/kgマウス
        急性経度  LD50 110.4mg/kg
 6. 試験方法および成績
   (北海道農試園芸第1研究室)
  (1)りんごはだに成幼虫殺虫試験(室内)
   成幼虫殺虫効果については無散布樹のりんごはだにの寄生している葉を採集して葉の表裏に一定時間散布し、処理後20時間おいて死虫率を調査した。尚孵化直後の幼虫は除外した。
項目/薬剤名 散布倍数 調査頭数 成幼虫
死虫数 死虫率
ニッソ-ル 2.500 136 136 100.0
ニッソ-ル 2.000 239 238 99.6
ニッソ-ル 1.500 85 85 100.0
キルバ-ル 1.500 73 72 98.6
無散布 90 8 7.8
  3反復  散布7月27日  調査7月28日  室温24度  水温19度

  (2)ボルドウ混用によるりんごはだに殺虫試験(室内)
   成幼虫殺虫効果については、無散布樹のりんごはだにの寄生している葉を採集して葉の表裏に一定時間散布し、処理後20時間おいて死虫率を調査した。尚孵化直後の幼虫は除外した。
項目/薬剤名 散布倍数 調査頭数 成幼虫
死虫数 死虫率
ニッソ-ル 2.000 255 255 100.0
ケルセン単用 2.000 332 332 100.0
無散布 143 10 7.2
  3反復  散布7月23日  室温25度
        調査7月24日  水温20度

  (3)りんごはだに殺卵試験(室内)
   殺卵については、はだに卵の寄生しているりんご新梢を採集し、成虫及び幼殻はすべて取除いた。処理後10日目調査。
項目/薬剤名 散布倍数 調査卵数 死卵数 死卵数(%)
ニッソ-ル 1.500 182 166 92.5
ニッソ-ル 2.000 160 145 89.6
ニッソ-ル 2.000 254 225 86.9
キルバ-ル 1.500 196 49 29.6
無散布 125 14 13.4
  3反復  散布8月11日  調査8月21日

  (4)りんごはだに圃場試験(第1回)
   圃場試験では芽出当初より殺だに剤を散布しない樹を設けた。成木を中枝別に試験区を設け、枝と枝と重なり合う小枝はすべて切り除いた。薬剤散布にあたっては、あらかじめ散布前のりんごはだにの寄生している頭数を記録し、散布後一定の期日に調査した。1区10葉、2反復、展着剤加用
  試験場所  北農試第1研究室圃場
項目/薬剤名 散布倍数 20葉当り、りんごはだに寄生虫数
散布前
頭数
散布後頭数
3日目 7 10 14 21
ニッソ-ル 2.000 92 0 1 28 25 169
ケルセン 2.000 88 0 0 7 16 146
無散布 139 97 253 679 526 1.015
  散布前調査7月20日  薬剤散布7月21日

  (5)りんごはだに圃場試験(第2回)   試験方法はd試験と同じ
項目/薬剤名 散布倍数 20葉当り、りんごはだに寄生虫数
散布前
頭数
散布後頭数
3日目 8 14 21
ニッソ-ル 2.000 491 34 206 331 163
ケルセン 2.000 317 5 198 358 183
無散布 256 84 1.596 1.661 1.121

  (6)初期防除に関する試験
    (道立中央農試園芸部)
   デリシャス6年生の幼木を1区2樹供試し越冬孵化完了頃に所定薬剤を動力噴露機で散布した。散布剤及び散布後における成幼虫数と夏卵数について1樹20葉を任意に取り調査した。散布前の成幼虫数のみブラッシングマシンで調査した。
  初期防除に関する試験
薬剤名 濃度 散布前 散布後
5月28日 5日目
6月4日
15日目
6月13日
30日目
6月28日
45日目
7月13日
ニッソ-ル水和剤 1.000 ダニ数
1.769.5
ダニ数
4
ダニ数
0
ダニ数
0
卵数
1
ダニ数
11
卵数
32
ニッソ-ル水和剤 2.000 1.283 9 0 1 6 27.5 83.5
テ  デ  オ  ン 1.000 1.170 124.5 34 4 955 107.5 259
無  処  理   1.243 1.449 1.608 274 1.409
  備考)  散布月日  5月30日
       ダニ数及び卵数は20葉当り平均数

  (7)夏期激発時の防除に関する試験
   レッドゴ-ルドおよびデリシャスの2年生苗木を用い、1区1樹処理とした。処理前10~15日に供試樹にりんごはだにを移住させていき、8月上旬成幼虫の密度が高く、夏卵の多いときに背負噴露機で散布した。散布前散布機に成幼虫の増減を1樹10葉を任意にとり調査した。

  (8)夏期防除に関する試験
供試薬剤 濃度 10葉当り成幼虫数
散布前 5日後 10日後 15日後 20日後
ニッソ-ル水和剤
   1.500
   1.500
+2-6式Bor
   1.000
47 2 0 1 0
ニッソ-ル水和剤 69 4 0 0 1
テ  デ  オ  ン 74 1 0 3 9
無  処  理 52 84 96 84 124
  備考  散布月日8月7日  持続効果

  (9) 5月30日に散布し、その後のダニの発生消長を調査した。
薬剤名 濃度 散布前 散布後
5月28日
ダニ数
5日目
6月4日
ダニ数
15日目
6月13日
ダニ数
30日目
6月28日
45日目
7月13日
ダニ数 卵数 ダニ数 卵数
ニッソ-ル乳剤 2.000 1.475.5 2.5 0 1 8 20.5 51
ニッソ-ル乳剤 1.500 1.214.5 2.0 0 0.3 4 12 20.5
ニュ-マイト 2.000 1.544.5 25.5 22 11.0 112 101 244.5
無 処 理   1.243.0 1.449.0 1.608 274.0 1.409.0
  備考  散布月日5月30日  ダニ数及び卵数は20葉当り平均数

 7. 試験概要
  (1)北海道農試園芸第1研究室
   表-1 りんごはだに成幼虫に対してはニッソ-ル1.500、2.000、2.500はキルバ-ルと同等の効果がある。
   表-2 ボルドウ液混用によって成幼虫の効果は低下することがなく高い死虫率を示した。
   表-3 殺卵効果ではニッソ-ルは、1.500、2.000倍いづれの区もケルセン2.000倍より優れた死卵率が認められる。
   表-4 圃場における成幼虫発生の抑制試験では時日の経過とともに漸次多くなって来るが、ニッソ-ル区の発生はケンセンに比べ孫色ない抑制があり、高い防除効果が認められた。
  (2)道立中央農試園芸部

  参考試験
  (1)りんごあぶらむしに対するニッソ-ルの効果
                  (宮城県農試 40年)
薬剤名 散布
倍数
処理
前後
散布後
2日目 5 10 15 21
ニッソ-ル 1.500 507 13 3 11 10 16
スミチオン 1.000 434 1 1 4 8 27
無散布 323 434 602 593 724 442
  苗木 新梢3本使用  処理6月9日  3反復

  (2)おおとおはだにに対するニッソ-ルの効果
                 (宮城県農試 40年)
薬剤名 散布倍数 供試数 死虫数 死虫率
ニッソ-ル 1.000 114 114 100.0
1.500 180 180 100.0
2.000 189 188 99.5
ケルセン18.5E 1.000 181 181 100.0
無散布 164 8 49
  処理及調査9月11日~12日  室温26℃  水温24℃

 8. 使用上の注意
  (1)りんごはだに防除薬剤は年間散布回数5回前後散布するが、抵抗性の問題からニッソ-ル等他薬剤も含めて連続散布を避けること。
  (2)ニッソ-ルはボルドウ液に混用しても低下がない。
  (3)ニッソ-ルのりんごはだに殺だに剤の散布濃度は2.000倍にする。
  (4)薬害の発生は少ないが天候時に夏場の気温を考慮の上散布すること。
  (5)肝臓、腎臓に疾患のある人は使用を避けること。
  (6)本剤を使用した下草は散布後3週間家畜に与えないこと。
  (7)他のフッ素系によって中毒した人は本剤の使用を避ける。
  (8)誤って口に入った時は、ただちにうがいをさせた後、水又は食塩水は大量に飲ませ、指を入れ、胃の内容物を吐かせ、直ちに医師の手当を受ける。