【普及奨励事項】
飼料用根菜類の牛乳生産性に関する研究
(飼料用根菜類の代替飼料としてのビ-トパルプサイレ-ジの飼料価値)
道立新得畜産試験場

Ⅰ 試験目的
 飼料用根菜類の栽培が多労であるため、もしビ-トパルプの飼料価値が飼料量根菜類と等しければ、こん菜を栽培出荷し、それによって還元されるビ-トパルプで代替する場合の方が飼料用根菜を作るより、面積当たりの収益が有利になるのではないかと思われるので、乳牛12頭を用い手飼料用根菜類とビ-トパルプサイレ-ジの飼料価値を比較検討し、成果を得たので報告する。

Ⅱ 試験成果の要約
 (1) 泌乳牛12頭を用いる反転飼養法により、飼料用根菜類とビ-トパルプサイレ-ジの飼料価値を比較した結果、ビ-トパルプサイレ-ジ19~20kgほぼ同一量の飼料用根菜類に匹敵する飼料価値を有することが認められた。
 (2) 生ビ-トパルプは水分含量が多いので、半乾燥したものを混合するとか、水分を調節する処置をする必要がある。

Ⅲ 試験資料
 第1表 生ビ-トパルプの化学組成(%)
乾物 乾  物  中
粗蛋白質 粗粗脂肪 N.F.E 粗せんい 粗灰分
12.68 9.95 0.44 64.59 21.40 3.62
  出来上がりサイレ-ジの上層部における廃棄量は全くなかった。そのサイレ-ジの化学的組成は第2表、PH価、有機酸含量および品質鑑定の結果は第3表のとおりである。

 第2表 ビ-トパルプサイレ-ジの化学組成(%)
乾物 乾  物  中
粗蛋白質 粗粗脂肪 N.F.E 粗せんい 粗灰分
12.81 8.96 0.98 63.59 21.98 4.49
N農家…14.20 10.91 0.51 61.54 22.71 4.33
T 〃 …13.05 10.02 0.19 63.70 22.14 3.95
O 〃 …25.59 10.03 0.32 64.08 21.52 4.05
  注) 農家3戸の試料摂取位置は12×36尺塔型サイロの中位である。

 第3表 ビ-トパルプサイレ-ジの品質
PH 酸組成a(原物%) 評価 b
(点)
乳酸 酢酸 酪酸 総酸
3.85~4.20 0.53~
0.62
0.10~
0.53
0.19~
0.84
1.05~
1.90
80
N農家…4.05 0.66 0.67 0.14 1.47  
T 〃 …4.25 0.07 0.34 0.26 0.67  
O 〃 …4.15 1.10 0.34 0 1.44  

 第4表 乳量、乳組成の比較
  乳量
(kg)
F.C.M
(kg)
乳組成(%)
脂肪 S.N.F 蛋白質
R 期 A 14.96 14.22 3.72 8.37 3.11
C 12.45 11.98 3.76 8.91 3.51
平均 13.71 13.10 3.74 8.64 3.31
B 期 B 15.42 14.47 3.55 8.45 3.08
D 13.22 12.80 3.66 8.93 3.47
平均 14.32 13.64 3.63 8.67 3.27
B/R×100 105 104 97 100 99

 第5表 飼料の乾物摂取量
処理 1日1頭当りa (kg) 体重bに対する
乾物比(%)
乾草 とうもろこし
サイレ-ジ
牧   草
サイレ-ジ
根菜類 ビ-トパルプ
サイレ-ジ
配合飼料
A 4.07 4.00 3.00 3.27 14.34 2.38
B 4.10 4.03 2.39 3.20 13.72 2.36
C 4.93 3.84 3.14 2.75 14.66 2.34
D 5.12 3.77 2.54 2.68 14.20 2.35

 第6表 飼料経済性の比較(各処理:延126日間)
  飼料費(円) FCM100kg
生産に要した
飼料費
(円)
粗飼料 配合
飼料
R 期 A 15.578 16.367 31.945 1.758
C 13.774 13.795 27.569 1.811
計(平均) 29.352 30.162 59.514 (1.785)
B 期 B 10.181 16.625 26.206 1.465
D 8.180 13.428 21.608 1.400
計(平均) 18.361 29.453 47.814 (1.433)
B/R×100 63 90 80 80
  1kgの飼料単価…乾草3.7円、サイレ-ジ2.5円、根菜類3.0円、ビ-トパルプサイレ-ジ0.77円(ビ-トパルプ工場渡し0.3円、運賃0.42円、ビニ-ル0.05円)配合飼料35.0円

Ⅳ 試験成果のまとめ
 ビ-トパルプを長期間貯蔵するにはサイレ-ジにするか、乾燥したものにするかである。そして冬期間の多汁質飼料として利用する給与形態が妥当であろう。生ビ-トパルプはかなり水分含量が多いため生産地からの運搬に無駄が多く、かつ、サイレ-ジにした場合に酪酸の生成が多い。しかし、半乾燥したものを混合して水分含量を低下せしめると総酸量が多くなり、酪酸生成量も少なくなる。更に冬期間寒冷による凍結あるいは塔型サイロに詰め込むと側圧のため地上部の壁体に亀裂を生じることなどの問題がある。
 飼養試験における飼料の1日当り総乾物摂取量がビ-トパルプサイレ-ジを併給することによって減少する傾向がみられるが、その嗜好性が飼料用根菜類より劣るのは間違いない事実である。粗せんい摂取量がR期よりB期が多く、D.C.P、T.D.N摂取量もB期が僅かに多い結果が得られた。乳量はB期が5%多いが、乳組成、飼料効率では殆ど差異を認めなかった。
 このようにビ-トパルプサイレ-ジ19~20kgがほぼ同一量の飼養根菜類に匹敵する飼料価値をも示したのは、低い糖分含量ならびに生産の過程における熱処理の影響によったためではないかと考えられる。