【指導参考事項】
基盤整備水田の排水不良対策試験成績
道立上川農業試験場

Ⅰ 試験の目的
 基盤整備による透水性の低下は、植生及び作業、特に機械導入上の大きな障害になるので、それらと乾田化の関係を考えあわせながら、かかる現象排除のための試験をおこなう。

Ⅱ 試験設計
 1. 試験地の概況
  (1) 場所  雨竜郡沼田町字共成  松重地先
  (2) 地質・土性  腐植に富む洪積埴土(灰褐色土壌、強粘土構造型)
  (3) 排水の良否  不良(半湿田)
  (4) 土壌断面
cm
15
21
47
N CL(18) ×
N CL(20) ×
N CL(20) ××
  C (21) 
10YR4/1(黄褐灰)
10YR4/1(  〃  )
10YR5/2(  〃  )
2.5Y7/2 (淡黄灰)
  (5) 施行法  昭和38年秋装軌式ブルド-ザ-によって、表土処理をともなった整備事業を実施する。
 2. 試験区名とその内容
試験区名 内   容 区面積
対    照    区     1   2.5a
簡易暗渠 弾丸暗渠区   2 深さ0.4×巾2m┐クロ-ラ-型トラクタ-牽引
 〃0.4×巾1m┘(KOMATU D45)
9.0
バンブラ-カ-区3 9.0
土  管  暗  渠  区  4  〃0.6×巾5m 9.0
穿    孔    区     5 1.7×2mの間隔(耕起前穿孔機で心土に達する穴をほり
耕起層以下のところへ稲わらをつめる
1.9
  注) 弾丸は経100mm、1本引、バンブレ-カ-は3本引。いずれも畦畔貫通

Ⅲ 試験成績
 1. 減水深の変化
 対照のものに比べると、簡易暗渠、土管暗渠のいずれも垂浸透量の幾分増加しているようであるが、その程度は極めて小さく、立毛中の適正透水量には、なお、ほどとおいものと思考される。しかし、そこには基盤整備水田の乾田化が加速度的に進行するための一つの契機の生ずることは間違いない。
 減水深調査成績
区   名 減水深(mm/24h)
対    照    区     1 0~15
簡易暗渠 弾丸暗渠区   2 3.0
バンブラ-カ-区3 2.5
土  管  暗  渠  区  4 3.5
  注) 調査月日7月13日~14日  径1mの鉄板円筒打込み
 2. 土壌断面について
(対 照)   (土管暗渠)
cm
14
21
N(腐植を含む)C(硬度18)
N(腐植に富む)C   (20)
C  (22)  ××
7.5YR5/2(褐灰)   cm
15
30
42
NC (17) ××
NC (19) ××
C  (23) ××
C  (24) ××
7.5YR5/2(褐灰)
10YR6/2(黄褐灰) 7.5YR4.5/3(灰褐)
10YR7/4(灰黄橙) 7.5YR5/3(灰褐)
7.5YR6/3(灰褐)

 基盤整備により心土が可成り混入するため、整備前の作土に比べると、腐植含量が低く、且つ二作終了後でありながら斑鉄は殆どみとめられないのが普通である。しかし土管暗渠を行った場合は縦の亀裂発達が活発で、しかも大きく、膜状斑鉄に富んでいるが、この現象は特にトレンチャ-で掘った両面において著しい。なお、弾丸暗渠やパンブレ-カ-を導入したところでも平面的な膜状斑鉄が若干みられている。
 3. 土壌の三相分布
 基盤整備水田土壌は、孔隙率が低下する反面、固相、容積重、真比重が増大している。これは恐らく腐食含量の減少と土壌構造の破壊に起因するものと思われるが、土管暗渠施行後一作を経過したものは孔隙量多く、固相、容積量は小さくなっていることが認められる。
 土壌三相分布
項目/区名 気相 液相 固相 孔隙率 容積重 真比重
未整備区 a 4.2 59.3 36.5 63.5 91.1 2.50
b 100.0 57.4 32.6 67.4 84.4 2.59
M 7.1 58.4 34.6 65.5 87.8 2.55
対照区 a 2.5 57.5 40.0 60.0 105.1 2.63
b 5.0 56.4 38.6 61.4 106.9 2.77
M 3.8 57.0 39.3 60.7 106.0 2.70
土管暗渠区 a 2.5 60.0 37.5 62.5 99.0 2.64
b 4.5 60.8 35.0 65.0 98.8 2.84
M 3.4 60.4 36.3 63.8 98.9 2.73

Ⅳ 総括
 1. 弾丸暗渠、パンブレ-カ-、土管暗渠を施行する場合の深さ、間隔、経年的変動などについてはさらに検討を要するが、基盤整備によって発生する排水不良現象は、それら施行初年目から、極めて徐々ではあるが解消する方向にあることがうかがわれる。
 2. 排水不良対策施行初年目の減水深にみられるそれらの効果はすくないが、土壌断面調査成績にも示されているように、それが亀裂の生じたことに原因する事柄である限り、やがて、それが落水後の土壌乾燥をよくし、土壌構造の発達をたすける結果になるものと推考される。
 3. 基盤整備によって一時的に発生した排水不良は土管暗渠のような半恒久策でなく弾丸暗渠、パンブレ-カ-のような方策でようものと思われる。