【指導参考事項】
基盤整備水田の自然的復元調査成績
道立上川農業試験場

Ⅰ 目的
 基盤整備施行により発生した諸事業の経年的な自然復元の様相を明らかにして技術確定上の資料とするため次ぎの調査を行った。

Ⅱ 調査成績
 1. 施行年次と減水深の関係
  現地における垂直惨透量は、施行後作数が1~2作の場合、殆どかわらないし、その量も極めて少ないが、4作経過のものは明らかに増大していることが認められる。なお、春、秋の工期別には秋の方が初年目幾分まさっているようにもみうけられるが、2作目での傾向は必ずしもそうではない。いずれにしても減水深がハッキリ大きくなるのは4年経過後とみてよかろう。
 減水深調査成績
工 期 経過作数 減水深(mm/24h)
40 春 1 0
39 秋 1 2.6
39 春 2 3.0
38 秋 2 2.1
37 春 4 16.9
  注) 調査月日 27/7~29/7
 2. 土壌断面の変化
  基盤整備をおこなった当初は無構造で膜状斑鉄も存在しないが、2作を経過する頃から塊状構造が漸次発達し、3作経過したものはそれに膜状斑鉄がくわわり、4作では塊状、粒状の複合構造がみられるようになる。また、土壌断面における秋工事と春工事の差は比較的明らかで、1作および2作経過のいずれの場合も前者の方が構造、膜状斑鉄から推定される復元速度がはやく、その程度は2作経過ですでに春工事の3作経過よりもまさっているほどである。しかし、これらのことが施行後の経過期間の長短、冬期間の変化、整備時の土壌水分などというどの事項にもとづいての現象であるかはわからない。
 土壌断面の経年的変化


 3. 土壌三相分布
  施行後経年的に固相が減少し、逆に孔隙率の増大することが認められるが、時に、4作を経過した水田において顕著であり、よく、土壌断面調査の経過と一致している。

 土壌三相分布
工期と経過作数 気相 液相 固相 孔隙率 容積重 真比重
40. 春 1 6.0 59.8 34.2 65.8 84.1 2.46
36. 秋 1 4.7 62.8 32.7 67.3 81.1 2.49
39. 春 2 6.5 62.0 31.5 68.5 83.8 2.66
37. 春 4 13.9 59.5 26.7 73.3 67.0 2.52

 4. 土壌孔隙の顕微的観察(写真省略)
  基盤整備後の年数をへるにしたがって土壌間隔は次第に大きくなるが、特に大問題がみられるのは3作および4作を経過したものについてである。また、1作と2作を経過した場合の事例であるが、春工事に比べ秋工事の方が一般に間隙が多い。
 1. 基盤整備にともなう透水性、土壌構造などの低下や破壊は、経年的にしかも、凡そ3作ないし4作の経過によって、ほぼ復元するものと思考される。
 2. また、秋工事と春工事の比較では前者の方が、復元は速いようであるが、施行時の土壌状態に支配されてのこととも考えられる。
 3. これらの諸傾向は元来、排水良始な水田地帯を対象として、えられたものであって、排水不良な重粘土壌などについては当然異なってくるものと思われる。