【指導参考事項】
水稲に対するコンバインの利用拡張に関する試験成績
道立中央農試農業機械部

Ⅰ 収穫時期・時刻と作業性能に関する試験
 1. 試験目的
 コンバイン収穫にさいし、収穫時期・時刻が稲の損失にどのように影響するかを知る。
 2. 試験場所及び期日
月日 場  所
10. 4 岩見沢市 中央農試圃場
10. 9   〃       〃
10.13 厚真町 本田行実氏圃場
10.17 北 村  高橋三郎氏圃場
10.22 北 村  高橋宗敏氏圃場
10.26   〃       〃

 3. 試験方法
 ほ場条件(土壌の貫入抵抗の測定)作物の条件・気象条件・藁稈ともみの水分の測定を行った。コンバイン各部を条件に合わせて調整し調整箇所を記録した。損失・能率について調査した。なおコンバインはインタ-ナショナル93、刈り巾3m、半装軌型を使用した。
 4. 作物条件
項   目/
場   所
稈長
(cm)
穂長
(cm)
穂数
(本)
10a当り
稈重
(kg)
10a当り
子実重
(kg)
備  考
岩見沢市
   中央農試
66.3 10.9 20.9 208.6 264.0 ユ-カラ
移植
67.1 15.8 22.8 256.6 250.4
64.6 14.6 406.0 398.4
厚真 本田氏 67.0 15.6 22.7 1.444.0 626.9 ウリュウ 直播播巾75cm
北村
   高橋三郎氏
65.3 16.5 25.8 1.516.6 494.0

ユ-カラ


移植
36×14.5cm

空育21号
66.9 16.8 25.7 1.721.4 706.6
66.6 12.8 18.2 1.291.4 730.6
63.8 16.6 16.9 1.357.4 672.6
北村 高橋宗敏氏 67.0 14.8 18.4 504.5 346.5 品種混合 移植36×15cm

 5. 試験時の気温・湿度および藁稈・籾水分
月日 時間 場  所 気温
(℃)
湿度
(%)
稈水分
(%)
籾水分
(%)
10. 4 12:00 岩見沢 15.3 70 59.6 26.6
  .9 12:00 13.5 65 57.5 22.8
  .13 12:00 厚 真 13.3 78 56.2 23.7
  .17 12:00 北村 高橋三郎 13.0 74 54.5 24.5
  .22 11:00 北村 高橋宗敏 12.5 75 56.0 23.2
  .26 10:10 11.6 71 49.5 21.0

 6. 試験成績
 (1) コンバインの作業条件および調整

時 刻
(時・分)
作業
速度
(m/sec)
スリッ
プ率
(%)
刈り
取り
高さ
(cm)
車輪
沈下量
(cm)







(mm)
チャ





チャプシ-ブ
エキステン
ション開度
シュ-シ-プ
開度
送風機 備   考





デフ
レクタ
10

4
12.00 0.47 0.0 14.8 18 5 1/2 2 6 全開 2 エンジン2.100回
シリンダ1.350回
フアン 635回
リ-ル 23回
ラックワイヤ3本
15.30 0.55 1.3 17.4 4.0 19 6 1/2 2 6 1/2 1
16.00 0.68 2.7 18.1 19 6 1/4 1 7 1/2 1
16.30 0.63 3.8 12.2 3.1 10.0 19 7 1/4 1 7 全開 1
16.40 0.51 2.7 14.3 1.4 19 6 1/4 1 6 1
 
 
9
11.15 0.34 7.7 13.4 4.7 20.0 20 6 1/2 4 4 2 シリンダ1.130回
ラックワイヤ
 2列 1本
 4列 3本
12.00 0.42 3.8 18.5 4.6 13.0 20 7 1/2 3 4 2
14.10 0.55 4.2 15.9 6.2 21 7 1/2 3 5 2
15.45 0.48 5.3 14.2 4.0 14.5 21 8 1/2 3 6 2
16.10 0.53 0.0 19.9 4.3 8.0 21 4 1/2 3 5 3
 
 
13
11.50 0.61 4.1 16.4 0 0 21 7 1/2 5 7 全開 2 フアン 700回
ラックワイヤ 1本
14.30 0.35 2.1 20.9 0 0 20 5 3/4 6 5 1/2 2
15.15 0.37 0.0 16.8 0 0 20 6 3/4 5 5 1/2 2
 
 
17
12.10 0.43 4.3 17.3 5.8 13.5 20 6 1/2 6 6 全開 2 泥炭地 客土
フアン 665回
14.10 0.47 3.5 20.4 5.9 7.5 20 8 1/2 6 5 2
14.40 0.57 6.4 26.2 5.4 18.5 20 6 1/2 6 4 2
22
11.00 0.36 1.0 10.3 4.1 13.5 22 5 1/2 5 6 全開 2 泥炭地
15.15 0.93 3.1 12.8 3.9 14.5 22 5 1/2 5 6 2
26
9.30 0.38 3.1 13.4 3.3 7.5 22 5 1/2 5 4 全開 2 泥炭地
10.00 0.33 1.3 10.7 5.0 11.5 22 5 1/2 5 4 2
10.00 0.35 0.0 13.5 3.5 6.0 22 5 1/2 5 4 2

 (2) コンバイン収穫損失

時 刻
(時・分)
精粒口 分離口損失 選別口
損 失
刈取口損失
合計
精粒量
(kg)
総損失
精粒重
(%)
未脱粒
(%)
ササリ粒
(%)
小計
(%)
飛散粒
(%)
刈残
(%)
穂切
(%)
単粒
(%)
枝梗
付着粒
(%)
小計
(%)
合計重
(kg)
割 合
(%)
10

4
12.00 88.70 3.76 7.02 10.78 0.42 0 0 0 0 0.10 14.335 1.635 11.30
15.30 85.00 5.79 8.79 14.58 0.28 0 0.07 0.07 0 0.14 14.350 2.150 15.00
16.00 83.00 3.72 11.71 15.43 0.67 0 0.06 0.03 0 0.09 15.035 2.435 16.20
16.30 85.62 5.40 7.71 13.11 0.70 0 0.57 0 0 0.57 14.260 2.050 14.38
16.40 87.39 3.61 8.71 12.32 0.29 0 0 0 0 0 15.265 1.925 12.61
 
 
9
11.15 90.48 4.09 3.50 7.59 0.73 0 0.77 0.16 0.27 1.20 13.705 1.305 9.52
12.00 83.07 6.48 5.29 11.77 0.60 2.72 1.52 0.26 0.06 4.56 15.119 2.559 16.93
14.10 88.33 4.91 4.91 9.82 0.65 0 0.16 0.62 0.42 1.20 15.465 1.805 11.67
15.45 87.83 6.11 5.15 11.26 0.38 0 0.33 0.10 0.10 0.53 10.475 1.275 12.17
16.10 82.87 6.16 9.00 15.16 1.49 0 0.18 0.18 0.14 0.50 10.885 1.865 17.13
13
11.50 92.69 4.11 2.24 6.35 0.75 0 0 0.12 0.09 0.21 16.075 1.175 7.31
14.30 95.53 1.11 1.41 2.52 0.85 0.32 0.21 0.26 0.26 1.10 17.901 0.801 4.47
15.15 94.68 3.21 0.59 3.80 1.06 0.13 0.01 0.13 0.01 0.46 22.391 1.191 5.32
17
12.10 96.89 1.29 0.86 2.15 0.16 0.11 0.54 0.05 0.10 0.80 18.645 0.580 3.11
14.10 97.52 1.13 0.22 1.35 0.81 0 0.12 0.06 0.14 0.32 17.391 0.431 2.48
14.40 97.90 0.50 0.53 1.03 0.39 0.39 0 0.09 0.20 0.68 17.732 0.372 2.10
22
11.00 98.81 0.24 0.23 0.47 0.03 0 0.14 0.44 0.11 0.69 13.915 0.165 1.19
15.15 98.16 0.43 0.79 1.22 0.02 0.11 0.43 0.02 0.04 0.60 23.024 0.424 1.84
26
9.30 96.16 1.290 0.18 1.47 0.21 0.06 0.55 0.84 0.71 2.16 15.495 0.595 3.84
10.00 94.11 0.93 0.25 1.18 0.12 0.34 1.88 0.56 1.81 4.59 16.003 0.943 5.89
10.00 96.81 0.42 0.23 0.65 0.18 0.61 0.80 0.40 0.55 2.36 16.321 0.521 3.19

 (3) 穀粒口における内訳(%)
月日 時刻 単粒
(%)
枝梗付
着粒数
(%)
穂切粒
(%)
砕粒
(%)
脱ふ粒
(%)

(%)
10

4
12.00 14.40 2.30 0.23 0 0.37 2.34
15.30 78.34 5.39 1.11 0.48 0.87 13.81
16.00 84.29 2.80 0.49 0.22 1.07 11.13
16.30 80.07 4.67 0.09 0.35 0.65 14.17
16.40 85.60 2.30 0.44 0.34 1.32 10.00
 
 
9
11.15 82.92 5.54 1.13 0.15 0.88 9.38
12.00 74.35 8.97 0.95 0.29 0.91 14.53
14.10 86.35 3.02 0.51 0 0.61 9.51
15.45 90.36 1.45 0.11 0.22 1.11 6.75
16.10 83.39 4.72 1.34 0 0.74 9.81
13
11.50 0.32
14.30 65.63 10.05 3.87 0.27 0.36 19.77
15.15 73.61 6.06 2.90 0.27 0.86 16.32
17
12.10 87.16 2.59 0.79 0.57 2.92 5.89
14.10 90.84 2.17 1.18 0.57 2.69 2.55
14.40 93.59 1.80 0.68 0.68 2.33 0.92
22
11.10 89.67 0.86 0.59 0.14 2.25 6.49
11.15 92.43 0.40 0.18 0.18 1.15 5.66
26
9.30 93.94 0.47 0.65 0.28 1.68 2.98
10.00 93.04 1.09 0.54 0.15 2.96 2.22
10.10 85.79 4.68 1.99 0.32 1.08 6.14

 時刻別に6回の試験を実施したが、圃場条件或いは作物条件が一定しないため、的確な判断を下し得ないが、今回の試験により或る程度の不良条件に於いてもコンバインは使用可能であり叉人力による収穫が困難な圃場に於いても収穫することができた。時期別に見ると第2回目に試験迄は作物条件に支配され易い要因が多く損失も10%以上を示したが、その多くはスレッシングロスによる分離機構が十分働き得ず大部分ササリ粒となって排出することが多かった。従って損傷粒の或る程度の発生を考慮できるならば損失も成績よりは少なくすることができよう。第3回目より5回までは条件もよく後期にヘッドロスの損失が目立ったが、コンバインの収穫としては適期であったといえる。
 コンバインの収穫作業は気象条件に支配されやすいが、本年の結果では10月中に於いての稼働は20~25日間で、その適期は一般手刈適期より5~6日後と考えられる。

Ⅱ 収穫時期と作業性能に関する試験
 1. 試験目的
  1日に於いて時刻ごとに損失と作業能率がどう変化するか、その傾向を把握すると共に利用時間の限界を究明する。
 2. 試験場所及び期日
  空知郡北村、高橋宗敏農場、10月20日~21日
 3. 試験方法
  供試機・試験ほ場・作物条件は前の試験と同じ。
 4. 試験時に於ける気温・湿度及び稈もみの水分
月日 時間 気温
(℃)
湿度
(%)
稈水分
(%)
籾水分
(%)
10.20 7:00 5.0 83 56.0 22.4
11:00 11.8 68
13:00 15.0 56 55.0 20.0
15:00 12.5 64 55.0 19.5
17:00 11.0 67 56.0 21.3
19:00 10.5 78 58.5 21.8
21:00 9.5 86 60.0 22.5
23:00 5.5 92 65.0 26.5
 .21 1:00 6.0 92 63.0 25.0
3:00 4.0 91 64.5 26.5
5:00 6.0 92 63.5 28.0
7:00 9.0 93 68.0 30.0

 5. 試験成績
  (1) コンバインの作業条件及び調整
時刻
(時)
作業
速度
(m/sec)
スリップ率
(%)
刈取高さ
(cm)
車輪沈下量
(cm)
コンケ-ブ
開   度
(mm)
チャフシ-ブ
開    度
チャフシ-ブ
エキステンション
シュ-シ-ブ
開    度
送風機 備  考
前輪 後輪 開度 角度 開度 デフレ
クタ
9 0.35 3.3 14.2 7.6 11.0 22.0 6 1/2 5 7 1/2 2 エンジン2.100回転
11 0.55 3.1 16.4 6.2 15.0 22.0 7 3/4 5 6 1/2 2 シリンダ1.130 〃
13 0.66 2.6 20.8 5.9 14.5 22.0 7 3/4 5 5 1/2 2 フアン   665 〃
15 0.77 5.9 18.2 9.7 20.5 22.0 5 3/4 5 7 全開 1 リ-ル   23 〃
17 0.53 2.6 14.8 5.8 8.5 22.0 4 3/4 5 6 2 ラックワイヤ各列1本
19 0.36 3.1 15.4 22.0 7 3/4 5 6 3  
21 0.35 0.5 14.7 22.0 8 3/4 5 6 3 露多し
23 0.31 1.2 7.5 22.0 7 3/4 5 6 3
1 0.29 3.1 13.0 22.0 7 3/4 5 6 3
3 0.28 0.5 16.1 22.0 7 3/4 5 6 3
5 0.28 0.0 10.8 22.0 7 3/4 5 6 3
7 0.27 0.7 13.2 22.0 7 3/4 5 6 3

  (2) 収穂損失
時 刻 精粒口 分離口損失 送別口
損 失
刈取口損失 合計
精粒量
(kg)
総損失
精粒重
(%)
未脱粒
(%)
ササリ粒
(%)
小計
(%)
飛散粒
(%)
刈残
(%)
穂切
(%)
単粒
(%)
枝梗付
着率
(%)
小計
(%)
重量
(kg)
割合
(%)
9:00 91.06 2.12 0.53 2.65 0.58 1.35 3.05 0.27 1.04 5.76 12.937 1.157 8.94
11:00 93.97 1.70 0.84 2.54 0.50 0.94 1.10 0.07 0.38 2.99 14.302 0.862 6.03
13:00 90.90 2.99 1.64 4.63 0.64 0.39 2.00 0.22 1.22 3.83 9.021 0.821 9.10
15:00 94.50 1.36 6.78 2.14 0.23 1.96 0.74 0.13 0.30 3.13 11.482 0.632 5.50
17:00 88.31 2.34 6.66 9.00 0.33 1.35 1.33 0.23 0.45 2.86 14.099 1.649 11.69
19:00 95.34 3.40 0.24 3.64 1.02 14.726 (0.686) (4.66)
21:00 96.01 2.24 0.88 3.12 0.87 13.197 (0.527) (3.99)
23:00 96.13 2.11 0.95 3.06 0.81 13.294 (0.514) (3.87)
1:00 97.74 1.26 0.36 1.62 0.62 15.817 (0.357) (2.26)
3:00 96.55 2.07 0.51 2.58 0.87 13.258 (0.458) (3.45)
5:00 97.70 1.08 0.58 1.66 0.64 14.104 (0.324) (2.30)
7:00 97.68 0.90 0.58 1.48 0.84 15.561 (0.361) (2.32)

  (3) 穀粒口における内訳(%)
時間 単粒 枝梗付
着粒数
穂切粒 砕粒 脱ふ粒 しいな
9:00 82.98 4.66 1.62 0.25 2.11 8.38
11:00 81.15 4.16 1.73 0.39 2.13 10.44
13:00 74.28 3.38 1.55 0.28 1.63 18.88
15:00 93.45 1.25 0.10 0.35 1.75 3.10
17:00 85.57 2.38 1.28 0.18 0.69 9.90
19:00 86.84 1.90 0.88 0.13 2.12 8.31
21:00 88.77 2.07 1.41 0.22 1.63 5.90
23:00 89.99 1.10 0.69 0.18 1.71 6.33
1:00 82.95 1.97 1.50 0.21 1.54 11.83
3:00 84.65 2.28 1.70 0.09 1.48 9.80
5:00 85.51 1.97 1.25 0.09 3.39 7.80
7:00 85.61 0.79 1.49 0.13 1.40 10.58

 夜間の稼働を行い天候の変化に伴う機械的損失、能率等を把握することができた。天候が比較的高温で乾燥の状態に於いては、機械的な調整が損失の増減に敏感に影響することが多かった。従って条件の良好な場合に機械各部の調整は十分行う必要があり能率的に作業を行うことが望ましい。夜間17:00時以降より早朝7:00時に於ける作業速度は、0.25m/sec~0.30m/secと低下が必要とさらた。夜間の大気湿度は、90%以上を示し、藁稈及び籾水分の上昇により選別部の作用が十分行われずに選別が不良で精粒口に於ける莢雑物の混入が多いように見受けられた。混入物が、葉稍片、枝梗は着粒が多く風選の効果が低下した。8~9時及び夕刻16~17時の湿度の変化する時刻に調整が困難となり損失も多くなる傾向にあり総損失で8~9%を示した。夜間には気温は低下し人体の疲労も倍加する。叉照明不足のため機械各部の作業が確認しずらくなりフイ-ルド面の状態も判然としなかった。選別機構に関しては、莢雑物の混入が影響すれば、ストロ-クリ-ナ-の採用も考えられる。叉連続作業を行うように当たっても夜間のタンク内に貯えられた籾は排出が困難で圃場条件が良ければ、バガ-タイプも有利かと思われる。特に日中に於いても運搬車までのコンバインの移動は相当な時間損失と思われる。夜間は前途した如く湿度は高いが、殆ど一定の条件となるため機械調整は殆ど必要なく速度の変更のみで試験を実施することができた。