【指導参考事項】
大豆の機械栽培のための栽植様式に関する試験成績
十勝農業試験場

 本試験は今後の大豆の機械化栽培のために、従来の慣行法より畦巾を広くした場合、生育および収量にどのような影響をおよぼすかを調べたものである。栽植様式は標準の慣行法として60cm×90cm、機械化栽培のための栽植様式として75cm×10cmを用いた。
  その結果を要約すれば次の通りである。
 1. 75cm×10cm植では60cm×20cm植に対し茎長はやや高くなり、分枝数および生茎節数は減少する。
 2. 倒伏については、コガネジロ、ワセコガネ程度の強稈種を用いれば問題はない。
 3. 子実収量については、いずれの品種を用いても、慣行より広畦の75cmにしても株間をつめることのより株立本数を確保すれば、慣行法とほとんど同程度か、または増収傾向にある。
 4. 密植になるので菌核病に留意する必要がある。

Ⅰ 十勝農試における試験成績(昭和40年)
品  種/
形  質/
栽植様式
茎長
(同比)
(cm)
主茎節
(同比)
分枝
(同比)
(本)
10a当り総重
(同比)
(kg)
10a当り子実重
(同比)
(kg)
コガネジロ 60cm×20cm 87.1(100) 17.3(100) 6.4(100) 565(100) 239(100)
75cm×10cm 91.1(105) 15.8(91) 2.2(34) 562(99) 237(99)
北見白 60cm×20cm 73.7(100) 14.5(100) 5.1(100) 466(100) 234(100)
75cm×10cm 82.6(112) 13.1(90) 4.5(88) 541(116) 261(112)
ワセコガネ 60cm×20cm 94.5(100) 16.9(100) 5.0(100) 479(100) 225(100)
75cm×10cm 93.2(99) 16.1(75) 4.1(82) 507(106) 234(104)
ハロソイ 60cm×20cm 132.1(100) 17.5(100) 5.0(100) 575(100) 239(100)
75cm×10cm 131.6(100) 15.9(91) 2.6(52) 607(106) 275(115)
十勝長茎 60cm×20cm 88.1(100) 16.2(100) 3.8(100) 511(100) 203(100)
75cm×10cm 90.9(103) 15.3(94) 1.8(47) 614(120) 267(132)
品種平均 60cm×20cm 95.1(100) 16.5(100) 5.1(100) 519(100) 228(100)
75cm×10cm 97.9(103) 15.2(92) 3.0(59) 566(109) 255(112)

  結果の概要および考察
   5品種を用い、十勝農試圃場にて主として品種間差異について調べた。茎長については品種平均では75cm×10cm区が3%高かったが、北見白では12%とかなり差が認められるのに対して、ワセコガネやハロソイではほとんど差はなく、コガネシロと十勝長茎ではそれらの中程度の値を示した。主茎節数はいずれの品種も75cm×10cm区で約10%程度減少し、分枝数は75cm×10cm区で減少づる傾向を示した。
 総重はコガネシロを除いていずれも75cm×10cm区で優った。子実重は全品種平均で75cm×10cm区が13%多かったが、コガネシロおよびワセコガネでは栽植様式間の差は小さかった。しかし品種×栽植様式の分散に有意性は認められなかった。
 ハロソイ、ワセコガネ、コガネシロには菌核病の被害があり、とくにハロソイにおいて著しかった。
 本試験の結果から、60cm×20cm植に対する75cm×10cm植の効果に品種間の差は認められるが、その差は大きくはなく、いずれの品種を用いても、75cm×10cm植が60cm×20cm植に対し、収量的に劣ることはほとんどないものと考えられる。

Ⅱ 現地試験成績
  昭和38年度 10a当子実重(同比率)
町村名 品種名 標準肥区 5割増肥区
60×20cm 75×15cm 60×20cm 75×15cm
恵 庭 ナガハジロ 83(100) 88(106) 115(100) 114(99)
当 別 289(100) 297(103) 307(100) 305(99)
江 別 194(100) 204(105) 177(100) 230(130)
美 唄 191(100) 186(97) 183(100) 190(104)
沼 田 140(100) 164(117) 135(100) 163(121)
芦 別 251(100) 224(89) 217(100) 213(98)
蘭 越 182(100) 192(106) 167(100) 206(123)
平 取 242(100) 220(91)
八 雲 102(100) 138(135)
北桧山 205(100) 202(99)
名 寄 318(100) 335(105) 288(100) 301(105)
富良野 253(100) 259(102) 258(100) 224(87)
池 田 コガネジロ 203(100) 205(101)
芽 室 195(100) 214(110)
音 更 215(100) 226(105)
幕 別 256(100) 241(90)
豊 頃 164(100) 185(113) 182(100) 176(97)
士 幌 228(100) 244(107) 255(100) 252(99)
帯 広 106(100) 127(120)
清 水 127(100) 113(89) 130(100) 129(99)
鹿 追 127(100) 121(95)
新 得 155(100) 139(90)
足 寄 235(100) 323(137)
大 樹 142(100) 158(111) 205(100) 187(91)
上湧別 177(100) 173(98) 178(100) 175(98)
佐呂間 173(100) 168(97) 195(100) 210(108)
女満別 203(100) 221(109) 255(100) 253(99)
清 里 167(100) 242(145) 164(100) 255(155)
津 別 220(100) 218(99) 225(100) 220(98)
羽 幌 241(100) 311(129) 271(100) 287(106)
平 均   192(100) 205(107) 202(100) 211(104)

 倒伏程度とその箇所数
施 肥 倒伏程度/
栽植様式
標準肥 60cm×20cm 17 2 1
75cm×10cm 16 1 1 1 1
増 肥 60cm×20cm 21 2 4 2
75cm×10cm 20 3 2 1 3
  注) 名寄市を除く。

 昭和39年度
町村名 品種名 子実重(kg/10a)同比
60cm×20cm 75cm×10cm
当 別 コガネジロ 50(100) 45(90)
芦 別 207(100) 211(102)
美 唄 ナガニジロ 112(100) 119(106)
蘭 越 コガネジロ 218(100) 236(108)
静 内 ナガハジロ 134(100) 149(111)
平 均   144(100) 152(106)
  注) 上川、北見、十勝天北においてはコガネジロを供試したが冷害のため、考察できなかった。

 昭和40年度
町村名 品種名 子実重(kg/10a)同比
60cm×20cm 75cm×10cm
大 樹 ワセコガネ 114(100) 97(85)
陸 別 185(100) 269(145)
豊 頃 コガネジロ 105(100) 109(104)
本 別 143(100) 142(99)
帯 広 149(100) 182(122)
足 寄 191(100) 189(199)
新 得 ワセコガネ 120(100) 110(92)
音 更 コガネジロ 152(100) 154(101)
清 水 ワセコガネ 61(100) 85(139)
池 田 コガネジロ 190(100) 193(102)
鹿 追 128(100) 118(92)
平 均   144(100) 152(106)