【指導参考事項】
てん菜用機械試験および調査
北海道立十勝農業試験場農業機械科

1. てん菜単胚種子用播種機
 (1) 試験目的
  単胚種子用の播種機の播種機構を検討する。
 (2) 試験方法と供試機
  播種の精度試験は種子落下変異(室内試験)と発芽密度(ほ場試験)とについて行った。
  供試の種子送り出し機構は、国産は全部傾斜播種板方式で、種子たまりから播種板の種子孔に入った種子が板の回転にともない、すくい上げられ落下孔に到着したとき地面に落下する方式である。各機種とも播種板が異なるだけで、その他の機構は在来のものである。播種板には2種あり、その一つは外周より鋸目状孔をあけたもの(Me・Ka)であり、他のものは板外周に丸孔をあけたものである。
 図1 

  輸入機は垂直に回転する円板の外周に丸孔溝をあけてある。(W)、またベルト式もある。
 種子送り出し機構の大きさは3.1~4.9mm∮で篩別した種子が最良の落下を示すように製作されている。
 供試単胚種子はK-19で、3.1~4.9mm∮の篩で篩別したものを用いた。厚みは1.5mm程度で形状は偏平である。
 (3) 試験結果
  ア 2粒落下ひん度(表-1)
   単胚種子を1粒だけ確実に落下させたいが、欠粒にならないようにするためには、2粒落下が発現する。

 表1 単胚種子用播種機の性能
項目/機種 速度
(m/sec)
2粒落下率
(%)
平均間隔
(cm)
標準偏差
変異係数
(%)
Me 0.5 12.15 4.50 2.51 55.75
0.8 27.05 3.85 2.12 55.60
1.0 12.06 5.40 3.47 64.40
Ta 0.5 7.40 2.45 1.82 61.90
0.8 5.10 3.10 1.71 55.50
1.0 14.45 3.25 2.66 81.65
To 0.5 26.00 5.30 2.33 43.95
0.8 12.85 4.50 2.87 63.65
1.0 25.40 6.85 2.81 81.65
W 0.5 33.0 4.95 2.52 50.55
0.8 0.40 5.50 3.14 56.80
1.0 0.00 5.65 2.16 38.10
Ka 0.5 0.50 3.90 2.02 51.80
0.8 0.55 4.70 2.46 52.15
  このひん度は次ぎの順になる。
   Ka<W<Ta<Me<T。
  イ 播種間変異
   変異は速度が大きくなれば大きくなる傾向があるが、機種別にみると次ぎのとおりである。
  To、W、Ka<Me、Ta
   数値としては50~60%の落下変異であるが、平均播種間隔が5cm以下であるから、この程度で十分と考えられる。
  ウ ほ場発芽状態
   これらの播種機を用いて、ほ場で播種し、発芽の状態を調査したのが、表2の通りである。
  ほ場は、ロ-タリ-ハロ-、ロ-ラ1回鎮圧を行った。発芽率、及び分布は、播種溝切装置、覆土鎮圧装置等によって定まるが、国産機は特別単胚種子用としての装置を考えず在来の砕粒種子用の機構を用いた。
  発芽の理想的分布としては、発芽間隔で、1~5cm又は、21cm以上のひん度が少ないことが一応考えられる。前者があまり多いと密過ぎて間引が容易でなく、後者は欠株減収を誘起する。この分布からTa型は、播種密度が多すぎる傾向を示すので、播種板の種子孔の数を少なくした方が良く、Ka、To型は、疎になるひん度が大で、定置播種試験の平均播種間隔と、ほ場発芽の平均播種間の比率、即ち、発芽率は28~34%と少ない。このことは、これらの播種は、畦切、覆土鎮圧機構に問題があることを示し、特に覆土量が多かったことが想定される。

  表2 ほ場発芽状態
機種/区間 Ka Ta To Me We St K
1~5 34.2 66.7 11.9 90.0 32.5 35.0 52.5
6~10 14.7 23.8 31.0 25.0 30.0 37.5 22.5
11~15 9.8 48.0 19.1 30.0 22.5 17.5 15.0
16~20 22.0 2.4 9.5 5.0 15.0 7.5 10.0
21~25 4.9 2.4 7.1 7.5 2.5
26~30 2.4 9.5
31~35 9.8 7.1
36~40 2.4
41~45 2.4
平均値 13.96 5.21 15.36 10.93 9.38 8.67 6.90
室内試験 3.9 2.45 5.3 4.5 4.98
発芽率 28.0 47.1 34.4 41.3 49.4
  エ 畦切り、覆土
   輸入したWe、St、Ke等について、土壌仕上硬度別に機体の沈下と種子覆土の状態を調査した。その結果、デスク、又はロ-タリ-ハロ-仕上げでは、機体の沈下は、著しく4~5cm以上ともなり、トラクタ(1.5ton級)も14cm沈下する。
  従って、この状態では如何に発芽がよくても、管理作業では、機械使用不可能になると考えられる。叉、ロ-ラ-3回仕上げは、機体の沈下はきわめて少ないが、覆土装置の軽い重量式のものは覆土が出来ない。
  結局輸入機では整地仕上硬度がロ-ラ-1~2回かけた程度に土壌が緊密になっていなければ使用は難しい、換言すれば適正な播種床形成には、ある程度の土壌の硬土が要求される。

2. てん菜多量施肥機構に関する試験
 (1) 試験目的
  てん菜の増産を多肥により行う傾向がみられるので、作条部全層施肥、及び、作条部分層施肥法なる機構を有する施肥機の改究研究を行った。
  作条部全層施肥は、作条部に落下した肥料を回転攪拌爪によって混合することである。この方法は、施肥機としては、機構的に複雑さをまぬがれないので、在来の施肥機を若干改良して作り得る分層方肥法も検討した。分層施肥は、施肥畦切機の改良により畦溝に落下する肥料を数条に分肥する方法である。
 (2) 試験方法及び供試機
  作条部全層施肥は、土壌表面又は土中に施肥した肥料を数種類のK社耕耘機爪で攪拌し、分層施肥は、Ka社の総合播種機に施肥畦切機部分を加工して試験を実施した。土中における肥料分布は、施肥処理後土壌を採集し加里を炎光分析法により定量した。土壌の採集方法は、肉厚鉄板を2枚5cmの間隔にセットして根系調査のモノリス法の如く土中に押入して、取り出し、しかる後5cmマス目が縦5、横5、計25の蜂の巣状に並ぶ採土枠を押しあて、採土した。従って肥料の分布は、5cmマス目が単位となる。加里分析の結果、各マス目毎の加里量を比率で表現し分布状態を推考した。
 回転爪中心下5cmの土中に施肥した後、回転爪が過るようにした。叉進行速度は0.4m/secと0.8m/secとした。一方、畦切機による分層施肥は、シュ-(遊動式)タイプとホ-(固定式)タイプの畦切機を用いた。作業速度は、1.0m/secとした。
 (3) 試験結果
  ア 回転爪による作条部全層施肥
   回転爪(なた刃、砕土刃、ともえ刃)は、回転軸に5本、5cm間隔にセットして、攪拌巾を20cmとし、深さは回転軸まで20cm入れた。肥料は、5cm深さに、ほぼ5cm巾の溝に施肥した。作業速度が0.4~0.8m/secで回転爪軸回転数365r・p・mであるから爪のピッチは、6.6~13.2mとなる。各層に攪拌された肥料を比率で表したが、次ぎのことが言える。
   (ア) 5cm深く施肥したものを攪拌することによって下層えの施肥分が大となった。供試爪では、大体10cm以上に施肥分布する。
   (イ) 回転ピッチが小となること、すなわち同一軸回転数で作業速度が遅い方が、下層混合がよくなることを示している。
   (ウ) 爪の形状のうち、先端曲がりの大きさが肥料の土中分散に影響し、砕土爪の如きは下層への攪拌が非常に少ない。
   (エ) 施肥機に回転爪を取り付け、施肥攪拌しながら作業を行う場合は、先端曲がりの大きな回転爪を用いることは、機構的に困難であろう。叉先端曲がりの大きなものほど、土壌膨軟度が大となり、肥料の攪拌が良好に行われたとしても、そこえ播種機が来る場合、機体の沈下が大となり、叉、過度の膨軟は発芽障害にもなるので、この点、検討の要がある。
  イ 畦切機による分層施肥
   従来使用されている畦切機では、一般に肥料の分散がなく、発芽障害を起こすため、施肥機と播種機の進行は一直線にせず、5cm程度ずらすのが慣例となっている。分散を良くするための改良畦切機の分層施肥状態は次ぎのとおりである。
   (ア) 現在最も広く使用されている畦切装置では、肥料の分散は小さい。
   (イ) シュ-タイプの畦切装置にはシュ-の導管の最下点に肥料が前後に分けられその結果、施肥が上下の層に分散することをねらったものがある。またシュ-内に落下する肥料を左右にふりわけるようにしたものもある。
   (ウ) ホ-タイプの畦切装置は装置が簡単であるため利用が多い。ホ-巾が小でホ-先端の鋭角のものでは肥料は条にかたまる傾向にある。ホ-巾を大きくすると、浅く広がるようになる。先端が鋭角となると、鋭角の場合よりもよく混合される、いずれの型もホ-内側の肥料落下点に、肥料が分かれるように分散板をつけてあるが、この効果が大きいようである。

3. てん菜移植機利用実態調査
 (1) 調査目的
  てん菜移植機が農家に導入された場合の機能の限界、労働配分などを調査し、問題となるところを解明し、移植機利用上の参考にする。
 (2) 調査方法
  ア 調査項目・方法  移植時の条件、移植状況、作業能率につき調査した。
  イ 調査地区  十勝支庁管内10戸、網走支庁管内9戸、1台当りの面積については十勝支庁管内の農業改良普及所に調査を依頼したが、調査戸数は60戸である。
  ウ 機能調査  機能の限界は、苗送りコンベアから送られる苗をグリップがつかまえる速度に限界があるとみて、室内においてグリップの作動状態と作業速度の関係を調査した。
 (3) 調査結果
  ア 移植時の条件  てん菜の生育状況は、移植機利用の面からは、本葉2~4枚。草丈2~5cmが適当であるが、一般に伸び過ぎの状態であった。ほ場条件は耕起・砕土に十分配慮されていたが、北見地方では旱魃気味の所が多かった。施肥は畜力用3畦施肥機に依存し、トラクタ-による施肥はわずかに2戸であった。

 1表 移植時の条件
項   目/
調査場所
農家
番号
移植面積
(ha)
移植期
(月日)
移植苗の生育 移植ほ場の条件 前作
施肥
方法
備考
本葉
草丈
(cm)
土質 水分 硬さ 莢雑物
芽室町
南 生
1 7.0 5.10
5.14
2~4 3.5 火山灰土 小豆
大金
トラクタ-用
4畦施肥機
 
2 7.0 5.10
5.14
2~4 4.5 小麦
牧草混
畜力3畦 傾斜地
3~80
芽室町
美 生
3 5.0 5.11
5.13
2~4 3.5      
帯広市
川 西
4 4.4 5.12
5.13
2~4 3.5   畜力3畦  
5 3.0 5.13
5.14
2~4 5.5    
音更町
南武義
6 1.4 5.12 2~4 3.5 菜豆  
音更町
スズラン
7 0.6 5.13 2~4 3.5    
札内町
西 進
8 0.9 5.13 2~4 5.5 小豆  
札内町
昭 和
9 1.5 5.12
~13
2~4 5.5   大正
金時
 
札内町
相 川
10 1.3 5.12
5.13
2~4 7.0 重粘土 小豆 トラクタ-用
4畦施肥
心土 耕
21cm
美幌町 11 11.0 5.22
4~6 11.7 火山性
砂壌土
菜豆 蓄力3畦  
12 5.0 5.15
4~6 11.2   改造
蓄力4畦
 
13 6.0 5.22
5.26
4 12.0 沖積土       
津別町 14 1.0 5.15 4 5.5       
美唄町 15 0.8 5.15 4 5.0      
常呂町 16 4.5 5.20
5.23
2 4.0      
17 5.0 5.17
5.26
4 13.0 重粘土 て ん菜 畜力3畦  
18 12.0 5.24
5.30
2 4.0 泥炭地    
19 2.0 5.24
5.25
4 3.8 壌 土    
  イ 移植状況(2表参照)
   移植間隔は23.8cm~30.7cmとかなりのふらきがあり、概して十勝地方に於いては、25~26cmであるのに対し、北見地方に於いては、26~30cmと広かった。作業速度と移植間隔変異の関係は0.3~0.4m/secの範囲では2~12%で、スタンド数にはあまり影響がないと思われる。畦間は、60cmに調整しているのではあるが、±3.0cmの変動があった。

 2表-1 移植状況 (略)

  作業速度と正常植の関係をみると、0.3~0.4m/secの範囲では、60~100%で、土地条件により異なるが平均80%であった。屈折は殆どなく、傾斜しているものは傾斜度5~10°のものが0~30%前後、欠株は多いもので20%、少ないもので5%以下という結果であった。紙筒の移植高さは0.2~2.0cmであった。
  4号農家で、施肥位置を調査したが、垂直位置は、1~10cm、水平位置は2~12cmと巾があり一定の傾向が認められなかった。いま仮に減収すると思われる水平距離を6cm以上とすれば1/3程度がこの範囲内に入ることになる。
  ウ 作業能率
   作業人員の配置は、機械労働が2畦用3人、4畦用5人のほか、苗とり・苗ほぐし・苗補給皿に充填する人員が2畦用4~7人、4畦用10人、苗運搬1~2人であって、合計人数2畦用で8~12人、4畦用で16人であった。北見地方においては、苗補給皿を使わず、箱に苗を詰め苗送りコンベアに手づかみで補給していたが、作業人員不足に対する一方策として考えるべきであろう。

 3表 作業能率
項   目/
農家番号
作業人員の配置 合計 作業速度
(m/sec)
作業巾
(m)
作業能率
(ha/日)
機械労働 補助労働
運転手 苗補給 苗とり 苗運搬 あとまわり
1 1 4 10 1 0 16 2.40 1.5
2 1 2 8 1 0 12 1.20 1.0
3 1 2 8 1 0 12 1.24 1.0
4 1 2 9 1 0 13 0.36 1.20 1.0
5 1 2 6 2 0 11 0.38 1.13 0.8
6 1 2 8 1 0 12 0.36 1.21 1.0
7 1 2 7 2 0 12 0.31
0.31
1.22
8 1 2 4 1 0 8 0.28 1.20 0.9
9 1 2 4 1 0 8 0.25 1.18 0.6
10 1 2 7 1 1 12 0.17 1.16
11 1 2 7 1 1 10 0.46 1.25 1.0
12 1 4 1.20 1.5
13 1 2 6 1 0 10 1.20
14 1 2 5 0 8 0.5 59.2 0.6
15 1 2 6 1 0 10 1.10 0.8
16 1 2 8 2 1 14 0.33 1.24 1.0
17 1 2 6 2 3 14 0.40 1.23 1.1
18 1 2 9 1 0 13 1.24 1.0
19 1 2 5 1 0 9 0.28 1.25 1.0
  十勝地方における一圃場面積と延べ作業労働時間の関係を、1図に示したが0.7haでは60~140時間、1.2haで140~180時間で、10a当り2人区程度を必要としている。図中人力移植所要延人員を表したが、機械移植がこの線に近いことは、一考すべきであろう。
  作業速度は、毎秒0.2~0.5mで平均3.8m/S程度で昨年度の機械に比較し30%程度の速度増加になっているので、作業能率は2畦用で時間当り8~11a、4畦用で15aであった。

 1図 1圃場面積と延べ労働時間






(h)
1圃場面積(ha)


  速業速度に影響するグリップの作動限界をみると、Y式では0.5m/secが限界で、S式は0.8m/S迄は充分可能である。この相異は、半自動苗送り装置のコンベアの作動がY式では間歇的で、S式は連続的であるためである。
  次ぎに1圃場面sけいと作業能率の関係を見ると、圃場面積の大きい方が能率が高い傾向にあるが、移植機の如く苗補給を多く必要とする機械にあっては限界があり、苗補給場所と合わせ検討されるべきである。
  エ 利用期間と面積
   管内の農業改良普及所を通じて、導入移植機1台毎の利用時間、面積を調査したが、最大利用期間は10日間で12.0haのものもあるが、平均的に見ると2~5日間で2~7haである。機械の利用経費などからみて1台当り10ha以上を目標とする必要がある。利用戸数は、1~10戸平均5戸である。作業時間は、午前7時から午後7時頃までの11時間程度で、1日1戸、2戸、作業面積は70~120aであった。補植は2~3日後になされ、補植率10%程度でha当り2人区を要していた。
  オ 機械利用に対する所見
   (ア) コ-ルタが、牧草跡地、傾斜地等においては働きが悪く、牧草跡地ではコ-ルタとオ-プナの間に牧草の根および莢雑物をだきこみ機体が浮き上がって高植えとなる。また傾斜地においては、デスクコ-ルタが固定式のため、機体が流れると、デスクコ-ルタで土を押して行く形となるのでコ-ルタをフリ-にするのも一つの方法であろう。またコ-ルタがナタ刃の場合、カルチベ-タの爪を改造して使用した結果、莢雑物の流れが良いといっている農家もあり、これについても一考を要する。
   (イ) グリップのスプリングが、耐久試験の場合も破損したが、実際農家が使用した場合も3.0ha程度で伸びてしまうので、材質面に対する配慮と合わせて、交換部品として付属させる必要がある。
   (ウ) 移植株間を品種、土地条件等農家の要望により21・24・27・30cmの4段階位に容易に調整出来るようにすべきである。
   (エ) 苗補給皿が1機180枚についているが、あと100枚位不足だという農家が多かった。これは容易に供給出来ることであるが、一部の農家では、2畦にまたがる大きな箱を作り、これに苗を入れ、機体のバランスを取ると同時に補給皿を使わず、手づかみで苗送りコンベアに補給していたが、このことは前記のごとく苗ほぐし労働の軽減となるが、移植機の作業能率との関係に於いて、苗補給皿を使用した場合との差ということになるが、調査結果では大差を認めず、再度検討の要がある。
   (オ) 苗送りコンベアを少し手前に傾斜させ、紙筒の低部が揃うようにすると、グリップに入る位置も一定となり、具合が良い。

4. てん菜除草調査
 (1) 目的
  てん菜栽培に要する投下労働時間は、10a当り60時間前後で、このうち間引作業を含めた除草作業労働は30~40%を占めている。近年、トラクタの所要増加にともないカルチベ-タなどの利用率の向上がみられるが、てん菜については生育初期から一貫した中耕除草作業が困難である。その原因は稚苗期の除草作業、叉培土除草が好ましくないことから特別の刃形を要すること、除草剤の利用の組合せ等、技術的に未解決の点が多いことなどがあげられる。
  そこで、まずトラクタ利用農家のてん菜栽培の実態を調査し、一方除草剤の利用を中心に調査を実施した。
 (2) 調査の方法
  調査対象として十勝内陸部7カ町村のトラクタを所有し、除草に熱意のある農家22戸を選定した。(39年13戸、40年9戸)しかも、地帯別に火山灰乾燥地、沖積地、湿地と区別した。
  調査の項目は、除草作業と労働、除草剤の利用及び各種作業の関連性についてである。
 (3) 主要調査農家除草技術概要
  ア てん菜生育初期の除草間引作業を容易にするため、作業適期を逸しないよう秋耕を行う。整地はロ-タリハロ-を用い、鎮圧を行う、ハロ-の作用深は10~15cmとし、畑の残さ物が地表に出現しねいようにする。除草剤は、沖積湿地で薬害があるので利用せず、発芽前に除草ハロ-を用いて除草効果をあげている。間引作業に対する影響は、明確で1日7~8a/人で除草ハロ-を用いないと6~7a/人である。
  イ 沖積地で、土塊が多いため、整地は土壌が乾燥しないうちデスクハロ-を用い、其の後ロ-タリハロ-によって砕土を十分に行う。除草剤は、てん菜の発芽前をねらって散布し、間引除草は雇傭によって早期に終了させている。第1回のカルチベ-タ利用は沖積地のため土壌表面の固結が見られるため間引作業直前に行っている。
  ウ 深耕、整地には特に注意し、除草剤を全面的に用いる。このためにトラクタ導入前に比較して雑草量は半減した。従って除草間引作業労働が20~25%軽減した。
  秋耕は収穫直後に行い雑草の発生をみると直ぐデスクハロ-を用いて埋没する。
  エ 火山灰乾燥地で整地は容易であるが、デスクハロ-に角材を牽引させてほ場表面の平坦地を図っている。除草剤はその効果に対して確信がないため利用せず、間引作業は自家労働のみで行い雇傭者は他の作業を行なはせしめている。
  オ 湿地帯であったが暗渠排水実施後、機械の導入もあって整地が良好となり、間引作業が、本葉始めから可能となった。叉間引作業、及びてん菜の発芽促進のため播種後鎮圧を行っている。間引を2回にわけ、初めはスタンドを仕上スタンドの2倍くらいしておく。
  カ 湿地帯で作業能率が低く、降雨後の作業が遅延する。従って除草剤散布の適期もおくれがちとなり処理時期を逸する。間引作業も、本葉4枚くらいから行い、能率20~30%低下する。
 (4) 調査結果
   問題となった点について以下記述する。
  ア 除草労力
   調査農家の稼働人員は、平均2~3名でてん菜の作付けは、8~12%程度である。耕作面積20ha前後で、全体で年間延100~200人程度の雇傭をいれている。このうち除草作業に要した割合は、湿地帯では特に多く、全体雇傭の70~80%で、その他の地帯で40~50%となっている、てん菜の間引、除草作業が多労であること、豆類の播種作業と競合するため、作業が遅れがちとなりそれが、労働多投を誘起している。てん菜の除草は、間引作業との関連あることが特質で、間引と除草を明確に分離出来ない。調査農家では、この間引の時期がいずれも早期に傾向にあり、普通本葉4葉期に間引作業が行われていたものが、2葉期になり間引率も高く、間引方法も普通間引では、1本立であるが、早期に間引が行われる場合は、病虫害の関係もあり、スタンド数は2倍くらい残し、次回のホ-除草の時に仕上間引をかねる2回間引が行われる。この早期、2回間引方法は、てん菜生育も、雑草も小さく、根部の見通しもよく能率は30~40%高くなっている。
  イ 機械中耕除草
   トラクタカルチベ-タによる生育初期からの中耕除草作業を行っているのが少なく、畜力利用の依存度が高い。調査農家でトラクタのみで行っているのは、僅か7%である。カルチベ-タの利用では、トラクタと畜力とを組合せた利用が多いことが注目される。中耕除草利用回数についてみると、火山灰乾燥地では4~5回、湿地では3~4回で、時期別中耕深度については明確な回答がなかった。
  中耕除草時期について特に重要なのは、間引前後の作業で、間引前の中耕除草作業では、土壌が飛散して畦の乱れがあるので、なるべくさけた方がよく、雑草の繁茂が著しい場合はビ-トホ-、又はシ-ルドプレ-トの利用を考えた方がよい。

 地帯別カルチベ-タ利用率%
地 帯/
動力別
沖積地 火山灰
乾燥地 湿地
トラクタ専用中耕 9.1
トラクタ+畜力 29.5 27.3 25.0
畜 力 専 用 71.5 54.5 25.0
そ  の  他 9.1 50.0

  ウ 除草剤利用
   除草剤は、調査農家の60%が使用しているが、てん菜に対しては火山灰地15%沖積、湿地地帯で10%の低い利用率である。てん菜の除草剤散布は、播種直後に行われるが、これをトラクタで行うには、春耕期の作業最盛期でなかなか出来ないことが原因している。現在利用されている除草剤はクロロIPC、クロロIPC+PCPの混用、プリマジン等である。除草剤の利用は間引、除草作業に効果的であるので、せめて発芽直前まで可能な薬剤の開発がのぞまれ、利用をすすめたい。
 一般に畑作業除草剤の効果は、気象条件に左右されるが、火山乾燥地において、播種後、鎮圧、平坦にするホ-除草を容易にし、除草労働は半減する。しかし、風蝕の危険性のある場合、全面鎮圧でなく播種上部のみカマボコ状として仕上げるがよい。

5. てん菜収穫機試験
 (1) 試験目的
  急速に開発が進展しつつある小型収穫機を育成するため、収穫機・掘取機の性能調査を行った。
 (2) 試験方法と供試機
  ア 作業精度
   (ア) 堀取損失
    掘取損失には、堀のこし、堀こぼれ、うもれ等があるが、これを集め20mの根部に対する比率で表した。
   (イ) 土砂分離
    根から分離された土砂、根にまだ附着している土砂を全重に対して比較した。
   (ウ) 損傷率
    てん菜の場合あまり問題にならないが、あまり根先が切れて収穫損失になる場合は、考慮しなければならない。
   (エ) タッピング精度
    収穫した根を手で正規にタッピングして過不足を生ずるが、それぞれの量を正規タッピングの重量に過不足の重量を加え、除して比率で表した。
   (オ) 茎葉処理率
    茎葉処理機構の作用による茎葉の移動と、移動の際の土砂附着の程度を観察した。
  イ 作業能率
   (ア) 能率
    200m畦の進行速度で表現した。したがって理論能率ということになる。
   (イ) 効率
    1行程作業のストップ時間、荷おろし時間、回行時間(回行半径は10本目の畦に入る距離)などを作業時間を含めた数値で作業時間を除した比率で表した。
  ウ 動力
   (ア) 牽引力
    35馬力級トラクタ(1.5ton)で作業機を牽引させスリップ率で表現した。
   (イ) 回転力
  エ 供試機
   供試機の主な仕様は次ぎのとおりである。
項 目/
機 種
牽引方式 配列 茎葉切断 茎葉処理 堀取 収穫タンク
(kg)
作業人数 備   考




1 牽引 直列 フイラ-ホイ-ル
グランド、ドライブ
ロ-タリ ショベル
ロットチエン
215 2 1点ピッチ・
2段コンベア前タンクつけ人要
2 並列 ショベル
ロットベルト
215 2 1点ピッチ・
2段コンベア前タンクつけ人要
3 直装 レ-キ ショネル
ロットチエン
210 1 2段コンベア複列、
前タンク
4 牽引 直列 フイラ-ホイ-ル
P・T・Oドライブ
コンベア ショベル
ロットチエン
200 2 回転ドラムコンベア、
乗用、前タンク
5 並列 フイラ-ホイ-ル
グラント、ドライブ
クランク ショベル、
アングリチエン
375 2 ポテト乗用、
3段コンベアつけ人要、
前タンク
6 直列 コンベア ショベル、
ロットチエン
230 2 2段コンベア、
後タンクつけ人要
7 直装 並列 ロ-タリ 40 2 2段コンベア、前タンク乗用
8 レ-キ 220 1 2段コンベア、
複列前タンク


1 牽引 ロ-タリ 215 2 1点ピッチ、ハ-ベスタ兼用
2 直装 ショベル、
ロットベルト
60 1 1段コンベア、じゃがいも兼用
3 牽引 レ-キ ショベル、
ロ-タリ
0 1 2畦要収穫タンクなし、
アンロ-デング式、
スピンナ-タイプ
4 直装 クランク ショベル、
ロットベルト
70 1 1段コンベア
5 レ-キ 220 1 ハ-ベスタ兼用

 (3) 試験結果
  ビ-トハ-ベスタ性能
機 種/
項 目
1
2
3
4
5
6
7
×
8
平均値
作業能率(速度) 0.73m/s 0.9 0.64 0.68 0.99 0.79 0.61 0.8 0.76
作 業 効 率 72.7% 78.9 72.1 63.1 49.3 68.2 47.9 74.1 65.79
堀 取 損 失 5.0% 0 0 2.8 1.3 2.3 0 2.7 1.76
土 砂 分 離 4.8% 3.6 3.9 1.8 1.6 7.5 13.2 3.1 4.94
タッピ
ング
精度
切 過 1.3% 4.2 2.9 0 0.7 3.9 0 1.9 1.86
切不足 9.0% 6.5 9.4 10.4 7.9 2.5 3.9 5.9 6.93
茎葉処理率 90-E 95-E 100-E 90-E 100-E 95-A 100-D 100-B 96.3-D
スリップ率 8.5% 10.5 4.0 12.9 9.5 12.7 8.6 7.4 9.26
トルク上昇率 54.7% 52.6 20.0 106 18.4 31.2 66.7 35.9 48.2

  ビ-トデイガ
機 種/
項 目
1
2
3
4
5
平均値
作業能率(速度) 0.83m/s 0063 0.75 0.79 0.87 0.77
作 業 効 率 73.8% 60.5 84.5 41.6 71.8 66.44
堀 取 損 失 6.2% 2.6 1.3 7.6 2.8 4.1
土 砂 分 離 2.6% 5.9 0.9 15.9 3.4 5.74
茎葉処理率 90-E 70-E 80-E 100-C 100-B 88-D
スリップ率 2.6% 2.6 4.1 12.2 4.3 5.16
トルク上昇率 54.6% 50.8 5.3 18.9 35.9 42.64

  ア ハ-ベスタのタッピング精度
   タッピングの精度はフイラ-ホイ-ルのてん菜に対する荷重、切断刃抵抗と根の保持力などによって決定されるが、ほ場の条件に支配される要因も大きい。供試のタッパはフイラ-ホイ-ル直径550mm∮巾200mmで回転比は進行速度に対し30~40%増になっている。
  ホイ-ルの回転は普通は機体保持車輪から伝導しているが、堀り取り深さの調節。機体の傾斜などによりスリップは発生しやすい。この傾向は直装型の機械に多い。しかし切り過ぎ2%、切り不足7%以内であるから性能として満足すべきであろう。実際にはフイラ-ホイ-ルとタッピングナイフ間に茎葉のつまりが生じ、このため助手が1人必要である。
  イ 収穫損失
   損失は主として、堀取りコンベアに乗らないもの。又はリフトコンベアから収穫タンクに放てきされる際に落下するものなど、堀りこぼれが多い。これらは、堀取り刃の形状と、リフトコンベアの速度調整で解消できる。また損失は作業速度が速くなると多くなる傾向を示す。また、堀取刃の刃尻と先端の間隔にも影響される。各々が大きい方がのみ込みがよくなるが、刃尻が50mm以上となるとことは、堀残しが出来るので好ましくない。叉先端をひろげすぎると。堀取り土砂量が多くなって、土壌分離に影響する。ビ-トの根茎が栽培技術の向上により肥大して来るにしたがい、堀取り刃の先端間隔は大きくなるから、堀取り刃の形状について検討を要する。
  供試した堀取り刃先端の間離は、ほぼ300mmであった。
  ウ 土壌分離
   土壌分離は堀取り刃の影響をうけるが、主としてコンベアの長さ、形状によって決まる。第1コンベア分離は、ロットチエンが多く、ロットを平ベルトに並べたロットベルトもあるが、土壌の分離はロットチエンの方が良好である。
  コンベアの長さは1m前後のものが多く、機械の設計上のこともあり、無制限に長くすることは出来ない。第1コンベアは複列の方がよい。単列であると、コンベアに乗ったビ-トがコンベア上をころがり、数個集まってから上昇することが多く、もし次ぎのコンベアでリフトする場合は、1度に供給されるので容易でなくなる。また第1コンベアの土壌分離性能力は、堀取り土壌供給量にも影響される。
  P・T・O回転対する進行距離が大となれば、コンベアの供給量が増すため、土壌分離が悪くなる。その土壌混入率は60%にも至る。機種によってその関係が顕著に現れないものもある。これらは土壌分離容量の大きい作業機ということになろう。
  機体を小型にするため、第2コンベアは主として根部の持ち上げに用いられている。第1コンベアに対してこのコンベアは垂直に近く位置し、1m程度上昇させ前部収穫タンクに入れるようにした。
  エ 茎葉処理
   タッピングした茎葉を処理する装置には、ベルト状のものを回転せしめるロ-タリ方式と、クランク回転でかき出すクランク式と、コンベアで移動させるコンベア方式とがある。叉これらの機構を併用せしめたものもある。クランク式は土壌附着が多い。性能表の茎葉処理率で例えば90-Eとあるのは茎葉を90%移動したが、土壌の附着がABC…順でEは飼料として用いられ難いことを示している。平均では、96、3-Dで移動はよいが、土壌附着の多いことを示している。飼料利用の場合は、コンベア式のものを用いた方が良い。
  オ 能率
   作業速度はハ-ベスタの平均値が0.76m/Sで比較的向上している。この速度で60%程度の効率で0.1ha/h以上の能率が期待出来る。但し、順調に作業出来るためには、機械の耐久性をより留意しなくてはならない。
  現在試作製造している小型ハ-ベスタでは、この程度の速度が限界であろう。従ってもっと高速を望むなら、牽引型の大型のものとならざるえない。
  カ 効率
   効率には、荷おろし時間、回行時間が最も影響する。荷おろし時間は、収穫タンクの形状にもよるが、容量が小さいとあける回数が増し、結果は効率の低下となる。しかし容易が大となるとかえって荷おろしが容易でなくなる。タンク容量は200kgが限度となろう。また回行時間では、1回の回行に40~50秒を要し、効率に関係するが、牽引型(半直装も含めて)が必ずしも回行の時間を多く必要としない。これは、直装型で、可能なだけ重量を増すためかえって、トラクタ前部に100kgの重量を附着せねばならなくなったり、トラクタが重くなり地盤が悪いと回行が困難になる場合が起こる。一般にあまり小型にすると効率が低下することに注意すべきであろう。
  キ 動力
   無負荷時の駆動トルクは2kg-mであった。無負荷時と負荷時ではトルク上昇は0.2kg-m程度であった。機構が複雑なもの、工作精度の悪いものはトルク上昇率は高い。最大トルクを3倍程度にみれば、安全クラッチの設計は10kg-m程度でよいことになろう。
  ク 耐久性
   耐久力で心配になる点をあげると次のとおりである。
   (ア) P・T・Oジョイントシャフトの製作、取付角度が悪い。
   (イ) クラッチ、安全装置のないものがある。
   (ウ) ミッションの取付が不安定、シャフトで「ナマモノ」がある。
   (エ) 第1コンベアのエンドベリングはイモノベアリング、注油ボ-ルベアリング、無注油ベアリング等いろいろあるが、ベアリングの回転が円滑でない。
   (オ) 第2コンベア及び茎葉処理装置等にみみ付チエンを利用しているが、このみみの強度が不足。
   (カ) タッパのナイフの固定のものは、ホイ-ルとの間に石礫が入るとナイフが変形する。ショベルの取付が不安。
   (キ) 回転軸の芯がくるって軸のふれが大きい。