【指導参考事項】
はっかの省力(機械化)栽培体系に関する試験成績 北海道立北見農業試験場 |
Ⅰ 試験目的
北見地方の特産であるはっかは、日本はっかを代表し、その栽培歴史と品質の良いことを誇りとしているが、はっかは一般畑作物に比べて労働生産性が低く、省力機械化栽培法の確立が強く要望されている。
北見農試では昭和36年に刈取りを手はじめに着手し、昭和38年度には中央農試農業機械部、北農試遠軽研究室及び北見ハッカ工場と共同で、機械性能試験、蒸溜に関する試験、刈取方式の経済性について、個々に検討指導参考となっているが、それらを総括するために、昭和39年秋から北見農試圃場で、各種のはっか用作業機を使って、一貫機械化栽培の作業体系並びにその経済性について検討した。
Ⅱ 昭和38年度までに行った試験結果の概要
1. 昭和36年度
集積装置を付けたモア-(Lang Alldog 13HP)で刈取を行ったら、10a当り慣行手刈の15~20時間に対してモア-は14~15分であった。しかし集積したのもを移動するのに4~5人が必要であること、疎植または倒伏している場合には、刈取及び集積状態が不良であった(北見農試はっか試験成績概要より)
2. 昭和37年度
栽植様式3処理と倒伏程度並びに刈取の関係について検討したが各区ともかなり倒伏した。ことをモア-で刈り取ったのであるが、作業状態はおおよそ満足出来るものであった。(北見農試はっか試験成績概要より)
3. 昭和38年度
(1) 8月26~27日端野町で機械に関する試験を実施した。
機械性能試験を中央農試機械部 | が担当して |
作物的調査を北見農試、遠軽研究室 |
バインダ- : | 性能も良好で収穂後の乾燥法も島立法、ハサ掛法のいずれでもよく、 蒸溜に於ける収油率も慣行法と差なく採算性にも問題なく実用性最も大きい。 |
ウインドロア-: | 蒸溜、採算性に問題はないが、収穫損失やや多く実用性小である。 |
チョッパ- : | 採算性はあるが、収穫損失多く、収穫時の油線の破壊により、収油率低下 し、実用性ない。 |
ウインドロア・ チョッパ- : |
蒸溜試験に於いて収油率は慣行法と差がないが収穫損失多く、叉採算性は なく実用性はない。 |
区 別/ 作 業 |
慣行区 | 機械化区 | ||
A | B | |||
耕 起 | 月 日 深 さ |
10月下旬 15cm |
10月下旬 20cm |
|
施 肥 (kg/10a) |
石 灰 堆 肥 N-P2O5-K2O |
150 2.000 4.8+3.2-8.0-6.4 |
150 2.000 4.8+3.2-8.0-6.4 |
|
植 付 | 月 日 種根量 |
10月下旬~11月上旬 100kg(PCNB粉衣) |
10月下旬~11月上旬 100kg(PCNB粉衣) |
|
除草剤散布 | ロロックス 75g/10a5月中旬 | ロロックス 75g/10a5月中旬 | ||
中耕除草 | 3回 | 2回 | ||
追 肥 | 7月上旬 N3.2kg/10a | 7月上旬 N3.2kg/10a | ||
防 除 | 6月下旬より4~5回 | 6月下旬より4~5回 | ||
収 穫 | 9月上旬 | 9月上旬 | ||
乾 燥 | ハサ掛 | ハサ掛14日 | 島立7日 |
区 別 | 慣行区 | 機械化区 | |
A | B | ||
堆肥散布 | 馬車運搬 人散布 | マニュアスプレ-ダ- | |
耕 起 | 畜力 プラウインス | トラクタ-プラウイング | |
砕 土 | 畜力 ハロ-イン | トラクタ-ハロ-イング | |
畦切施肥 | 畜力 | トラクタ-施肥 | |
種根堀取植付 | 手堀、手植 | 堀取機、植付機 | |
除草剤散布 | 畜力噴ム機 | スプレ-ヤ- | |
中耕除草 | 畜力カルチ | トラクタ-カルチ | |
防 除 | 畜力噴ム機 | スプレ-タ- | |
追 肥 | 人力又は畜力 | トラクタ-施肥 | |
収 穫 | 手刈 | バインダ- | |
乾 燥 | ハサ掛 | ハサ掛 | 島 立 |
蒸 溜 | 現 有 | 現 有 |
他に慣行Bとして人力施肥 | ┐ │ ┘ |
区を設けたが成績その他を省略する。 |
機械化Cとして種根切断 |
区別 | 作 業 | 機種名・規格 | 作業巾 (cm) |
作業方法 |
慣 行 |
石灰散布 | 手まき | ||
堆肥散布 | 畜力運搬、手まき | |||
耕 起 | プラウ 1.7頭曳 | 28 | ||
整 地 | 100 | |||
畦切・施肥 | 180 | |||
種根堀取り | 手堀り | |||
種根植付 | 手植え | |||
ふ く 土 | 足で土をかける | |||
メクラ除草 | 畜力方形ハロ- | 100 | ||
除草剤散布 | 畜力チャンピオン | 5畦づつ | ||
中耕除草 | 畜力カルチベ-タ- | 3畦〃 | ||
病害虫防除 | 畜力チャンピオン | 5畦〃 | ||
刈 取 り | か ま | 手刈り | ||
機 械 化 |
石灰散布 | ブロ-ドキャスタ- | 400 | トラクタ- |
堆肥散布 | マニュアスプレ-ダ- | 180 | 〃 | |
耕 起 | プラウ14吋2連 | 122 | 〃 | |
整 地 | ロ-タリ-ハロ- | 180 | 〃 | |
種根堀取り | 種根堀取機 | 48~60 | 〃 1畦用 | |
種 植付 | 種根植付機 | トラクタ-2畦用 畦切-施肥-根付-ふく土 | ||
メクラ除草 | ネットウイダ- | 480 | トラクタ-8畦用 | |
除草剤散布 | 動力噴霧機 | 600 | 〃 10畦用 | |
中耕除草 | カルチベ-タ- | 〃 4畦用 | ||
病害虫防除 | 動力噴霧機 | 600 | 〃 10畦用 | |
刈 取 り | バインダ- | 〃 畦巾60cmで2畦 |
項目/区別 | 50m2当り 堀取種根量 (kg) |
種根1kg当り | 夫々の人力堀取を100として | 備 考 | |||
種根本数 (本) |
頂芽数 (コ) |
堀取種根量 (kg) |
種根本数 (本) |
頂芽数 (コ) |
|||
人力堀取 | 24.8 | 139 | 258 | 100 | 100 | 100 | 昭和37年に 機械化試験 の際堀取調査なし |
種根堀取機 | 20.8 | 120 | 231 | 84 | 86 | 90 |
項目/区別 | 石灰散布 | 堆肥散布 | 耕 起 | 砕 土 | 畦 切 | 施 肥 | 種根植付 | |
種付量 | ふく土 | |||||||
慣 行 | 人力散布 80kg/10a やや均一 |
人力散布 1.500kg/10a やや均一 |
畜力 150cm |
畜力方形ハロ- やや良 |
60cm | 人力(ラッパ)S206 40kg 大体良好 |
75kg/10a | 3~5 良 |
機械A・B | ブロ-ドキャスタ- 80kg/10a 均一 |
アニュアスプレダ- 2.000kg/10a 極めて均一 |
トラクタ- 2連プラウ 20cm |
ロ-タベ-タ- 良 |
傾斜地にて やや畦巾ずれる |
植付機による やや不均一 1/2量は表層施肥 |
6~10 良 |
作業/区別 | メクラ除草 | 除草剤散布 | 中耕除草 | 病害虫防除 | 追 肥 | 刈取り | 乾 燥 |
慣 行 | 畜力ハロ- やや良 |
畜力スプレ- やや不均一 |
畜力カルチ 良 |
畜力スプレ- やや良 |
畜力3畦 良 |
手刈り 良 |
ハサ掛 良 |
機械化区 | トラクタ- ネットウイダ- 良 |
トラクタ- スプレ- やや不均一 |
トラクタ- 4畦カルチ 良 |
トラクタ- スプレ- 良 |
トラクタ- 総合播種機 良 |
バインダ- 良 |
A ハサ掛 良 B 島立 良 |
項目/区別 | 萌 芽 | スタンド数 10cm100コマ |
10cm間 株本数 |
10a当り2万本 となるコマ数 |
草 丈 (cm) | 刈取期 倒 伏 |
|||||
始 (月日) |
期 (月日) |
本数 |
良否 |
6月30日 | 7月30日 | 収穫期 | |||||
慣行区 | 5.16 | 5.22 | 317 | 良 | 75.4 | 2.02 | 59.4 | 20.3 | 49 | 117 | 少 |
機械化A | 5.22 | 5.28 | 204 | やや良 | 56.0 | 2.01 | 59.7 | 15.5 | 35 | 103 | 微 |
機械化B | 5.22 | 5.28 | 196 | 〃 | 56.0 | 2.01 | 59.7 | 15.0 | 34 | 102 | 〃 |
区 別 | 10a当り収量 | 収油率 | 刈取ロス (kg/10a) |
|||||
バインド数 (コ) |
バインド1ヶ重 (kg) |
生草重 (kg) |
取卸油重 (kg) |
油重働合 (%) |
サンプル | 推定 | ||
慣 行 区 | - | - | 3.134 | 7.49 | 100 | 0.239 | - | 0 |
機械化A区 | 473 | 6.1 | 2.885 | 6.99 | 93 | - | 2.423 | 52 |
機械化B区 | 478 | 5.9 | 2.820 | 6.86 | 92 | - | 2.433 | 41 |
項 目 | 慣行区 | 機械化A区 | 機械化B区 | |
取卸油重 (kg) | 7.49 | 6.99 | 6.87 | |
kg当り単価 (円) | 3.500 | 3.500 | 3.500 | |
農業粗収益 (円) | 26.125 | 24.465 | 24.010 | |
種 子 (円) | 300 | 300 | 300 | |
労 働 費 (円) | 7.608 | 3.862 | 1.851 | |
肥料費(金肥)(円) | 1.915 | 1.915 | 1.915 | |
肥料費(堆肥)(円) | 2.325 | 2.325 | 2.325 | |
農 業 費 (円) | 1.654 | 1.654 | 1.654 | |
畜 力 費 (円) | 926 | - | - | |
農機具、機械費(円) | 1.234 | 3.807 | 3.807 | |
燃 料 費 (円) | 1.138 | 1.253 | 1.075 | |
農業経営費 (円) | 17.100 | 15.116 | 12.927 | |
農業純収益 (円) | 9.025 | 9.349 | 11.083 | |
農業所得 (円) | 16.633 | 13.211 | 12.934 | |
労働 1時間当 |
農業純収益(円) | 119 | 242 | 599 |
農業所得 (円) | 219 | 342 | 699 |
9月14日 | 9月15日 | 9月16日 | 9月17日 | 9月18日 | 9月19日 | 9月20日 | 9月21日 | 9月22日 | |
平均気温(℃) | 13.0 | 14.1 | 14.5 | 13.8 | 13.3 | 14.7 | 12.3 | 12.5 | 13.7 |
降水量(mm) | 16.8 | 0.5 | 12.1 | 35.5 | 25.0 | - | - | - | - |
日照時数(h) | 0.3 | - | - | - | - | 10.9 | 4.9 | 9.3 | 10.2 |
天 気 | ◎→● | ● | ◎● | ● | ● | ○ | ◎ | ○ | ○ |
Ⅶ 考察
1. 栽培関係
種根堀取機については、一般採種圃と条件が異なる圃場で行ったので手堀りに比べると15%程度の堀残しがあったが、簡単な作業機であり、また能率も良いので、畦巾60cm程度の圃場では堀残しも殆どないと思われる。
種根植付機は4つの作業(畦切、施肥、植付、覆土)が一度に行われて極めて能率的であったが、畦切刃と施肥パイプの位置が悪く施肥状態が不均一であったのと、機械作業の不馴れから覆土が深すぎた。この点についてはメ-カ-で直ちに改善したので、40年秋からはそれらの支障はないとされている。
除草剤はリニユロンを使ったので慣行、機械化区共に予想どおりの効果があり、以後2回づつのカルチで両圧とも大巾に省力された。
バインダ-による刈り取りは品種がほうようなので極めて順調であって刈り取りロスはわずかに1.5~1.8%であって手刈り精度と殆ど同じである。
次ぎに機械化B区は3~4束を1組としてその場に島立し、慣行区と機械化A区は蒸溜室近くに運搬していハサ木に横掛けしたのであるがバインドしてある方が作業が容易であった。しかし附表の天候表に示したように刈り取り乾燥作業終了頃より降雨があり、更に雨の日が続き、特に台風24号の影響による17~18日の集中雨で乾燥がおくれ試験の都合で21~22日に蒸溜したのであるが、乾燥状態から判断して島立は更に3~4日(快晴ならば2日程度)ハサ掛けでは7日程度の乾燥が必要のようであった。
生育収量については機械化区は萌芽のおくれ、草丈がやや低いこと、油収量で慣行区の100に対して92~93とやや減収であったが種根植付機も改善され、機械操作に慣れることによって覆土も適正に出来るので、慣行区と同等の収量を期待してもよいものと思われる。
2. 経営関係
10a当り労働時間は慣行区の100に対して機械化Aが51、機械化Bは24と大巾に省力された。その中で慣行区を100とすると機械化は種根堀取りで32、植付については22と省力され、特に総投下労働の半分以上(43時間)を占めた刈り取り乾燥では機械化A(バインダ-刈り、ハサ掛け)が51、機械化B(バインダ-刈り島立)はわずかに8であった。
経営費は慣行の17.100円に対して、機械化Aが15.116円、機械化Bは12.927円で特に労働費の減少が明らかであった。従って機械化区は収量減により農業粗収益で1.750~2.205円少なかったが農業純収益においては機械ABともに高かった。
特に1時間当り農業純収益では慣行の119円に対し機械化Aは242円、機械化Aは242、機械化Bでは600円となり、1時間当り農業所得においても機械化区の労働生産性は明らかに高かった。