【指導参考事項】
粗粒火山性土の地力増進試験成績
(其の1) 混層耕土の土壌管理試験成績
中央農試

Ⅰ 目的
 道中央部の胆振地方の作土の浅は粗粒火山灰土で混層耕を行った後の土壌管理法について検討を加える。

Ⅱ 試験地土壌及び試験方法
 1. 位置  幌別郡登別町札内
 2. 土壌断面(原立)
層序 層厚(cm) 土性 土良 構造 堅密度 粘性 備考 分析資料
1 0

11

25

HSL

暗褐

軟果


┐有珠

┘a統


├1









├1





├3




2 V
HSL

灰褐



なし
3
32

42
G 灰白 単粒 ┐有珠

┘b統
4 -
GS(G)

灰白



5
65
-
HC


軟果


弱(附者力強)
┐不明

┘火山土
6 -
HC

黒褐



〃(  〃  )

 3. 一般理化学性(原土、但し0~65は混層耕土壌)

深さ
(cm)
粒径組成(%) 土性
容積
比重

比重
3相分布(%) 孔隙率
(%)
腐植
(%)
PH y1 T-C
(%)
T-N
(%)
C/N 置換容量
(me/100g)
置換性塩基(me/100g) 塩基
飽和度
(%)
燐酸
吸収
係数
有効
燐酸*
0.2N.Hcl
可溶
粗砂 細砂 シルナ 粘土 気相 液相 固相 H2O Kcl CaO MgO 2O P2O5 2O
1 (0~25) 30.6 45.2 19.2 5.4 SL 0.75 2.58 31.5 39.5 39.5 29.0 7.0 5.7 4.6 1.8 4.06 0.26 12.6 11.0 4.0 1.4 0.2 50.9 1.101 5.8 23.9 16.6
2 (42~65) 0.6 16.3 50.7 32.3 SiC 0.37 2.37 6.0 6.0 78.4 15.0 21.4 5.6 4.2 4.4 12.41 0.62 20.0 83.7 23.4 2.6 0.6 31.8 2.827 痕跡 9.8 29.9
3 (0~65) 22.0 45.3 23.0 9.4 L 7.4 5.6 4.4 5.7 4.29 0.33 13.0 26.2 7.9 1.5 0.3 36.9 1.137 1.3 11.4 16.8
  * Truog’s法による。

 4. 混層耕の方法
  大型混層用プラウ(ドイツ製で約1mまで耕起可能)をブルト-ザ-でけん引し、60cm内外まで混層耕を実施した。この結果、今迄42~60cmの下層にあった腐植に頗る富む埴土が反転して表土に露出し新しい表土の多くを占めた。
 前記の大型機械で混層耕を実施した後の土壌管理法を見出すため、次ぎの考えで試験を進めた。
 ア 混層耕後の表土に対し、石灰、燐肥等の土壌改良資材の施用効果をみる。…A試験
 イ 混層耕燐の表土に牧草を栽培し、数年後に石灰、燐酸と共に鋤込み、その結果をみる。…B試験

 5. 試験設計
  (1) A試験の設計
年 次 1年目 2年目 3年目
試験区名
及び番号
1. 普通耕区


2. 混層耕区……………………………
  1. 普通耕普通肥区…………………


┌ 2. 混層層耕普通肥区…………………
└ 3. 混層耕燐酸2倍区
┌1. 普通耕普通肥区
└2.  〃  多肥区


┌3. 混層耕普通肥区
└4.  〃  多肥区
供試作物 てんさい
デントコ-ン
馬鈴薯(前年てんさい)
てんさい(前年デントコ-ン)
デントコ-ン(前年てんさい)
施肥量
その他
各区に10a当り 炭カル・ドロマイト
夫々 190kg施用。
てんさいに対しN7.5 P2O59.0 K2O3.8
堆肥1.900kg/10a
デントコ-ンにはN6.8 P2O57.9 K2O6.4
堆肥1.100kg/10a施用
混層耕に10a当り
炭カル1.000kg
燐酸80kg施用
馬鈴薯にN7.0 P2O58.0(16.0) K2O6.5
堆肥1.700kg/10a
てんさいにはN12  P2O514(28) K2O8.0
堆肥1.900kg/10a施用
混層耕区に10a当り
炭カル1.000kg
過石500kg施用 N8.0 P2O58.0 K2O6.0
堆肥2.000kg/10a
多肥区は N5割増 P2O510割増

  (2) B試験設計
年次 1年目 2年目 3年目 4年目
試験区名
及び番号
1. 普通耕区
2. 混層耕区
1. 普通耕区
2. 混層耕区
1. 普通鋤込(牧草鋤込み)
2. 混層耕区(牧草鋤込み)
1. 普通耕普通肥(前年牧草跡)
2.   〃  多 肥(   〃   )
3. 混層耕普通肥(   〃   )
4.   〃  多 肥(   〃   )
供試作物 燕麦(牧草混播) 収草<チモシ-・アカクロ-バ デントコ-ン てんさい
施肥量その他
(kg/10a)
N   4.1
P2O5 4.5
K2O  2.6
堆肥 1.100
N   3.0
P2O5 4.5
K2O  4.5
N   8.0
P2O5 8.0
K2O  6.0
堆肥 1.000
混層耕区に炭カル1.000
過石500kg
N   12.0(16.0)
P2O5 14.0(28.0)
K2O  8.0
堆肥 2.000kg
  注) 供試面積は1年目45平方m、2年目以降は20平方m。混層耕は1年目に実施し、2年目以降は普通耕によった。
     A・B両試験共 2反復
     尚、B試験の3年目、春に鋤込んだ牧草は、地上部、地下部、生草で約800kg/10a

Ⅲ 試験成績及び考察
 1. 生育、収量調査成績
 (1) A試験成績
年次/
試験区番号
1年目てんさい 1年目デントコ-ン 2年目てんさい 2年目馬鈴薯 3年目デントコ-ン
根周(cm) 根長
(cm)
頸葉重
(kg/10a)
根重
(kg/10a)
同比
(%)
成熟期
草丈
(cm)
生草重
(kg/10a)
同比
(%)
根周(cm) 根長
(cm)
頸葉重
(kg/10a)
根重
(kg/10a)
同比
(%)
塊茎重(kg/10a) 同比
(%)
成熟期
草丈
(cm)
生草重
(kg/10a)
同比
(%)
8月19日 10月21日 8月18日 10月21日 大薯 中薯 小薯 合計
1 13.7 25.0 16.9 3.734 2.351 100 253 3.155 100 18.7 22.8 16.4 1.640 2.420 100 446 722 221 1.389 100 237 2.196 100
2 13.4 24.0 19.4 3.464 2.262 96 224 2.694 85 17.8 22.6 16.9 1.415 2.295 95 326 512 219 1.059 76 245 2.646 120
3 18.4 22.9 18.2 1.365 2.470 102 402 477 247 1.126 81 237 2.113 96
4 240 2.446 111

 (2) B試験の成績
年次 2年目牧草 3年目デントコ-ン 4年目てんさい
生草重
(kg/10a)
乾草重
(kg/10a)
同比
(%)
成熟期
草丈
(cm)
生草重
(kg/10a)
同比
(%)
根周(cm) 根長
(cm)
頸葉重
(kg/10a)
根重
(kg/10a)
同比
(%)
8月19日 10月22日
1 735 199 100 256 3.278 100 14.8 19.1 16.8 3.465 1.985 100
2 705 189 95 263 3.694 113 15.9 19.9 16.4 4.553 2.107 106
3 16.6 19.6 18.3 4.275 2.265 114
4 16.4 22.3 18.2 4.080 2.350 118
  以上4カ年に亘り、試験を実施したが、その概要は次ぎの如くである。

 ア A試験の概要
  1年目  てんさいについてみると、混層耕区の初期生育は普通耕より良好であったが、7月中旬頃より両者の差は殆どなくなり、成熟期の根部収量は逆に普通耕区が高かった。根部の影響は混層耕区が不整根少なく、根長も勝っているが、根周劣り低収の原因となっていた。デントコ-ンは生育の全期を通じて普通耕より混層が劣り、低収であった。
  2年目  混層耕区には、土壌改良用として10a当り炭カル1.000kg 熔燐80kgを全面に賛否した。その結果馬鈴薯では、混層耕(普通肥)区には、生育の全期間を通して普通耕(普通肥)より劣り塊茎収量も減収した。尚混層耕の燐酸倍量区は若干良く、燐酸の効果も多少認められるが、普通耕より低収であった。
  てんさいは混層耕(普通肥)区は普通耕に比し根長に於いて優れているが、根周劣り、結局根重は減収になった。これは1年目と同じ傾向にあった。混層耕の燐酸倍量区は根周、根重共に僅かながら普通耕より勝っていた。
  3年目は前年度のてんさい跡地にデントコ-ンを栽培し土壌改良用として10a当り炭カル1.000kg、過石500kgを施用した。普通肥系列では生育の初期から中期にかけて、混層耕区が普通耕区よりまさったが、生育の後期には普通耕が混層耕より優るに至った。多肥系列でも普通耕が優っていた。
 以上3カ年のA試験成績から、本地帯の如き、混層後、腐植質火山灰土が反転して表土になる所では、炭カル、燐肥等を多量に施用しても増収効果は薄く、一時減収は免れないものの様である。
 イ B試験の概要
  本圃場は1年目に燕麦に牧草を混播し、燕麦を刈取後越冬させ、2年目春に、追肥を行って夏に1回牧草を刈り取った。3年目春に混層耕区に10a当り炭カル1.000kg、過石500kgを全面施用して牧草と共に鋤鋤込んだ。3年目のデンコト-ンの生育、収量(生草重)は普通耕よりも混層耕の方がまさった。
 4年目には、前年度のデントコ-ン跡(牧草鋤込は前年に終了)にてんさいを作付した、尚炭カル、過石は、施用せず前年の残効である。その結果は、普通肥系列、多肥系列共に混層耕が、普通耕より生育優れ、根部が増収した。しかも混層耕普通肥区は、普通耕普通肥区、同多肥区より増収し、ここで混層耕後の土壌管理法としては、炭カル、燐肥と共に牧草を鋤込むか多量の堆厩肥を使用する事が適切であると考えられる。

 2. 土壌理化学の変遷
  (1) 土性の変化(1年目)
試 料 層厚
(cm)
粒径組成(%) 国際法
土性
粗砂 細砂 シルト 粘土
普通耕-1 0~14 30.6 46.2 17.7 5.6 SL
  〃 -2 14~26 23.7 47.1 23.0 5.8 SL
混層耕-1 0~21 5.5 25.8 42.9 26.0 LiC
  〃 -2 21~40 26.9 41.4 25.9 5.8 SL
  〃 -3 40~60 26.1 46.1 19.1 8.5 SL

  (2) 耐水性団粒の変化(3年目)
試験別 試 料 2mm> 1~2mm 0.5~1mm 0.25~
0.5mm
0.1~0.25mm 0.25mm
以上
A試験 普通耕 4.9 7.1 7.7 11.2 8.4 39.3 30.9
混層耕 13.9 9.9 4.0 0 0 32.8 27.8
B試験 普通耕 7.0 11.3 10.3 16.3 6.2 51.1 44.9
混層耕 10.8 9.8 8.2 9.2 4.8 42.8 38.0

  (3) 土壌水分の変化(%)
試験別 試 料 PF 2.0 PF 2.7 FF 4.2 有効水分
(PF2~4.2)
重量 容量 重量 容量 重量 容量
A試験 普通耕 38.6 29.3 31.4 23.8 15.4 11.7 17.6
混層耕 73.0 43.1 57.2 33.7 37.9 22.3 20.8
B試験 普通耕 43.7 33.6 34.4 26.5 17.1 13.2 20.4
混層耕 75.3 44.5 59.4 35.1 39.4 23.2 21.3

  (4) 一般化学性の変化(乾物中)
試験別年次 試 料 PH y1 T-C
(%)
T-N
(%)
C-N
置換容量
(me-100g)
置換塩基
(me-100g)
石灰
飽和度
(%)
燐酸
吸収
係数
*有効
燐酸
H2O KcI CaO MgO K2O
A試験
3年目
普通耕 6.7 5.8 0.7 3.50 0.28 12.5 15.1 10.4 1.2 0.5 69.0 1.423 9.1
混層耕 6.3 5.5 0.8 9.36 0.44 21.3 57.4 33.5 1.8 0.5 58.4 2.274 19.7
B試験
4年目
普通耕 6.7 5.7 0.3 4.98 0.34 14.6 19.1 10.7 1.0 0.2 56.5 1.181 12.0
混層耕 6.3 5.3 0.5 6.36 0.35 19.3 32.1 18.4 1.4 0.3 57.4 2.120 16.7
  * Truog’s法による。

  (5) Incubationにより無機化する窒素量の変化
試験別年次 試 料 Incubation前(A)* Incubatio後(B)* (B)-(A) * 無機化量
(me-100g)
無機化率
(%)
NH3-N NO3-N NH3-N NO3-N NH3-N NO3-N
A試験 2年目 普通耕 0.79 0.67 0.55 14.91 -0.24 14.24 14.00 3.68
混層耕 1.41 0.45 0.91 13.91 -0.50 13.46 12.96 2.88
3年目 普通耕 1.96 0.55 0.95 11.31 -1.01 10.76 9.75 3.48
混層耕 2.05 0.41 0.92 11.42 -1.13 11.02 9.89 2.25
B試験 3年目 普通耕 1.82 1.16 1.28 11.37 -0.54 10.21 6.67 3.33
混層耕 1.97 0.58 0.81 11.15 -1.16 10.57 9.41 3.36
4年目 普通耕 3.10 0.33 0.94 11.54 -2.16 11.21 9.05 3.23
混層耕 3.10 0.37 1.59 20.38 -1.51 20.01 18.50 3.85
  注) 適水分の土壌を4週間28~30に保ち、有機物の分解によりアンモニア態、硝酸態の窒素が生成する量を定量分析を行う。

  土壌の化学性の変遷についてみると、炭カル、燐酸施用で、混層耕の土壌は充分酸性矯正はなされ有効燐酸も増加したがこれのみでは作物の増収は図れなかった。
 腐植の質について分析調査してみると、原土の表土(0-25cm)に比較して下層(42-65cm)の部分は難熔性腐植が多いと考えられる。地力増進効果は、石灰、燐酸と共に牧草等の有機物を施用する事により著しくなると考えられる。
 土壌中の有機態窒素の無機化の様相を検討すると混層耕のみでは無機化率は普通耕より劣るが牧草鋤込により(B試験)混層耕区の無機化率は高まる。現地栽培試験に於いて生育の状態を観察すると、A試験では混層耕区の作物生育の前半は普通耕区より優れているが、後半になると生育は逆になり収量は普通耕の方が優れていた。この事は混層耕後の表土は全窒素含量は高いが易分解性の窒素分が少ないため生育の後半に窒素飢餓の状態になるため起こる現象とみられる。
 B試験をみると牧草を鋤込む事により混層耕区も生育の全期を通して生育優れ、収量も普通耕区より増収した。この事は牧草の分解により徐々に窒素が放出され、作物に対する養分の供給が豊富であったものと考えられ、現地試験ではB試験のてんさいは若干窒素が過剰気味であった。勿論牧草の施用は窒素分のみではなく他の土壌改良の意義も大で、火山灰土壌の地力増進に顕著な効果がみられる。
 4年目では混層耕区が、普通耕より高くなり、作物の生育、収量と一致した傾向になっている。
 以上のことから牧草の施用と土壌改良資材(石灰、燐酸)の使用にいろ火山性土壌の地力が増進したものと考えられる。
 其の2箱型耕による下層土への緑肥導入効果について
 Ⅰ 試験地土壌及び試験方法
  1. 試験地 前記その1に同じ
  2. 試験の方法及び設計
  3. 緑肥導入の方法(箱型耕の処理)次図の通り


  前図に於いて、1年目に(A)部の作土層を盛り上げ、心土の露出した(A)に緑肥としてル-ビンを作付けし、作土の厚くなった(B)にはビ-トを作付けした。
 2年目は(B)の旧作土共25cmを(A)に盛り上げ(B)の心土にル-ビンを作付けし、作土の高くなった(A)には馬鈴薯を作付けした。
 3年目は全面的に復旧し、心土部全体に緑肥を鋤込んだ形にして、デントコ-ンを供試して地力増進の効果を検討した。

 (1) 試験区名及び試験設計(kg/10a)
試験区名 1年目(ビ-ト) 2年目(馬鈴薯) 3年目(デントコ-ン)
N P2O5 K2O 堆肥 N P2O5 K2O 堆肥 N P2O5 K2O 堆肥
1. 普通耕区 12.0 14.0 8.0 2.000 7.0 8.0 7.0 1.500 8.0 8.0 6.0 1.500
2. 箱型耕基準肥区 12.0 14.0 8.0 2.000 7.0 8.0 7.0 1.500 8.0 8.0 6.0 1.500
3.  〃  多肥区 16.0 28.0 8.0 2.000 10.0 16.0 7.0 1.500 12.0 16.0 6.0 1.500
4.  〃  基準肥
    (下層土改良)
8.0 8.0 6.0 1.500
  其の他各区に共通に10a当りFTE4kg、MgO4kgを施用した。
 尚3年目の4区は、参考までに下層土の土壌改良を更に促進するため、緑肥と共に10a当り炭カル1.000kg、過石500kgを施用した。
 緑肥に対する施肥量は10a当りP2O56.0kg、K2O5.0kgを施用し、ル-ビン用根瘤菌を散布した。秋に鋤込んだル-ビンを地上部生草重は10a当り1.000kg内外で地下部は約500kg内外であった。

Ⅱ 試験成績及び考察
 1. 生育調査成績
  第1表 昭和39年度(3年目)成績(デントコ-ン)
試験区名 6月26日
草 丈
(cm)
成熟期
草 丈
(cm)
生草重

(kg/10a)
同比

(%)
乾草重

(kg/10a)
同比

(%)
1. 普通耕区 20.6 167 1.820 100 106 100
2. 箱型耕基準肥区 22.2 176 2.200 121 130 123
3. 箱型耕多肥区 22.6 192 2.160 119 126 119
4. 箱型耕基準肥(下層土改良) 21.0 200 2.560 141 148 140
  第1表は昭和39年度(3年目)の成績で、1年目、2年目にル-ビンを鋤込んで復旧した圃場に栽培した。当年は全道的に大冷害であったが、当地方に於いては春先の集中降雨で作土の一部が流亡した意外は冷害の影響がなく、比較的順調な生育経過であった。
 本表によると前年の秋に土に緑肥を施用した箱型耕は、生育初期より良好で、成熟期に至るめで普通耕より優れ、生草収量、乾草収量共に増収になっている。この事は心土に対して緑肥の導入によって易分解性有機物、易分解性窒素の供給が豊富であったものと解される。尚試験区(3)の多肥の効果は判然としなかったが、(4)の下層土壌改良区は中期以降生育極めて良好となり、約40%の増収区みた事は将来火山灰土壌改良上注目すべき点と考えられるが、今回は組織的な試験として取り扱う事は出来なかった。
 予備試験として実施した1年目、2年目の成績は次ぎの如くである。

 第2表 昭和37年(1年目)、38年度(2年目)成績
試験区 ビ-ト(1年目) 馬鈴薯(2年目)(kg/10a)
根周
(cm)
根長
(cm)
根重
(kg/10a)
同比
(%)
大薯
中薯
小薯
合計
同比
(%)
1. 普通耕区 22.7 13.2 2.086 100 300 695 710 1.705 100
2. 箱型耕基準肥区 23.1 13.4 2.322 111 310 1.084 740 2.134 125
3. 箱型耕多肥区 24.6 15.3 2.649 127 235 1.090 740 2.065 121
  注) 箱型耕処理で予備試験成績(第2表)の単位面積換算は実際上不可能であるが、前処理での緑肥(ル-ビン)の評価を次ぎの如く考えた。緑肥の成分価としては100kg当り約270円とまなされるで本試験で生産された緑肥は10a当り約4.050円とみられる。
 第2表より明らかな如く、作土を厚く、根の伸長範囲を広く、深くする事により各作物とも生育良好になり増収した。

 2. 作物体分析成績
  3年目の収穫物の各要素含有率及び吸収量は次ぎの如くである。
 第3表 デントコ-ン作物体分析成績(風乾物)
試験区 水分
(%)
含有率(風乾物当%) 吸収量(kg/10a)
N P2O5 K2O N P2O5 K2O
1. 普通耕区 3.23 1.10 0.36 3.89 11.5 3.8 40.5
2. 箱型耕基準肥区 3.86 1.28 0.35 4.13 17.2 4.7 55.5
3. 箱型耕多肥区 3.34 1.31 0.38 3.13 16.2 4.7 38.6
4. 箱型耕基準肥(下層土改良) 3.22 1.27 0.40 3.19 18.8 5.9 47.2
  第3表によれば緑肥の施用により作物体のN含有率が高まり、吸収量も多くなっている。
 これはル-ビンが易分解性で作物による吸収が容易であるためと考えられる。P2O5、K2Oにちての吸収量は判然とした傾向はみられなかった。

 3. 緑肥導入による下層土の窒素供給力の変化
  先ず昭和38年秋に採取した第4表の土壌を用いて、畑状態の水分に保ち常法によりIncubationを行って生成する無機態窒素を測定して、無機化量、無機化率を測定した。

 第4表 Incubationにより無機化する窒素(mg/100g土壌)
試 料 Incubation前(A) Incubation後(B) (B)-(A) 無機化量
無機化率
(%)
NH3-N NO3-N NH3-N NO3-N NH3-N NO3-N
無処理心土 0.30 0.27 0.36 0.93 0.06 0.66 0.72 0.55
緑肥施用心土 5.57 2.76 0.79 16.11 4.78 13.35 8.57 2.68
  次ぎに、昭和39年6月採取の現地試験実施中の土壌分析の結果を示す。

 第5表 Incubationにより無機化する窒素(mg/100g土壌)
試 料 Incubation前(A) Incubation後(B) (B)-(A) 無機化量
無機化率
(%)
C
(%)
N
(%)
C/N
NH3-N NO3-N NH3-N NO3-N NH3-N NO3-N
普通耕-作土 1.00 0.46 1.93 14.53 0.93 14.07 15.00 4.05 4.87 0.37 13.2
 〃  -心土 1.74 0.21 2.45 4.61 0.71 4.40 5.11 2.42 1.95 0.21 9.3
箱型耕(基肥)-作土 1.28 0.63 1.54 16.39 0.26 15.76 18.02 5.17 4.12 0.31 13.3
 〃  ( 〃 )-心土 1.34 0.21 1.34 9.89 9.68 9.68 3.72 3.56 0.26 13.7
箱型耕(多肥)-作土 0.96 0.34 2.46 14.40 1.50 14.46 15.96 5.70 3.82 0.28 13.6
 〃  ( 〃 )-心土 1.78 0.37 2.81 9.16 1.03 8.79 9.82 3.93 3.38 0.25 13.5
  第4表、5表によると一般的に緑肥施用後下層土の腐植含量、全窒素含量共に増加している。C/Nは無処理に比して高くなっているがIncubationにより無機化する窒素量は大幅に増加し、粗粒火山作土の心土の窒素供給量が大幅に増大したものと推定される。
 以上から緑肥の心土に対する施用は易分解性の腐植と、易分解性の窒素の添加に役立っているものと考えられ、その他、未風化な火山性土の熟畑化促進にどの程度役立っているかは今後の研究に俟ちたい。