【指導参考事項】
十勝地方における主要畑雑草の発生消長と生育相について
北海道立農業試験場畑作部

Ⅰ 試験目的
 近年機械化栽培の急速な進展に伴い雑草対策が重要な課題となりつつあるが、合理的防除体系確立の前提として必要な雑草生態に関する知見が極めて乏しい。本試験は十勝地方に発生する主要な畑雑草の分布を調査し、更にこれらについて、防除のうえから重要と思われる季節的発生消長および発生時期と生育相tの関係を2年間にわたり調査解析したものである。したっがて、本報告は具体的な技術対策を提示しているものではなく、今後除草作業を実施するに当たって必要な参考資料を提供しようとするものである。

Ⅱ 十勝地方の主要な畑雑草について(1964)
 1. 試験方法
  十勝管内各地から集めた標本土壌を枠につめ、雑草を発生させて間接的に調査を行うとともに、現地調査を一部実施した。標本土壌の採取地点は土壌型別に区分して町村を指定し、農業改良普及所に豆作率薬30%以上の農家圃場を基準に選定を依頼した。土壌採取法は耕起前てん菜跡および菜豆「大正金時」跡を選び、その圃場を代表しうる場所ほぼ10aの中から、深さ15cmまでの土壌を焼く1kgあて10カ所とり、混合して1点とした。総標本数は52点であった。
 2. 試験結果および考察
  標本土壌および一部の現地調査から得た雑草の総種類数は60種に達したが、発生量が比較的多く、広範に分布する種類は比較的少なく、第1表および第2表に示すように10種前後にすぎなかった。したがってこれらを十勝地方の主要雑草とみなすことができよう。
 十勝地方における主要な土壌型や前作物により多少変動はあったが、大部分は1年草であった。しかし局部的には第1・2表に揚げられていない多年草、すなわちコヌカグサ・シバムギ・ハチジョウナ・ヒメスイバ・スギナなどが多量に発生していることが観察された。1年草にはサナエタデ・イヌホウズキ・アオゲイトウなどがあった。
 十勝地方の主要雑草の種類および発生量は管内における地域差はあまり認められず、圃場の来歴が最も大きく影響していると判断された。

 第1表 十勝地方の主要な畑雑草(本/乾土5kg)
土壌型/
前作物/
草種名
沖積土 乾燥型火山灰土 湿地型火山灰土 小 計
菜豆 てん菜 菜豆 てん菜 菜豆 てん菜 菜豆 てん菜
ハ  コ  ベ 85 115 96 88 95 141 276 344 620
ナギナタコウジュ 42 38 54 71 102 64 198 173 371
アキメヒシバ 15 27 22 25 29 24 66 76 142
シ  ロ  ザ 24 24 36 18 15 22 75 64 139
イ ヌ タ デ 26 14 5 15 25 29 56 58 114
イ ヌ ビ エ 1 11 14 11 30 15 45 37 82
ツ ユ ク サ 10 5 4 7 15 14 29 26 55
タ ニ ソ バ 9 4 3 10 2 13 14 27 41
スカシタゴボウ 12 7 8 3 5 8 25 13 38
そ  の  他 41 41 30 30 36 36 127 107 210
小   計 285 286 272 278 354 361 911 952 1.836
571 550 715     
  注) 前作物菜豆の一部は大小豆、てん菜の伊津部馬鈴薯を含む。

 第2表 発生頻度(調査地点52に対する割合)
発生頻度 草  種  名
91~100% シロザ・ナギナタコウジュ・アキメヒシバ・ハコベ・ツユクサ・イヌビエ
81~90 イヌタデ・アキエノコログサ・オオイヌタデ・スカシタゴボウ
71~80    
61~70 キンエノコ・エノコログサ・タニソバ
51~60    


Ⅲ 主要雑草の季節的発生消長について(1964~1965)
 1. 試験方法
  1964年には前年自然条件で結実した種子を融雪後回収し、全種混合後5℃前後で貯蔵しておき、篩にかけ充分混合した風乾土をつめた枠(60×180cm)に、ほぼ20日間隔に所定量を播種した。播種後継続的に灌水し、約20日間に発生した雑草を1m2あて種類別に5月中旬から11月中旬まで調査した。
 1965年には畑作部圃場産種子を前年草種別に採種し、冬期間土中に埋め融雪後とり出し、以降3℃前後に貯蔵しておき、1種500粒あて、1964年同様に播種および調査を繰り返した。
 ただし、播種床は雑草種子を含まない風乾した土壌を充填し、草種別に3反復播種した。
 2. 調査結果および考察
  前途の主要雑草11種を対象として得られた2年間の結果は1964年および1965年の調査方法は異なったが、両者の結果はおおよそ一致した。
 雑草の首里により発生消長に著しい特徴があることが第1図から明瞭である。これら発生消長の特徴にもとづいて各雑草を類部雨tし、十勝地方における主要雑草の発生期を要約すると第3表のような経過をたどるものと思われ、4つに類別できる。
 すなわち、第1は発生開始が最も早く、融雪後間もなく開始し、発生の最盛期が5~6月にあり、夏の発生は減少し、再び秋に発生が増加する群れである。シロザが典型的な種類であるがイヌタデ、オオイヌタデも同傾向を示す。第2は発生開始期は第1と同様であるが、発生の最盛期が夏以降にあり、この時期以降の発生個体は越冬が可能な群れでハコベ、スカシタゴボウが含まれる。第1および第2の群れに属する種類は幼植物が降霜で枯死しない。また発生終期がおそいことから発生可能期間が最も長い。第3の群は発生開始が5月上~中旬で、最盛期が比較的長く種類を含み、イヌビエ、アキエノコログサ、ナギナタコウジュ、タニソバなどがある。第4は発生開始が5月中旬以降で最も遅く、発生終期が最も早い群であり、したがって発生期間が最も短い雑草でツユクサ、アキメヒシバなどが含まれ、発生の最盛期は夏である。
 前途の発生盛期は全発生可能期間内において、発生量が相対的に増加する時期であり、十勝地方では夏季の気温が低温発生性雑草の最高発生温度を上回るような高温に達しないので、全発生器官にわたり発生盛期の前後にも相当の発生がみられる。
 このように十勝地方における主要雑草は時期により変動づるが、融雪後まもなく発生を開始し降霜期まで継続して発生する種類を含むため、作物の全生育期間を通じて常時発生が行われることになる。しかし実際の圃場では耕起、作物体による地表の遮閉、中耕、培土などがあることと雑草の発生可能な土壌深度内に含まれる種子に限度があることから、それぞれの雑草は典型的な発生消長を示さないのが普通である。一般に圃場発生量は埋土種子の量に規正されるから、耕起後の土壌攪拌が発生深度を越えない限り、第4表に要約した各雑草の発生期間の巾は狭くなり、終期も早まることになる。したがって秋季の発生はきわめて少ないのが普通であるが、根菜類の収穫跡地、秋播作物圃場などのように諸作業に伴い埋土種子が露出される圃場では、この時期に発生盛期を持つ雑草が多量に発生する。とくにこの時期に発生したハコベ、スカシタゴボウの第2群の雑草は大部分越冬する。
 以上のことから雑草防除の基本があらゆる圃場管理作業を通じて、埋土中の雑草種子量の減少に努めることにあることが理解される。次いで当年作の雑草の防除には発生深度以下の埋土種子を露出させるような土壌の攪拌は避けて行うことが望ましいことを示している。この目的に合致する有効な手段の一つとして雑草発生盛期頃まで効果の持続する土壌処理除草剤の使用が現在考えられる。

 第1図 各雑草の季節的発生消長(1964~1965)


 第3表 十勝地方における主要雑草の発生期
草 種 名 分類型 発生期 (月旬)
始期 盛期 終期
シ ロ ザ 夏生(早) (4中)~下 5中~下   9中~10中 10中~下
オオイヌタデ 4下~5上 5中~6中  8下~10上 10中
イ ヌ タ デ   〃     9下~10上  〃
ハ コ ベ 冬生(秋) (4中)~4下 8下~10中 10中~11上
スカシタゴボウ (4中)~5上 8下~10上 10中~下
イ ヌ ビ エ 夏生(中) 5上~中 6中~7上  8下~9中 10上~中
アキエノコログサ 6中~9下
ナギナタコウジュ 6下~8中
タ ニ ソ バ 7上~9上 9下~10上
アキメヒシバ 夏生(晩) 5中~6上 7上~8中 9下
ツ ユ ク サ 5中~下 7下~8下 9下~10上
  注) 分類型は1年生を夏生、越年生を冬生とし、発生始期の早晩により、早・中・晩としたが、これは暫定的なものである。

Ⅳ 主要雑草の発生時期と生育相との関係(1964~1965)
 発生と防除の関係は発生した雑草の生育をも考慮しなければならないので、この点を明らかにしようとして次の試験を行った。
 1. 試験方法
  前項主要雑草10種うぃ対象に前試験の時期と並行して圃場に埋設した素焼鉢(径15cm)にに多量の種子を播種した。鉢には風乾土840gをつめ吸水せしめ、3要素各1gを混入し、1種類5個あて接して設置した。発生時漸次間引きし、最終的には1鉢1本立てとした。開花期に達した時期2個体をサンプリングし、残り3個体を採種用にあてた。ただし1965年は前年扱った種類は2反復とした。
 2. 試験結果および考察
  (1) 発生時期と開花、結実始期と関係
  前試験と対応して4月下旬から10月中旬までに発生させた個体について開花、結実始期の観察を行った。結実始期はピンセットにより最初に開会した種実を砕き、成熟期に達した時期とした。
  1965年の結実は1964年の開花、結実始期に比べハコベを除きやや早い傾向を示したが、2年間とも発生時期と開花始期との相対的関係はほぼ一致していた。そので1965年の結果について、この関係を図示すると第2図のようになり、発生時期と開花結実時期との関係が明瞭となる。
  すなわち、越年生のハコベ、スカシタゴボウの2種は発生時期の早晩とほぼ比例して開花結実始期に達し、5~7月の間では前者は発生後40~50日、後者は60~70日をへて結実始に達した。なおハコベの中には発生してから結実するまで60~80日以上要する晩咲型ともいえる生態型が畑作部圃場に1割前後存在したため、区別して調査し、普通型を早咲型とした(以下これに準ずる)。
 イヌタデを除く他の7種は発生時期の早い個体が開花、結実始期がやや早い程度で、発生時期の早晩による差は大きくなく、すべて8月下旬以降に集中して結実始めとなった。光週性からみて前者は中間植物、後者は短日植物に属するものと思われる。イヌタデは2つの中間にあり、越年生2種ほど極端でないが、発生時期と並行して開花結実始期に達し、最も早い時期が8月10日であった。結実可能な最終発生時期は種類により異なり、早いものは7月中~下旬、おそいものは8月中~下旬であった。このことはいわゆる「たね草とり」は8月中に実施すべきことを示している。
 なお、2カ年にわたる本試験の観察結果から十勝地方における主要雑草の発生時期と開花結実始期との関係を要約すると第4表のようになる。

 第2図 各雑草の発生時期と開花結実始期との関係(1965)

 第4表 十勝地方における主要雑草の発生時期と開花、結実始期、枯葉期との関係(月旬)
項 目/
草種名
最大発生期間 開花始期 結実始期 完全枯葉期
シ ロ ザ (4中)~10下 8下 10中 9中 10下 10上 11中
オオイヌタデ (4下)~10中 8中 9下 9上 10中 11上
イ ヌ タ デ (4下)~10中 7下 8上 10上
ハ コ ベ (4中)~11上 6上 10上 6中(5下) 10中 8上 (注①)
スカシタゴボウ (4中)~10下 6下 9中 7中(6下) 10上 8上 (注②)
イ ヌ ビ エ 5上~10中 8中 8下 10中 10上 10中
アキエコノグサ 9上 10上
ナギナタコウジュ 9上 10上 9下 10中 10下
アキメヒシバ (5中)~9下 8中 9下 8下 10上 10中
ツ ユ ク サ 5中~10上 9上 9下
  注①) 8月上~中旬以降発生越冬
  注②) 7月下旬以降   〃
      ハコベ、スカシタゴボウ結実始期( )は越冬個体の時期を示す。

  (2) はっせいじきと伸長生長との関係
   防除の面から雑草の伸長の特性はきわめて重要であるため、前途の観察個体について発生後の伸長経過を追跡し、発生時期との関係を図示した。調査方法は、個体を単位とし、地際から最大伸長迄を10日ごとに測定した。
  第3図から各雑草の伸長生長の型を3つに大別できると思われる。すなわち、大1はシロザ、オオイヌタデ、イヌビエ、アキエノコログサにように適期に発生した場合、草丈が100cmを上回り、初期から6月中旬頃まで発生した個体の最終伸長量は殆ど差がなくなる生長速度のきわめて早いタイプである。これらは6月発生した場合最も生長速度が速く一週間で平均10cm前後の伸長量を示し、しかも結実期にはそれ以前に発生した個体の草丈に到着する。しかし7月以降に発生すると急激に草丈は低くなる。
 第2はイヌタデ、ナギナタコウジュ、スカシタゴボウ、アキメヒシバ、ツユクサなどで、適期に発生しても草丈が100cmに達せず、種類によりやや異なるが、6月中旬頃までに発生した場合、最終草丈には大差がないが、しれ以降に発生した個体は緩慢に最大伸長量が低くなるため、第1のタイプほど7月以降に発生しても伸長量の低下が著しくないタイプである。生長速度は前者に比べて遅い。第3はハコベで代表される放物線状の伸長をたどるタイプである。これは葡萄茎が完全に伸長したあと漸次枯れて行くことと、株が枯れない場合その後再び新しい茎が伸びるためである。なおハコベの最大伸長期前後が結実量の最大期に当たるのが一般である。ハコベの晩咲型は早咲型に比べ大型である。
 これらの結実は機械収穫を行なう際に、雑草障害の程度の判定を前以て行う場合有用である。
 以上2年間の結果から各雑草の伸長生長からみた適発生時期(最終伸長量が最高値の約80%以上)および最終草丈が適期に発生した草丈の1/2前後(本来の生育を示さなくなる転換時期)または1/3前後(大部分結実できなくなる時期)に低下するそれぞれのはっせいじきを第6表に要約した。これは競合の少ない条件の値であるため、実際の圃場では、これが相当変動づることは当然であるが、発生時期ごとの最終伸長量の相対的関係は圃場においても、このような経過をたどるものと思われる。

 第5表 十勝地方における主要雑草の発生時期と伸長生長との関係(月旬)
項 目/
草種名
好適発生時期 左の1/2前後の
伸長量の発生時期
同1/3前後
の発生時期
時 期 伸長量(cm) 伸長量度(m/10日)
シ ロ ザ 4下~6下 170~200 15~20 7上~中 8上~中
オオイヌタデ 5上~6中 100~140 10~13 7中~下 8中~下
イ ヌ タ デ 5上~6下 60~80 6~7 8上~中 8下~9上
ハ コ ベ 4下~7上 40~50 5~6 7下~8上 9上~中
スカシタゴボウ 5上~7上 8下~9上
イ ヌ ビ エ 5上~6下 120~140 10~14 7中~下 8上~中
アキエコノグサ 100~130
ナギナタコウジュ 5上~6中 60~70 5~7
アキメヒシバ 5下~6下 6~7 7下~8上 8中~下
ツ ユ ク サ 5中~6下 70~80 8~9 7下 8上~中

  (3) 発生時期と結実量との関係
   圃場が雑草に汚染されて雑草対策の必要性が生ずる最大の要因は結実した種子が多量に落下して作土中の雑草種子密度を増大させる点である。したがって草の結実量を発生時期との関連において知ることは実際防除のうえ有用である。前項の調査個体ごとに結実開始後枯死するまで随時採種を行い、結実量を調査した。種子数は継続的に採種したものを合計し、乾燥後小型唐箕にかけ選別したあと、3.000粒を越えた場合は1.000粒重(0.1mg単位3反復)から換算した。結果は第7表に示した。
 発生時期と結実量との相対的関係はハコベをのぞき2年間ともほぼ同傾向が認められ、各種類とも5月中に発生した個体が最大結実量を示し、5月中発生個体相互には大差がないが6月以降の発生は結実量が相当減少し、7月以降の発生は激減し、8月以降発生は多くの種類は結実せず、結実しても数粒であり、この時期に発生しても比較的多量の種子をつけたのはシロザ、ハコベ、ナギナタコウジュだけであった。このように発生時期と結実量との関係は前項の伸長生長によりも発生時期の遅れに伴う減少が大きかった。なお、1965年の結実量は1964年に比べ各種類とも2倍前後に増加しているのは前途の結実時期のずれとともに気象条件の相違にもとずくものと思われる。
 各雑草の結実量は種類により著しく異なり、1965年の最大値を比較するとシロザが個体当り25万個以上上回り最も多かった。次ぎにスカシタゴボウ約15万個、他ははるかに少なくナギナタコウジュ約7万個、オオイヌタデ、イヌタデ、ハコベ、アキメヒシバは4万個以下であった。アキエノコログサ、ツユクサは1万個に及ばず後者は3千余りであった。なおハコベの晩咲型は早咲型より発生時期が早いと結実量が多かった。これらの絶対量は各雑草の生育期間を全うさせた場合の値であり、比較的長期間にわたり結実したものの合計値である。

 第6表 各雑草の発生時期と結実量との関係
 ア シロザ
1964 1965
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
4.30 140.224 5. 5 284.239
5.20 143.166 5.24 242.368
6. 5 131.642 6.12 196.576
6.24 116.594 7. 5 48.874
7.15 48.724 7.23 16.469
8. 4 2.484 8.19 158

 イ オオイヌタデ
1964 1965
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
5. 4 12.385 5.26 36.719
5.22 20.010 6.12 28.286
6. 7 12.762 7. 7 13.105
※6.25 316 7.23 645
7.17 40     
8. 6 2    

 ウ イヌタデ(1965)
1964
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
5. 5 31.510
5.27 30.500
6.14 16.169
7. 8 6.139
7.23 59

 エ ハコベ
1964 1965
発生時期
(月日)
粒 数 発生時期
(月日)
粒 数
早咲型
(個)
晩咲型
(個)
早咲型
(個)
晩咲型
(個)
4.30 4.717 24.037 5.10 18.815
5.20 5.775 13.904 5.27 12.474 19.507
6. 5 9.164 2.672 6.12 18.381
6.24 12.951 1.088 7. 5 12.370 14.223
7.15 1.792 7.27 4.304 4.966
8. 4 1.126 91 8.20 194
8.24 71

 オ スカシタゴボウ(1965)
1965
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
5. 5 138.549
5.27 156.756
※6.12 15.216
7. 8 85.779
7.23 1.540

 カ イヌビエ
1964 1965
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
5. 7 10.820 5.13 24.750
5.24 16.653 5.27 28.031
6. 9 10.217 6.14 23.786
6.26 6.524 7. 5 10.373
7.17 300 7.23 1.195
8. 5 3

 キ アキエノコログサ
1964 1965
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
5. 9 2.199 5.15 7.299
5.25 5.802 5.30 8.824
6.10 5.016 6.14 6.069
6.26 1.657 7. 7 1.350
7.18 6 7.23 29

 ク ナギナタコウジュ
1964 1965
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
5. 8 33.490 5. 5 68.744
5.25 39.282 5.27 65.222
6.11 26.244 6.14 29.667
6.29 21.417 7. 5 18.717
7.16 4.225 7.23 1.664
8. 4 506 8.19 15

 ケ アキメヒシバ
1964 1965
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
5.31 5.602 5.30 17.207
6.13 10.154 6.14 13.307
6.30 3.548 ※7. 7 1.034
7.16 1.513 ※7.23 202
8. 5 10 8.19 44

 コ ツユクサ(1965)
1965
発生時期
(月日)
粒 数
(個)
5.18 2.518
5.30 3.345
6.18 573
7.13 83

  以上の結果を要約し各雑草の結実量からみた適発生時期、適時期発生の結実量の1/10前後に低下する発生時期および結実限界発生時期を示すと第7表の通りである。これは個体植の状態であるため作物栽植条件下では前途の伸長量以上に変動し、結実量の絶対値は著しく低下することが考えられるが、発生時期の遅れに伴う結実量減少の相対的関係は反映しているものと思われる。

 第7表 十勝地方における主要雑草の発生時期と結実量の関係(月旬)
項 目/
草種名
結実好適発生時期 左の1/10以下の発生時期 結実限界発生時期
シ ロ ザ 4下~5下 7中~下 8上~中
オオイヌタデ 5上~下 7上~中 7下~8上
イ ヌ タ デ 7中~下
ハ コ ベ 4下~6下 7下~8中 8中~下
スカシタゴボウ 5上~下(6上) 7中~下 7下
イ ヌ ビ エ 5上~6上 7下~8上
アキエコノグサ 7中~下
ナギナタコウジュ 5上~下(6上) 8上~中
アキメヒシバ 5下~6中(下) 7下~8上
ツ ユ ク サ 5中~下 6下~7上 7中~下

 3. 総合考察
  前途の各項目を総合的に判断して発生時期と防除との関係を概観すると次ぎのごとくである。
 雑草害は、作物と雑草との生育競合の結果もたらされるmのであるので、それぞれの雑草が旺盛な生育をするほど障害は増大する。したがって生育と発生時期の関係を防除の観点からみると、生育に好適な発生時期ほど防除時期として重視されなければならない。本試験結果から十勝地方における主要雑草の発生時期と生育相の関係を第4・5・7表に要約した。
  雑草害は雑草の種類により異なるが第6表の伸長生長の旺盛に行われる発生時期を、それぞれの雑草の重要除草時期とみると、シロザ以下7種の全部発生開始後から6月中~下旬までの約2カ月間がその時期に相当し、ハコベとスカシタゴボウは7月上旬頃までと思われる。これは作物の種類および栽培法を考慮外としたが作物の栽植条件下ではこの時期はやや早まるものと思われる。
 次いで発生を許しても雑草害がないが無視してもよい時期、すなわち最終除草期ともいうべき時期は雑草の種類、発生量および作物とその栽培法で異なるので一概には言えないが、遅くとも7月下旬までで充分のように推察される。この場合雑草の草丈が低い種類ほど、また作物では草丈が高く地表面の遮閉の程度が大きいほどこの時期は早くなる。ただし根菜類の機械収穫時の障害はハコベなどでは8月以降に発生しても無視できない。また結実種子が落下して圃場を汚染することも広義の雑草害とみれば、相当遅く発生しても結実が可能であるため(第7表)最終発生許容時期は最も早い場合スカシタゴボウ、アキエノコログサ、ツユクサが7月中~下旬、タデ類、イヌビエが7月下旬~8月上旬、シロザ、ナギナタコウジュアキメヒシバが8月上~中旬、ハコベが最も遅く8月中~下旬である。またスカシタゴボウ、ハコベはそれ以降に発生してもそのままに放置すれば後者は翌春5月下旬から前者は6月下旬から種子を落下させる。しかしこのような遅い時期の除草はきわめて困難であるから、初期除草を完全にすることと作物の初期生育を促進するとともに欠株を防止して、遅く発生した雑草の生育と結実量を極力抑制することが肝要となる。
 雑草の発生量の多少は繁殖力すなわち1年草では種子生産量、埋土中の寿命の長さ、発生期間の長さ、除草の難易などにより、左右される本試験の結果は十勝地方における主要雑草についてこれらの点を明らかにしているものと考えられる。