【指導参考事項】
なすのアブラムシ類防除試験成績
北海道立中央農業試験場

Ⅰ 普及上の要点
 1. 露地普通栽培法による茄に対し、移植時に粒剤を施用してアブラムシを防除しようとした。
 2. 施用方法は植え付けの際、株穴に所定量を施し軽く覆土してから苗をおき覆土する。
 3. 39~40年2カ年のせいせきを検討した結果各粒剤とも長期間アブラムシ類の繁殖を抑制できた。早期に飛来するアブラムシを両年ともに20日間は完全に寄生繁殖を抑制することができ、以後のアブラムシの発生増殖をも抑え、各粒剤共に60~70日間効果があった。
 4. 薬剤間ではエチルチオメトン粒剤は略同等の効果があったがIPSP粒剤は前粒剤よりやや劣るようである。
 5. 施用量は株当り0.5~2.0gの間でいづれも有効であり実用的には0.5~1.0gが適当であろう。
 6. 室内実験の結果から薬剤の殺虫有効期間は処理後約60日間と考えられた。しかしIPSP粒剤は圃場試験同様に若干短いようである。
 7. エチルチオメトン粒剤は生食野菜に対する使用は収穫、生食が35日前と予想されるときは使用しない。
 8. IPSP粒剤は生食野菜に対する使用は収穫、生食が30日前と予想されるときは使用しない(多dし菜類を除く)。

Ⅱ 試験調査成績
 圃場試験
  1964年試験
 1. 試験場所 北海道立中央農試圃場
 2. 耕種概要 品種 茄「黒鈴」  移植期 6月8日  栽植密度 90×60cm  普通栽培
 3. 供試薬剤
  (1) IPSP 5%粒剤
  (2) エチルチオメトン 5%粒剤
  (3) チオメトン 5%粒剤
  (4) チオメトン 25%乳剤
 4. 薬剤処理方法 粒剤は移植穴に株当り所定量(1g、2g)を処理し、その上に苗を移植し覆土し(6月13日、6月27日、7月11日、7月25日)茎葉散布を行った。
 5. 区制・面積 1区7.3m2  7区3連制  乱塊法
 6. 調査方法 移植後5日目から略1週間毎に1区5株全葉についてアブラムシの種類別寄生数を調査した。
 7. 成績
 寄生虫数調査
試験区別 種類 処理後
5日目
6月12日

12日目
6月19日

19日目
6月26日

26日目
7月3日

34日目
7月11日

40日目
7月17日

47日目
7月24日

58日目
8月4日

66日目
8月12日

78日目
8月24日

88日目
9月3日

101日目
9月16日
チオメトン5%粒剤1g 3 種
合 計
0 0 0 0 0 10.0 21.0 53.7 23.0* 58.3** 160.3** 537.3**
同   上    2g 0 0 0 0 0 1.7 5.3 7.0 11.7*: 28.0** 25.0** 285.7**
IPSP5%粒剤1g 0 0.7 0.3 0.3 0.3 23.3 59.3 41.7 25.3** 56.0** 319.7** 1.465.3
同   上    2g 2.3 0 0 0 0 8.7 13.7 13.0 25.3** 28.0** 133.0** 65.0**
エチルチオメトン5%粒剤1g 1.0 0 0 0 0 12.3 32.3 36.3 30.7** 21.3** 26.3** 180.7**
同   上     2g 2.0 0 0.3 0 0 3.0 14.7 14.0 9.0** 2.3** 12.7** 19.0**
チオメトン25%乳剤1.000倍 9.3 0 4.3 0.3 0.3 11.0 42.7 11.3 3.0** 37.7** 98.0** 409.7**
無処理 モモアカアブラ 0 13.0 25.7 83.0 473.0 703.0 1.016.3 770.0 160.3 164.3 365.7 921.0
ヒゲナガアブラ 1.0 20.7 17.0 40.7 56.0 149.0 102.7 65.0 15.7 0.7 10.0 0.7
ワタアブラ 0 0 0 0 0 4.3 12.3 166.0 36.0 116.7 543.3 1.285.0
合  計 1.0 33.7 42.7 123.7 529.0 856.3 1.131.3 1.001.0 212.0 281.7 919.0 2.206.7
注  1区 5株調査  3区平均値 LSD 0.05      63.7 160.2 506.4 882.0
0.01      88.4 222.4 702.9 1.224.1
C  V      85.4 142.4 147.0 77.9

 アブラムシ類の発生消長

  1965年試験
 1. 試験場所 北海道立中央農試圃場
 2. 耕種概要 品種 茄「新交早生茄」  移植日 6月14日
    栽植密度 75×45cm 尿素20kg 過石60kg 硫加10kg〔追肥〕 硫安20kg
   7月中旬施用  普通栽培
 3. 供試薬剤
  (1) エチルチオメトン(A)5%粒剤
  (2) エチルチオメトン(B)5%粒剤
  (3) IPSP5%粒剤
 4. 薬剤処理方法 粒剤を移植穴に株当り所定量(0.5g、0.75g、1.0g)を処理し、その上に苗を移植し覆土した。
 5. 区制・面積 1区 5.18m2  10区 3連制 乱塊法
 6. 調査方法 移植後12日目から略1一週間毎に1区5株を抽出し全葉、8月6日からは1株任意10葉計50葉についてアブラムシの種類別寄生虫数を調査した。
  なお、株当り葉数の推移調査も行った。

 葉数推移調査
番号 試験区別 7月
2日

9日

16日

23日

30日
8月
6日

13日

20日

27日
9月
3日

14日
1 エチルチオメトン(A)5%粒剤0.5g 4.4 5.9 8.0 16.1 23.3 27.1 38.9 41.2 58.6 61.6 65.0
2     同     上    0.75g 4.3 5.4 6.9 11.6 16.6 20.0 31.7 35.4 41.4 52.0 53.2
3     同     上     1.0g 5.2 6.1 7.8 15.4 21.4 25.5 35.2 46.3 55.2 67.6 64.6
4 エチルチオメトン(B)5%粒剤0.5g 4.5 6.0 7.6 15.2 17.3 21.7 31.0 38.2 38.2 47.8 41.6
5     同     上    0.75g 4.4 4.9 6.0 10.3 13.4 19.7 26.9 32.9 36.6 47.4 48.0
6     同     上     1.0g 4.6 4.4 8.1 14.3 19.0 23.5 32.0 36.2 35.4 41.0 43.4
7   IPSP 5%粒剤      0.5g 4.2 5.4 6.4 11.3 15.0 24.0 28.1 33.6 33.2 44.2 42.4
8     同     上     0.75g 4.9 7.0 10.0 16.9 19.6 27.0 36.9 48.0 57.4 45.0 59.8
9     同     上     1.0g 4.4 5.6 7.9 14.0 24.0 25.4 34.1 42.0 53.0 65.6 59.2
10 無   処   理 4.8 5.6 8.2 12.2 17.0 21.5 29.5 34.5 33.4 48.4 40.8
  注) 1) 生長点葉は展開したもののみを含む
     2) 3区平均値で示した。


 7. 成績
  寄生虫数調査(省略)

  室内試験
 1. 試験場所 北海道立中央農試
 2. 方法    前記の圃場試験に用いた茄から各処理区毎に葉を採集してシャ-レ(径7cm)に収め、アブラムシ(4令前後)を放飼して24時間後の殺虫効果を調べた。葉の採集位置は主枝先端2枚目とした。
 3. 試験月日
  (1) 処理後39日目 (7月23日)
  (2) 処理後49日目 (8月 2日)
  (3)   〃 56日目 (8月 9日)
  (4)   〃 60日目 (8月13日)
  (5)   〃 67日目 (8月20日)
 4. 供試頭数 (1)~(3)回5頭  (4)~(5)回10頭
 5. 供試薬剤及び供試量
  1. エチルチオメトン(A)5%粒剤株当り 0.5g
  2.  同      上        〃 0.75g
  3.  同      上        〃  1.0g
  4. エチルチオメトン(B)5%粒剤  〃  0.5g
  5.  同      上        〃 0.75g
  6.  同      上        〃   1.0g
  7. IPSP5%粒剤株当り           0.5g
  8.  同      上        〃  0.75g
  9.  同      上        〃   1.0g
  10. 無   処   理
 6. 成績
  死虫率(逆正弦変換値)
試験区別 処理後39日目
7月23日
処理後49日目
8月2日
処理後56日目
8月6日
処理後60日目
8月13日
処理後67日目
8月13日
エチルチオメトン(A) 5%粒剤 0.5g 44.9** 47.2** 60.0** 23.8** 16.9**
同        上    0.75g 22.8** 29.4** 68.0** 40.7** 10.7**
同        上     1.0g 43.0** 33.8** 60.1** 33.9** 23.8**
エチルチオメトン(B) 5%粒剤 0.5g 39.2** 50.7** 33.8** 62.7** 15.0**
同        上    0.75g 39.2** 51.4** 42.3** 45.0** 11.1**
同        上     1.0g 22.8** 38.8** 38.8** 44.3** 0
IPSP5%粒剤        0.5g 34.9** 47.2** 51.1** 11.1** 8.8
同        上    0.75g 22.8** 51.1** 43.0** 23.8** 6.1
同        上     1.0g 39.2** 46.3** 30.0** 15.0** 21.1**
無   処   理 0 0 0 0 6.1
LSD 0.05 5.62 10.58 9.27 8.71 3.20
0.01 7.67 14.45 12.66 11.90 4.37
C V 7.15 5.81 10.40 10.31 4.77

Ⅲ 試験結果総括
 2カ年にわたる試験により、エチルチオメトン、チオメトン、IPSP各粒剤ともアブラムシに対して極めて効果があることがわかった。
 施用量は第1年目、株当り1及び2gとし、第2年目は0.5~1.0gとしたが、いづれも有効で施用量による差は認められなかった。しかし70日を過ぎる事から0.5g施用区はやや劣る気配がみられるから0.5g以下の施用では十分な効果は期待できないと考えられる。従って株当り0.5~1.0gの施用が適当であろう。
 株当たり0.5~1.0gの施用は効果が特にすぐれることなく、叉残留毒性の問題もあるので避けるべきであろう。
 なお苗床、ビニ-ル被覆栽培等における使用法については施用量、施用方法に関する試験を要し、今後の検討にまちたい。