【指導参考事項】
シロクロ-バ品種に関する試験成績
北海道農業試験場層草地開発部
           滝川畜産試験場
           新得畜産試験場

Ⅰ シロクロ-バ品種の選定
 北海道に適応するシロクロ-バ品種についてはこれまで未調整の段階にあった。元来シロクロ-バについて抵抗性と永続性はきわめて重視すべき形質である。しかし近時シロクロ-バには次のごとくウイルス病の発生が著しく、その被害は軽視できない実情下にある。
 アルファルファモザイク病(Alfalfa mosaicvirus)
 シロクロ-バモザイク病(White clover mosaicvirus)
 これが対策は根本的にはウイルス抵抗性品種の育成によらざるをえないかもしれない。なおシロクロ-バは、寒冷地では菌核病(Sclerotinia trifokiorum ERIKS)による冬枯も問題とされる。しかし月寒、滝川、新得3場所におけるこれまでの試験結果を総合すれば次の2品種がとくに注目された。
 Pijbjerg Milka……十勝では冬枯れが認められない。
 New Zealand whiteは次の草種体系により種子保証がなされるが、海外へは④⑤のSeedが種子商を通じて販売される。
 ① Seed of Selected Strains→②Cerified Goverment Stock Seed→③Cerified Pedigree Seed→④Certified Mother Se+ed→⑤Certified Permanent Pasture Se-ed(Standard Certified Seed)

Ⅱ シロクロ-バ品種比較試験成績概要
北海道農業試験場草地開発部
          牧草第1研究室
 1. 試験目的
  現在草地開発事業の進展にともない、シロクロ-バ種子の需要が急増しているが、品種、系統を考慮した導入はほとんど行われていない。これらの種子は全く輸入に依存し、国内生産はみられない。
 本試験は諸外国育成の品種について収量および特性を調査し、北海道における適否性を検討する。
 2. 試験年次  昭和37~38年
 3. 供試材料
  (Ⅰ) 品種数  9
  (Ⅱ) 品種名  次のとおり
品 種 名 台帳番号 取寄先
Common型     
Daeno 畜1311 デンマ-ク
Dutcu white   オランダ
Lodi otofte 〃1316 デンマ-ク
New Zedland white
(Pe-digree seed)
〃1312 ニュ-ジ-ランド
     〃
(Mother seed)
〃1313
     〃
(Permanent Past-ure seed)
〃1314
pajbjerg Milka 〃1310 デンマ-ク
Wilkla 〃1315 オランダ
Ladino型    
Commercial(Ⅰ)   アメリカ
   〃   (Ⅱ)  

 4. 試験結果
  播種2年目におけるシロクロ-バ品種の生草量(kg/a)(昭38)
品 種 名 1番草
平 均
2番草
平 均
平均
Daeno 115.6 20.0 135.5
Dutcu white 106.1 40.0 146.1
Lodi otofte 115.6 31.1 146.7
N.Z.white
(Peigree seed)
140.0 55.6 195.6
   〃
(Mother seed)
149.5 58.9 208.4
   〃
(Perm Past seed)
127.2 68.9 196.1
pajbjerg Milka 105.6 24.4 130.0
Wilkla 93.3 20.6 113.9
Commercial Ladino(Ⅰ) 93.3 63.9 157.2
      〃     (Ⅱ) 115.0 77.2 192.2

 5. 考察
  播種2年目早春における萌芽は全品種とも被覆力はそれ程強いとは認められず、開花期の観察では葉枯病、さび病、斑点病などの病害発生が多く認められた。収量については1番草及び1.2番草合計生草収量では各品種間に有意差は認められなかったが、ニュ-ジ-ランド系統が最も多収傾向を示したDaeno、Wi-lkla、DDuch whiteはいずれも草丈伸長が小で、小葉が小さく、収量は他品種に比し劣ると認めた。再生力、被覆力病害等の点を考慮すれば、ニュ-ジ-ランド系統が最も有望と推察される。
 以上は播種2年目の試験結果からの考察であるが、シロクロ-バの場合、その利用年限は極めて長く、また放牧利用と主とするであろうから、品種の本質的な特性と適否性はこれらの点を吟味の上決定される必要がある。

  北海道新得畜産試験場
 1. 試験目的
  輸入シロクロ-バ品種について、生産力および特性を調査し当地方における栽培の適否性を明らかにする。
 2. 試験および試験年次
  北海道立新得畜産試験場
  昭和37年~40年
 3. 試験方法
  供試品種
品種名 取寄先
Common型 1. Daeno デンマ-ク
2. Dutcu white オランダ
3. Lodi otofte デンマ-ク
4. New Zedland white(Pe-digree Seed) ニュ-ジ-ランド
5.      〃     (Mot-her Seed)
6.      〃     (Per manent Sasture Seed)
7. pajbjerg Milka デンマ-ク
8. Wilkla オランダ
Ladino型 9. Commercial(Ⅰ) アメリカ

 4.  試験結果
  (1) 収量:昭和38年以降3カ年間の合計収量では、pajbjergが最も多収を示し、これにNew Zedland系Lodi otofteが次いでいた。
Dutcu whiteは最も収量が少なかった。
これを番草別にみると、1番草ではpajbjerg、Daenoがよく、次いでDutcu whiteが多収であり、New Zedland系のPedigree Mother Seedは少収であった。
2番草ではPalberg、Lodi otofteが多収を示し、Daena、Dutch Whiteは低収にとどまった。
3番草では、Palberg、New Zedland系、Lodi otofteが収量多くDutcu whiteは少なかった。
  (2) 越冬性:昭和39年は地下凍結が特に甚しく、イネ科牧草の冬枯も多かった。Ladino Cloverのほかシロクロ-バでは、New Zedland系のものが、特に冬枯れの多かったことは注目に値する。
  (3) 再生力:Ladino Cloverは最も再生が早いがシロクロ-バのうちではPalberg、New Zedland white(Pemanent hasture Pedigree Seed)
  (4) その他の特性:草丈はpajbjerg、Daenoはわずかに高くWiklaは低いと認めた。
 また、葉の大きさはWilklaが多く、New Zedland whiteはやや多いと認めた。
 その他の花蕾数はDutcu white、Wilkla多いと観察された。

  北海道立滝川畜産試験場
 1. 試験年次  昭和37年より、昭和40年まで 4ヶ年間
 2. 試験場所  道立滝川畜産試験場 圃場
 3. 供試品種
品種名 取寄先
Common型
Commercial ニュ-ジ-ランド
Daeno デンマ-ク
Lodi otofte
Morse O tofte
New Zedland white(Pedigree seed) ニュ-ジ-ランド
     〃     (Mather seed)
     〃     (Permanent Pastuer seed)
Qregon White アメリカ
pajbjerg Milka デンマ-ク
Wilkla オランダ
Ladion型
Cammercial Ⅰ アメリカ
   〃    Ⅱ

 4. 試験結果
  (1) 草丈と密度
 各品種の草丈についてみるとLadino型はCom-mon型よりかなり高く、Common型10品種中、草丈の高いものとしてはOregon white及びNew Zedland whiteのPadigree seed、Commercial低いものとしては、WilklaDaeno、N.Zwhite(Pe-rm past seed)Morseo Otofte等があげられ、他品種ほぼ中間のものと考えられる。
 またCommon型の各品種はLadino型の各品種に比し、全般的に草丈は低いが、茎数は多く多葉でしたがって密度が高い。
  (2) 再生力
 再生力は牧放のときの蹄傷、競合等をも関連し刈取のみの判定は困難であるが、一応再生力の強弱を各年次の刈取後20日目の草丈でみるとOregon whiteおよびNew Zedland white(Pedigree Mother seed)Commercial(N.Z white)が強く、弱いものとしては、Morse O tofte wilklaがあげられ、他は中間的なものと考えられる。
  (3) 収量
 播種当年より40年の合計収量では、Ladino型のCommercialⅠ・ⅡはいずれもCommon型の各品種をはかるに凌駕するが、Common型、10品種中では、New Zedland whiteのPedigree seed commercial palbierg wilkla等が、相順次して優れている。
 各品種共播種3年目までは直線的な上昇を示すが4年目に至って各品種に差が現れ、その中で4年目における収量低減率が低く永続性の優れていると考えられるものとしてoregon White、Commercial(N.Z white)pajbjerg Wilkla等があげられる。一方New Zedland whiteのpedigree seed、およびParmanent pastuer seedは総収量では高いが、4年目における低減率が著しい。番草別の収量をみれば品種より一定でないが概ね1番草は年間合計収量の40~45%、2番草は25~30%、3番草は20~25%で4番草では10%程度である。
 以上の結果から当場において昭和37年より同40年まで4ヶ年に亘りシロクロ-バが品種に関してその収量、並に特性について試験を実施した。しかし4ヶ年間の試験結果を総合すればCommon型品種としてはNew Zedland whiteの系統およびpajbjerg wilkla が有望のように考えられる。