【指導参考事項】
乾草の平衝水分及び発かび日数に関する試験成績
北海道農業試験場畑作部

Ⅰ 試験の目的
 乾草を特に地上乾燥法、架上乾燥法、常温通風乾燥法等によって調整する場合、乾牧草が乾燥する、しない、又はその遅速は、その時の空気の温度、湿土と密接な関係がある。叉、乾草を貯蔵する場合にも、良く乾燥していてもカビが生えてきたり、含水率がやや高くてもカビが生えない場合があるが、これも同じように空気の温度、湿度と間接的な関係を有する。一定の空気の有する水蒸気張力をP、ある水分を持った吸湿性材料の水蒸気張力をPsとすると次の関係がある。
 (1) P>Psの場合、PはPsより水分を奪ってP=Psに近づき、Psの含水率は減少して乾燥して行く。
 (2) P<Psの場合、PsはPより水分を吸収しP=Psに近づき、Psの含水率は増加して、吸湿した状態となる。
 (3) 完全にP=Psの状態となると乾燥も吸湿もしなくなり、平衝状態を保つ。(この時のPsの含水率を平衝水分という)
 乾牧草は恰好な吸湿性材料なので以上の関係に左右されるが、ここでは主として、湿度及び関係湿度乾草半乾草について平衝水分、カビ発生の有無、日数、飼料組成の動きについて調査し乾草調整及び貯蔵上一、二の知見を得たので報告して参考に供する。

Ⅱ 試験成績の概要
 乾草調整及び貯蔵上の基礎資料を得る目的で、乾草、半乾草について平衝水分、温度、関係湿度と発カビの程度、日数、貯蔵時の成分変化について検討した。
 その結果:
 1. 乾草を8日間屋外に放置すると、平衝水分に達するが、乾草の含有率と関係温度の観測値(含水率測定の1日前)との相関関係は高く、アカクロ-バの含水率はチモシ-より高かった。
 2. 温度によって平衝水分は変化し、低湿条件では高温になるに従って平衝水分は低く、高質条件では低温が低かったが発カビすることの関係は変わる。
 またカビの発生は高温高湿のなるに従い発生度、発生速度が高くなり、関係湿度80~75%以上で見られ、含水率は0:39℃以上、10℃:20%、20℃:17%、30℃:14%以上であった。
 3. 平衝水分は草種、刈取時期によって22.4%~16.5%の巾があり、イネ科よりマメ科が高く、また生育時期が進むと平衝水分は低下する。部位別には、穂部、茎部、葉部の順に平衝水分は高い。
 4. 自然条件におけるカビの発生日数は、温度、関係湿度、乾草含水率ならびに牧草の品質等によって変化するが、20℃以上では牧草含水率および関係湿度がかなり低くないと1~2日で発カビすることが、関係湿度70%以下では、カビの発生を抑制し得ることが認められた。
 5. 貯蔵期間中における水分の変動は高含水率乾草を調整貯蔵する時、低含水率に移動する暑熱的な条件の場合は常温乾燥が適応され、また高含水率に移動する冷湿な条件下の場合は熱風乾草が必要と考えられる。
 6. 乾草は貯蔵期間中温度、含水率の影響を受け飼料組成を変化する。粗蛋白は減少するがその程度は少なく、NFE、有機物は高温高含水率において発カビ、腐敗を起こすと甚だしく減少する。粗繊維は発カビまでは変化は少ないが、腐敗に達すると減少する。粗灰分は、発カビ、腐敗による炭水化物等の有機物が減少するため相対的増加はするが、絶対値は変わらないと考えられる。