【指導参考事項】
肉豚肥育における自給生産飼料利用に関する研究
(豆科牧草サイレ-ジの豚品種毎給与試験)
北海道立滝川畜産試験場

Ⅰ 緒言
 農家養豚における自給生産飼料利用の方法を確立する目的で本道における主な自給飼料の給与限界を検討し、一応の目安を得た。その結果おおむね40%程度の給与率が妥当と考えられたので今回は豆科牧草サイレ-ジの給与率を一定にして(40%)豚の品種を異にした場合の給与試験を実施し、次の如期成績を得た。

Ⅱ 試験材料および方法
 1. 供試豚
  供試豚の品種は下表の如くである。
  第1表 供試豚区分
品  種 生年月日 供試頭数
雑種(YL) 39.6. 7 2 2
雑種(YH) 39.6.10 2 2
ヨ-クシャ- 39.6. 4 1 1
39.6.12 1 1
ランドレ-ス 39.6. 2 1 1
39.6. 5 1 1
バ-クシャ 39.6. 5 2 0
ハンプシャ 39.6.12 0 2
  雑種(YL)は中ヨ-ク♀×ランドレ-ス♂
  雑種(YH)は中ヨ-ク♀×ハンプシャ♂

 2. 試験期間
  試験開始  生後83~100日令で各区により若干異なる。体重20kgより開始
  試験前期  試験開始から体重50kg未満
  試験後期  体重50kg~体重90kg試験終了
  試験終了  個体毎体重90kg

 3. 給与量
 毎週の体重測定によって発育増体状況を見て、濃厚飼料及び牧草サイレ-ジの給与量を決定した。サイレ-ジの給与率は試験開始時期は低く、中期に最高とし後期は再び下げて大体40%となるように設計した。とうもろこしの給与率はサイレ-ジの給与率が高くなるにつれて高くし熱量の不足を補った。

 4. 供試飼料
 濃厚飼料(配合飼料)に豚産肉能力検定用飼料(N社製)前期用及び後期用を使用した。豆科牧草サイレ-ジは当場産のラジノクラ-バ-を用い、約5%の生米糖を添加した。調製後87日から取り出し給与開始した豆科牧草サイレ-ジの給与による熱量の不足を補うためにとうもろこしを粉砕して補助飼料として給与した。
 第2表に供試飼料の一般成分を分析したものを示した。

  第2表 供試飼料の一般組成
  水分 粗蛋白質 粗脂肪 可溶性無窒素物 粗繊維 粗灰分
草サイレ-ジ 83.12 3.36 2.27 6.50 2.55 1.70
濃厚飼料前期用 11.87 14.11 3.76 57.96 5.18 7.11
 〃    後期用 11.90 14.80 4.00 57.40 5.80 6.00
とうもろこし 13.21 6.45 3.17 73.99 1.46 1.71

  第3表 飼料給与率
体重/飼料 20~30% 30~40% 40~50% 50~70% 70~90%
配合飼料 80 50 25 5 55
とうもろこし 5 10 15 35 25
草サイレ-ジ 15 40 60 60 20


Ⅲ 試験成績
 1. 発育成績
 第4表  発育
区  分 試験
開始日令
(日)
試験
終了日令
(日)
試験
所要日数
(日)
試験
開始体重
(kg)
試験
終了体重
(kg)
増体量

(kg)
1日平均
増体量
(g)
Y 区平均 85.0 234.0 150.0 19.3 90.0 70.7 473.6
L 区平均 89.5 239.5 151.0 21.0 90.1 69.1 472.5
YK区平均 86.0 242.5 157.5 19.9 90.2 70.3 453.5
YH区平均 83.0 232.7 15.07 18.5 90.0 71.5 480.2
B 区平均 88.0 249.0 162.7 20.0 89.0 69.7 430.2
H 区平均 100.0 262.0 163.0 18.6 90.0 71.4 438.6


 2. 飼料消費量
  配合飼料、とうもろこし、豆科牧草サイレ-ジ等の消費量は第7表に示すとおりである。サイレ-ジの残食量は前期Y区で目立っていたが、後期において各区共ほとんどなくなった。給与量の乾物比は第8表のとおりである。

 第5表 飼料消費量
区  分 配合飼料 とうもろこし 草サイレ-ジ給与量 総サイレ-ジ残食量
前期
(kg)
後期
(kg)
全期
(kg)
前期
(kg)
後期
(kg)
全期
(kg)
前期
(kg)
後期
(kg)
全期
(kg)
前期
(kg)
後期
(kg)
全期
(kg)
Y 区平均 113.85 188.2 302.05 28.9 104.0 132.9 457.5 350.5 808.0 41.72 1.45 43.17
L 区平均 98.8 212.8 311.6 25.75 119.07 144.82 429.5 413.0 842.5 18.5 0.05 18.55
YK区平均 107.6 227.27 334.87 28.2 118.05 146.25 454.5 391.5 846.0 4.47 0.85 5.12
YH区平均 107.95 198.4 306.35 27.15 109.47 136.62 437.0 370.5 807.5 8.32 0.00 8.32
B 区平均 111.1 202.7 313.8 26.8 122.6 149.4 430.0 409.0 839.0 20.35 0.3 20.65
H 区平均 120.3 234.4 354.7 29.8 110.1 139.9 456.0 335.0 791.0 0.2 4.7 4.9

 第6表 各群の飼料の給与率(乾物比)
群  名 品種 配合飼料(%) とうもろこし(%) 草サイレ-ジ(%)
G-17 Y 50.3 21.0 28.7
G-18 47.8 22.1 30.1
G-19 L 44.3 24.1 31.6
G-20 52.3 20.3 27.4
G-21 YL 59.3 22.4 28.3
G-22 50.7 21.0 28.3
G-23 YH 49.3 21.4 29.3
G-24 49.0 22.3 28.7
G-25 B 48.2 22.9 28.9
G-26 H 52.8 20.8 26.4

Ⅳ 考察
 1. 発育
 発育増体は各区間において推計学的な有意差は認められなかった。
 試験終了日令は各区内の有意差はなかったが、最長280日令、最短196日令と84日間の差があり、各区内のばらつきが大きかった。同腹でっても雌と去勢の発育に差がある傾向があり去勢の発育が良好であった。
 各区間ではYH区>Y区>L区LY区の順に増体量が良かった。

 2. 飼料消費量
 飼料の消費量は1群2頭であったので個体毎の消費量はわからないが、各群によってばらつきがあった。各飼料の消費量はYL>L区>YH区>Y区の順で少なくなったが、H区、B区においてはかなり多くの消費された。前期におけるとうもろこしの消費量は各群とも少なかったが、この時期にサイレ-ジの給与率を高くし濃厚飼料のうちとうもろこしの給与率を高くした方がよいのではないかと思われる。これは発育がサイレ-ジの多給する時期でも停滞しなかったことから推測される。サイレ-ジを多給する1時期においてはとうもろこしの給与率が配合飼料の給与率よりも高くなっている。熱料の高い飼料又は油脂類と豆科牧草サイレ-ジの給与組合せにより熱量不足を補給する配慮が必要であろうと思われる。残食については各群とも体重30kgを過ぎる頃からほとんどなく、この時期頃からサイレ-ジを多給していく給与形態をとるべきでないかと思われる。また仕上げ時期にサイレ-ジの給与率を下げて肉質特に脂肪への着色を防止するような配慮を行うべきであると考えられる。
 各区1頭当りの飼料費を算出してみると、表7に示す如くY区7.793円(配合4.989円、とうもろこし2.126円、サイレ-ジ683円以下同種順に示す)、L区8.171円(5.142円、2.317円、712円)、YL区8.581円(5.526円、2.340円、715円)、YH区7.923円(5.055円、2.186円、682円)となりY区が一番安く、YL区が最も多く要した。

 3. 飼料費
  各区の消費した飼料費は次表のとおりである。
 第7表 各区の飼料費(円)
区  分 配合飼料 2種混合 草サイレ-ジ 合計
Y 1頭平均 4.984 2.126 683 7.793
L 1頭平均 5.142 2.317 712 8.171
YL1頭平均 5.526 2.340 715 8.581
YH1頭平均 5.055 2.186 682 7.293
B 1頭平均 5.178 2.390 709 8.277
H 1頭平均 5.853 2.238 668 8.759
  第1期試験と対比できるように配合飼料33円、とうもろこし32円、草サイレ-ジ1円69銭とした。