【指導参考事項】
めん羊の当才種付試験成績
滝川畜産試験場

Ⅰ 緒言
 めん羊の種付は2才秋に行われるのが、これまでの慣行技術であるが、増殖速度を早めるために、育成期間を短縮し、当才の秋、生後8ヵ月令頃に交配し、その後の体重の推移並びに生産子羊の発育などを調査した。

Ⅱ 試験方法
 供試羊-38年2~3月に当場で生産されたコリデ-ル種雌羊で、生後約8ヵ月で種付した15頭と、対象群として2才で正常種付した15頭をえらんだ。
 試験期間-38年11月~40年10月で、この期間に当才種付区は2回、2才種付区は1回分娩した。

Ⅲ 試験成績
 1. 体重の推移
  第1表によれば、当才種付区の11月種付期は両区の体重は43kg前後で差がないが、3月の分娩期には、当才種付区は妊娠のために却って2才区より増体している。然しそれ以降になると、当才種付は哺乳のため増体がおくれ、第1図の如く常に5~7kg位の格差をつけられている。
 この結果からみて当才種付羊の体重を2才種付羊に近ずけるためには、初回妊娠の栄養を標準より多給する事と、早期離乳を試しみることが必要である。

 第1表 体重の推移
  38年
/6月
7 8 9 10 11 12 39
/1
2 3 4 5 6 7 8 9
当才種付区 29.9 31.6 33.3 36.7 39.6 41.8 42.5 44.5 46.5 50.5 39.3 40.9 54.0 55.8 45.2 48.5
2才種付区 29.9 31.5 33.8 37.0 40.4 42.9 43.5 44.1 44.3 46.4 43.7 53.4 61.1 63.4 51.0 56.1
摘  要           1才
種付
      1才
分娩
1~2才
剪毛
          1~2才
種付


 精液量は第1表の如く、年間に余り差異が見られないが、5~10月が0.40~0.49cc、11~12月が0.3cc前後であった。精子数ではかなり変化が見られ、2~7月が24~30億、11~1月が10億前後で、冬期間の減少が目立っていた。
 活力は2~6月が70%前後で高く、11~1月が約51%で低下した。

 第2表 精液の月別平均採取量、精子数、活力、PH、色
区  分 調査鶏1羽当り
平均精液量
平均精子数
(1cc中)
平均活力
(%)
平均PH
(BTB)

(3.2.1の分類)
採取量(cc) 指数 精子数(億) 指数 活力(%) 指数 PH    指数
39年12月 0.32 100 14.3 100 53.7 100 6.7   1.62 100
40円 1月 0.36 112 16.3 118 55.0 102 6.7   1.95 120
    2 0.37 116 29.7 207 71.0 132 6.6   2.49 153
    3 0.34 106 29.2 204 74.4 138 6.6   2.46 151
    4 0.37 116 25.9 181 68.6 127 6.6   2.25 138
    5 0.40 125 24.3 170 70.8 131 6.7   2.25 138
    6 0.44 137 23.7 165 72.6 135 6.6   2.15 132
    7 0.49 153 24.1 168 61.0 113 6.7   2.18 134
    8 0.46 144 22.4 156 59.5 110 6.6   2.18 134
    9 0.45 141 23.7 165 63.5 118 6.7   1.83 112
   10 0.43 134 17.3 121 65.2 121 6.7   1.97 121
   11 0.30 94 8.3 57 44.8 83 6.8   0.77 47


 第1図 体重の推移


 2. 繁殖成績
  当才種付区の初産繁殖率は113.3%で、ほぼ標準に近い成績であった。また2産目の成績は、次表の如く2才種付区の方が良好であった。これは種付時の栄養の差が強く影響していることは確かである。

 第3表 当才初産目、2才区初産目の繁殖成績
  種付
頭数
(頭)
分娩
頭数
(頭)
生産子羊頭数 繁殖率
(%)
摘要
当才種付区 15 14 10 6 16 114.3  
2才種付区 15 14 7 11 18 128.6 双子が多い

 第4表 子羊の育成成績(当才種付区、初産)
頭数
(頭)
生時体重
(kg)
離乳時体重
(kg)
離乳までの日数
(日)
増体量
(kg)
1日当り増体量
(g)
8 4.3 17.1 120 12.8 129
6 3.4 16.9 97 13.5 142

 第5表 子羊の育成成績(当才種付区3産目、2才種付区初産)
  頭数
(頭)
生時体重
(kg)
離乳時体重
(kg)
離乳までの日数
(日)
増体量
(kg)
1日当り増体量
(g)
当才種付区 10 4.7 26.6 103 22.0 209
5 3.7 24.0 107 20.2 188
2才種付区 4 5.2 28.0 105 22.8 219
8 4.0 29.0 105 18.9 180

Ⅳ 結言
 1. 母体の発育停滞
  当才で種付すると、母体は未だ発育途上にあるため妊娠分娩で栄養をうばわれ、2才種付区に比べ、完熟期の3才時に6kgの差が付いた。
 2. 子羊の発育は初回では不十分であったが2回目からは、2才種付区に比して差がなくなった。
 3. 産毛量は、2才時1.2kg、3才時0.6kg、当才種付の方が減産した。
 以上のことから当才種付を行うには、秋の交配時の体重を40kgに到達させることが望ましく、但し2産目からはその必要はない。
 この当才種付法は飼料事情に恵まれていて、充分な管理を施得る環境でないと、逆効果になる恐れがあるから、粗放な管理しか出来ない所にはすすめられない。すなわち、当才種付を行って飼育管理が伴わなければ、母体の発育は鈍化し、一生繁殖羊としての価値を失うのみならず、折角生まれた子羊も生来虚弱か母乳不足で育たない公算が強い。