【指導参考事項】
肉用種めん羊の雑種利用試験
滝川畜産試験場

Ⅰ 緒言
 めん羊飼育の目的が羊肉生産に変って来たが、既存のコリデ-ル種では産肉性が充分でないため、本格的に羊肉生産を行うためには、肉羊種との雑種生産の方向に進める必要がある。そこで現在、我が国に導入されている肉用品種について産肉性を調査したので、その結果を報告する。

Ⅱ 試験方法
 1. 供試めん羊-コリデ-ル種雌にサフォ-ク種、ロムニマ-シュシュ、ボ-ダ-レスタ-種の4品種の雄を交配し、昭和40年2月より3月初めまでに生産された一代雑種子羊群の中で、生後3ヵ月時に標準発育をとげたものを一品種当り30~40頭ずつ使用した。
 2. 飼料-生後3週間頃より乾草並びにカ-フスタ-タ-を自由採食せしめ、其の後終日放牧の7月初旬までカ-フスタ-タ-と農耕飼料を継続した。放牧は5月初旬より開始し、離乳は6月9日一斉に行った。
 3. 期間-40年2月6日~10月4日まで。
 4. 調査項目-供試率の半分は4ヵ月令で残りの半分は7ヵ月令で屠殺し、最後の産肉性とそれまでの発育を調べた。

Ⅲ 試験成績
 1. 子羊の発育-3ヵ月令までの標準発育成績は第1表のとおりで、その発育の良否はその後の発育に大きな影響があり、ラム造成に明らかに有利である。標準発育率はサフォ-ク種が雄92.6%、雌96.4%で揃って好成績であるが、他の品種は雄と雌で格差が目立っている。
 生時体重にボ-ダ-レスタ-が雄、雌共に最も優れ他は余り差異が認められない。月別の発育では、月が進むにつれ品種間の差異が現れ、4ヵ月令では雄ではボ-ダ-レスタ-種とサフォ-ク種が34kgで最も重く雌でも、やはりサフォ-ク種とボ-ダ-レスタ-種の順になっている。また7ヵ月令でも、雄はサフォ-ク種とボ-ダ-レスタ-種の順になっている。

 第1表 3ヵ月令までの標準発育(雄20kg、雌18kg)
  生産
子羊
頭数
(頭)
標準発育 3ヵ月令
体重
(kg)
頭数
(頭)

(%)
ロムニマ-シュ雑 30 23 78.6 25.75
32 24 77.4 21.33
サフォ-ク雑 28 25 92.6 26.49
30 27 96.4 23.82
サウスダウン雑 21 13 72.2 27.67
33 28 87.5 22.83
ボ-ダ-レスタ雑 11 9 100 27.64
4 3 75.0 21.73
コリデ-ル 45 27 62.8 24.76
35 28 80.0 21.43
  次ぎに品種別の体重の推移を第2~3表に示す。

 第2表 月別の体重の推移(雄)               単位(kg)
月令/品種 生時 1 2 3 4 5 6 7
ロムニマ-シュ雑 4.70 11.00 19.0 25.80 31.40 33.68 35.80 36.63
サフォ-ク雑 4.58 10.60 18.60 26.80 34.00 40.20 42.20 42.30
サウスダウン雑 4.50 11.40 19.80 27.80 33.40 36.30 38.05 37.53
ボ-ダ-レスタ雑 5.03 9.87 17.51 27.34 34.17 36.70 38.38 40.3
コリデ-ル 4.57 10.45 17.48 21.14 30.62 33.50 36.07 38.00

 第3表 月別の体重の推移(雌)               単位(kg)
月令/品種 生時 1 2 3 4 5 6 7
ロムニマ-シュ雑 4.33 9.84 16.75 22.34 26.92 31.50 33.50 34.10
サフォ-ク雑 4.05 9.87 17.40 23.95 29.39 34.20 36.31 35.85
サウスダウン雑 4.20 10.21 17.62 23.75 28.75 31.00 33.23 35.18
ボ-ダ-レスタ雑 4.70 9.30 15.50 21.70 26.10 29.70 30.50 33.30
コリデ-ル 4.35 9.87 16.21 21.69 26.25 29.20 31.26 33.24


 2. 産肉成績
  (1) 4ヵ月令成績-絶食後の体重は雄では、ボ-ダ-レスタ-種とサフォ-ク種が重く、枝肉歩留、精肉歩もサフォ-ク種が優れている。以上から4ヵ月令においてはサウスダウンの雄が産肉性に最も優れている事が判る。雌も同じような傾向が認められる。
 7ヵ月令については、4ヵ月以降の増大量が余り多くなく、枝肉量で2~3kg増加したにすぎない。

 第4表 4ヵ月令の産肉成績
品  種 頭数 屠殺解体成績
絶食後体重
(A)
冷屠体重
(B)
枝肉歩留
(A/B)
精肉重量
左(C)
精肉歩留
(C/A)
ロムニマ-シュ雑 10 29.4 13.2 44.4 4.90 33.6
サフォ-ク雑 10 30.6 13.6 44.3 5.05 32.7
サウスダウン雑 6 30.9 14.7 46.4 5.75 37.1
ボ-ダ-レスタ雑 3 32.4 14.3 43.6 5.39 33.2
コリデ-ル 10 28.4 12.3 43.2 4.63 32.2
ロムニマ-シュ雑 9 23.7 10.6 44.3 3.96 33.1
サフォ-ク雑 10 27.1 12.8 46.8 4.84 35.2
サウスダウン雑 10 25.8 12.0 46.3 4.68 36.1
コリデ-ル 10 24.6 10.9 43.9 4.04 32.5

 第5表 7ヵ月令の産肉成績
品  種 頭数 屠殺解体成績
絶食後体重
(A)
冷屠体重
(B)
枝肉歩留
(A/B)
精肉重量
左(C)
精肉歩留
(C/A)
ロムニマ-シュ雑 10 32.1 14.7 43.5 5.00 31.1
サフォ-ク雑 10 36.9 17.1 46.3 6.48 35.1
サウスダウン雑 6 33.3 15.4 47.4 6.28 37.7
ボ-ダ-レスタ雑 6 35.8 16.1 45.1 6.07 33.9
コリデ-ル 10 33.5 14.9 44.4 5.60 33.4
ロムニマ-シュ雑 8 29.1 13.7 47.0 5.30 36.4
サフォ-ク雑 10 31.6 15.4 48.4 5.93 37.5
サウスダウン雑 8 31.3 15.3 48.9 6.14 39.2
ボ-ダ-レスタ雑 4 27.8 12.1 43.4 4.64 33.3
コリデ-ル 10 28.3 12.9 45.4 4.90 34.6

Ⅳ 結言
 (1) 子羊の発育は雄では4ヵ月令まで、雌は5ヵ月令までの増体が著しく、その後の増体が鈍化している。特にこの傾向はサフォ-ク種、サウスダウン種において目立つ。従って屠殺の適期は4~6ヵ月にあると思われる。
 (2) 産肉成績では4ヵ月令においてはサウスダウン種が高い産肉性を示した。7ヵ月令ではサフォ-ク種とサウスダウン種が良い成績を示した。
 (3) 発育、産肉成績共にコリデ-ル種に類似しているので、雑種生産用として供用するのはさけた方がよい。