【指導参考事項】
寒冷地における鶏の人工授精に関する試験成績
(北海道における季節と鶏精液の性状について)
滝川畜産試験場

Ⅰ 緒言
 鶏の人工授精は養鶏の近代化により、ケ-ジ飼育の種鶏群から種卵を採る場合に利用され、今日では養鶏の先進地帯で盛んに活用されている。鶏の生殖能力は雄、雌共に春に旺盛で秋冬に低下するので、年間繁殖上の障害とされている。その原因は日長時間、寒冷、換羽、栄養等によるが、特に北海道は府県にくらべて日長時間が夏が長く、冬は短く、気温も夏は涼しく、冬は寒い。これらの自然環境における相違が精液性状にどのような変化をもたらすのもかを調べてみた。

Ⅱ 試験方法
 試験期間  39年12月~40年1月
 供試鶏  白色レグホ-ン種若おす20羽
 精液採取頻度  週2回
 検査項目  精子数、活力、PH、色

Ⅲ 試験成績
 第1表の如く、精液量は年間で余り差異は認められないが、5~10月は0.40~0.49ccで比較的高く、11~4月は0.3~0.36ccである。
 精子数は2月~7月は24~30億で高く、11~1月は10億で、秋から冬にかけて40%以下に減少する。
 活力は2~6月は約70%で高く、11~1月は、精子数と同様不良となり、約50%におちる。

 第1表 月別平均採取量精子数、活力
月別 精液量 精子数 活力 総合
判定
採取量
(cc)
指数 精子数
(億)
指数 活力
(%)
指数
39/12 0.32 100 14.3 100 53.7 100
40/1 0.36 112 16.3 118 55.0 102
  2 0.37 116 29.7 207 71.0 132
  3 0.34 106 29.7 204 74.4 138
  4 0.37 116 25.5 181 68.6 127
  5 0.40 125 24.3 170 70.8 131
  6 0.44 137 23.7 165 72.6 135
  7 0.45 153 22.4 168 61.0 113
  8 0.46 144 22.4 156 59.5 110
  9 0.45 141 23.7 165 63.5 118
  10 0.43 134 17.3 121 65.2 121
  11 0.30 94 83 57 44.8 83
 以上結果を総合すると、春期は性ホルモンの活動で精液の活性が旺盛になることは予想されるが、夏期間も引き継いで性状に大きな変化がなく、秋から冬にかけて、精子数、活力等の性状が急に不良化する。これは本道の特殊気象により雄の造成能力が低下するものと考えられる。

Ⅳ 結言
 養鶏が多数飼育に移行すると共に、これまでの春育すう中心から、年間連続育すうの形態に変化する傾向が認められる。特に秋ひな生産に対処して、秋の雄の繁殖力を低下させないような飼育管理上の改善が必要である。