【普及奨励事項】
針金架利用による乾草調製試験成績
農林省北海道農業試験場開発部草地第2研究室

・ 目的
 北海道において冬期間の貯蔵飼料として草サイレージとともに重要な乾草は、一般には不安定な気象条件下でも対応できる調製技術が望まれてはいるが、まだ不完全なものが多い。これらの点から針金架の利用による乾草調製は養分回収率も高く、乾草の品質向上も認められ、さらに気象条件にあまり左右されないなど利点が数多くあげられる。
 したがって労力は多少いるが、小・中規模の酪農家に推奨させたい。

・ 試験方法
 試験は4カ年にわたってその概要を示す
年次 刈取 反覆 1 区 乾草調製法 嗜好
試験
消化
試験
養分
回収
面積(a) 自然 小堆積 針金 三角 機械
昭38 2番草 1 20 0   0 0 0 0   0
〃39 2 〃 1 20 0 0 0     0   0
〃40 1 〃 1 20 0 0 0   0 0 0 0
〃41 2 〃 4 41 0 0 0 0 0 0 0 0
  自然法…モーア→1日1〜2回反転→収納
  小堆積…モーア→ヘイコン→フツフラー→小堆積の反復→収納
  針金架…モーア→ヘイコン→フツフラー→架積み→仕上乾燥→収納
  三角架…      同  上
  機  械…モーア→ヘイコン→フツフラ→ベーラー

・ 試験成果の概要
 1) 乾草調製日数:調製中の天候にもよるが自然法では7〜14日(平均10日)、小堆積は6〜7日間、針金架および三角架では刈取当日と仕上げ乾燥の実質2日間で調製され、機械化法では平均4日、最短は2日で調製されている。
 2) 乾燥品質:道内における2番刈乾草の品質は平均7.4点であり、これに比し自然法67点、小堆積78点、三角架73点、針金架78点および機械化法で76点で、針金架が良好である。
 3) 調製法と消化率:この関係でみても針金架乾草の消化率は良好である。
 4) 養分回収率:刈取後収納までの養分回収率
  自然法44〜67%(平均54%) 針金架69〜83%(平均77%)
  小堆積57〜74%( 〃 66%) 機械化56〜69%( 〃 63%)
  三角架74〜84%( 〃 79%)
 5) 針金架によって調製された乾草は乳牛に対する嗜好性が高かった。

・ 主要成果の具体的データー
 年次別調製法の試験結果
年次 調製法 天  候 植 生 反転
回数
調製
日数

回収率(%) D  M
消化率
(%)
TDN 採食量
DM DCP TPN
昭38
(2番草)
自 然   (普通)
雨量35.2MM
日照2.9HRS
湿度83%
1.71t/10a

クローバ率
    65%
5 14 67 44 42 38 (62.5) 5.7
三角架 4 2 73 84 87 79 (65.7) 6.4
針金架 4 2 80 83 74 73 (62.5) 7.7
機 械 7 2 90 69 67 43 (64.5) 7.8
昭39
(2番草)
自 然   (やや良)
雨量26.2mm
日照2.9hrs
湿度80%
1.63t/10a

クローバ率
    29%
3 7 70 52 37 46 857.4) 8.9
小堆積 7 7 80 57 41 53 (60.5) 10.5
針金架 4 2 78 82 57 76 (60.8) 10.2
昭41
(2番草)
自 然   (不良)
雨量128.5mm
日照5.4hrs
湿度77%
11t/10a

クローバ率
    25%
11 10 65 67 46 42 44 44.1 7.5
小堆積 11 6 75 74 65 58 53 50.5 9.4
三角架 6 2 73 67 58 54
針金架 6 2 76 69 64 59 54 52.9 11.9
機 械 13 6 76 56 44 41 46 46.7 9.8
昭40
(1番草)
自 然 (きわめて良好)
雨量4.4mm
日照6.3hrs
湿度68%
22.3t/10a

クローバ率
    17%
4 6 48 70 48 62 58 55.5 8.2
小堆積 6 5 61 71 70 71
針金架 6 2 61 71 82 70 63 60.4 9.8
機 械 7 5 62 80 82 76

・ 奨励又は指導参考上の注意事項
 1) 原料牧草と乾草調製:労力および資材を必要とするので良質な牧草を用いることが基本で、乾草調製は2〜3番刈草を主体とするが、1番草を用いるときは穂バラミ期頃を目標とする。
 2) アカクローバを含む原料草あるいは1番草でイネ科牧草の茎の多いものにはヘイコンディショナーで圧砕する。
 3) 刈取後2〜3回の反復で水分50〜60%に予乾する。天候不良のときには無予乾で架積みを行うが、架m当り35〜60kgの草量とする。