【普及奨励事項】
水稲「シモキタ」(水稲農林141号)」に関する試験成績
北海道立道南農業試験場
(昭和40〜42年)

・ 育種目標
道南地方に適した中、晩生の良質、耐病、耐倒伏、多収品種の育成

・ 来 歴
 昭和29年青森県農業試験場藤坂試験地において「ハツコウダ」を母とし、「Pix(農林29号)F1」を父として三系交配を行い、F1は同年冬期に温室で世代短縮を行い、F1、F2は集団育種法により採種し、F4で葉いもち病に関する個体選抜をおこなった。
 昭和33年F5より系統育種法により選抜固定を計り、昭和35年「ふ系56号」の系統名を附し、関係県に配布して地方的適否を確かめ、昭和37年に優良品種に登録されたもので、41年4月現在奨励品種としての採用県は青森県、準奨励品種としての採用県は岩手県である。
 当場では昭和38年に導入して試験して来たものである。

・ 特性概要
 (1) 形態的特性
  稈長は「巴まさり」よりやや短く、穂数もやや少な目の偏穂数型粳種である。穂長は「巴まさり」並、輸部着密度も同程度である。無芒でふ先色は黄白、玄米の形状は「巴まさり」と同じで粒大は「南栄」より小さいが、「巴まさり」と同程度、光沢、色沢共に大差ない。腹白粒は中位で「巴まさり」より少なく品質は同程度である。
 (2) 生態的特性
  出穂期は「巴まさり」より3〜4日遅く、晩生種に属し、稈は強く、多肥でも株際から倒れることはなく倒伏にはかなり強い。耐病性はPi因子が導入されているので極めて強く、耐冷性もやや強い。
 収量性は普通栽培でも多収の品種であるが、晩生種なので熟苗や密植等により生育の促進を計ると極めて高い収量を示す。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 道南農試における成績 (昭和40〜42年) 生産力検定


項目/
品種名
出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
稈長
(cm)
穂長
(cm)
穂数
(本)
a当
玄米重
(kg)
全左
比率
(%)
千粒重
(g)









シモキタ 8.14 10.4 74.2 17.2 21.4 51.2 104 20.8 中上 ヤ強
南 栄  .8 9.29 83.5 17.2 18.7 50.7 103 21.4 ヤ弱
巴まさり  .11 10. 2 75.6 17.2 24.2 49.4 100 20.7 ヤ弱 ヤ弱


シモキタ  .15  .6 76.2 17.5 22.5 52.7 117 20.6        
南 栄  .8 9.29 86.2 18.0 20.3 51.2 114 22.1        
巴まさり  .11  .3 80.6 17.6 24.8 45.1 100 20.0        

 栽培を替えた場合の成績 (昭42)
品種名/
m2株数/
苗素質/
施肥条件/
項 目
南  栄 シモキタ
20株 28 20株 28
普通苗 熟苗 普通苗 熟苗 普通苗 熟苗 普通苗 熟苗
出穂期
(月日)
標   準 7.31 7.28 7.31 7.28 8. 6 8. 2 8. 4 8. 2
深耕、多肥 8. 2 7.30 8. 1 7.29 8. 6 8. 3 8. 4 8. 2
a当玄米重
(kg)
標   準 53.9 56.8 53.1 55.9 53.2 58.5 57.2 64.0
深耕、多肥 56.3 58.6 57.5 59.0 54.0 13.9 59.9 63.8
同上比率
(%)
標   準 100 105 99 104 100 110 108 120
深耕、多肥 100 104 102 105 100 118 111 118

 現地における成績 (昭和41〜42年平均 標肥)

項目/
品種名
出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
稈長
(cm)
穂長
(cm)
穂数
(cm)
倒伏 いもち 不稔 玄米重
(kg)
同左比率
(%)
地帯名ならびに
個所数
シモキタ 8.18 77.9 17.3 23.0 50.6 102 大野盆地2ヶ所
巴まさり  .16 81.9 17.0 26.7 49.4 100
シモキタ  .11 10.5 74.4 15.8 21.6 47.7 107 津軽海峡3ヶ所
巴まさり  .17  .2 76.5 15.7 25.9 43.7 100
シモキタ  .16  .4 74.3 16.5 22.1 44.6 107 檜山南部
日本海沿海4ヶ所
巴まさり  .13 9.29 80.3 16.1 23.9 41.8 100

・ 適用地帯栽培上の注意
 「巴まさり」「南栄」が安全に作り得る好条件の地域に限定される。栽培上の注意としては熟期の品種なので、遅延するような栽培は避け、熟苗、密植等の技術を積極的にとり入れる必要がある。