【普及奨励事項】
長芋種芋の秋切り、キュアリングに関する試験成績
農務部農業改良課
(昭和38〜41年度)

・ 目 的
 種芋(切芋)腐敗防止対策としての秋切りCuringの効果を検討する。

・ 試験方法
 試験は夕張市滝ノ上、永沼氏ほ場で行い原種ほ選抜系統を供用した。
 38〜39年は秋切りCuringの期間(0〜21日)処理時の充填材、40〜41年はCuringの期間(1〜42日)について腐敗及び植え込み後における生育、収量の関係を調査、Curingはハウスで魚函を使い、生育、収量は普通まきと催芽まきで調査した。

・ 試験成果の概要
 1. 秋切り、Curingを行うと、貯蔵中及び植え込み後における種芋(切芋)の腐敗は殆ど発生せず、腐敗防止効果はきわめて顕著である。
 2. Curingの期間についてはなお検討を要する面もあるが、15〜25℃の場合7〜10日以上を要するようである。
 3. Curing処理時の充填材については絶対的な必要性はみとめられなかった。使用する場合、よく乾いていることが重要で、資材としてはもみがらは適当であった。
 4. 秋切りするだけで、種芋の催芽、植え込み後における発芽、生育が促進されるが、分割直後におけるCuringの実施によりその傾向は更に強まった。Curingが長いほど強まる傾向が7日以上になると処理期間による差は著しいものでない。
 5. 秋切りすることにより顕著な増収効果(試験Ⅰは24%、試験Ⅱは129%)がみられたがCuringによる増収効果は試験Ⅰの4区以外はみられなかった。
 6. 秋切り、Curingの種芋(切芋)腐敗防止並に増収技術としての普及性は高く評価されるべきである。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 表1. Curingと貯蔵中における切芋腐敗の関係
試験Ⅰ (38〜39年)
Curing日数 充填材 腐敗率(%) 切口のかび
1 0 なし 88.8 -〜±
2 7 10.0 ++〜+++
3 14 7.8 ++〜+++
4 21 5.8 ++〜+++
5 もにがら 1.3 +〜++
6 のこくず 16.3 +++〜++++
14 ビニ−ル被覆 6.3 +++++
15 0 もみがら 34.6 -

試験Ⅱ (40〜41年)
Curing日数 腐敗率(%)
1 1 0
2 21 0
3 42 0

試験Ⅰ (38〜39年)
a当り収量 平均重
(g)
kg %


7 秋堀、春切C-0日 50.0 33 370
8 春堀、切  〃 151.7 100 433
1 秋切     〃 188.3 124 388
2  〃     C-7 181.7 120 374
3  〃     C-14 182.5 120 365
4  〃     C-21 281.7 186 444
L.S.D  5% 70.8    
7 秋堀、春切C-0日 228.4 74 471


8 春堀、切   〃 306.7 100 524
1 秋切     〃 271.7 89 453
2  〃     C-7 263.4 86 415
3  〃     C-14 263.4 86 439
4  〃     C-21 253.4 83 492
L.S.D  5% N.S    

試験Ⅱ (40〜41年)
a当り(kg) 収量(%)


4 春堀、春切C-0日 151.7 100
1 秋切    C-1 348.5 229
2  〃     C-21 337.4 222
3  〃     C-42 328.6 217
4 春堀、春切C-0日 407.5 267


1 秋切    C-1 388.5 256
2  〃     C-21 359.7 237
3  〃     C-42 379.1 250
  L.S.D  5% 62.4  

・ 奨励又は指導参考上の注意事項
 1. 種芋は完熟してから収穫し、分割したらまず切口をかわかしたからCuringを始める。
 2. Curingの温度は15℃以上、20〜25℃を目標にし、期間は7〜10日以上、3週間くらいまでを一応の基準とする。従って、実施に当たってはハウスを利用するのが便利である。
 3. Curingのさい、特に充填材を使用する必要はないが、使う場合にはよく乾いていることが重要で、一般的にはもみがらが適当である。
 4. 処理後、翌春までの貯蔵は倉庫(貯蔵庫)ハウス内埋蔵、圃場埋蔵などでよいが、いずれの場合も芋の凍結には充分注意を要する。
 特に圃場の場合、排水の良い場所を選び、乾いたもみがらを充填材として層積し、凍結とねずみの害に留意して馬鈴薯の場合に準じておこなうようにする。