【指導参考事項】
深水潅漑の水温上昇による冷害防止効果に関する試験成績
北海道農業試験場・作物第1部・稲第3研究室
(昭和42年〜)

・ 目 的
 従来より障害型冷害を軽減するため、低温襲来時に深水潅漑が励行されてきた。しかしそのときの水温は自然の成り行きまかせで、潅漑水温と被害度との関係は必ずしも明らかでない。本試験はファイトロンを用い、障害型冷害の発生条件下で深水温度上昇の効果を明らかにし、冷害防止対策として積極的に水温上昇をはかる場合の一指標を得ようとしたものである。

・ 試験方法
 減数分裂期頃の水稲を10℃に制限されたファイトロンに5日間入れ、障害型冷害を発生せしめた。このとき、17℃、19℃、21℃、23℃の恒温水槽にポットを漬新浸し、水深を23cmに保った。
 水温処理は第1表に示す如くで昼夜恒温区、昼夜変温区を設けた。品種は「北育33号」を供試し、1/5000ア−ルポットに20粒まきの密植栽培をし、主稈のみを調査した。

・ 試験成果の概要
 10℃5日間の低温処理により収量は約半減したが、深水にして水温を19℃に保つことにより減収を殆どくいとめることが出来た。昇温による減収防止は主として稔実歩合向上の効果によるものであり、千粒重、一穂類花数等に対する昇温の影響は比較的小さい。水温が高温にすぎると一穂類花数は却って減少し、このために減収となる。(23-23区)
 以上より、冷害防止のための深水潅漑の好適水温は、ほぼ20℃前後であると推測される。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 第1表 試験区の構成
昼温/
夜温
10 17 19 21 23 25
10        
17        
19      
21        
23          
  ● 水温処理
  ◎ 気温処理
     (25-19)を対照区とした
  昼、夜は各12時間づつとし、7.00am、7.00pmに昼夜水温のきりかえを行った。

 第2表 収量および収量構成要素(対照区を100とする指数で示す)
項  目/
水  温
(昼−夜)
収量
(g)
一穂当り
累花数
稔実
歩合
(%)
玄米
千粒重
(g)
(実数) 111.9 54 94 23.7
25-19 100 100 100 100
10-10 55 90 68 90
17-17 79 96 89 92
19-19 94 104 98 92
21-21 95 100 101 94
23-23 82 86 101 94
23-10 91 104 95 92
23-17 91 92 102 97
23-19 92 94 102 96
23-21 91 94 101 95