【指導参考事項】
農業構造改良地区における土地基盤整備上特に留意すべき問題点の摘出とその実証的改名
(傾斜地水田における収穫作業の一事例)
中央農試農業機械部
(昭和42年度)

・ 目 的
 平坦地におけるほ場整備は一般に長辺100m、短辺30mの区画を標準としているが、傾斜地においては特に移動土量との関係で施工経費を安価にするため等高線水田が造成された。
 これら等高線水田と整備水田の形状による比較を大型機械の作業性能から行い、傾斜地水田造成上の資料とする。

・ 試験方法
 1. 期日  昭和42年10月1日
 2. 場所  上川郡東鷹栖村 鬼斗牛地区
  等高線水田で、造成されやすい代表的な形状を選択し、各形状によるコンバインの作業別所要時間を計測し、作業別時間、作業能率など相互の比較を行った。

・ 試験成果の概要
 籾排出、進入及び退出等に要する時間はNO100水田に多くを要し、単位時間当り刈取面積も0.38に対し0.30haと比較的能率差が小さいものであった。これは刈取終了後進入口までの移動が大きく影響している。
 籾排出では、面積、形状よりも籾水分、精選状態に関係し、能率には直接的関連をもっている。従って第2表では排出時間は4区を総合して各ほ場の面積比率とし、進入及び退出時間は一率平均として更正したもので、区画、形状にもあるが、それ以外の原因によって能率の決定要素をなすことが明らかとなった。
 叉、鬼斗牛地区において整形水田を造成した場合を想定してモデル設計を行い比較したが、モデル地区では131.000円程度で概ね25.000円の開きがある。これは運土量に関係し、整地工費がモデル設計では莫大に増加し、工事費に占める割合が15〜20%高くなる。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 第1表 所要時間
ほ場番号 面積
(ha)
刈取
時間
施回
時間
後退
時間
排出
時間
進入・退出
時間
総時間 10a当
所要時間
時間当
刈取面積
(ha)
113 18 2140 229 212 342 251 3254 1817 0.35
65.8 7.6 6.7 11.2 8.7 100(%)
80 23 2330 245 513 338 241 3747 1626 0.37
62.2 7.3 13.8 9.6 7.1 100
82 15 1657 438 519 225 107 3026 2017 0.30
55.7 15.2 17.5 7.9 3.7 100
100 17 1655 105 116 534 445 2935 1558 0.38
57.2 3.7 43 18.8 16.0 100

 第2表 更正所要時間
ほ場番号 面積
(ha)
刈取
時間
施回
時間
後退
時間
排出
時間
進入・退出
時間
総時間 10a当
所要時間
時間当
刈取面積
(ha)
116 18 21'40" 229 2'12" 3'47" 2'51" 32'59" 18'20" 0.33
65.7 7.5 6.7 11.5 8.6 100
80 23 23'30" 245 5'13" 4'49" 2'51" 39'08" 17'01" 0.35
60.1 7.0 13.3 0.3 7.3 100
82 15 16'57" 438 5'19" 3'09" 2'51" 32'54" 21'58" 0.27
51.4 14.1 16.2 9.6 8.7 100
100 17 16'55" 105 1'16" 3'34" 2'51" 25'41" 15'07" 0.40
65.9 4.2 4.9 1.39 11.1 100

 第3表 平坦地ほ場整備との比較
  潰地面積 水張面積 10a当施工経費
(円)
備   考

(%)

(%)

(%)

(%)
深川地区 7.4 5.2 92.6 94.8 82.000 1/500勾配平均32a
上忠別地区 11.6 8.4 88.4 91.6 62.100 1/200〜1/300平均60a
鬼斗牛地区 20〜25 18.5 75〜80 81.5 106.200 1/15〜1/16
Aタイプ 12.5 87.5 131.600
Bタイプ 13.5 86.2 131.200
Cタイプ 15.2 84.8 117.700

 第4表 形状による施工費
平均区画 鬼斗牛地区 Aタイプ Bタイプ Cタイプ
平均区画 (a) 19.5 35.3 36.0 26.6
移動土量 (m2) 170 347 285 266
整地工費 (円) 38.200 70.900 67.200 55.500
工事費に占める割合(%) 50.7 71.2 67.7 64.9
30a以上割合 (%) 32 87 90 38