【指導参考事項】
肉用牛の肥育に関する研究〜粗飼料主体の若令肥育〜
北海道立新得畜産試験場肉牛科
(昭和38.8〜42.10)

・ 目 的
 無角ヘレフォ−ド種(♂)と、他肉用牛(♀)とを交雑して生産された雑種雄子牛をもちい、粗飼料多給で飼養し、肥育能力を主体に各品種の比較をおこない、本道に適する若令肥育技術方式の確立について検討する。

・ 試験方法
 各年度で次の試験を実施した。
  1. 放牧粗飼料自由給飼による若令肥育         (38.8〜39.11月)
         供試牛  15頭
  2. 冬期生産牛の全放牧粗飼料多給による若令肥育  (39.7〜40.7月)
         供試牛  10頭
  3. 若令肥育における飼育型態の差異が発育と経済性に及ぼす影響 (40.7〜41.11月)
         供試牛  16頭
  4. 放牧による若令肥育(仕上)法の適否について     (41.8〜42.10月)
         供試牛  13頭

・ 試験成果の概要
 自給飼料を主体とした、特に草資源を適度に利用し、濃厚飼料の多給によらず、安価に省力的に大衆牛肉を生産する若令肥育を実施して次の結果を得た。
 1. 増体
  粗飼料主体の飼養法では品種により増体に差があり、H雑種の増体が多く、このうちでも、HN雑種の増体が一番すぐれていた。育成期の増体を良くするために、良質粗飼料により乾物摂取量を高める必要がある。
 2. 飼料の利用性
  単位当り増体における飼料消費料は、H種が少なく、痛がってその費用は安くすんだ。第3次試験において、農耕飼料寡給区は、対象区に比して農配を40%程度の給与とした結果、飼料費を約75%にとどめることができ、また放牧(仕上)肥育では、標準養分要求量の30%程度を生草から摂取し、飼料費の低減を図る上で、一つの方途を得た。
 3. 解体成績
  枝肉の歩留りは、第3次試験のA区と、HN雑種は、第1〜第4次試験を通じて歩留りが高く良い成績を示したが、その他は一般に低く、その重量も不揃いであった。枝肉の外観では、H種とH雑種が優れ、特にH種とHN雑種の均称は、良好であった。肉質は品種による著差は認められないが、皮下脂肪付着の少ない個体があり、また、放牧(仕上)区において、脂肪色の黄色が目立った。枝肉からの正肉歩留りは、高い値を試増したがH種は、上等肉のモモ部位の歩留りが高く、HR雑種はコマ肉がやや多かった。
 4. 収支概算
  枝肉の販売単価は、品種間においてあまり大きな差はなかったが、枝肉重量の相異より差を生じ、Hn雑種の差益が第1次〜第4次試験を通じて一番多くでた。現状の牛肉市場価格では、粗飼料主体の育成肥育においても、収支を償い得る結果が得られた。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
年  次 38〜39(第1次) 39〜40(第2次)
品  種 HN BH N B H D HN HB N
頭  数 1 2 4 4 1 1 4 4 2

開始時(kg) 232 120〜150 155 174 125 245 221 189 220
仕上時(kg) 538 449 447 405 450 537 468 415 467

歩  留(%) 62.5 58.8 55.6 57.0 59.2 53.4 58.3 58.6 56.8
重 量 (kg) 331 253 243 229 255 277 249 232 246



枝肉単価(円) 350 365 339 324 350 267 434 410 427
販売価格(円) 117.250 93.885 82.315 74.145 90.650 75.294 107.875 94.907 104.931
素牛価格(円) 35.000 30.000 29.250 28.500 27.000 20.000 31.250 30.000 31.000
飼料費  (円) 47.367 43.118 44.324 42.213 41.970 50.295 39.379 37.480 41.162
差 益  (円) 34.883 20.767 8.741 3.432 21.680 4.999 37.246 27427 32.769

年  次 40〜41(第3次) 41〜42(第4次)
区  分 A  区 B区 慣行区 草地(仕上)区
品  種 H HN HR   H HN H HN AB
頭  数 2 2 2 10 3 1 2 2 2


開始時(kg) 195 244 214 184 177 150 180 228 223
仕上時(kg) 456 501 450 476 424 419 438 514 497


歩  留(%) 59.4 62.0 59.2 57.8 57.3 56.1 57.9 60.5 59.2
重 量 (kg) 255 291 252 255 22.8 216 231 285 266



枝肉単価(円) 480 493 478 505 546 548 554 564 568
販売価格(円) 122.400 143.165 120.170 128.621 124.393 116.240 125.765 158.173 148.715
素牛価格(円) 48.500 54.000 49.000 48.000 58.670 56.000 58.000 70.000 75.000
飼料費  (円) 38.643 42.807 35.972 28.207 41.481 41.481 39.427 39.427 39.427
差 益  (円) 35.257 46.358 35.198 52.148 24.242 18.579 28.338 48.746 34.288

・ 奨励又は指導参考上の注意事項
 若令ひいくにおける粗粗料主体の飼養では、特に粗飼料の品質を吟味する必要があり、即ち、牧乾草及びサイレ−ジでは、適期刈取、調整良好なものでなければ効果は期待出来ない。また、濃配の給与は肥育仕上期(75〜90日間)において、体重の1%程度(300〜400kg)は必要であり、これ以下では、肉質等の面で問題がある。