【指導参考事項】
ランドレ−ス種を母豚とする1代雑種利用に関する試験成績
滝川畜試 養豚科
(昭和40〜43年)

・ 目 的
 わが国の肉豚の約70%は、雑種蓋であるが、その大部分は中ヨ−クシャ雌とランドレ−ス雄との1代雑種(YL)である。しかし肉豚素豚生産の効率化、産肉性能の向上からみて繁殖性の優れたランドレ−ス種を母豚とするのが合理的な生産形態と考えられるが、この場合の交配雄品種の選定が雑種生産で最も重要な課題となるので交配雄適品種を明らかにする。

・ 試験方法
区  分 第1期試験(S40〜41) 第2期試験(S41〜42)
頭数 方  法 頭数 方  法
試験区 L.Y
L.B
L.H
14
16
15
配合飼料(検定用)L基準定量給与
体重20〜50kg 前期用
 〃 50〜90kg 後期用
8
4
8
油脂15%添加配合飼料(検定飼料と同一配合)
l基準80〜60%
ラデノサイレ−ジ風乾比20〜40%
体重20〜29kg配号1号80%サイレ−ジ20%
 〃 20〜50    %  60   〃   40
 〃 50〜90  配合2号60   〃   40
対照区 L.L 16 4頭(同腹)群飼     4頭(同腹)群飼
  試験期間 体重20kg〜90kg(個体母)、と殺解体(湯はぎ法)
  枝肉分割1群2頭(♂1・♀1)簡易法

・ 試験成果の概要
 (1) 発育(1日平均増体量)は、第1期LH、第2期LYがやや優れL純粋と深くしてLY、LB、LHとも優れる傾向があり、とくに前期(50kg体重時)にその傾向が強く雑種の有利性を認めた。
 (2) 飼料消費量(要求率)は、第1期LH、第2期LYに僅かに優れていた。サイレ−ジ嗜好性は雑種が高く、LHが最も良く、L純粋は劣りこの点は注目すべき事項と思われる。
 (3) と肉歩留は、背脂肪の厚いもの程高い一般的傾向を示し、少差でLL、LB、LY、LHの順となった。(第1期)
 (4) 枝肉の長さに関する各形質は、第1、第2期共LLが最も長く、次いでLH、LY、LBの順である。と体巾は、その逆の関係にある。
 (5) ロ−スの大きさ(断面積)には、各区差を認めない。
 (6) ハムの割合はいずれも30%以上で優れていたがLLが最も良く、LHがほぼそれに近く、次がLYであり、LBが最も劣った。
 (7) 背脂肪は、LHが最もうすく、次ぎにLLでLB、LYは明らかにLH、LLよりも厚い。
 (8) 腹脂肪には、著差を認めない。
 (9) 枝肉の赤肉割合は、LHが最も高く、次いでLLでありLB、LYはこれらに劣り、脂肪はそれと逆にLB、LYが多く、背脂肪層の厚さと同様の傾向を示した。
 (10) 総合的にLY、LB、LH雑種は発育や飼料利用性で大差がなく、L純粋よりはやや優れ、と体形質では、LHはL純粋種より稍々優れていたが、LY、LBではそれよりも劣った。ランドレ−スを母体とする1代雑種の生産利用では、ハンプシャ−が有望な品種と考えられる。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 (1) 発育成績、飼料要求率(平均)
区 分 試験開始 前期終了 試験終了 1日平均増体重 飼料

要求率
サイレ−ジ
消費量
(kg)
日令
(日)
体重
(kg)
日令
(日)
体重
(kg)
日令
(日)
体重
(kg)
前期
(g)
後期
(g)
全期
(g)

1
LY 71.5 21.0 129.8 51.2 181.2 90.4 540.6 768.0 644.6 3.55  
LB 79.3 20.2 134.8 50.7 189.4 90.9 565.1 742.3 644.9 3.50  
LH 77.0 19.7 134.3 50.8 185.1 90.4 544.1 776.3 654.3 3.42  
LL 85.5 20.2 145.8 50.2 200.4 90.7 504.4 762.5 622.8 3.60  

2
LY 77.0 20.3 140.5 50.7 195.8 90.8 479.3 735.6 596.9 3.82 420.4
LB 73.0 20.2 139.0 51.0 199.0 91.0 465.8 651.8 554.5 4.10 448.5
LH 75.5 20.5 140.0 50.6 197.1 90.5 467.9 699.9 576.1 3.95 421.6
LL 78.0 20.1 148.0 51.1 206.3 90.3 444.2 692.0 555.9 4.06 442.2

 (2) と体成績(平均)
区 分 と肉歩留
(%)
と体長
(cm)
ロ−ス
断面積
(cm2)
ハムの
割合
(%)
背脂肪
厚さ
(cm)
枝肉中の割合
赤肉
(%)
脂肪
(%)

(%)

1
LY 73.8 91.8 15.3 30.4 3.31 53.3 36.0 8.8
LB 73.6 92.8 16.1 30.2 3.00 56.6 32.7 9.2
LH 72.9 93.3 16.0 31.2 2.60 58.2 30.1 9.9
LL 73.3 96.0 14.8 31.4 2.75 57.8 31.1 9.5

2
LY 72.4 93.8 15.6 31.6 3.15 55.6 32.8 9.9
LB 72.4 91.5 15.1 30.8 3.23 52.5 37.2 8.3
LH 73.7 92.5 15.9 31.2 2.65 58.5 29.6 9.9
LL 72.0 96.5 15.6 32.2 2.74 57.5 30.4 10.2

・ 奨励又は指導参考上の注意事項
 (1) 純粋種の重要性の再確認
 (2) 純粋種の維持確保、積極的改良、交雑目的の系統造成
 (3) 交雑結果の予測、安全性、大量生産性
 (4) 純粋種ブリ−ダ−の育成と組織化