【指導参考事項】
アルファルファの湿害に関する試験成績
道立滝川畜試 飼料科
(昭和42年)

・ 試験目的
 アルファルファを栽培するに当たっては、いまだ多くの問題が残されているため、その普及が伸び悩んでいる。その原因のひとつとして特に道央地区の重粘質土壌地帯においては湿害が考えられる。アルファルファは深根性の作であるため乾燥にはかなり耐性が高いとされているが過湿土壌に対しては、種々の湿害を受ける特に根圏の発育が阻害されて収量の低下を招くばかりでなくその品質が著しく低下することも報告されているので今回アルファルファの湿害の実態を把握するため地下水位とアルファルファの生育との関係および停滞水がアルファルファの生育におよぼす影響について試験を行った。

・ 試験方法
 試験1.  地下水位とアルファルファの生育
      供試品種        Du puito
    試験処理(地下水位) 10cm、20cm、30cm、40cm、50cm、60cm
 試験2.  停滞水がアルファルファの生育におよぼす影響
    供試品種        Du puito
    試験処理(滞水処理日数)
               幼期(5〜6期)  0.2.4.6.8.10(日)
               成期(開花始期) 0.3.6.9.12.15(日)


・ 試験成果の概要
 試験1.において地下水位とアルファルファの生育との関係を調査したが、アルファルファの発芽には土壌水分の影響が最も大きくあらわれ、土壌水分が多い場合は発芽が早く、少ない場合は遅い。しかし地下水位が高く土壌水分が過多の場合は発芽は行われても定着することが困難となり、途中枯死が多く生ずる。地上部の生育は各処理とも大きな差は認められなかったが、根部の発育は地下水位が高くなるほど劣った。従って地下水位が高い場合は広い範囲から栄養を吸収することができず永続性も劣ることが考えられた。また試験2.において停滞水がアルファルファの生育におよぼす影響について調査したが、幼期、成期ともに3日以上滞水の状態が続くと外見上も明らかに生育は停滞し、集部は黄変する。更に地上部のN含有率が著しい低下を示した。これは滞水によるO2の供給不足のため、植物体蛋白質が分解したものと考えられる。
 従って地下水位の高いところ、または降雨によって一時的のも停滞するところでアルファルファを栽培することは収量および永続性に影響をおよぼすばかりでなく、アルファルファの最も重要な蛋白質含量が低下するため不適であると考えられた。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 試験1. 地下水位とアルファルファの生育
      地上部および地下部の風乾重割合
処 理 地上部
g/ポット
地下部
g/ポット

g/ポット
割合% 分散分析
地上部 地下部
10cm区 6.3 2.4 8.7 72 28 地上部
    LSD 0.01=5.60
        0.05=3.95

地下部
    LSD 0.01=4.75
        0.05=3.34
20cm〃 17.5 7.8 25.1 69 31
30cm〃 18.0 13.7 31.7 57 43
40cm〃 17.6 14.5 32.1 55 45
50cm〃 16.0 13.2 29.2 55 45
60cm〃 12.3 13.6 25.9 47 53

 試験2. 停滞水がアルファルファの生育におよぼす影響
  処理 水分% 乾物中% 粗蛋白総重
g/ポット
無処理比
%
粗蛋白 粗脂肪 NFE 粗繊維 粗灰分


0日 78.16 24.13 3.70 44.78 17.77 9.62 2.16 100
2〃 79.36 22.14 3.50 45.48 19.48 9.40 2.13 99
4〃 79.80 21.49 3.40 46.50 19.06 9.55 1.81 84
6〃 8.75 18.49 3.40 50.72 18.92 8.47 1.40 65
8〃 77.19 14.03 3.40 55.08 20.21 7.28 0.96 44
10〃 74.90 12.67 3.10 57.02 20.32 6.89 1.12 52


0日 71.39 21.46 3.30 46.48 21.04 7.72 2.89 100
3〃 73.11 20.60 3.30 46.83 21.31 7.96 3.41 118
6〃 74.39 18.39 3.30 49.22 21.01 8.08 2.51 87
9〃 72.13 16.47 3.10 50.98 21.74 7.71 2.08 72
12〃 70.87 15.72 2.30 52.76 21.94 7.28 2.27 79
15〃 69.60 13.49 2.50 55.59 21.48 6.94 2.05 71

・ 指導参考上の注意事項
 地下水位は生育重量および根部の発育状況などからみて40〜50cmまで下げることが必要である。また降雨によって短期間でも滞水する場合においてはかなりの生育障害を受けるので栽培条件の改善に配慮が必要である。