【指導参考事項】
ビニ−ル、バキュ−ムサイロによるサイレ−ジの調製利用に関する試験成績
北海道農業試験場草地開発部草地第2研究室
北海道立新得畜産試験場研究第1部
(昭和40〜42年)

・ 目 的
 北海道においては冬期舎飼い期間が7ヵ月間に及び、このためサイレ−ジの十分量の確保は経済的な産乳や育成に重要な意義を有する。また酪農経営も次第に大規模化が図られ、サイレ−ジ調製もより省力的に安全、良質なサイレ−ジ調整法が望まれている。
 また公共用草地においても合理的な草利用や放牧期間の延長の手段として簡易なサイロによる良質サイレ−ジの新技術が要請されている。これらの点からビニ−ル、バキュ−ムサイロによるサイレ−ジ調整法と効果及び実用性について明らかにしようとした。

・ 試験方法
 (1) 昭和40年度においては小型サイロ4基を用いて真空処理の効果を明らかにした。
 (2) 昭和42年度においては2場所において21基のサイロによって基礎試験として、
   ①サイレ−ジ品質 ②養分回収率 ③消化率 ④嗜好性 ⑤醗酵温度などの試験を行い、さらに現地試験として、草、コ−ン、ビ−トトップについて23基(8〜55トン)のサイロで①品質 ②嗜好性 ③適用調整法などの調査を実施した。

・ 試験成果の概要
 ① 牧草、コ−ン、ビ−トトップなどが原料として使用しうることが明らかにされた。
 ② 密封用ビニ−ル、クリップなども国産品が十分実用に供しうることが示された。
 ③ ビニ−ル、バキュ−ムサイロの乾物回収率は90%と良好であるが、サイロ内はN、Co2ガスによる嫌気性の保持によるためと推定された。
 ④ サイレ−ジは外観上の腐敗損失は全然なく、良好な酸生成が示された。
 ⑤ 真空処理は堆積時の容積の50〜70%で良好であった。
 ⑥ サイレ−ジは原料草に対し、DCPは97.5%、TDNは91.8%(乾物中)の栄養価を有した、サイレ−ジの嗜好性は良好であった。
 ⑦ サオレ−ジ調製にあたっては若刈り牧草や良質ビ−トトップでは無細切でも好結果を得ており、省力的にサイレ−ジが作られることが明らかにされた。
 ⑧ ビニ−ル、バキュ−ムサイロ1基当り5.0kgの小型のものから50トン以上の大型のものでも容易に作られた。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 表1. ビニ−ル、バキュ−ムサイロによる密封後の真空処理とDM回収率(%)
真空処理 草サイレ−ジ コ−ンサイレ−ジ※ ビ−トトップサイレ−ジ
密封無真空 85.7 86.7
密封2/1吸引 86.6 94.8 89.1
密封full吸引 90.5
  ※ 5kg小型サイロによる。

 表2. 原料とバキュ−ムサイレ−ジ(牧草)の消化率と栄養価の比較
区  分 消化率(%) 乾物中栄養価(%)
乾物 蛋白質 DCP TDN
原料草 60.2 67.2 11.0
(100)
57.5
(100)
サイレ−ジ 55.1 64.0 10.7
(97.3)
52.8
(91.8)

・ 奨励又は指導参考上の注意事項
 2ヶ年間の基礎試験や現地試験を通じ、ビニ−ルバキュ−ムサイロの調製利用上の注意点は次のごとくである。
 ① サイロの場所:作業に便利で排水良好な所。
 ② サイレ−ジ原料:牧草は1番草、穂バラミ期〜出穂始期または、良質な2〜4番草、コ−ンでは糊熟期〜黄熟初期のもの、ビ−トトップは新鮮原料を用いる。
 ③ 堆積法と密封:具体的には使用機具と図解で示した。
 ④ 真空処理:牧草で堆積時の50〜60%、コ−ン65〜70%、ビ−トトップは60%で好結果が得られる。
 ⑤ 追詰め:ビ−トトップ、牧草では2〜3回に別けて追詰めすることにより、サイロ当りの詰め込み量が増大する。
 ⑥ サイロの管理:棚作り、ネズミ害、ビニ−ル膨満に対する処理方法を示し、さらに高水分原料では排汁処理の方法についても明らかにした。
 ⑦ サイレ−ジの取出し:サイロの機構からみて高温時における取り出しは行わず、10月〜12月、3〜5月などの冷凍時が適する。サイロは1日20cm厚に取り出し、給与日量に応じた大きさとすること。またサイレ−ジの凍結対策についても明らかにした。