【指導参考事項
子牛育成と草地の利用との関連に関する試験成績
(道立天北農試 草地科・管理科)
(昭和40〜42年)

・ 目 的
 草地酪農地帯における牛の経済的な飼養形態として、夏季はできるだけ放牧にまわるべきであり、そのためには草地の利用体系を早急に確立する必要がある。当場では、その体系確立に関する研究の一環として、昭和40年より子牛の放牧育成について一連の試験を行ってきた。その目的は、春に生まれた子牛の早期昼夜放牧による粗放牧的育成に関する諸問題の解明である。最適混播組合せなどの問題は未解決であるが、ホルスタイン雄子生(去勢)48頭による3年間の早期放牧試験の結果を報告する。

・ 試験方法
 ○試験1. 雄雄牛(去勢)12頭を、(対照群)全乳→カ−ソミ−ル方式群と(試験群)ミルクリプレ−サ−→カ−フスタ−タ−方式群に分け、更に各群を2分して舎飼区(全期舎飼)と放牧区(後期昼夜放牧)とし、早期放牧に適する哺育方式を検討した。
 ○試験2. 雄子牛(去勢)を3.4.5.月の各上旬に8頭ずつ導入して4ヵ月、3ヵ月および2ヵ月合放牧群とし、更に各群を基本飼料(哺育飼料)終了後の補助飼料給与の有無により給与区(エンバク1.5円/項・日)と無給与区に2分して、早期放牧の許容限界とその場合の補助飼料の必要性について検討した。
 ○試験3. 試験2の供試牛の半数12頭について冬季舎飼と2年目放牧を実施し(昭、42.1.11からは全牛を同一じょうけんで飼養)、2夏放牧による18〜20ヵ月令育成の経済性を検討した。仕上げ肥育は行わなかった。
 ○試験4. 雄子牛(去勢)12頭を用い次の4処理群を比較した。
        処理  スタ−タ−の給与量と給与期間     ならし放牧 昼夜放牧
         A 100kg  11〜87日余




 40日令
         B 75    11〜73  
         C 50    11〜59   32〜59日令
         D(対照) 50    11〜59     


・ 試験成果の概要
 ○試験1. 3ヵ月令子牛の放牧育成は十分に可能で、その場合の哺育方式としては、ミルクプレ−サ−→カ−フスタ−タ−方式のの方が、放牧期の順調な発育および飼料効率などの点で、全乳→カ−ソミ−ル方式も適している。
 ○試験2. スタ−タ−を基準どうりに給与するならば、60日令子牛の昼夜放牧は可能で発育も良好である。換言すると、良質乾草の貯えがない場合には、草生の良好な草地に早期放牧する方が有利にある。またその場合、補助飼料の給与は必要ないようである。
 ○試験3. 春生まれのホルスタイン雄子牛(去勢)を2夏放牧育成する場合、18〜20ヵ月令で450kgにすることができ、約25.000〜30.000円の差益金を得る。
 ○試験4. 昼夜放牧開始前4週間の”ならし”はかなりの効果があるようだ。また、発育は不良だが、”ならし”を行わなくても60日令子牛の完全放牧育成は可能である。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 ○試験1. 後期(放牧期)の発育と全期の飼料効率(1kg増体に要した飼料費)
 後期開始   試験終了   増体   日増体   発育率  飼料効率
対照群 舎飼区  113kg  185kg  72円  0.72円  63%
┘※※NS









│※※
 137円
放牧区  115 209 94 0.94  83  110
対照群 舎飼区  90 145 55 0.55  60
┘※※
 169
放牧区  100  193 93 0.93  94  108


 ○試験2. 全期(試験開始後166日目まで)の発育と飼料効率(1kg増体に要した飼料費)
 試験開始   166日目   増体   日増体   発育率   飼料効率
60日令放牧群  52kg  176円  124kg  0.75円   244%


NS
  ※
NS



 118円
90日令放牧群  49  154  105  0.63  214  139
120日令放牧群  45  135  90  0.54  202  158


 ○試験3. 全期の発育
   体   重 

 日    増    体 

搬入時 出荷時  全期   初期舎飼   1年目放牧   冬季舎飼   2年目放牧 
60日令放牧群  50円  434  0.72  0.53円  0.95円  0.45円  0.97円
90日令放牧群  49  451  0.72  0.54  0.86  0.48  1.01
120日令放牧群  47  440  0.66  0.61  0.71  0.49  0.90


 層殺成績
 出荷日令   出荷体重(A)   絶食体重(B)   減量(C)   
(C)

(A)
×100   冷枝肉量 
(D)

(B)
×100
60日令放牧群  18日令  435kg  394円  41  9.5%  207  52..5%
90日令放牧群  19  451  411  40  8.9  222  53.9
120日令放牧群  20  440  404  36  8.2  211  52.3


 収支試算(円)
   
収入

 支    出

 
差額

 1kg増体に
要した飼料費

 牛購入費   飼料費   労力費   計 
60日令放牧群  80.200  7.700  40.700  5.500  53.900  26.300  106
90日令放牧群  86.100  7.400  42.700  6.100  56.200  229.900  106
120日令放牧群  81.900  7.200  43.200  6.600  57.000  24.900  110


 ○試験4. 放牧期の発育(60〜167日令まで)
 
体   重

 
増 体

日増体

増体差

スタ−タ−
給与量差

 60日令   88日令   167日令   88日令   167日令   88日令   167日令   88日令   167日令 
A群 82kg 101kg 158kg 19kg 76kg 0.69kg 0.71kg +10kg +18kg +50kg
B群 80 95 150 15 70 0.55 0.65 +6 +12 +25
C群 81 90 149 9 68 0.33 0.64 0 +10 0
D群 88 87 136 9 58 0.32 0.54 対照 対照 対照

・ 奨励又は指導参考事項上の注意事項
 1. 草生の良好な放牧地を用いる。
 2. 安全性の点から、完全昼夜放牧は90日令以後が望ましい。
 3. スタ−タ−への切り替えをスム−ズに行う。
 4. 雄子牛の去勢は、放牧開始前後に行わない。