【指導参考事項】
粗飼料(サイレ−ジ)機械化調整体系の可能負担作業量の試算
北海道立根釧農業試験場
(昭和40〜42年)

・ 目 的
 地域における粗飼料調整は多雨期にあたり、また大量確保の必要性から機械化が進められているが、作業機の組合せ、作業能率、経済性について明らかでないので、これらの点を解析し、合理的機械化調整体系について検討しようとする。

・ 試験方法
 ① 機械化体系と貯蔵様式の組合せ
 ② 機械化体系と作業能率の調査
 ③ 作業体系と粗飼料品質の関係
 ④ 粗飼料の品質と牛乳生産量の関係
 ⑤ 合理的機械化体系の検討
 ⑥ 地域農家の粗飼料調整の実態調査

 作業体系
A タイレクトカット方式
刈取細切積込
────────→
運    搬
─→
サイロ詰込
 フォレ−ジハ−ベスタ(チョッパタイプ) フワムワゴン 農用エレベ−タ−B(Y式)

B 予乾細切方式
刈取細切
─────→
細切積込
────────→
運   搬
──→
サイロ詰込
 フォレ−ジハ−ベスタ
(チョッパタイプ)
フォレ−ジハ−ベスタ− フワムワゴン 農用エレベ−タ−B(Y式)

C 無細切方式
刈  取
─→
反  転
─→
集  草
─→
積  込
─→
運  搬
─→
サイロ詰込
モア− レ−キ フロントロ−ダ
(スイツブレ−キ)
フワムワゴン トレンチサイロ

 可能負担作業量の算出式
  機械化の作業負担面積の算出式は農事試作業技術部からの資料が提示されているので、それを引用したが、算出は次の通りである。
     (P-R)T.K
  Sf= C…………①
  Sf= 作業別負担面積(ha)
   P= 作業適期間の巾(日)
   R= 上記期間中降雨などによる作業不能日数(日)
   T= 圃場作業時間(時/日)
   K= 実作業率(%)
   C= 圃場作業量(hr/ha)
 ここで圃場作業量Cの単位を(hr/ha)の代わりにその逆数としてのhr/haをCとして用いれば①式は次のごとくになる。
  Sf= (P-R) C.T.K…………②
 圃場作業量(C)は、個別作業機の意味であるが、ここでは、組作業量とに用いた。
   C=ha/hr or ton/hr
 この可能負担作業量を(1頭当り必要量×1.25)で除すと、可能飼養頭数も算出することができる。(係数1.25はサイレ−ジの利用率が調整量の80%であるので、その逆数)

・ 試験成果の概要
 一番牧草の可能負担作業量について試算した結果、組作業能率毎時0.6haの場合面積にして55.3ha〜73.8ha、サイレ−ジ調整量でみると738ton〜1.660tonである。これらは運搬作業が遅滞なく行われた場合であって、運搬能力が低下すると組作業能率は運搬能率に規制されて低下する。また牛乳1頭当りサイレ−ジ必要でサイレ−ジ調整量を除すると可能飼養頭数が算出されるが、10a収量20tonとする可能飼養頭数は118頭なり、四戸共同では1戸当り29.5頭一番草で飼養することが可能である。二番草を1.5ton/10aとすると、乾草を含めて36頭飼養が可能である。
 一番草の刈取適期については、従来栄養生産量の最大を目的とし出穂期としていたが牧草の時期別刈取が、産乳量に影響することが明らかになったので牧草の産乳効果と土地生産性を基にした経済的刈取り期間を求めた結果、萌芽後45にtから65日くらいまであることが知られ、それは月日に直すると6月17日〜7月7日で、最近若刈奨励している期間にほぼ一致した。

 作業体系別可能作業量の試算
  稼働可能時間は機械化体系とは別に(P-R)T.Kであらわされる。
   (P-R)=作業期間における作業可能日数=14.9日
      T=1日当り稼働時間=10時間
      K=実作業率=82.6%
  稼働可能時間=14.9日×10時間×82.6%=123.0時間
作業能率 (C) 可能負担作業量 (cf)
調整
方式
機械作業 稼働可
能時間
圃場作業量(ha/hr) サイレ−ジ調整量(ton/hr) 作業負担面積(ha) サイレ−ジ調整量(ton)
10a収穫量(ton) 10a収穫量(ton) 10a収穫量(ton) 10a収穫量(ton)
1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0










0.6 −③ 123.0 0.6 0.6 0.6 0.51 0.45 6.0 9.0 9.0 12.0 12.8 13.5 73.8 73.8 62.7 55.3 738.0 1.107.0 1.476.0 1.574.4 1.110.5
0.5 −③ 123.0 0.5 0.5 0.5 0.48 0.43 5.0 5.0 7.5 10.0 12.0 12.9 61.5 61.5 59.0 52.8 615.0 922.5 1.230.0 1.476.0 1.586.7
0.36 −③ 123.0 0.36 0.36 0.36 0.36 0.36 3.6 3.6 5.4 7.2 9.0 10.8 44.2 44.2 44.2 44.2 442.8 664.2 885.6 1.107.0 1.328.4
0.6 −② 123.0 0.6 0.48 0.4 0.34 0.3 6.0 6.0 7.2 8.0 8.5 9.0 73.8 49.2 41.8 36.9 738.0 585.6 984.0 1.045.5 1.107.0
0.5 −② 123.0 1.5 0.44 0.37 0.32 0.28 5.0 5.0 6.6 7.4 8.0 8.4 61.5 45.5 39.3 34.4 615.0 811.8 910.2 784.0 1.033.2
0.36 −② 123.0 0.36 0.36 0.32 0.28 0.25 3.6 3.6 5.4 6.4 7.0 7.5 44.2 39.3 34.4 30.7 442.8 664.2 787.2 861.0 922.5
0.6 −① 123.0 0.3 0.24 0.2 0.17 0.15 3.0 3.0 3.6 4.0 4.2 4.5 36.9 24.6 20.9 18.4 369.0 442.8 492.0 516.6 553.5
0.5 −① 123.0 0.27 0.22 0.18 0.15 0.14 2.7 2.7 3.3 3.6 3.7 4.2 33.2 22.1 18.4 17.2 332.1 405.9 442.8 455.1 516.6
0.36 −① 123.0 0.22 0.18 0.16 0.14 0.12 2.2 2.2 2.7 3.2 3.5 3.6 27.0 19.6 17.2 14.7 270.6 332.1 393.6 430.5 442.8
予乾
細切
方式
  123.0 この日方式の作業能率は予乾の時間によって変わるが、ダイレクト・カット方式の2分の1以下とみられる。




    ③ 123.0 0.36 0.32 0.29 0.26 0.23 3.6 4.8 5.8 6.5 6.9 44.2 39.3 35.6 31.9 28.2 442.8 590.4 713.4 799.5 848.7
    ② 123.0 0.32 0.27 0.23 0.21 0.18 3.2 4.0 4.6 5.2 5.4 39.3 33.2 28.2 25.8 22.1 393.6 492.0 565.8 639.6 664.2
    ① 123.0 0.23 0.20 0.15 0.13 0.12 2.3 3.0 3.0 3.2 3.5 28.2 24.6 18.4 15.9 14.7 282.9 367.0 368.0 393.6 442.8
  注) 無細切方式には刈取りと集草の時間が含まれていない。それらの時間を含めると負担作業量は少なくなる。
     機械体系欄の0.6−③は、前の数字はハ−バスタ−の毎時能率でhaで示し、○の中の数字は運搬車の数を示している。

 機械化体系別可能飼養頭数
調整
方式
機械体系 可能飼養頭数
1戸所有 2戸所有 3戸所有 4戸所有 5所有










0.6 −③ 118.0 59.0 39.2 29.5 23.6
0.5 −③ 98.4 49.2 32.8 24.5 19.6
0.36 −③ 70.6 35.3 23.6 17.6 14.1
0.6 −② 78.6 39.3 26.2 19.6 15.7
0.5 −② 72.8 36.4 24.2 18.1 14.5
0.36 −② 62.8 31.4 20.9 15.6 12.5
0.6 −① 39.4 17.7 13.1 9.8 7.8
0.5 −① 35.2 17.6 11.7 8.8 7.0
0.36 −① 31.2 15.6 10.4 7.8 6.2
予乾
細切
方式
同上 同上の1/2以下




    ③ 57.0 28.5 19.0 14.2 11.4
    ② 45.2 22.6 15.1 11.3 9.0
    ① 29.6 14.8 9.8 7.4 5.9
  注) 10a収穫量を2.0tonとした。
     1頭当り給与量を10tonとしサイレ−ジ必要量を12.5tonとして算出

・ 奨励又は指導参考上の注意事項
 組作業における作業能率は組作業の中で最も小さいものに規制される。ここでとりあげた機械化体系は4戸共同所有を前提として作成したものであり、粗飼料の調整作業は男4人〜女2〜4人を想定した。機械化体系で問題が多いのは運搬作業の積込みと積み下ろし作業で、体系ではファ−ムワトレ−ラ−を採用している。これにすると、積み込みはハ−バスタ−から直接積み込み、積み下ろしもトラクタ−のPTO動力で可能であるため運転者1人で十分である。しかし、降ろし装置のないトレ−ラ−を用いると、能力をおとさないためには降ろし人夫として3人必要である。労力がないときは、降ろし作業が作業能力の規制要因となるので、注意が必要である。
 1頭当り産乳量が増す直接には機械化によるものではない牧草の適期刈取りによって産乳量が増すのである。機械化は短い適期間に大量調整するための手段である。したがっていくら機械化をしても適期を逸しては、乳量の増加は期待できなものであることを周知させることが必要である。
 従来機械の利用にあたっては稼働時間を増して、時間当りの費用を軽減することが云われている。粗飼料調整においても適期刈取り期間を逸してまで稼働することは、いたずらに機械費用を増すのみであるから、注意が必要である。
 サイレ−ジ調整機械化作業体系と作業機の組合せ